試練の条件1
どうするか決めたマコトは、すぐにミーナとアリアへ声をかけた。
「ミーナ、アリア、急な話で悪いが、今からはじめるぞ。」
このマコトの言葉に対して、2人は既に覚悟を決めていたようだ。
「ええ、わかったわ、マコト。
2人のことをお願いね。」
「マコト様、シェイラのことを、どうかよろしくお願いいたします。」
2人があっさりと了承したので、マコトは話を先に進めた。
「ああ、任せてくれ。
というわけで、ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、今から3人はしばらく訓練を休んでもらう。
その代わりに、今から俺と一緒にある場所へと向かってもらうぞ。」
突然のマコトの話に、3人からは当然いろいろな疑問が浮上した。
「ある場所?」
「今から?」
「それはどこなのですか、マコト様?」
それに対してマコトが口にしたのは、3人が思いもよらなかった場所だった。
「夢幻の森だ。」
「へっ?・・・えーっ!(×3)」
驚く3人を無視して、マコトは話を進める。
「というわけで、シェイラはその下着を身に着けたまま、服を着て準備をしてくれ。」
「はっ、はい!」
「ミザリィとナタリィはそのままで問題無いな。」
シェイラはマコトの指示に従って脱いだ服を着はじめたが、ミザリィとナタリィはそうはいかなかった。
以前マコトが言っていたことと違っていることに対して、説明を求めてきたのだ。
「ちょっ、ちょっと待ってよ、マコト様!」
「いったいどういうこと?」
「何がだ?」
「だって前にマコト様は、夢幻の森の場所を探すのも試練の1つだ、って言ってたよね!」
「ああ、確かに言ったな。」
「でも今の話だと、マコト様が案内してくれるって聞こえた。」
「ああ、そうだ。」
「それっていいの!」
「ああ、何も問題無い。
そもそも夢幻の森は普通に探しても見つからないからな。」
「じゃぁどうして探すのが試練の1つなの?」
「正確には、夢幻の森への案内人を探すのが試練だった、というわけだ。
3人が表と裏の条件をクリアした時点で俺の傍にいたから、案内人としての務めを果たすことができるというわけだ。
つまり条件さえクリアしていれば、最初から夢幻の森へ行くことができたということだ。」
それを聞いて、2人は今までの苦労が無駄に終わったと肩を落としていた。
「そんなぁ・・・あんなに必死に探したのに・・・」
「最初からそう言ってくれれば・・・」
そんな落ち込む2人に、マコトはある事実を伝えた。
「そのことだが、ハッキリとは言わなかったが、俺は事前にヒントを与えてたんだぞ。
例えば、全ての条件さえクリアすれば自然とどこに存在してるかわかる、とか、試練のときは俺が見届ける、とかな。」
そこへ着替えを終えたシェイラが話に加わり、マコトの言葉からその意味をまとめた。
「つまり、全ての条件がクリアされれば、案内人であるマコト様が夢幻の森へ案内して試練を見届ける、ということですね?」
「そういうことだ。」
それを聞いて、ミザリィとナタリィが文句を口にした。
「えーっ、そんなのわからないよ!」
「それだけじゃ無理。」
そんな2人の抗議を無視して、シェイラはマコトとの話を続けた。
「マコト様、私からも質問してよろしいですか?」
そしてマコトもそれに乗ってきた。
「ああ、構わないぞ。」
「ありがとうございます。
では、なぜ私もなのですか?」
「それはシェイラの鑑定結果を見ればわかる。」
「シェイラさん、こちらをどうぞ。」
シェイラはシルフィナから鑑定結果が書かれた紙を受け取り、その内容を確認した。
「ありがとうございます。
・・・これは・・・もしかしてこの、幻神と幻の試練の資格保有者、というのが関係しているのですか?」
「そうだ。
幻神はシェイラが継承者として持つ力、幻力が元になっていることは知っているな?」
「はい、訓練で私の力については、既に説明していただいていましたから。」
「実は夢幻の森には、精霊と妖精以外に、幻精という存在もいるんだ。
今朝話したが、火や水などといった元素を司るのが精霊。
花や草木などの意思を持たない存在を司るのが妖精。
そして自然災害や自然現象をを司るのが幻精だ。」
「自然災害や自然現象、ですか?」
「そうだ。
例えば竜巻や地震、虹やオーロラなんかのことだな。
これらは自然に存在する物質が気象などの影響を受けて起きる現象と言われているが、実はそれだけじゃないんだ。
自然災害や自然現象が起こるきっかけは、物質世界に漏れ出た幻精の力の影響を受けた場合がほとんどなんだ。」
「では幻精の力が漏れ出なければ、自然災害や自然現象は起こらない、ということですか?」
「それは違う。
限界を迎えれば、切っ掛けが無くても自然災害や自然現象は起こる。
ただそこまで行くと、とんでもない規模になってしまう。
しかし幻精の力が漏れ出ているおかげで、まだ規模が小さい状態で起こっているんだ。」
「つまり幻精の力は、自然の力が溜まりきる前に発散して、最悪の事態を防いでくれている、ということですね?」
「その通りだ。
そして幻力の継承者は、幻精たちと契約することができる。
幻の試練の資格保有者、というのは、その入り口に立ったという意味だ。」
「・・・マコト様のお話しとサラの鑑定結果で、私にも資格があることはわかりました。
ですが、どうして今なのですか?
こう言っては自惚れていると思われるかもしれませんが、私は条件をだいぶ前にクリアしていたと思います。」
「シェイラの言う通り、継承者としての力を極めし者にする、という条件は、3人ともだいぶ前にクリアしている。
だがこれは表の条件だ。
条件には隠されていた裏も存在したんだ。
それがクリアされたのが今だからな。」
「裏の条件、ですか?
それは何だったのでしょうか?」
「今シェイラが身に着けた、その下着だ。」
「この下着が、ですか?
いったいどういうことなのでしょうか?」
「その下着は、幻精の下着、と言って、幻精の力が宿っているんだ。
ただしその下着を身に着けた者が幻力の継承者以外だったり、試練を受けることができる条件をクリアしていない場合は、副作用が起こるんだ。
それは、その下着を身につけた状態で半径2m以内に男がいると、発情して見境なく男を襲ってしまう、というものだ。」
「だから条件をクリアしている私が下着を身に着けても、何も起こらないのですね。
では先程の曾祖母の手記に書かれていたという、使えないもの、というのは、それが原因だったというわけですか?」
「間違いないだろうな。
たぶん、自分の意思を無視して自分から男を襲う、という行為が許せなかったんだろう。
だから封印して隠したんだ。」
「そうだったのですね・・・ですがその副作用は、そんなに許せないようなことなのでしょうか?
私でしたら、マコト様の前でなら、新しい私の姿を見せることができて、むしろ嬉しいくらいです。」
そんなシェイラの意見に、アリアも便乗してきた。
「私もシェイラと同じです。
しかし祖母は違ったのでしょう。
あの方ならそう思うのもわかる気がします。」
「母様、曾祖母はどのような方だったのですか?」
「そうねぇ・・・とても自分に厳しくて凛とした雰囲気の方だったわ。
たぶん祖母がその下着を身に着けて男性の前で発情なんてしてしまったら、恥ずかしすぎて自分が許せなくなってしまうでしょう。」
「確かに母様の話を聞く限り、曾祖母の性格ではありえそうな話です。
しかし母様でしたら、私と同じく喜びそうですね。」
「もちろんです。」
アリアはシェイラの言葉を否定せず、堂々と肯定していた。
そんなアリアの姿を、シェイラは当たり前のように受け入れていたのだった。




