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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
122/369

訓練初日と幼い相手

朝になり、いつもと変わらず早朝訓練がはじまった。


今日からは、ククリとジェーンも訓練に参加することになっている。


そんな2人が、初日から文句を口にしていた。


その理由の1つが、2人だけ他の皆とは別の訓練内容だったからだ。


当然キリやランたち、実力が上の者たちと同じ訓練を望んだのだが、マコトに却下されてしまった。


しかしそれだけが理由なら、2人もおとなしく引き下がっただろう。


問題なのはもう1つの理由の方だ。


それは、2人の訓練の相手にと選ばれたのが、フブキとユイリィだったことだ。


その選出理由が、今の2人よりも少しだけ強いから、と言われたのを信じられなかったからだ。


まだ子供にしか見えないのに、遥かに長い時間を生きてきた自分たちよりも強いと言われたのだから、2人がそう思うのも無理は無いだろう。


2人は開口一番、文句を口にした。


「こんなチビッ娘共がアタシたちよりも強いだって?

いったい何の冗談だい、マコト!」


「全くです。

私にはマコトさんの意図がわかりません。

お嬢ちゃんたち、悪いことは言いません。

今からでも遅くないですから、私たちの実力に合った方と変わってもらいなさい。」


マコトの言葉を信じず、自分たちを下に見るククリとジェーンに、珍しくフブキがムッとした顔をしながら、マコトに確認してきた。


「むぅっ・・・ねーねー、マコト様。」


「何だ、フブキ?」


「まずは私1人だけで2人の相手をしてもいい?」


「それは構わないが・・・まさかアレをやるつもりか?」


「最初は使わないけど、たぶんそれじゃ終わらないでしょ?

だからその次は使うつもりだけど、駄目?」


可愛くお願いしてくるフブキの姿に、マコトは少し考えてから許可を出した。


「・・・まぁいいだろう。

ただし、やり過ぎるなよ。」


「大丈夫大丈夫、ちゃんと加減するから。」


「やれやれ・・・というわけだからユイリィ、悪いが最初は見学していてくれ。」


「うん、わかったよ、マコトお兄ちゃん。

フブキちゃん、やっちゃえ!」


「任せて、ユイリィちゃん。

じゃぁ2人とも、いつでもかかってきていいよ。」


余裕の表情を浮かべながら、フブキは2人を軽く手招きしている。


しかし2人は、まだ幼いフブキを相手にすることが忍びないのか、それを軽く受け流した。


「アタシたち2人を1人で相手しようなんて、本気かいチビッ娘?

無理するんじゃないよ。」


「止めておきなさい。

今なら聞かなかったことにしてあげます。」


そんな2人を、フブキは軽く挑発した。


「ねーねー、2人とも私にやられるのが、そんなに恥ずかしいの?」


これには2人の表情が険しくなる。


「・・・おいおい、冗談にしちゃぁ、笑えないねぇ。」


「・・・お嬢ちゃん、これが最後です。

今なら引くことを許します。」


だがそれでもまだ我慢できる範囲だったようで、動かずにフブキを軽く威圧するだけに止めていた。


するとフブキは、2人の威圧を軽く受け流しながら、更なる挑発をしてきた。


「言い訳はいいからさ、早くかかってきなよ。

それとも私のことが怖いの?

そうならそうって早く言ってよ。

怖いのは悪いことじゃないけど・・・ぷぷっ・・・まぁしょうがないよね。」


最後に駄目押しで、笑えるのを堪えながら吹き出して見せた。


これにはさすがの2人も我慢の限界を超えてしまったようだ。


「いい度胸だねぇ、チビッ娘!」


「生意気なお嬢ちゃんには、お仕置きが必要のようですね!」


2人は挑発に乗り、一斉にフブキへと襲い掛かる。


それでもこのとき2人はまだ、軽く懲らしめてやろう、程度にしか考えていなかった。


そのため何の力も発動せずに、素の身体能力だけしか使っていない。


だがその考えが間違っていたと、すぐに思い知ることになる。


フブキはまるで狙っていたかのように、まずは襲い掛かってきたククリの方へ向かっていった。


しかしぶつかる直前で僅かに方向転換したので、ククリとすれ違う形になった。


すぐにククリはフブキが通り抜けた方へと振り返ったのだが、その瞬間に異変が起こった。


「くっ!?えっ?・・・」


突然ククリの足に力が入らなくなって踏ん張りがきかなくなり、その場に膝から崩れ落ちてしまったのだ。


何故そのようなことが起こったのかというと、フブキがククリとすれ違ったときに、顎をかすめる高速の一撃を入れたからだ。


そのためククリは軽い脳震盪を起こしてしまい、足に力が入らなくなったのだ。


ククリ本人は全くそのことに気づいておらず、理由がわからないため内心では相当混乱していた。


それはジェーンも同じで、何故ククリが動けなくなったのか訳がわからず、動揺しているのが顔に出ている。


だがそれ以上に、子供に負けるわけにはいかない、という気持ちの方が強かったようだ。


ジェーンは動きを止めずにフブキの背後から覆いかぶさるように襲い掛かかり、まずは拘束するために押し倒そうとした。


「調子に乗りすぎだよ、チビッ娘!」


完全に捉えた、ジェーンも、離れた場所で見ていることしかできなかったククリもそう確信していた。


しかしそこにフブキの姿は既に無く、いつの間にかジェーンの背後に立っていた。


空振りだったと気付いたジェーンは、すぐに振り返ろうとしたのだが、何故か身体が言うことを聞かなかった。


「ちっ!なっ、なんだい!?・・・」


これも先程のククリと同様に、フブキがジェーンに押し倒されそうになった直前、その場から逃げると同時に顎に一撃を入れていたのだ。


そのためジェーンも軽い脳震盪を起こして、身体に力が入らなくなってしまったのだ。


2人が動けなくなったのを確認すると、フブキが自分の勝利を宣言した。


「ふっふっふっ、私の勝ちだね。」


「やったーっ、さすがフブキちゃん!」


「まぁね。

これくらい楽勝だよ。」


勝利を喜ぶフブキとユイリィだったが、その姿にククリとジェーンが触発されたようだ。


まだ脳が揺れている状態だというのに、両足を殴って無理矢理感覚を取り戻すと、フラフラとなんとか立ち上がったのだ。


「まっ、まだ、です!」


「アタシも、戦えるよ!」


誰がどう見ても無理をしているのがわかるが、意地でも負けるわけにはいかないのだろう。


だが強い意志の力で立ってはいるものの、まだ足元はおぼつかない。


そんな2人に、フブキは善意からの警告をした。


「しばらく休めば治るから、まだ無理しない方がいいよ。」


しかし2人は聞く耳を持たなかった。


「心配、無用です!」


「これくらい、何でもないよ!」


2人が一向に引く気配を見せないので、フブキは仕方なく戦いを続けることを受け入れた。


「しょうがないなぁ。

ユイリィちゃん、今度は2人でやっちゃお。」


「うん、任せて、フブキちゃん。」


フブキへの要望が通ると、今度は最初から全力を出すため、ククリとジェーンは自身の力を解放した。


「今度は、油断しません!」


「最初から、全力で行くよ!」


それぞれククリは怪神力を発動して1本だけ尻尾が生えた姿に、ジェーンは巨神力を発動して身体が10倍の大きさになった。


更にククリは尻尾に鎌鼬の力を宿して吸収し、全身に風を纏って全方位に防壁を展開している。


しかし今度はすぐに動かず、フブキとユイリィの出方を待っていた。


どうやら先程の動きを見て、フブキの最大の長所が速度だと思ったようで、まずは動くのを待ち、防御に徹してから隙を突こうと考えたようだ。


だがすぐにそれが間違いだったと気付かされる。


フブキとユイリィは胸の前で合掌すると、お腹の辺りに力を集中させてから一言気合を入れた。


「・・・はっ!(×2)」


すると2人の身体に変化が起こる。


突然身長が伸び、それに合わせて手足も伸び、更には女性らしく胸やお尻が大きく膨らんでいたのだ。


その姿はまるで10年ほど成長したようにも見え、2人はとても魅力的な大人の色気をかもし出していた。


これにはククリとジェーンも驚くしかなかった。


「はぁ!?(×2)」


そんな2人に構わず、フブキとユイリィはお互いの状況を確認し合っていた。


「ユイリィちゃん、どれくらい大丈夫?」


「私は10分くらいかな。

フブキちゃんはどれくらい?」


「私は15分くらいだよ。

だけど5分もかからないでしょ。」


「うん、そうだね。」


「じゃぁ全力で手加減するよ!」


「うん、私も頑張って、全力で手加減するよ!」


「せーのっ!はっ!(×2)」


2人は互いに掛け声をかけてタイミングを合わせると、まずは全力で力を解放した。


その力は凄まじく、2人からあふれ出る奔流だけで、ククリとジェーンが後退ってしまうほどだ。


「なっ、何ですか、この力は!」


「はははっ、信じられないけど、すごいねぇ!」


「これは認めるしかないようですね。

ですが私は、あの娘のためにも、最初から躓くわけにはいかないのです!」


「アタシも負けるのは嫌いだからねぇ。

ここは、押し通させてもらうよ!」


ククリとジェーンは力の奔流に逆らって、今出せる全力の攻撃を放った。


それを見てから、フブキとユイリィがゆっくりとした動作で動き出す。


しかし次の瞬間には、ユイリィはククリの、フブキはジェーンの懐に入り込んでおり、その拳が鳩尾に突き刺さっていた。


「ぐふっ!?」

「がはっ!?」


強烈な一撃をもらい、2人はそのままうずくまってしまった。


更にククリの纏っていた風は消え、ジェーンが元の大きさに戻ったことで、発動していた力が解除されてしまったことがわかる。


これ以上の戦闘継続が無理であることは一目瞭然だ。


2人に反撃する余裕がないことを確認すると、フブキとユイリィは緊張を解いた。


「よしっ、勝利!」


「うんっ、勝利だね!」


2人は自分たちの勝ちを確信してはしゃいでいた。


すると、突然空気が抜けたかのように、2人の身体が元の状態に戻った。


「あれっ?戻っちゃった?」


「うん、私も。

まだ時間は大丈夫なはずなのに、どうしてだろう?」


「うーん・・・(×2)」


何が起こったのかわからずに悩んでいると、2人のお腹から可愛い音が聞こえてきた。


『・・・ぐーっ・・・(×2)』


そして2人揃って同じ言葉を口にする。


「・・・お腹すいた・・・(×2)」


どうやら2人とも、満腹時に変化していられる時間と勘違いしていたようだ。


今は早朝訓練で、起きてから何も食べていない状態だったため、予想よりも早く変化が解除されてしまったらしい。


また模擬戦とはいえ、戦いの最中に使用したことで、いつもより消耗が激しかったのだろう。


今回2人が使ったのは、身体活性術の次の段階、身魂活性術だ。


身体だけに作用する身体活性術とは違い、身魂活性術は魂にも作用する。


そのため身体能力だけでなく、魂に宿る力も歳相応に成長して強化されるのだ。


2人の場合は約10年後の成長した身体と力を、一時的に再現することが可能となるわけだ。


ただこれは実際に成長した未来の姿かというと、確実に同じとは限らない。


あくまで今現在の2人の状態と、想像した理想の未来が混ぜ合わさった姿であって、今後どう変化するかはまだわからない。


そんな2人に、マコトが声をかけてきた。


「2人とも、良くやったな。

だいぶ慣れてはきたみたいだが、燃費の悪さを改善しないことには、まだまだ実戦向きではないな。

とりあえず今はこれでも食べて、そのお腹の音を何とかするんだな。」


そう言ってマコトは、2人に巨大なおにぎりを渡した。


「ありがとう、マコト様っ!」


「ありがとう、マコトお兄ちゃん!」


マコトに感謝を伝えると、そのまま2人は受け取ったおにぎりを黙々と食べはじめた。


「はむっ、もぐもぐ・・・はむっ、もぐもぐ・・・はむっ、もぐもぐ・・・(×2)」


夢中になっておにぎりを頬張る2人の姿にほっこりしながら、マコトはククリとジェーンを神法で回復する。


動けるようになった2人は、先程までとは打って変わって、歳相応の幼い面を見せるフブキとユイリィに戸惑いを隠せなかった。


「文句の付けようが無い完敗でしたが、この光景を見ていると、同一人物とは思えませんね。」


「まったくだよ。

いったい何なんだい、あの2人は。」


「しかしマコトさんも意地が悪いですね。

私たちよりも少し強いと言いながら、遥かに格上の相手を用意してきたのですから。」


「確かにねぇ。

見た目があれだから、アタシもマコトに騙されたよ。」


そんな2人の考えを、マコトは真っ向から否定した。


「別に俺は嘘をついたわけじゃないぞ。

素の身体能力や発動した力はフブキとユイリィの方が僅かに上だが、そこまで大きな差があるわけじゃない。

あれだけの差がハッキリと出たのは、それらを使いこなすための技術が原因だ。」


「技術、ですか?」


「たかが技術の差で、あそこまで一方的になっちまうもんかねぇ。」


「技術というのは重要だぞ。

一言で技術と言っても、様々な技術がある。

例えば、身体を自分の思い通りに動かしたり、力を効率よく使うためにも、相応の技術が必要だからな。

今回は互いの技術力の差が大きく出た結果だった、というわけだ。」


「マコトさんが言いたいことはわかります。

しかしこれでも私たちは、長い時間を研鑽に費やしてきました。

その私たちの技術力が、そこまで劣るとはどうしても思えません。」


「アタシもククリと同じ意見だよ。

それにそれじゃぁまるで、これまでのアタシたちの努力が無駄だったみたいじゃないか。」


「全部が全部無駄というわけじゃない。

だが2人の技術が未熟であることは事実だ。

だが1番の原因は他にある。

それは2人とも力の使い方が間違っていることだ。」


これには2人も反発してきた。


「未熟であることは認めますが、力の使い方が間違っているというのは聞き捨てなりません!」


「アタシたちの何が間違ってるって言うんだい!」


少し興奮気味の2人に、マコトは落ちついた口調で1つずつ説明していった。


「まずククリだが、以前はタマモの補助を得て3本の尻尾、つまりは同時に3つまで怪精の力を行使することができた。

これはタマモが、怪神力の増幅と制御を補助していたからだ。

今回尻尾が1本に減ったのは、怪神力の力不足と、その制御が未熟なことが原因だ。

もし制御力だけでも高ければ、今のククリの怪神力でも、尻尾を3本までなら生やすことできるはずだ。

しかし問題は別にある。

今回の敗因の最大の原因は、宿した怪精の力の使い方を間違ったことだ。」


「力の使い方を間違った?

でしたらどうすればよかったのですか!」


「今回宿した怪精は鎌鼬だったが、ククリは風を全身に纏っていた。

ここまでは問題無い。

問題なのはその風の使い方だ。

ククリは纏った風を全方位に展開し、防御壁代わりに使っていたな?」


「はい、どこから攻撃されても対応できるようにと思いましたので。」


「並の攻撃なら、それで十分対処可能だろう。

だが強力な一撃を放つことができる相手に対しては、あの程度の風では防御壁としてはほとんど役に立たない。

もし防御壁として使うなら、もっと分厚くして防御力を高めないと意味がない。」


「しかしそれでは1方向にしか対応できません。

相手の動きの方が速いのですから、後の先を取るには全ての方向を警戒する必要があります。」


「それなら全方位を覆う防御壁ではなく、不可視の風の刃を全方位に配置して、相手が近づけないようにする方が効率的だ。」


「・・・確かに全方位を防御壁で覆うよりも、力の制御は簡単そうですね。」


「もしくは部分的に風を纏えば、自身の速度を上げることも、攻撃の威力を上げることも可能だ。

そうしていれば、もう少しいい勝負ができたかもしれないな。

更にこれらの切り替えが高速に行えれば、戦術の幅も広がる。

まぁ今のククリの制御力では、途中で風を纏う場所を切り替えるのは相当難しいがな。」


「なるほど・・・」


ククリがマコトの話に納得していると、今度はジェーンが意見を求めてきた。


「じゃぁアタシはどうすればよかったんだい?」


「ジェーンは根本的な部分が間違っている。」


「どういうことだい?」


「通常巨人族は、他の種族と比べて3~10倍ほどの体格をしている。

しかし巨力の使い手は、巨人族であるにもかかわらず、その体格は他の種族よりも少しだけ大柄なくらいだ。

これはジェーンと、先代の巨神である母親がそうであったことからもわかる。

ジェーンは、その理由がわかるか?」


「理由って言われてもねぇ・・・身体を大きくするエネルギーが巨力になっているから、とかかい?」


「概ねその通りだ。

だから巨神力を発動すると、身体が巨大化してしまうんだ。」


「そうなんだねぇ。

でもそれはさっきアタシがやったことだよねぇ?

それのどこが間違ってるって言うんだい?」


「大間違いだ。

巨神力はその力の性質上、身体を巨大化させてしてしまう。

確かに巨大な身体は、それだけで高い攻撃力を誇る。

しかし巨大な身体では、動きが遅くなり、相手にとってはいい的だ。

更に巨大化に力を割いてしまい、巨神力自体の強さが落ちしまうんだ。」


「確かに身体が巨大化すると、攻撃の威力が上がって範囲も広くなるけど、その分相手が小さく感じるから、どうしても大雑把になっちまう。

だから素早い相手は正直苦手なんだよねぇ。

でもそれは巨人族だったら誰もが同じだよ。

マコトはどうするのが正解だって言うんだい?」


「簡単だ。

巨大化する利点よりも欠点の方が大きいなら、巨大化しなければいい。」


「そんなことが可能なのかい!」


「そもそも巨力の持ち主が、巨人族でありながらどうして身体が小さいのかを考えてみろ。

巨力を真に使いこなすために必要だからだ。

巨力は身体を大きくすることはできるが、小さくすることはできない。

つまり小さい身体でこそ、巨神力は真の力を発揮できるというわけだ。

巨神力を正しく制御することができれば、身体の大きさを変えずに発動することが可能になる。

そうすることで身体の密度が高まり、本来巨大化することで得られる、筋力量、骨量、重量などを、元の大きさの身体で使うことができるようになるんだ。

しかもそれら全てを自分の意思で調整することができ、部分的に変えることも可能だ。」


「じゃぁ右手の筋力量と重量だけを上げて、元の大きさで高い攻撃力を得ることも可能なのかい?」


「バランスの問題なども考える必要があるが、状況に合わせてジェーンの意思で変えることは可能だ。」

制御さえできれば、同時に足の筋力量だけを上げることで素早い動きを得ることも可能だ。」


「そいつはすごいねぇ。

どうすればそんなことができるようになるんだい?」


「私もそれが聞きたいです。

どうすれば早くタマモと再会できるのかを。」


2人は真剣な表情でマコトの答えを待っている。


だがマコトの答えは決まっていた。


「当然訓練あるのみだ。

まずは基礎体力の向上と、力を使いこなせるようにするために、制御能力を高める基礎訓練だ。

更にそれらを使いこなすための技術の修得や、怪神力や巨神力を強化する技術も修得する必要がある。

そこまで覚えて、今のキリやランたちと互角になれる。」


やることがたくさんあることを知っても、2人のやる気が削がれることは無かった。


「どうやら先は長そうです。

しかし諦めるわけにはいきません。」


「アタシも強くなったと思ってたけど、まだまだだったんだねぇ。

だけど今以上に強くなれることがわかってるなら、やる気が出てきたよ。

一応聞いておくけど、アタシたちがそこまで身に付けるのに、普通はどれくらいかかりそうなんだい?」


ジェーンはふと思いついて聞いてみたのだが、マコトの答えを聞いてククリは愕然とした。


「そうだなぁ・・・普通に訓練すれば20年くらいはかかるだろうな。」


「20年・・・そんなにですか・・・」


「だけど、今まで何万年って生きてきたことを考えれば、20年くらいどうってことないさね。」


「それは、そうですが・・・」


ククリがあまりにも落ち込んだままなので、ジェーンはマコトへの質問を変えてみる。


「ちなみに普通の訓練で20年かかるんだったら、普通じゃない訓練ならその期間をもっと短くすることもできるのかい?」


「もちろんできるぞ。」


このマコトの答えにククリが食いついてきた。


「本当ですか!

最短でどれくらいまで縮められるのですか!」


「最短か・・・今なら90日くらいまでは縮められると思うぞ。」


これにはククリもジェーンも驚くしかなかった。


「えっ?・・・えーっ!」


「90日って・・・これまたずいぶんと短くなるもんだねぇ。」


「俺の方でも日々試行錯誤を繰り返しているからな。

その分訓練も効率化が進んでいるんだ。

だがその分、訓練内容は相当きつくなっているぞ。

それこそ、これまでキリやランたちが受けてきた訓練よりもだ。」


「・・・その訓練方法なら、本当に90日でタマモと再会できるのですか?」


「言い方が悪かったな。

一番過酷な訓練方法に最後まで付いてくることができれば、90日以内で怪精神の試練を受けることが可能になる。」


「90日以内、ということは、もっと短くすることも可能なのですね!」


「ああ、可能だ。

だがそれは全て、ククリ本人にかかっている。

それだけは忘れないでくれ。」


「・・・いいでしょう、その訓練、最後まで乗り切ってみせます!

ジェーン、貴女はどうしますか?

これは私の問題ですから、貴女まで無理に付き合う必要はありませんよ。」


「何言ってんだい、ククリ。

ここまで来たら一蓮托生、アタシも最後までアンタに付き合うよ。

だからアタシも、その一番過酷っていう訓練で頼むよ、マコト。」


「ジェーン・・・ありがとう。」


「礼なんかいらないよ。

アタシだけ置いてかれるのも癪だしね。

だからこれはアタシの都合だ。

ククリが気にすることなんて何も無いよ。」


「わかりました・・・という訳ですので、私たち2人とも、その一番過酷な訓練を受けさせてください。」


「本当にいいんだな?」


「はい。」


「もちろんだよ。」


2人の真剣な目は、それ以外の選択肢を選ばないと語っていた。


そのためマコトも覚悟を決め、ある人物へと託した。


「わかった。

ということだ、シルフィナ。

しばらくの間、2人の訓練は任せるぞ。」


するとすぐにどこからともなくシルフィナが現れ、マコトの指示を了承する。


「かしこまりました、マコト様。」


「っ!?(×2)」


突然現れたシルフィナに驚きながらも、2人はその内容の方が気になってしまい、すぐにマコトに確認してきた。


「ちょっと待ってください!

マコトさんが私たちの指導をしてくれるのではないのですか?」


「アタシもマコトに指導してもらいたいんだけどねぇ。

だってアンタがここで一番強いんだろ?」


「俺もいろいろと忙しいからな。

毎日2人に付きっきりで訓練を見てやることは難しい。

ただ俺にしかできない訓練方法もあるから、ときどきは2人の訓練に参加するつもりだ。

それに俺だと女性相手には非情になり切れないからな。

だがシルフィナなら、その辺りのことは心配いらない。

他の皆もシルフィナに鍛えられたからこそ、短期間で今の強さを身に付けることができたんだ。」


マコトの説明を聞き、2人はとりあえず納得してくれたようだ。


「そういうことでしたら・・・シルフィナさん、ご指導よろしくお願いします。」


「アタシもよろしく頼むよ、シルフィナ。」


シルフィナは気にした様子もなく、いつも通り丁寧に返してきた。


「はい、お任せください。

これから厳しく鍛えますので、お2人とも覚悟してください。」


「望むところです。」


「望むところだよ。」


「ではシルフィナ、2人のことは頼むぞ。」


「はい、こちらはお任せください。

マコト様、1つだけお願いがあります。」


「何だ?」


「このままフブキさんとユイリィさんをお借りしてもよろしいですか?」


「まぁたまにはいいだろう。

2人とも、それを食べ終わったらシルフィナを手伝ってやってくれ。」


マコトが声をかけると、フブキとユイリィは、一瞬だけ食べる手を止めて返事をした。


「・・・もぐもぐ、はーい・・・はむっ、もぐもぐ・・・」


「・・・もぐもぐ、うんっ・・・はむっ、もぐもぐ・・・」


すぐにまだ半分以上残っているおにぎりにかぶりつき、黙々と食べるのを再開した。


「じゃぁ俺は他の準備があるから、後は任せたぞ、シルフィナ。」


「はい、いってらっしゃいませ、マコト様。」


「ああ、行ってくる。」


マコトはそれだけ言い残すと、ゲートを開いて何処かへと行ってしまった。


ゲートが閉じるのを見届けてから、シルフィナは2人に向き直り、早速訓練をはじめることにした。


「それではククリさん、ジェーンさん、まずは基礎訓練からはじめましょう。」


「はい、お願いします!」


「やってやるよ!」


シルフィナは気合十分な2人の返事に満足すると、張り切って訓練内容を伝えることにした。


「では・・・」


こうしてシルフィナによる、ククリとジェーンの過酷な訓練がはじまった。


だがこのとき2人はまだ知らなかった。


この後に待っているのが、毎回死を覚悟するほどの過酷な訓練であることを。


そのときの光景を、おにぎりを食べながら呑気に見ていたフブキとユイリィは後にこう語る。


あれは訓練ではなく拷問のようであり、それを2人が生き残ったのはまさに奇跡だったと。


それだけシルフィナが行った2人への訓練は常軌を逸していたということだろう。


それでもククリとジェーンは何も文句を言わず、ただひたすら訓練に没頭し、無事に最初の早朝訓練を終えることができた。


その後温泉で汗を流して一息ついたのも束の間、午後には再び訓練があることを思い出し、自分たちの選択が失敗したかもと、少しだけ、ほんの少しだけ、後悔したのであった。

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