出産場所の準備
そんな3人に、マコトは改めて確認をした。
「ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、もう一度聞くが、準備はいいか?」
当然3人の答えは決まっていた。
「はいっ!(×3)」
その表情には迷いがなく、完全に試練へ向けて集中しているようだ。
「よし、行くぞ。
シルフィナ、こっちは任せたぞ?」
そう言ってマコトはゲートを開くと、そのまま3人を連れて中に入って行ってしまった。
「かしこまりました、マコト様。
いってらっしゃいませ。」
シルフィナが頭を下げると、他の皆も一斉に頭を下げ、マコトたちを見送ったのだった。
ゲートが閉じると、すぐにシルフィナは頭を上げて、今後のことについての相談をはじめた。
「・・・それではアリアさん、早速ですが出産に向けての準備を進めたいのですが、よろしいですか?」
「はい、マコト様から事前に聞いていますので、シルフィナさんにお任せします。
お手伝いできることがありましたら、何でも言ってください。」
「では準備は私たちの方で行いますので、まずはどこか広い場所をお借りできませんか?
そちらへ全員分のベッドや出産に使用する器具など、必要なものを置かせてください。」
「わかりました。
やはり広い場所がいいでしょうか?」
「はい、皆さんが全員集まれる広さがいいですね。
そうすればすぐに対応できますから。」
「そうなりますと、あそこしかありませんね。」
「どこでしょうか?」
「私たちダークエルフ族全員が受精した場所、神魔樹の地下に存在する泉の周辺です。
何もありませんが、広い場所ですから全員が入っても余裕があります。」
「ではそちらの場所をお借りします。
皆さん産気づきそうになりましたら、そちらへとお越しください。
それまではのんびりと過ごしていてください。」
「わかりました。
それではお言葉に甘えさせていただきます。」
やることが決まったので、シルフィナは皆へと指示を出した。
「それでは皆さん、何人かの方にお手伝いをお願いします。
キラさん、ラミさん、セイさん、フィーアさん、お願いできますか?」
「わかりました。(×4)」
「他の皆さんは、いつも通り午後の訓練を行ってください。
私もこちらの準備が終わり次第合流しますが、それまではトウカさんにお任せします。」
「わかった、こちらは任せてくれ。」
「お願いします。
では皆さんは早速訓練をはじめてください。」
そう言ってシルフィナはゲートを開いた。
訓練を行う皆は中へと入り、訓練場へと向かったのだ。
皆を送り終えると、シルフィナは残っている4人に指示を出した。
「それでは分担して作業をはじめましょう。
キラさん、ラミさん、セイさんは、神魔樹の地下の地面部分を掃除してください。」
「はい。」
「任せて。」
「わかったわ。」
「フィーアさんは私と一緒に神魔樹の地下の天井部分を掃除します。」
「わかりました。」
「では、はじめましょう。」
「はいっ!(×4)」
5人はすぐに移動し、掃除をはじめた。
キラ、ラミ、セイは、掃除道具を使って地面の掃き掃除を中心に行っていた。
一方シルフィナとフィーアは、魔法で足場を作り、更に魔法で天井を洗浄していった。
それから1時間ほどで掃除が終わると、最後にシルフィナがその場所一帯を清潔に保つために結界で覆い、中の空気を奇麗に除菌した。
こうして神魔樹の地下は清潔な空間へと生まれ変わったのだ。
作業を終えると、シルフィナは誰もいない方へ向かって、ある人物の名前を呼んだ。
「これでこの場所の準備は終わりましたね。
・・・アイ、こっちの準備は終わったわ。
そっちの準備はいいかしら?」
すると名前を呼ばれたアイの声が、その場にいる全員の耳に聞こえてきた。
「はい、こちらはいつでも大丈夫ですよ、シルフィナ。」
「場所はわかるかしら?」
「はい、問題ありません。
神魔樹の地下へ、座標の固定は完了しています。」
「それじゃぁはじめてちょうだい。」
「わかりました。
それでは、送ります。」
アイがそう言った瞬間、神魔樹の地下の地面に、巨大なゲートが開いた。
するとそこから、ベッドや出産に使用する器具などが、次々とせり上がってきたのだ。
しかも既に配置された状態であったため、全てが出終えるとゲートが閉じ、あっという間に設置が完了したのだ。
「とりあえず妊婦用と赤ちゃん用のベッドを人数分、分娩台を30個、その他必要な物資を多数用意しました。
他に何か必要なものはありますか?」
シルフィナは一通り準備されたものを確認してから、アイに要望を出した。
「そうねぇ・・・簡易的なお風呂を用意することはできるかしら?
すぐに身体を洗えるようにしておいた方が、いろいろと便利だと思うわ。
もちろん、妊婦用と赤ちゃん用の両方よ。」
「可能です。
では妊婦用は10人くらいが一度に入れるくらいの広さで1つ、赤ちゃん用は1人用の底が浅いものを10個でいいですか?」
「とりあえずそれでいいわ。
一緒にお湯や水も大量に用意しておいて。」
「もちろんです。
保温機能を持った大容量の貯水タンクを、熱湯、お湯、水、の3つ用意します。」
「お願いね。」
「ただこちらは今用意してもしょうがないですから、誰かが産気づいた時点で、そちらへ送るようにします。」
「ええ、それでいいわ。
後は・・・とりあえず問題なさそうね。
他に必要なものがあったら、またお願いするわ。」
「わかりました。
いつでも言ってください。」
一通り準備と物資の確認が終わったので、シルフィナたちはその場を後にして訓練場へと向かい、訓練に合流した。
その後、午後の訓練が終わると、皆はいつも通り温泉で汗を流し、夕食を食べた。
そして食後のお茶を飲みながら、シルフィナが役割分担について皆へと説明をはじめた。
「皆さん、これから出産に向けて、事前に役割分担を行っておきます。」
それを聞いて、全員がシルフィナに注目した。
シルフィナは一呼吸置いてから、役割分担を発表した。
「まずは助産師です。
私、シーノさん、サーシャさん、ケイさん、ノルンさん、イシスさん、トウカさん、ミィさん、フィーアさん、この9人で行います。
皆さん、お願いしますね。」
「はい。(×8)」
シルフィナを含めた9人に緊張した様子はなく、いつも通りのままだ。
一応シルフィナは補足を付け加えてから、次の役割分担を発表した。
「私を含めた皆さんが、出産に立ち会った経験がありますので、安心して出産を迎えてください。
次にその補助です。
こちらは、イーリスさんとミレーヌさんにお任せします。
イーリスさんは妊婦の方たちを、神法で手助けしてあげてください。
ミーレヌさんは増幅士と減衰士の能力を使って、妊婦の方たちを手助けしてあげてください。
お2人ともお願いしますね。」
自分たちの名前が呼ばれたからか、イーリスとミレーヌは緊張感を持ちながらも、それ以上にやる気に満ちていた。
「わかりました。
妊婦の皆さんの安全は、私が絶対に守ります!」
「お任せください、シルフィナお姉様。
必ずやご期待に添えてみせます!」
そんな2人の姿に満足げな表情を浮かべながら、シルフィナは最後の役割分担を発表した。
「残りの皆さんは、私たちの指示で様々な雑用をこなしていただきます。
ただ雑用とはいっても、とても重要な役割です。
そして今回の出産に立ち会うことは、皆さんにとってもいい経験になるはずですから、この機会を上手く活かしてください。」
「はいっ!(×皆)」
皆はシルフィナの言葉に気合いを入れた声で答え、その表情からもやる気に満ち溢れている。
それを見て、シルフィナは満足そうにしていた。
こうして出産に向けての準備が着々と進み、妊婦たちだけでなく、他のハーレムメンバーたちも緊張感が高まってきたのだった。




