商国での会談9
そんなエナンに構わず、ホーネットは話を続ける。
「そしてこうなることがわかっていて、バカ王子を切り捨てられなかったこともだ。
義理とはいえ、自ら息子を断罪することに躊躇しちまったのかねぇ・・・
そして気付いたときにはもう手遅れだった、まぁそんなとこだろね。」
「どっ、どういうことや!
オトンは以前から今の状況を予想してたってことなんか!」
「たぶんねぇ。
おそらく先代商王は、バカ王子の野望と裏で何をやっていたのか、ある程度把握してたんだと思うよ。
そして放置すれば、いずれ商王になったバカ王子が周辺各国を混乱させる、ってとこまでね。
だけど処罰する前に警告でもしたのか、その所為で逆に自分が排除されちまった、そんなとこだろうさ。」
「じゃっ、じゃぁ、オトンが判断を誤ったことで、商国は今の状況に追い込まれとるって言うんか?」
「そこまでは言ってないさ。
判断自体は誰にだって間違うことはあるからねぇ。
それは王だって同じだ。
ただアタシが問題だって思ってるのは、先代商王が私情を挟んだことで間違っちまったことさ。」
「私情?それのどこが問題なんや?」
「大問題だよ。
一国の王ってのは、国のため、国に住む国民のために尽くす義務がある。
別に私情が入ったとしても、国や国民のためになるなら問題は無いさ。
しかし時にはどんなに非情な判断だとしても、それが国や国民の利益になるなら、私情を捨てて決断しなくちゃいけない場合がある。
だけどもし私情を挟んで自分の利益を優先し、それが国や国民にとって不利益になるってんなら、そいつはもう王じゃなく、ただの独裁者さ。
国は王が支えて繁栄させているんじゃない。
国に住む国民が、王の許で支えて繁栄させているんだ。
王はそれを絶対に忘れちゃいけないんだよ。
先代商王は私情によって、そこのところの判断を躊躇しちまったんだ。
それがバカ王子のためだったのか、それともアンタのためだったのかは本人にしかわからないけどねぇ。
更に付け加えるなら、アンタとバカ王子の2人を養子にしちまったことも失敗だったとアタシは思うよ。」
「・・・ちょっと待ちーや。
なんでウチがオトンの養子になったことが失敗なんや!」
「じゃぁ聞くけど、なんでアンタはバカ王子から命を狙われることになったんだい?」
「・・・えっ?・・・そっ、それは・・・ウチが商王候補だから・・・それでバカ義弟は・・・」
「言いづらいならアタシが言ってやるよ。
バカ王子は商王になりたかった。
でも自分の器よりもエナンの器の方が圧倒的に大きく、商王に相応しかった。
それは自他共に、誰の目にもあきらかだった。」
「・・・」
「誰もがエナンを次の商王にと推す中、それでもバカ王子は自分が商王になることを諦められなかった。
それは実家からも望まれていたからだ。
だけど正攻法ではどうやっても勝てない。」
「ならどうするか?
正攻法じゃない方法を使えばいい。」
「正攻法じゃない方法ってなんだ?
商王になるために必要な票を強引に集めればいい。」
「どうやって票を集める?
買収するのが簡単だ。」
「しかし買収に応じない者もいる場合はどうすればいい?
だったら洗脳して強引に票を入れさせた後、口を封じればいい。」
「・・・もうええ・・・」
「バカ王子が何でこんなことを考えるようになったのか。
元を辿れば、エナンが養子になったからだ。」
「だったらエナンを次期商王から排除すればいい。
まずは秘密裏に捕らえて、行方不明になったことにする。
それが無理なら暗殺してしまえばいい。」
「エナンさえいなければ、自分は商王になれるのだから。
そもそもが間違っているんだ、商王になる気が無い次期商王が、商王としての才を持っていることが。
商王に相応しいのは、商王になりたい自分の方だ、ってね。」
「そうなるように連中が仕向けて利用したってところもあるだろうけど、結局はバカ王子が自分で望んだことでもある。
まぁほとんどアタシの想像だけど、大方バカ王子の考えはそんなところだろうさ。」
「もうええって言ってるやろ!
なんやそれ、まるでウチが原因みたいやないか!」
「今回の騒動、その中心にいるのはエナン、間違いなくアンタだよ。
でも根本的な原因はアンタじゃない。
そもそも争いの火種となったのは、先代商王が2人を養子にしたことがはじまりだったんだ。
ただわからないのが、何故2人も養子を迎えたのかだ。
しかもアタシが調べたところ、その経緯があきらかに変なんだよ。」
「変?どういうことや?」
「普通王族が養子を迎える理由は、直系の子供がいないときや後継ぎがいないとき、血を絶やさないようにするために血縁から迎え入れる場合だ。
このとき不測の事態に備えて複数人を養子にすることは確かにある。
だけどエナンとバカ王子が養子になった経緯は全く違う。
一応確認するけど、まずバカ王子は生みの親が商国でも高い地位であり、しかも商王の血縁で、昔から養子にと強く推されていた。
その養子縁組を受けることが決まったのがバカ王子が6歳のときで、正式に養子になったのがその1年後、それは間違いないね?」
このホーネットの質問を、エナンは肯定した。
「ああ、ウチがオトンに聞いた話とおんなじや。」
「次にエナンだけど、商国では有名な商人だった母親が病気で亡くなって、孤児院に入ることになっていた。
そこへ先代商王が遠縁だってことで、急遽養子になる話が浮上した。
それがエナンが7歳のときで、正式に養子になったのはその翌日、これも間違いないね?」
これもエナンは肯定する。
「間違いないけど、それのどこが変なんや?」
「まずは元の身分の違いだね。
バカ王子は商王に近い、高い地位の出身だけど、アンタは商王の遠縁ではあるが、有名だったとはいえただの商人の娘だ。
しかもバカ王子の親が長い年月をかけてやっと養子にしたってのに、アンタは実質1日で養子になってる。
これは異常なまでに早すぎるんだよ。
普通は養子にする人物の過去や周囲を徹底的に調べてから養子にするもんだ。
一国の王の養子なら尚更だ。
だけどアンタの場合は、それが1日で調べ終わってることになる。
まるで事前に調べ終わっていて、あらかじめいざというときに備えていたみたいに思えるんだよ。」
これにはエナンもホーネットの話に納得していた。
「確かに・・・そう言われると、ウチもおかしいって思えてきたわ。」
「そこでアタシは、アンタの家系のどこで商王の血縁が入ったのか調べてみたんだ。」
「そんなことできるんか!」
「普通にやったんじゃ無理だね。
だけど今回は強力な協力者がいたから、簡単に調べられたよ。
まずアンタの母親の家系には、商王の血縁はいなかった。
そうなると父親の家系ってことになるんだけど、エナン、アンタ実の父親のことは何か聞いてるかい?」
「血がつながった方のオトンのこと?
物心ついたときからいなかったから、何も知らんよ。
昔一度だけオトンのことをオカンに聞いたんやけど、そのときは遠い所へ行った、って言ってたな。
・・・ただ・・・」
「ただ、何だい?」
「うーん何て言うか・・・今思うとそのときのオカンの顔が、なんか違ったんや。」
「どう違ったんだい?」
「普通遠い所って言ったら、事故や病気で亡くなったとか、ウチやオカンを捨てて別の女とどっか行ったとか、だと思うんよ。
そうなると悲しそうだったり、辛そうだったり、怒ったりするはずやないか。
でもあのときオカンの顔は、ウチに対してすごく申し訳なさそうに困った感じになったんや。
なぁ、これってどういう意味やと思う?」
「なるほどねぇ・・・どうやらアンタの母親は、父親の素性を知ってたみたいだねぇ。」
「どういうことや?
もしかして・・・オトンは生きてるんか!」
「いや、既に亡くなってるよ。」
「そっ、そっかぁ・・・まぁ安心したわ。
今更オトンだって言われても困るからな。
ウチのオトンは、先代商王のオトンだけや。
それで、結局もう1人のオトンは何処の誰で、ついでにいつ亡くなったんや?」
軽い気持ちで聞いてきたエナンに、ホーネットは少し複雑そうな顔をしながらも、その質問に答えようとした。
「・・・亡くなったのは・・・」
しかしホーネットが答えようとすると、そこへカーラが強引に割って入ってきて止めたのだ。
「ホーネットさん!」
「きゅっ、急にどうしたんや、カーラ?」
普段のカーラからは考えられない行動にエナンが驚いている中、ホーネットは最初からそうするであろうことがわかっていたかのように冷静に返事を返した。
「・・・何だい、カーラ?」
「その話はここまでにしませんか?
エナン様も、無理して父親のことを知る必要は無いはずです。
エナン様が父親と呼ぶのは先代商王様だけ、それでいいではありませんか。」
何故か必死に話の続きをさせないようにしているカーラの姿を見て、エナンはある可能性に気付いた。
「・・・カーラ、もしかして・・・ウチの本当のオトンのこと知ってるんか?」
「・・・」
「どうなんや!」
「・・・」
「・・・頼む、答えてや。」
とうとう観念したカーラが、首を縦に振った。
「・・・はい・・・」
「誰なんや?」
カーラは、自分がエナンの父親のことを知っていることまでは答えてくれたが、それ以上は頑なに教えてくれなかった。
「そっ、それは・・・答えられません。」
そんなカーラに、当然エナンは食い下がってくる。
「カーラ、教えてくれんか?
たぶんウチはそれを聞かないと先に進めない、そんな気がするんや。
だから頼む、この通りや・・・」
そう言ってエナンが頭を下げたが、カーラの答えは変わらなかった。
「・・・申し訳ありません、エナン様。
私の口からは何もお答えできません。」
「そうか・・・」
エナンが次の手を考えようとしたところへ、思わぬ援軍が現れた。
「だったら本人の許可があれば問題無いな。」
そこへ突然、いつの間にかその場に現れたマコトが話に割って入ってきたのだ。
カーラはマコトの意図がわからず、言葉の意味を確認した。
「・・・マコト、それはどういうことです?」
「実はこいつを見つけてきた。」
そう言ってマコトは、1通の封筒をカーラへと手渡した。
「・・・これは・・・まさか!」
カーラもそれが何なのか気付いたようで、すぐにマコトが説明した。
「そう、遺言書だ。
どうやら不測の事態に備えて、以前から用意していたらしい。
それもかなり前からな。」
このマコトの言葉の意味を、カーラは正しく理解した。
「つまり書かれている内容は、正常な状態のときに自らの意思で書いたもの、ということですか?」
「ああ、それは俺が保証する。」
「・・・わかりました。
中を確認させていただきます。」
カーラが封筒を開けると、中からは1枚の手紙と更に封筒が1通出てきた。
まずは手紙を確認する。
するとカーラの目からは、次第に涙が流れてきた。
手紙を読み終えると、カーラは涙を拭ってから、もう1つの封筒をエナンに差し出した。
「エナン様、手紙には私の口から全ての真実を話しても構わないと書かれておりました。
しかしまずはこちらの手紙を見ていただくのがいいと判断しました。
その後でしたら、エナン様の疑問に私が知りうる限りのことを嘘偽りなく答えることをお約束します。」
カーラがあまりにも真剣な表情でそう言うので、エナンもそれを受け入れた。
「・・・ええやろ。」
エナンが封筒を受け取って開けると、中からは手紙が3枚と、魔石が1つ出てきた。
まずは1枚目の手紙を読んでみる。
しかしすぐにエナンは、魔石を自分の額に当てた。
どうやら1枚目の手紙には、同封してあった映像記録用の魔石を見るように、との指示が書かれていたようだ。
すると魔石からエナンの頭の中に映像が流れはじめる。
そこには、生まれたばかりの赤ちゃんを抱く女性と、隣には男性が1人映っていた。
映像の中の男性と女性が嬉しそうに呼んでいる名前から、その赤ちゃんが自分であることはすぐにわかった。
更に女性が自分の母親であることも、亡き母の面影からすぐに気付いた。
そして残る男性の方はというと、状況からみて父親であることは間違いない。
だがエナンは戸惑いながらも、すぐにそれが誰なのか理解した。
「・・・あれは・・・オトン?・・・なんで・・・っ!」
エナンは魔石を額から外すと、すぐに2枚目、3枚目の手紙を読む。
全てを読み終えると、エナンは何とか声を絞り出して、カーラへと確認した。
「・・・カーラ・・・この映像と、手紙に書かれていることは・・・全て本当のことなんか?」
カーラは先程の宣言通り、嘘偽りなく答える。
「はい・・・全て本当のことです。
先代商王様は、エナン様と血のつながった実の父親です。」
カーラが肯定したことで、それまで我慢して抑えていた感情が一気にあふれ出し、エナンの目からはボロボロと涙がこぼれ落ちていた。
「・・・なんでや・・・なんでオトンはウチに何も言わずに、黙って逝ってもうたんや!
こんな真実・・・ウチはオトンが死んだ後に知りたくなかった・・・」
このエナンの疑問を、自分に対する質問と受け取ったカーラが答えた。
「・・・自分にはその資格が無いと・・・先代商王様は常々仰られていました。
ですから生前は、真実をお話にならなかったのです。
それと本当は養子にするつもりもなかったそうです。
しかしエナン様のお母様がお亡くなりになって、その葬儀の場で残されたエナン様が孤児院に入るしかないことを知ったそうです。
そこで最初は先代商王様から私の母が、エナン様の面倒を見てほしい、とお願いされました。」
「ですが私の母が預かっていた、エナン様のお母様から先代商王様宛の手紙を見て状況が変わりました。
私も母から聞いただけですので手紙の詳細までは知らないのですが、そこには、先代商王様にエナン様をお願いしたい、そう書かれていたそうです。
そこからはエナン様もご存知の通り、エナン様のお母様の親友でもあった私の母がエナン様の後見人となり、先代商王様の養子として推薦しました。
そして表向きは義理の父娘となり、本来あるべき形に収まったのです。」
ここまでカーラの話を黙って聞いていたエナンが、ふと新たな疑問を口にした。
「・・・カーラ・・・なんでオトンは、ウチとオカンを捨てたんや・・・」
これはカーラにしては珍しく、ハッキリと強い口調で否定した。
「それは違います!
先代商王様はエナン様を捨てたわけではありません!
・・・先代商王様も苦渋の決断だったのです。
様々な不幸が重なり、お2人を守るために先代商王様はお2人と縁を切って、関係を隠したのです。」
「ウチとオカンを守るため?
・・・カーラ、いったいオトンに何があったんや?
ウチに全部教えてくれ。」
真実を知りたい、そうエナンが強い意志を示すと、カーラは自分の知る全てを語った。
「わかりました。
先代商王様とエナン様のお母様は、公にされていませんでしたが、許嫁だったのです。
お2人が生まれる前に、先々代の商王様とエナン様のお祖母様との間で決められたと聞いております。
先代商王様は5男でしたので、商王になることはまずないだろうということで、婿養子に入ることになっていました。
ですが周囲には身分を偽って、お2人は秘密裏に愛を育まれたそうです。」
「しかしエナン様のお母様が妊娠された直後に、不幸な出来事が起こりました。
先々代の商王様の長男が、事故によって急死してしまったのです。
不幸はそれだけでは終わりませんでした。
その翌日に今度は次男が、何者かに毒を盛られて殺害されてしまったのです。
そしてその翌日には3男が病死し、更にその翌日には4男が行方不明になりました。
あきらかに何者かの陰謀によって殺害されたと、誰もがそう考えました。」
「そんな次々と起こった兄たちの死に、先代商王様は自身の安全よりも、エナン様のお母様の安全を優先されたのです。
それが、自分が次期商王となり、エナン様のお母様と縁を切ることでした。
そうすることによって、標的を自分に絞らせられると考えたのです。
幸いお2人の関係はごく一部を除いて秘密でしたので、外部に漏れることはありませんでした。
ただこのとき先代商王様は、まだエナン様のお母様が妊娠されていることは知らなかったそうです。」
「しかし皮肉にも先代商王様が次期商王に選出された途端に、一切襲撃がなくなりました。
そこから10ヶ月ほど、先代商王様は次期商王として振舞いながら、襲撃を警戒していました。
ですが何事も無かったため、そのまま商王へと就任することが決まったのです。」
「それを機に先代商王様は、正式にエナン様のお母様を妻として迎え入れるつもりでした。
そのことを公にする前に、まずはエナン様のお母様に直接話そうとした先代商王様は、私の母を通じて現在の状況を知ったのです。
このときエナン様のお母様は出産直前でした。
突然娘が生まれると知った先代商王様は、当然喜んで秘密裏に出産に立ち会いました。
そのときの様子が、そちらの魔石の映像になります。
ご覧になったエナン様には、如何にお2人がお喜びになられたかおわかりかと思います。
しかし無事に出産が終わり数時間が経って少し落ちついてきた先代商王様は、ある問題に気付きます。」
「ある問題?なんやそれは?」
「今自分の血を引く娘がいると知られたら、兄たちを殺害した者はどうするのだろうか、と。
自分が殺害されるのならまだいいが、娘や妻に何かあったら・・・そう考えた先代商王様は、そのままお2人とは縁を切ったままでいることを選択されました。
ですが完全に切ることはできず、事情を知る私の母を間に置いて、秘密のつながりを保っていました。
母は組合長の1人でしたから、商王様と面会する機会が多かったため、仲介役として都合がよかったのでしょう。
またつながりを示すものが残らないように、全て口頭でのみ互いの近況を伝えあったりしていましたので、これまで秘密が表に出ることはありませんでした。
私の母が亡くなってからは、娘である私がその役目を引き継いだため、事情を知っていたというわけです。」
「カーラはいつから、ウチがオトンの実の娘だってことを知ってたんや?」
「私が知ったのは母が亡くなる1年ほど前です。
商会と組合長を引き継ぐことが決まったときに、母から全てを打ち明けられました。
その後先代商王様とお会いして、引継ぎの報告と許可をいただきました。
以降は私が母に代わって、先代商王様にエナン様のことをご報告していたのです。」
「そうやったんか・・・さっきウチがオトンのことを聞いたときに答えてくれなかったんは、オトンに口止めされてたんやな。」
「はい、例え私が父親のことを知っているとエナン様に知られたとしても、決して許可なく話してはいけない、そう厳命されておりました。
しかし今回手紙とはいえ許可が下りましたので、こうして真実を伝えさせていただいたのです。
ただ私から1つだけ、どうしてもお伝えしたいことがございます。」
「なんや?」
「先代商王様は、この様な騒動に巻き込むために、エナン様を養子に向かえたわけではございません。
ただ純粋に父親として、それまで失っていた父と娘としての時間を過ごしたかっただけだと、常々仰られておりました。
だからこそエナン様には商王になるための教育を行わなかったのです。
エナン様のお母様のように、商人として自由な人生を歩んでほしい、先代商王様の願いはそれだけでした。
どうかそれだけは理解してあげてください。」
最後に亡き先代商王を擁護するカーラだったが、それは杞憂だったようだ。
「・・・馬鹿にすんな、カーラ。
オトンが如何にウチのことを大事にしてくれてたかなんて、言われんでもわかっとるわ。
本当のオトンだったことを黙ってたんは、正直頭にきとる。
でもそれ以上の愛情を、オトンはウチに注いでくれた。
それが・・・ウチの自慢のオトンで、一生変わらん事実や。」
「そうですか・・・きっと先代商王様も喜んでくださっていると思います。
そしてこれからもずっと、エナン様のことを見守ってくださいます。」
「そうやな・・・オトンは心配性やから、ウチもそう思うわ。
ありがとうな、オトン。
これからもウチのこと、空の上から見守っててや、頼むで。」
その場には空は無かったが、エナンは零れ出そうになる涙を隠すため、見上げながら笑顔で父へのメッセージを送ったのだった。




