試練の条件2
シェイラがそう思っていると、そこへアリアが頼みごとをしてきた。
「そこで相談なのですが、シェイラ、その下着、後で私にも貸してもらえませんか?」
それを聞いたシェイラは、すぐにアリアが何をするつもりなのかを察して、マコトへと確認をしてきた。
「・・・マコト様、母様にこの下着を貸しても大丈夫なのでしょうか?」
するとマコトからは、あっさりと許可が下りた。
「別に構わないし問題無いぞ。」
そのマコトの答えを聞いて、アリアがシェイラへの圧を強めてきた。
「ほらっ、マコト様もこう仰っているのですから、別に構わないわねっ?ねっ?」
内心面倒だと思いながらも、、断ったら断ったで更に面倒なことになると思い、シェイラは渋々了承した。
「・・・まぁマコト様もこう仰っていることですし、私は構いませんが・・・」
シェイラが了承してくれたので、アリアは嬉しそうにしながら念を押してきた。
「言質は取りましたよ、シェイラ!
後で嫌だと言っても遅いですからね!」
「・・・言いませんから、安心してください。」
シェイラが微妙な表情をしていると、マコトが注意点を口にした。
「ただアリアが身に着けると、確実に副作用の影響が出るぞ。」
マコトとしては万が一のことが無いとも限らないので、あえて注意したのだが、その心配はいらないようだ。
「マコト様の前でしか身につけませんから、何も問題はありません!」
「それならいいが・・・」
「・・・まぁ母様の場合は、身に着けても着けなくても、別に変らないと思いますが・・・」
ボソッと本音を口にしたシェイラだったが、どうやらアリアには聞こえていたらしい。
「そんなことはわかりません!
それに何事も経験です!」
自信満々にそんなことを口にしていたアリアの姿に、シェイラは呆れながらも、1点だけ注意を付け加えた。
「はぁ・・・もう好きにしてください・・・ただし出産後ですよ!
今は大事な時期なのですから、そこは自重してください!」
「もちろんわかっています。
シェイラ、貴女は私を何だと思っているのですか?」
この際だからと、アリアは娘にどう思われているのか聞いてみようなどと考えたらしいが、それに対してシェイラは曖昧な答えを返した。
「それは・・・これまで私が見てきた母様の姿そのものだと思っていますよ。
この言葉の意味をどう捉えるかは、母様の判断にお任せします。」
そんなシェイラの意図に気づいたアリアだったが、その場は追及などせずに、おとなしく言葉のまま受け取った。
「上手く逃げましたね・・・まぁいいでしょう。
今回はそういうことにしておきましょう。」
アリアは娘の成長を喜びつつも、本当はシェイラが自分のことをどう思っていたか気づいていた。
実際にシェイラはアリアのことを、第一優先はマコトのことで、そのためならどんなことでもする、と思っている。
だが今この場でそれを言ってしまっては、余計な時間を取られて面倒なことになると考えたようで、曖昧な表現で答えをはぐらかしていた。
しかし別に間違ったことでもないので、アリアは特に何も追及することは無かったのだ。
そうとは知らず、シェイラはそのアリアの言葉には触れず、マコトへの質問を続けた。
「・・・ところでマコト様、私のことはわかりましたが、ミザリィとナタリィは、いつ裏の条件をクリアしたのでしょうか?」
マコトもそのシェイラの意図を察して、質問に答えた。
「2人は俺の弟子になったとき、既に裏の条件をクリアしていた。」
するとミザリィとナタリィが、自分たちの服をはだけながら話に入ってきた。
「それってもしかして、母様にもらったこれのこと?」
「この服がそう?」
「そうだ。
それぞれ、精霊の衣、妖精の肌着、と言って、精霊と妖精の力が宿っている。
そして霊力と妖力の継承者が身に着けていることが裏の条件だ。」
「もしかして母様は知ってたの?」
「ネーナさんも?」
さすがにここまで話が出てしまったので隠す必要は無いと思ったらしく、ミーナとネーナは正直に答えた。
「・・・知ってたわ。」
「私もよ。」
「でも私たちは、真の意味でそれを使いこなすことができなかったのよ。」
「私たちの血筋には、ある伝承があったの。
それは、過去に霊神と妖神と呼ばれる存在がいて、2人は双子の姉妹だった。
2人はその服を、それぞれ精霊と妖精からもらったと伝えられているわ。
だから双子が生まれると、次の霊神と妖神になれることを願って受け継がせるのよ。」
「私たち2人もその服を受け継いだけど、結局は意味がわからず、何も起きなかったわ。
後でマコトに聞いた話だけど、私とネーナも2人が生まれる前までは継承者だったみたいなの。
でもこれまで私たちを含めて、霊神と妖神以外にその名で呼ばれる者は誰も現れなかったわ。」
「だけど2人がマコトに弟子入りすることになって、ずっと迷ってたミーナ姉様が決心したのよ。
あのときの2人なら、精霊の衣と妖精の肌着を受け継がせても問題無いだろう、ってね。
マコトが保証したというのもあるけど、ティリアさんとサラに負けたことで2人の意識が変わったから、というのがやっぱり大きいわ。」
すると2人の話を聞いて、ミザリィが軽く文句を口にした。
「だったら最初からそう言ってくれればいいのに。
そうすればもっと早く条件をクリアできたかもしれなかったじゃん!」
そんなミザリィに、ミーナが理由を口にした。
「最初に霊神や妖神のことを話したら、貴女たちのことだから基礎を疎かにして、継承者としての力ばっかり訓練しようとするでしょ?
だから何も教えずに、マコトに全部任せたのよ。」
ミーナの正論に、ナタリィは何も言い返せなかった。
「・・・反論できない。」
それによって娘2人が少し落ち込んでしまったので、ミーナはやれやれといった表情で、今度は逆に褒めて持ち上げた。
「だけどこんな短期間で試練を受けられるところまでこれたんだから、結果として何も問題無いはずよ。
さすがは私の娘たちね。」
結果的に血筋の中では初めて試練にこぎつけることができたので、2人はあっさりとそのミーナの言葉を受け入れていた。
「・・・それもそっか。」
「うん、終わり良ければ全て良し。」
「やっぱり私たちってすごいよね!」
「うん、すごい。」
ついさっきまで落ち込んでいたのが嘘のように、2人は完全に調子に乗っている。
2人のその姿を見て、ミーナは呆れながら頭を抱えていた。
「2人とも相変わらずね。
結局そのお調子者の性格が直らなかったのだけが、母親としての唯一の悩みだわ。」
そのミーナの言葉は看過できるものではなかったようで、2人が文句を言ってきた。
「えーっ、実の娘たちにそれってひどくない?」
「問題発言。」
「だったらサラやシェイラを見習って、少しは反省しなさい。
ああ・・・生まれてくるこの娘たちは、姉たちを反面教師として成長してくれることを期待するわ。」
そう言いながらミーナは、願いを込めて自分のお腹を優しく撫でていたのだった。




