試練の条件3
その場の雰囲気がとても和んだものになっていた中、マコトは本題に入った。
「さて、ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、そろそろ出発するが、3人とも準備はいいか?」
「いつでもいいよ!」
「大丈夫。」
「私も行けます!」
3人は待ってましたとばかりに、気力も気合も十分なようだ。
そこへマコトが、3人にある事実を伝えた。
「試練が終わるまでは戻ってくることができないが、それでもいいな?」
それを聞いても、ミザリィは特に気にした様子はなかった。
「大丈夫だよ、すぐに終わらせるからね!」
「先に言っておくが、夢幻の森とこっちでは時間の流れが違う。
あっちでの1日は、こっちでの3日だ。」
新たに付け加えられた情報を聞いても、ナタリィに気にした様子はない。
「問題無い。
半日以内で終わらせるから。」
どうやらミザリィとナタリィはマコトの話をあまり深く考えていないようで、気楽に考えているようだ。
しかしシェイラだけが、ある問題点に気づいた。
「ちょっと待ってください!
マコト様、試練はどれくらいで終わると予想されますか?」
「それは俺にもわからない。
そもそも今回行われる試練の内容を俺は知らないからな。
最短であれば数時間もかからないだろうが、最長だと数日、下手をすれば数ヶ月から数年はかかるかもしれない。
精霊たちは気が長い性格だから、可能性としてはありえる話だ。」
「ではマコト様は、試練にどれくらいの時間がかかったのですか?」
「俺のときは5分もかからなかったな。」
その話を聞いて、ミザリィとナタリィはますます楽観視していた。
「マコト様もこう言ってることだし、心配し過ぎだよ、シェイラ。」
「私たちでも数時間あれば、きっとクリアできる。」
だがシェイラの質問はまだ終わっていなかった。
「ではシルフィナさんは、試練にどれくらいの時間がかかりましたか?」
するとマコトは、本人から直接答えさせた。
「シルフィナ、教えてやってくれ。」
「かしこまりました、マコト様。
私のときは、試練をクリアするまでに2日かかりました。」
「えっ!?(×2)」
驚くミザリィとナタリィだが、シェイラは冷静なまま質問を続けた。
「一応そのときの試練の内容について、それぞれお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、構わないぞ。
俺のときは、単純に力比べだな。
最初は精霊神たちが完全に俺のことを下に見ていたからな。
面倒くさかったのか、全員と一度に行った単純な試練だった。
だからすぐに力を見せて、短時間で試練をクリアすることができたんだ。」
「逆に私のときは、完全に警戒されていましたね。
先に試練を行ったマコト様の関係者ということで、試練が複数に分けられて行われました。
そのため時間がかかってしまいました。」
マコトとシルフィナの話を聞いて、シェイラはある可能性へと至った。
「そうですか・・・そうなりますと、確実に3日以内にこちらへと戻ってくることができるかわかりませんね。」
そのシェイラの言葉で、ミザリィとナタリィも何が問題なのかに気づいた。
「あっ・・・ちょっと待ってよ、それじゃぁ母様たちの出産に、私たちは立ち会えないかもしれないってこと!」
「そうなりますね。」
「それは大問題。」
「ねぇマコト様、試練を受けるのは、母様たちの出産が無事に終わってからじゃ駄目なの?」
「私もそうしたい。」
そんな2人の要望に対してマコトは口を開こうとしたが、それは別の人物の言葉によって遮られてしまった。
「2人とも、馬鹿なこと言ってないで、早く行ってきなさい。」
それは2人の母、ミーナだった。
しかしミザリィとナタリィは、それを聞いても渋っている。
「でっ、でもぉ・・・」
「母様たちと妹たちが心配。」
どうやら出産を心配してのことらしいが、ミーナの答えは変わらなかった。
「私たちなら大丈夫だから、貴女たちは早く行って、さっさと試練をクリアしてきなさい。
さっき貴女たちも自分で言ってたじゃない、半日で終わらせてくればいいのよ。
だったら何も問題無いでしょ?」
だがミーナにそう言われても、2人はすっかり意気消沈していた。
「それはシルフィナさんの話を聞く前だったから・・・」
「もし試練が1日以上かかると、間に合わない。」
そんな2人に、ミーナは活を入れた。
「なに弱気になってるの!
少なくともマコトは、貴女たちの実力を認めたからこそ、試練を受けても問題無いって言ってるのよ。
それにマコトだって見届けるために一緒に行くんだから、試練の結果によっては私たちの出産に立ち会えなくなっちゃうかもしれないじゃない。
それでも今試練を受けさせるということは、何か意味があるはずよ。
だから2人とも、いつものように気楽に考えて、少し調子に乗ってなさい。
貴女たちにはそれくらいが丁度いいのよ。」
そのミーナの言葉を受けて、2人の目にやる気が戻ってきた。
「母様・・・わかったよ!
さっさと終わらせて戻ってくるよ、ナタリィ!」
「うん、私たちなら問題無い。
絶対間に合わせる。」
「その意気よ、2人とも。」
再び気合を入れなおした2人の姿に、ミーナは満足そうにしていた。
一方、完全にやる気になった2人の姿を見て、シェイラは薄らと口元に笑みを浮かべていた。
そんなシェイラを見て、アリアが声をかけてきた。
「そういう貴女はどうなのですか、シェイラ?
まさか自信が無い、などと思っているのではありませんよね?」
「そんなものは全くありません。
マコト様が私たちの力を認めてくださっているからこそ、試練を受けることを許可してくださったのです。
そこに不安など、微塵もあるはずがありません。」
「ではどうして試練にかかる時間の話などをしたのです?」
「あえて制限時間を設けることで、私を含めた全員が、最初から試練に全力で冷静に挑めるようにするためです。」
「でも最初から制限時間があるとわかっていると、普通は焦ってしまうものですよ?」
「そうかもしれませんが、時間が無制限だと思って挑むよりは、逆に緊張感があっていい結果になると思います。」
「なるほど、そういった考えもありますね。」
「それに2人にとっては緊張感があった方がいつもと違う状況になり、より一層力を発揮できるのではないかと思います。
基本的な実力も高いですが、型にはまれば2人は予想を大きく超えた力を発揮しますからね。」
「2人のことを認めているのですね。」
「当然です。」
「どうやら心配はいらないようですね。
シェイラ、貴女たちならきっと期限内に戻ってこれるでしょう。
私たちはそれを信じて、この娘たちと共に、貴女たちが無事に返ってくるのを待っています。」
「はい、すぐに試練をクリアして戻ってきます。
私としても、妹たちの出産には立ち会いたいですからね。」
「こちらは心配する必要はありません。
シルフィナさんもいますし、マコト様が何も対策をしていないわけがありません。
だからシェイラ、貴女は試練をクリアすることだけを考えなさい。
結果としてそれが最善となるはずです。」
「はい、母様。」
シェイラは表面上平静なままであったが、その目はミザリィやナタリィと同じく、やる気に満ち溢れていたのだった。




