夢幻の森の試練12
開始の合図とともに、マコトは球状に集約した、霊神力、妖神力、幻神力を、3人が持つ疑似精石へ向けて放った。
それぞれの力は、何の抵抗もなく疑似精石へと全て吸い込まれていった。
そしてすぐに変化は訪れた。
疑似精石が眩いほどの光を放ちはじめたのだ。
あまりの眩しさに、3人は反射的に目を瞑ってしまった。
このとき3人は、これがはじめる直前にマコトが言っていた、我慢して何もするな、に当てはまるのだと思っていた。
そのため目は瞑ってしまったものの、その場から動かず、声も上げず、立った姿勢を維持したのだ。
しかしそれがすぐに間違いだったと、3人は身を以って思い知ることになる。
何故なら、突然全身を触られている感覚に襲われたのだ。
「ひゃうっ!?(×3)」
思わず声を上げてしまった3人であったが、そこへマコトが注意してきた。
「なるべく早く終わらせるから、できるだけ声を出さずに、その場でジッとしているんだ。」
「はっ、はいっ・・・」
「うっ、うんっ・・・」
「うっ、うむっ・・・」
何とか返事を返したものの、身体の外側と内側から優しくまさぐられている感覚が、3人の全身を容赦なく襲ってくる。
それはくすぐったいような、気持ちいいような、初めて感じる何とも奇妙な感覚なのだが、何故か不快感は感じなかった。
そのためマコトに注意されていなければ、3人とも周りのことなど忘れて、その場で声を上げて悶えてしまったことだろう。
マコトの言葉が3人の理性に働きかけて、顔を赤くしながらも何とか我慢している状況だ。
そんな状態が1分ほど続いた。
それほど長くはない時間だが、3人にとっては違った。
既に何時間も経っているのではないかと錯覚するほど、長時間行われているかのように感じているようだ。
しかしマコトに言われた通り、3人は理性を強く保って我慢し続けた。
そこへようやくマコトが動いた。
3人に向けて突き出していた両手を、ゆっくりと握りはじめたのだ。
時間にして僅か10秒ほどであったが、マコトが完全に手を握り終えると、疑似精石に変化が起こった。
次第に光が収まっていき、やがて淡い光へと変わったのだ。
それを確認してからマコトは緊張を解いて、3人に次の指示を出した。
「・・・ふぅーっ・・・3人とも、もう楽にしていいぞ。」
マコトのその言葉を聞いた瞬間、3人は膝から崩れ落ちて、その場にしゃがみこんでしまった。
とりあえず先程まで感じていた、全身をまさぐられているような感覚は既に消えていた。
だがその余韻が残っているため、まだ顔は赤く息づかいも荒くしており、3人ともとても艶めかしい雰囲気を纏っている。
マコトは意識を強く持って煩悩を振り払ってから、冷静な口調で3人に説明をはじめた。
「・・・3人ともよく耐えてくれた。
とりあえずこれで、しばらくの間は存在を保ち続けることができる。
まあまだ一時しのぎではあるがな。」
このマコトの言葉に、3人は途端に慌てだした。
「まっ、まだ、何かするのですか?」
「だっ、駄目駄目!
今みたいなのは、もう耐えられないよーっ!」
「わっ、私も、これ以上は我慢できる自信が無いのである。」
不安そうな顔をしながら弱気なことを言っている3人だったが、それは杞憂に終わった。
「安心しろ、この後は時間がかかるだけで、今みたいなのはもう終わりだ。」
このマコトの言葉に、3人はあきらかに安堵していた。
「そっ、それを聞いて安心しました。」
「よっ、よかったぁ・・・」
「たっ、助かったのである。」
安心しきった顔をしている3人であったが、そこへマコトが釘をさしてきた。
「ただし、これからやることは、まだまだ多いし根気がいるぞ。
頼むから最後まで諦めないでくれよ。」
これに対して、3人は余裕の表情で答えた。
「先程の以外でしたら、我慢します。」
「私もーっ!」
「何でもするとは言ったが、先程のはもう勘弁してほしいのである。」
不安が残る答えではあったが、マコトは時間を無駄にすることを嫌って、そのことには触れなかった。
「・・・頼んだぞ3人とも。」
気を取り直して続きをはじめようとしたが、そこへ3人が先程のことについて質問してきた。
「しかし先程のはいったい何をしたのですか?」
「私も知りたい!」
「私も同感である。
時間に余裕ができたのであればなおさらである。」
この質問に対して、マコトは作業しながら答えることにした。
「・・・わかった。
だが作業は続けさせてもらうぞ。
この後はそこから動かなければ問題ないから、普通に話すことはできるしな。
それでいいな?」
「はい。」
「うん。」
「うむ。」
3人が了承したので、マコトは再び両手を突き出して次の作業を続けながら説明を行った。
「さっきのは、その疑似精石に3人の情報を取り込ませたんだ。
だが今の精石を失った3人の状態では、補助として俺の力を注ぐしか方法が無かった。
しかし俺の力を俺以外の奴に注ぐと、どうやら催淫作用があるみたいでな。
力が馴染んで安定しないと、その状態が数分続くんだ。
その所為で3人ともあんな状態になってしまった、というわけだ。」
「そうだったのですね。」
「とりあえずは、必要なことだったってことは理解したよ。」
「だがもう少しどうにかならなかったのであるか?」
話を聞いて文句を言ってきた3人に、マコトは補足説明を付け加えた。
「本来は精石が体内に存在する状態で行えば、一瞬で終わったことなんだがな。
当然俺の力を注ぐ必要もなかった。
だからハッキリ言って、お前たち3人の自業自得だ。」
マコトに痛い所を付かれて、3人はそれ以上文句を言えず、逆に謝罪の言葉を口にした。
「うっ・・・そっ、それは本当にすみませんでした。」
「悪かったって。」
「反省しているのであるから、あまりいじめないでほしいのである。」
マコトもそれ以上は追及するつもりは無く、ここでこの話を打ち切った。
「まぁこれ以上は愚痴を言っても仕方ないからな。
この話はこれで終わりだ。」
「はい。」
「うん。」
「うむ。」
3人もおとなしく同意したので、マコトは作業を先に進めることを優先した。
「それじゃぁさっさと終わらせるぞ。
まだまだやることはたくさんあるんだからな。」
「ええ、お願いします。
一応聞きますが、時間は後どれくらいかかるのですか?」
「そうだなぁ・・・たぶんあっちの3人の契約よりは少しだけかかるだろうな。」
「じゃぁ1時間半くらい?」
「順調にいけばな。」
「もし精石が体内に残っている状態であったなら、どうだったのであるか?」
「10分もかからなかったはずだ。」
時間差は10倍ほどであると聞いた3人だったが、慌てることはなく、むしろ安堵して余裕の表情を浮かべていた。
「自分たちで蒔いてしまった種です、仕方ありません。
むしろそれくらいの時間で済むことを幸運に思わなければいけませんね。」
「楽勝楽勝。」
「耐えてみせるのである。」
ここでマコトは、事前に3人の勘違いを正しておいた。
「言っておくが、作業時間よりも作業工程数の差の方が大きいぞ。」
「作業工程数?」
「差が大きい?」
「どういうことであるか?」
「本来は2工程で済んだはずが、今回は200工程以上あるからな。」
「・・・はぁっ!?(×3)」
「今ちょうど2工程目が終わったところだ。
それで次の工程だが・・・」
そう言ってマコトは突き出していた両手を下げ、いつの間にか開いたゲートへと左手を突っ込んでいた。
どうやら次の工程の準備をしているらしい。
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
「200工程以上って、私たちに何させるつもりなの!」
「それにその工程数の差が100倍以上というのは、いったいどういうことなのであるか!」
再び文句を言いはじめた3人だったが、逆にマコトは文句と説明を口にした。
「何度も言わせるな。
元はと言えばお前たちが先走ったのが原因だと言ってるだろ。
本来なら疑似精石を完全な状態にするのは1工程で終わったんだ。
そして最後にお前たちと疑似精石を、そこの鞘と融合させればいいだけだったんだ。
だが今の状態では、その疑似精石はまだまだ不完全だ。
つまり疑似精石を鞘と融合させることができる状態にするのに、後200工程以上が必要になるというわけだ。」
このマコトの説明に、3人は何も言い返すことができずにいた。
「そっ、そんなぁ・・・(×3)」
「さて、話はこれくらいにして、ここから休みなしで終わらせるぞ。
次は・・・」
こうしてマコトは、現実を理解して途方に暮れる、先代の精霊神、妖精神、幻精神に、数多くの細かい指示を出し、1つ1つ工程を消化させていったのであった。




