夢幻の森の試練10
これに対して3人が口にした答えは、謎の女性の予想とは違っていた。
「そんなのわかんないよ。」
「私も知らない。」
「マコト様からは何も聞いていません。」
この3人の答えを聞いて、謎の女性は途端に不安が膨らんだ。
「えーっ・・・だったら・・・」
しかし3人の話には、まだ続きがあった。
「でもマコト様が意味もなくあんなことをするはずないよ!」
「うん、きっと何かするつもり。」
「マコト様が目の前の問題を座して待つなどありえません。」
そう言い切った3人の目には、マコトに対して微塵も疑う気持ちは見られなかった。
更にマコトなら、どんなことでもなんとかしてくれる、と確信しているようだ。
「・・・3人ともマコトのことを信じてるんだね。」
この謎の女性の言葉に、3人は即答した。
「もちろん!」
「当たり前。」
「当然です。」
あまりにも迷いのない答えに、謎の女性は思わず笑ってしまった。
「あはははははっ、3人とも本当にマコトのことが、とっても大好きなんだね。」
「もちろん!」
「当たり前。」
「当然です。」
またも即答した3人の姿に、謎の女性がとうとう折れた。
「・・・わかったよ。
私もおとなしくマコトのやることを黙って見てるよ。」
説得が上手くいき、3人はようやく謎の女性から離れた。
「うんっ、きっと大丈夫だよ!」
「問題ない。」
「マコト様にお任せすれば、全て上手く行きます。」
「そうだね。
じゃぁとりあえず問題解決はマコトに任せて、私たちはあっちの様子を見届けよう。
どうやらこれからはじめるみたいだしね。」
謎の女性がそう言ったので、3人も視線を精霊神たちの方へと戻した。
すると、ちょうど精霊神たちが動いたところのようだ。
手に持っている拳大の宝石を、精霊姫、妖精姫、幻精姫のお腹へと押し付け、そのまま身体の中へと埋め込みはじめたのだ。
少し苦しそうな表情をしているものの、3人は一言も声を発さずに、その宝石を受け入れていた。
ゆっくりと時間をかけて宝石が全て体内に入ると、精霊神たちはお腹に押し付けていた手を離して、その場から一歩後ろへと下がった。
その瞬間、精霊姫、妖精姫、幻精姫に変化が起こった。
宝石を埋め込まれたお腹の辺りが激しい光を放ち、3人の全身をあっという間に覆ってしまったのだ。
3人は、まるで繭に包まれた蛹のような状態となっていた。
しかしその状態は短かった。
すぐに光の繭にヒビが入ると、その内側から勢いよく溢れ出た力の奔流によって、木っ端微塵に粉砕されてしまったのだ。
そして中から現れたのは、それぞれ髪の色が、翡翠、深紅、紫紺で、地面にまで届きそうなほどの長さの美女たちであった。
その姿も変化しており、光りの繭に包まれる前は15歳くらいだったが、今は25歳くらいへと成長している。
しかも精霊神、妖精神、幻精神と瓜二つで、どうやらその全てを受け継いだのだろう。
「・・・これで継承は終わりです。
精霊姫、いえ、今この瞬間からは、貴女が精霊神です。」
「はい・・・先代。」
「妖精姫、これから妖精神として頼んだよ。」
「うん・・・任せて。」
「幻精姫、幻精神として今後も精進するのである。」
「うむ・・・心得た。」
それだけ伝えると、先代の精霊神、妖精神、幻精神の3人は、苦しそうな表情でお腹に手を当てながら、その場にうずくまってしまった。
しかし新たな精霊神、妖精神、幻精神は、心配して3人に近づくことはせず、全く違う方を向いて歩きだしてしまったのだ。
そしてやってきたのは、ミザリィ、ナタリィ、シェイラの前であった。
「・・・お待たせしました。
これより私たちが貴女たちと契約させていただきます。
ミザリィは、精霊神の私と。」
「ナタリィは、妖精神の私とだよ。」
「シェイラは、幻精神の私とである。」
「さあ3人ともこちらへ。
すぐに契約をはじめましょう。」
そう言って新たな精霊神が、3人を湖の方へと促した。
だがこれに対して、ミザリィが1つだけ精霊神へと確認した。
「・・・ねぇ、あのままでいいの?」
そう言ってミザリィは、うずくまっている先代の精霊神たちがいる方へと視線を向けた。
すると新たな精霊神は、悲しそうな表情で首を横に振った。
「・・・私たちにはどうすることもできません。
代々精界を収める者たちに受け継がれてきた宝石、精石を体内に取り込むことで、役目と力が継承されます。
しかし一度体内に取り込まれた精石を体外へ取り出してしまうと、急激に存在が薄れて、一度分解されてしまいます。
そして母なる木、精命の木へと帰り、その存在を全て吸収され、再び長い年月をかけて精霊の欠片へと生まれ変わります。
ただ、死や存在が消える、というわけではありません。
ですが様々な存在と混ざり合い、新たに別の存在となって生まれ変わるため、記憶などは全く受け継がれません。」
「そうなんだ・・・でも心配じゃないの?
最後、なんでしょ?」
「当然心配ですし、今すぐ駆け寄って最後まで傍についていたいです。
ですがそんなことをすれば、先代たちに怒られてしまいます。
きっと、そんな時間があるなら早く契約しなさい、と言うでしょう。」
そう言いながら、新たな精霊神の目には、必死に悲しみをこらえながらも、先代たちの意思を受け継ごうという強い想いが宿っていた。
その姿を見て、ミザリィ、ナタリィ、シェイラも、新たな精霊神の想いを優先した。
「・・・わかったよ、じゃぁ契約しちゃおう。」
「私もいいよ。」
「私も構いません。」
3人が同意してくれたので、新たな精霊神は感謝の言葉を口にした。
「・・・気を使っていただいて、ありがとうございます。
私たちと貴女たちの契約は、先代たちが最も望んでいることです。
貴女たちの決断に感謝します。」
このとき新たな精霊神は、ミザリィたちも先代たちの意思を尊重してくれたのだと思った。
しかしどうやらミザリィたちの考えは違うようだ。
「あっ、勘違いしてるみたいだけど、別に私たちは諦めたわけじゃないよ。」
ミザリィの言った言葉の意味がわからず、新たな精霊神が質問してきた。
「・・・それはどういうことですか?」
これに対して、ミザリィ、ナタリィ、シェイラが、理由を口にした。
「あの3人を助けることは、私たちにもできないけど、助けられないわけじゃないよ。」
「だからできる人に全部任せる。」
「私たちはその方を信じて3人をお任せし、今自分たちにできることを行うだけです。」
そんな全く心配した様子がない3人であったが、新たな精霊神、妖精神、幻精神は、言葉の意味がわからず、反射的に聞き返していた。
「できないのに、助けられないわけではない?」
「できる人に任せる?」
「信じる?」
「・・・貴女たちはいったい何を言って・・・」
いまだに理解が追い付いていない新たな精霊神たちだったが、ふと視線を先代たちの方へと向けると、その前にはいつの間にかマコトが立っていた。
その姿を見て、ミザリィ、ナタリィ、シェイラが、誰のことを言っているのか、新たな精霊神たちは理解した。
「まさか彼ならば・・・先代たちを助けることができるというのですか!」
「本当に助けられるの!」
「ならば頼む!
どうか先代たちを助けてほしいのである!」
僅かに見えた希望へとすがりつくように、3人はマコトへと懇願していた。
そんな3人に、マコトは心強い返事を返した。
「こっちは俺に任せておけ。
決して悪いようにはしない。
だからお前たちは自分のやるべきことに集中するんだ。」
このマコトの返事を聞いて、新たな精霊神たちの悲しみが薄れたようだ。
「はいっ!お願いします!(×3)」
「さあ、ミザリィ。」
「こっちだよ、ナタリィ。」
「行くのである、シェイラ。」
そう言って新たな精霊神たちが手を差し出すと、3人は迷わずその手を取った。
「はいっ!(×3)」
こうして後のことをマコトに任せて、6人はその場から離れて行ったのだった。




