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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第18章 聖域の管理者と穢れの守護者
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怪の試練1

エナンが商王となり、既に2ヶ月が過ぎていた。


連日忙しい毎日を送っており、補佐となったカーラに助けられながら、何とか日々の政務をこなしている状況だ。


ただそれでは政務にかかりっきりになってしまい、他のことがおろそかになってしまう。


そこで心配したハーレムメンバーたちが、毎日2人ずつ交代で手伝いに行っているようだ。


おかげでエナンもカーラも時間に余裕ができており、他のことにも手が回るようになった。


そして手伝いに行っている者には相応の報酬が渡されている。


そのため互いに持ちつ持たれつとなっており、良好な関係を築いていた。


しかもこの報酬が相当人気なようで、一部のハーレムメンバーたちは率先して手伝いに参加している。


だがマコトが報酬の内容を聞いても、何故か誰もが口を閉ざしていた。


マコトも無理に聞こうとはしないものの、どんな魅力的な報酬が渡されているのか少しだけ気になっているようだ。


そんな日々が送られている間にも、商国を含めた各国では大きな変化が起こっていた。


この2ヶ月での一番大きな変化は、やはり新たな交通網ができたことだろう。


中でも営業が開始された鉄道と飛行船は、全世界注目の的である。


利用料金がかかるのに、無料で使える地上に作った整備された道よりも利用者が多いくらいだ。


これまでは南北間を行き来する道は、商国を縦断する1本の道しかなかった。


それが商国を経由しなくても南北間の行き来ができるようになったのだから当然の反応だろう。


更には鉄道と飛行船によって大幅に時間と費用が軽減されるようになったため、連日乗客は満員である。


そのため運用開始から1週間後には、早くも鉄道と飛行船の増備が決定し、1ヶ月後には南北間の新たな交通網と共に運用が開始された。


これにより南北間の交流は盛んになり、気軽に行き来する人々が増えたことで、より一層の経済効果を生む結果につながったのだ。


今後は他にも国々を結ぶ新たな線路の敷設や飛行経路も計画されており、今後も各国の発展は続いていくだろう。


また今回鉄道や飛行船を含む数々の事業を商国に誘致したのは、全てエナンの功績となっている。


それを後押ししたのが、バカ王子やその実家が主導して行った数々の悪行が公開されたことである。


合わせて各国の代表からもエナンを支持する声明が出された影響も大きい。


そのため商国でのエナンの支持率は相当高い。


だがそんなエナンに反発する者たちも少数ながらいる。


それは、これまで裏であくどい商売を行い、甘い汁を吸っていた者たちだ。


そう言った連中は、バカ王子が商王になることを密かに望んでいた。


もしそうなっていれば、引き続きあくどい商売で儲けることができただろう。


それが、エナンが商王になったことで一変してしまった。


その原因の1つとして、バカ王子の実家の連中が捕縛されて罪に問われてしまい、家も取り潰されてしまったことだ。


これによって一部の商会では、このままでは自分たちもバカ王子の実家と同じ運命を辿るかもしれない、と考えたのだろう。


エナンを商王から引きずり下ろすために、必死になって非難する材料をでっち上げていったのだ。


しかしこれこそがエナンの狙いであった。


すぐにマコトの協力で悪事の証拠を集めると、逆にその者たちを糾弾したのだ。


これによって商国からは、あくどい商売を行っていたほとんどの商人たちが一掃されることとなる。


だが一部では生き残った者たちがいた。


何故なら、真っ当な商売だけを行うように心を入れ替えたからだ。


そういった者たちについては、エナンも過去の悪行は不問とした。


ただし完全に許したわけではない。


代わりに今後10年間は国へ納める税金に、過去の罪滅ぼし料として追加で課税されることになっている。


この分の税金は全て、未来の商人たちを育成するための資金に充てられる。


そうすることで少しでもよからぬことを考えないよう、しっかりと教育していこうということだ。


それでも道を外れる者はいるだろう。


しかし少しでも減らせるのであれば、商国はより一層発展していくことになるだろう。




そんな中、その日マコトはどこにいるのかというと、ククリを連れてある場所へとやってきていた。


それは夢幻の森であった。


この2ヶ月間、ククリはシルフィナの地獄の猛特訓に耐えきった。


おかげで予定よりも大幅に早く、怪精神の試練に挑戦することができるだけの実力を身に付けることができたのだ。


ククリは前回挑戦したミザリィ、ナタリィ、シェイラと同様に、マコトの案内で巨大な門をくぐり、夢幻の森へと入って行った。


そして前回と同様に森の奥にあった門をくぐり抜けると、その先は少しだけ違っていた。


ルフェがいないのは当然として、前回あったはずの部屋が無く、目の前には湖と、その中心にそびえ立つ巨大な木、精命の樹があったのだ。


そこへ目的の人物が2人現れた。


1人は美人で背が高い大人の女性の姿をしており、年齢は25歳くらいで、地面にまで届きそうなほど長い漆黒の髪である。


もう1人は、15歳くらいの幼い容姿で、以前のククリと同じ様な、獣人の姿をしている。


すぐにククリは逸る気持ちを抑えながら、まずは大人の女性、怪精神に向かって挨拶をした。


「本日は試練を許可していただきありがとうございます。」


挨拶をされた怪精神は、無表情のまま答えた。


「・・・まずは貴女の名を聞こうか?」


「名乗ることをお許しいただきありがとうございます。

私の名は、ククリ、と申します。

以後お見知りおきを。」


「よかろう。

既に知っているであろうが、私は怪精神だ。

以後よろしく頼む。」


「はい、よろしくお願いいたします。」


ククリは最初の難関を突破し、内心安堵していた。


そんな心の奥を見透かしたのか、怪精神がククリに対する認識を改める発言をした。


「しかし僅か2ヶ月ほどで、怪の試練の資格保有者、の称号を得るとはな。

それだけ貴女、ククリが本気だということは認め、素直に称賛しよう。」


「ありがとうございます。

お約束通り自分を徹底的に鍛えなおしてきましたので、こうしてタマモを迎えに来た次第にございます。」


「そうであろうな。

だが試練をクリアするまでは、私はククリ自身を絶対に認めぬ。

その意味はわかっているな?」


怪精神が厳しい言葉を発したので、ククリは少し緩んだ心を引き締めなおした。


「はい、もちろんでございます。

今の私が真にタマモの契約者として相応しいか、どうかご存分にお試しください。」


そんなククリの姿に好印象を抱いた怪精神は、すぐに本題へと入った。


「その心意気や良し。

では早速だが怪の試練についてだ。

内容は単純、私と怪精姫、2人を同時に相手し、ククリの力で屈服させてみよ。

力の制限は無し、武器の使用も自由だ。

ただし、1つだけククリには勝利条件を付けさせてもらう。

それは、私と怪精姫を同じ攻撃で同時に倒すことだ。

つまり繰り出した攻撃の一撃で私たち2人を同時に倒さなければいけないことになる。

私たちのどちらかが先に倒されても、当然ククリが私たちに倒されても、そこで試練は失敗とする。

何か質問はあるか?」


説明を聞き終えたククリは、迷わず即答した。


「いいえ、問題ございません。」


ククリの答えに内心満足すると、怪精神は試練の開始を宣言した。


「では試練をはじめるとしよう。

いつでもかかってくるがよい。」


「ではお言葉に甘えまして・・・参ります!」


ククリは怪神力だけを全力で発動すると、まずは怪精神へと向かって行き、顔に右拳で一撃を放った。


その拳を、怪精神は余裕で受け止めてみせる。


「いい一撃だ。

だが、まだまだ温い!」


逆に怪精神は、ククリの右脇腹に向けて蹴りを放ってきた。


それをククリは右足で防ぐ。


どうやら互いの力は拮抗しているようだ。


しかし相手は1人ではない。


すぐに怪精神が指示を出す。


「今だ!」


その声が発せられるよりも先に、既に怪精姫、タマモが動いていた。


ククリの左後方から急接近し、無防備な背中に向かって蹴りを放ってきたのだ。


「はっ!」


確実に決まった、そう怪精神とタマモは確信していた。


しかしククリは少しも慌てず、その蹴りを、本来ないはずのもので受け止める。


それは手でも足でもない。


ではどうやって受け止めたのかというと、それは尻尾であった。


いつの間にかククリには尻尾が1本生えており、それを使ってタマモの蹴りを防いでみせたのだ。


だがそれだけでは終わらない。


ククリは更に2本の尻尾を生やして、それぞれ1本ずつを使って怪精神とタマモに攻撃を放った。


すぐに2人は尻尾の攻撃を避けると、ククリから離れて距離を取った。


「まずは怪精姫の補助無しで、以前と同じ3本は出せるようだな。

だがそれでは全く足りない。

当然その先があるのだろうな。」


「必要でしたら。」


「言うようになったものだ。

ならば、これでどうだ。

怪精姫!」


「はいっ!」


怪精神がタマモに指示を出すと、2人にも複数の尻尾が生えた。


怪精神は4本、タマモは2本だ。


更に2人は、尻尾に怪精を宿らせた。


「餓者髑髏!雪女!火車!八咫烏!・・・憑依変化!」


「鎌鼬!雷獣!・・・憑依変化!」


すると、怪精神は右手に1本の白い冷気を放つ刀を持って背中に炎の翼を生やし、タマモは全身に吹き荒れる風と雷を纏っていた。


ククリは2人が口にした名前を聞き、その思惑に気付いた。


「なるほど、そう来ましたか。」


「気付いたようだな。

だがもう遅い。

そうだ、私たちが宿した怪精は、全てククリが宿らせることができる怪精だ。

その意味がわかるな?」


「同じ怪精を同時に宿すことはできない。

つまり私は、貴女方が宿している怪精以外を宿すしかない、ということです。」


そこへ更にタマモが補足した。


「だけどククリが宿せる怪精は、全て私たちが先に宿してる。

私が知る限り、ククリには他に宿せる怪精がいない。

この世界に力を宿した怪精は、現在確認されている6種類だけしか存在しないのだから。

それは他の怪精がこの場に存在しないことからも断言できる。

これでククリは完全に手詰まり。

もう勝ち目は無い。」


少し残念そうな表情をしながら、タマモはククリに自分たちの勝利宣言をした。


だがククリは余裕の表情を崩さない。


「さすがはタマモです。

しかしその情報は些か古いですね。」


「えっ?」


「仕方ありません。

本当はここまで見せるつもりは無かったのですが、さすがは怪精神とタマモといったところでしょうか。

それではとくとご覧ください、これが今の私が出せる全力です!」


ククリはそう言うと、新たに魔神力を発動して、それを怪神力に食わせた。


その瞬間、ククリの怪神力が爆発的に増幅された。


凄まじい勢いで力の奔流がククリからあふれ出し、その余波だけで今にも怪精神とタマモは吹き飛ばされそうだ。


「なっ、何だ、この力は!」


「すっ、すごい・・・」


驚く2人だったが、これで終わりではなかった。


「・・・八尾狐・・・憑依融合。」


ククリが静かに名を呼ぶと、8本の尻尾を持った狐が身体に宿り、ククリの尻尾の本数が同じ8本になる。


更に続けて、ククリはもう1つの名を呼ぶ。


「・・・覚・・・憑依変化。」


今度はククリの尻尾が1本光ると、光だけが身体の中へと吸い込まれていった。


そのため尻尾の本数は変わらず8本のままだ。


だがその僅かな隙を見逃す2人ではなかった。


最初はククリの圧倒的な力に怯んだものの、すぐに2人は憑依変化の隙を突いてきた。


動きが止まったククリの左右から同時に、怪精神は刀で首を、タマモは蹴りで膝を、それぞれ攻撃したのだ。


だが間一髪、ククリは2人の攻撃を紙一重でかわした。


そのまま距離を取るかと思われたが、何故かククリは逆に距離を縮めて自ら2人の間合いに入ってきたのだ。


ククリの思惑がわからない2人であったが、そんなことには構わず、そこから怒涛の攻撃を繰り出した。


しかしククリは2人の攻撃を難なく紙一重でかわし続けてみせた。


焦る2人は更なる攻撃を放ち続けるが、ククリには一向に当たる気配がない。


しばらく攻撃を続けたが、いつまで経っても状況が変わらないため、怪精神だけが一度距離を取って離れ、タマモにだけ攻撃を任せてみる。


すると怪精神はあることに気付いた。


そしてすぐにタマモへ指示を出す。


「怪精姫、一度離れろ!」


「はっ、はい!」


怪精神の指示に従い、戸惑いながらタマモは一度ククリから離れて距離を取った。


「まさかそのような隠し玉を用意していたとはな。」


「どういうことですか、怪精神様?」


「ククリが宿した怪精、確か、覚、と言ったか、その能力がわかった。」


「どのような能力なのですか?」


「おそらく心を見透かす能力だ。

その証拠に、怪精姫が動く前に攻撃を避ける動作をはじめていた。

あれは相手の考えが事前にわかっていないとできない動きだ。

どうだ、違うか?」


この怪精神の質問に対し、ククリは隠すことなく答える。


「さすがは怪精神様、その通りでございます。

しかしそれだけでは完全な正解とは言えません。

精々半分といったところでございます。」


「であろうな。

となるとやはり鍵は、最初に憑依融合とやらをした、八尾狐、の方だな。

一応聞いておくが、憑依融合とは憑依変化とどう違うのだ?」


「憑依変化はご存知の通り、怪精の能力を借り受けることでございます。

そして憑依融合は、その怪精の能力を憑依変化に上乗せすることでございます。

以前タマモと行っていた際には、尻尾の補充しかできませんでしたが、これが本来の使い方でございます。」


「なるほど・・・ついでに八尾狐とやらの能力も教えてもらえぬか?」


「お戯れを。

さすがに今この場で種明かしをしてしまっては、私には何も得がございません。」


「そうであろうな。

ならば私たちが取れる手段は1つ。

怪精姫、わかっているな?」


「はい、怪精神様!」


「では来い、怪精姫・・・憑依融合!」


怪精神に呼ばれ、タマモは怪精神の身体に融合した。


これによって怪精神の尻尾の数は4本から6本に増え、更に両足には風と雷を纏っていた。


どうやらタマモと憑依変化した怪精も、そのまま怪精神が受け継いだようだ。


「・・・これが憑依融合か・・・悪くない。

ではククリ、決着をつけるぞ。」


「こちらはいつでも。」


「いつまでその余裕が続くか、確かめてやろう!」


そう言い放って、怪精神は20mほどあったククリとの間合いを一瞬で詰めた。


どうやら足に纏った風と雷の力で、瞬発力が格段に上がったらしい。


怪精神はそのままククリの腹部へ目掛けて左拳を突き上げてきた。


一方簡単に懐へと入られてしまったククリはというと、怪精神の拳を難なく避け、逆にがら空きの左脇腹に目掛けて、右拳を突き刺した。


「なっ、何、だと?」


一瞬怪精神の身体が浮かび上がって地面から足が離れると、すかさずククリは流れるような動きで腹部に左足で蹴りを放つ。


「くっ!?」


かわすことができず、まともに蹴りを受けた怪精神の身体は、そのまま後方へと吹き飛ばされる。


しかし意識は失わなかったため、何とか空中で体勢を立て直そうとしたものの、今度は背中へと強い衝撃を受けた。


「ぐはっ!?」


いつの間にか怪精神を追い越して後ろに回り込んだククリが、右足で背中を蹴り上げたのだ。


空中に飛ばされたかと思ったら、すぐに怪精神は上から強い衝撃を受けた。


「がはっ!?」


ここでもククリが先回りしており、回転して勢いをつけた左足の踵落としで、下に向かって叩き落されてしまった。


そして地面に激しく激突して全身を強打すると、その勢いで怪精神の身体からは、先程憑依融合したタマモが飛び出してきた。


しばらく待ったが、2人は地面に倒れたまま一向に動かない。


どうやら2人同時に気を失ったようだ。


これにより勝利条件を満たしたククリは、無事に怪の試練をクリアしたのであった。

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