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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
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商国での会談8

移動した先は、いつも訓練で使用している場所と同じような、何もない空間だった。


だが決定的に違う部分がある。


それは地面以外、天井も壁も見える範囲に存在していないのだ。


そして全員が同じ場所へと来たわけではない。


どうやらゲートを通った際に、敵味方それぞれが分断されて、別の場所へと移動させられたらしい。


この場にいないのは、ティリア、イーリス、マリス、ラン、ククリの5人。


それとガーネット、セーラ、エステル、クロエ、カーラ、エナンの6人もいない。


その11人以外の、残り14人全員がこの場におり、既に偽装も解除されている。


相手の方は、天使が2体と全てのゴーレム30体がいる。


いないのは大天使だけだ。


突然のことに、天使たちは混乱し、それが影響しているのかゴーレムも動きを止めていた。


そんな中、悔しがっている者が1人いた。


キリだ。


「くっ!まさか私がハズレを引かされるとは・・・しかもランに出し抜かれるなど・・・屈辱だ!」


そんなキリを、リンが窘めた。


「キリ、不謹慎ですよ。

元々キリはこちらへ配置される予定だったではありませんか。

それを貴女の我がままで、キリとランの2人はランダムにどちらかへ移動する、と急遽変更になったのですから。

機会があったことを感謝し、今回は潔くこの結果を受け入れなさい。」


「私だって完全にランダムであったなら納得するさ。

だがランは確信していたぞ。

ある行動をとれば、確実にあちらへ移動できるということをな。」


「ある行動?」


「おそらくだが、あちらへ確実に移動する人物の身体に触れていることだろう。

だからあのときランは、ククリの肩に触れていたんだ。

くそっ!自分からククリの相手をするなんて言ったのはこのためだったのか。

しかもランは移動する前に、勝ち誇った顔で私のことを見ていたんだぞ。

これではまるで、私がランに負けたみたいではないか!」


キリの話を聞いて、リンはある考えへと至った。


「・・・たぶんですが、それはランの考えではありませんね。

おそらくラミ当たりの入れ知恵でしょう。

まぁ今回は事前の情報収集と準備を怠ったキリの負けですよ。

潔くあきらめなさい。」


当然素直にキリが受け入れられるわけがない。


「ぐぬぬぬぬ・・・納得いかん!」


そこでリンは、キリの意識をこちらに集中させる作戦に出た。


「ほらほら、そんなこと言ってないで、機嫌を直しなさい。

別に私は構いませんよ。

こちらはキリ以外の全員で片付けてしまっても。」


するとキリが、狙い通りの反応を返した。


「なっ、それは駄目だ!

ここまで来て何もしないで帰るなど、それこそ来た意味が無い!」


「でしたらすぐに気持ちを切り替えなさい。

あちらは待ってはくれませんよ。」


「・・・仕方ない、今はこちらに集中するか。

楽しめるかどうかは微妙だがな。

ランめ、帰ったら絶対に文句を言ってやる。

それとあのデカブツは私がもらうぞ。」


「はいはい、好きにしなさい。

では予定通り、下級天使はエミルとミレーヌが前衛、ノワールとエリスが後衛で引き受けてもらいます。

いいですね、ミレーヌ?」


「こちらは任せてください。」


「ただ緊急事態が発生しそうな場合は、私たちも強制介入しますので、忘れないように。」


「はい、そうならないよう頑張ります。」


「よろしい。

ということだから、余計な手出しをしては駄目ですよ、キリ?」


「わかっている。

一気に片付けて、この鬱憤を少しでも晴らしてやる。」


「・・・まぁいいでしょう。

フェウィンもいいですか?」


「うん、アタイもあっちの天使には手を出さないように気を付けるよ。

でもそれ以外は、全部殲滅しちゃっていいんだよね?」


「ええ、問題ありません。

あれらは全て不要とのことですから。

ということですので、残りは各自臨機応変に、早い者勝ち、となります。

サラ、シェイラ、何か異論はありますか?」


「問題ないわ。」


「はい、大丈夫です。」


「結構です。

ではこれより私たち3組は、3人1組で敵を殲滅します。

ジェーンのことは私の組が面倒を見ますので、気にしないでください。」


「わかったわ。」

「お願いします。」

「では、お先に。」


リンは2人が返事を口にしたとほぼ同時に動き出していた。


すぐにその後をキリ、ジェーン、フェウィンが続く。


ちなみにジェーンは、フェウィンのパートナーである盾が背中を押しているようで、無理やり2人に合わせた移動をさせられている。


「なんだいこれはぁぁぁ・・・」


唖然とした顔でそれを見ていた2人だったが、すぐに状況を理解して行動を開始した。


「・・・あっ、ずるい!」

「・・・えぇぇぇっ!」


「私たちも行くわよ、フォンさん、シャーリィ!」

「ミザリィ、ナタリィ、ついてきてください!」


「はっ、はいっ!(×4)」


一部がややフライング気味ではあったが、こうして9人と1人は、ゴーレムとの戦闘を開始したのだった。




そして天使たちを担当する4人はというと、いつの間にか天使たちと対峙していた。


どうやら相手の間合いに入ったようで、さすがに天使たちも4人へと意識を向けていた。


「・・・ポクの獲物はいるんだぬん。」

「・・・ポクの獲物がいないんだねん。」


先程蹴られた天使が、楽しそうにミレーヌへ視線を向けている。


逆に殴られた天使は、不満そうにゴーレムに向かっていったリンへと視線を向けている。


そこへエミルが、天使たちを挑発した。


「おいおい、俺たちのことを無視するなんて、ずいぶん余裕じゃねーか。」


「・・・」

「・・・」


しかし天使たちはエミルには目もくれず、何の反応も示さない。


そこへ今度はミレーヌが、天使たちを小馬鹿にする発言をした。


「時間の無駄よ、エミル。

中級天使があそこまで馬鹿なのだもの。

下級天使は私たちの言葉も理解できない程の馬鹿なのよ。」


すると今度は天使たちが反応した。


「ポクは馬鹿じゃないんだぬん!」

「ポクは馬鹿じゃないんだねん!」


顔を真っ赤にした天使たちは、ミレーヌへと一斉に襲い掛かってきた。


こうして4人と天使たちとの戦いがはじまったのだった。




別の場所へと移動したティリア、イーリス、マリス、ラン、ククリの5人は、既に間合いにいる大天使を完全に無視して話し込んでいた。


「・・・ふっ・・・どうやら私の作戦勝ちのようです。

今頃悔しがっているキリの顔が目に浮かびます。

これは後でラミに何かお礼をしなければいけませんね。」


この状況を嬉しそうにしているランだったが、そこへティリアが注意してきた。


「勝負するのはランたちの勝手だけど、今度は私たちを巻き込まないでよ。

絶対キリが後で文句を言ってくるんだから、とばっちりは嫌だからね。」


「大丈夫ですよ、ティリア。

貴女たちに迷惑はかけませんから。」


「本当かなぁ・・・」


不安が拭えないティリアだったが、そんなことを一切気にしないで、マリスが本題に入った。


「そんなことより、早く順番を決めるぞ。

さっさと終わらせて帰りたいんだからな。

確かイーリスは最後でいいということだったな?」


「ええ、アレは(わたくし)が消滅させます。

だからお先にどうぞ。」


イーリスが先を譲ると、真っ先にマリスが名乗り出ようとした。


「では最初は私が・・・」


しかしティリアが譲らない。


「あっ、マリス狡い!

やっぱりここは、苦労して皆を移動させた私に先を譲るべきだでしょ!」


自分こそはとティリアが主張すると、今度はランが立ち塞がった。


「いいえ、やはりここは親友として、私がククリの代わりに無念を晴らすべきです。

ですからまずは私から・・・」


そんな3人のやり取りにイラっとしたイーリスが急かしてきた。


「3人とも、早く順番を決めなさい!

結局止めを刺すのは(わたくし)なのだから、何番目でも一緒でしょ!

これ以上待たせるなら、(わたくし)1人で終わらせるわよ!」


「だから最初は私が・・・」


「私が最初だって・・・」


「いいえ私が最初に・・・」


「貴女たち、いい加減に・・・」


いつまで経っても話が決まらない3人にイーリスがイライラしていると、先にそれまで存在を無視されていた大天使が怒り出した。


「お前たち、ポクチンを無視するなですのん!

ポクチンに何をしたのですかのん!

ここはいったい何処なのですかのん!」


しかし順番を決めるのに忙しいようで、誰も反応しない。


さすがに見かねたのか、ククリが恐る恐るランの袖を引いて尋ねた。


「あっ、あの、あっちは放っておいていいの?」


「ククリ、今大事な話をしている最中ですから、ちょっと待っていてください。」


それだけ答えると、ランはティリアとマリスを相手に、再び順番争いに戻ってしまう。


そのためククリはこれ以上何も言えず、話が終わるのを待つしかなかった。


だが大天使は違う。


とうとう我慢できなくなって、一番近くにいたランへと襲い掛かってきた。


「ポクチンの質問に・・・答えるですのん!」


唯一襲い掛かっていくのを見ていたククリが声を上げて警告しようとしたのだが、既に大天使は殴り掛かる寸前だった。


「危なっ!」


だがここでランは、ククリの予想を大きく超える対応をして見せたのだ。


「邪魔です。」


ランは大天使のことを全く見ずに、無造作に背後に向かって右肘を突き出したのだ。


「ぐぴょっ!?」


するとランの右肘は見事に大天使の鳩尾辺りに突き刺さり、奇妙な呻き毛を上げて、そのまま来た方向へと吹き飛ばされてしまった。


「えぇぇぇぇぇーーーーーっ!」


それを見ていたククリが驚いて声を上げことを切っ掛けに、業を煮やしたイーリスが、順番を決める方法を指示した。


「はぁ、貴女たちがこれ以上話し合っても時間の無駄よ。

もうこのカードで決めなさい。

書かれている番号がそのまま順番よ、いいわね?」


そう言ってイーリスが右手を前に出すと、その手には3枚のカードがあった。


「いいだろう。」


「いいよ。」


「いいでしょう。」


「じゃぁ選んで。

先に言っておっけど、文句は受け付けないわよ。」


「わかっている・・・私はこれだ。」


「もちろんだよ・・・じゃぁ私はこっち。」


「当然です・・・では私は残ったこれを。」


3人はそれぞれカードを引き、書かれている番号を確認した。


「私は・・・3、だと・・・」


「私は・・・2かぁ・・・」


「私は・・・やりました、1です!

ふっふっふっ、やはり今日の私は引きが強いようです。」


悔しがるマリスとティリアに対して、ランが本日2度目の喜びをあらわにした。


そんな3人には構わず、早く終わらせたいイーリスが話を進める。


「はいはい、順番は、ラン、ティリア、マリス、(わたくし)で決まりよ。

じゃぁ最初はランからね。」


「はい。

ククリ、見ていてくださいね。」


呆気に取られているククリに声をかけながらランは前へと進んだ。


「えっ、ええ・・・頑張って・・・」


そしてククリが何とか返した返事を聞いてやる気をみなぎらせながら、相手の大天使を探した。


「任せてください!

ところで・・・相手の中級天使はどこに行ったのですか?」


「あそこよ。」


イーリスが視線を向けた先には、今まさに大天使が起き上がろうとしているところであった。


「あれは・・・何をやっているのですか?」


「何って、ランが肘で小突いたんじゃない。」


「私が?・・・そういえば先程後ろから何かが迫ってきていたような・・・まぁそんなことはこの際どうでもいいです。

さぁ、早くかかってきなさい!」


ランが構えると、起き上がった大天使の怒りが爆発しようとしていた。


「ぐぬぬぬぬぬぬぅ・・・お前たち・・・ポクチンは大天使で偉いのですのん・・・ポクチンは大天使で強いのですのん・・・そんなポクチンを・・・馬鹿にするなですのん!」


そんな怒り狂う大天使に、イーリスが平然と答える。


「別に馬鹿になどしていないわ。

ただ今の(わたくし)たちにとっては、お前程度は最早脅威にすらならない、ただそれだけよ。」


「それがポクチンを・・・」


大天使が今まさにブチ切れようとしている最中に、イーリスが言葉を遮って、先程の質問に答えた。


「そうそう、さっきの質問の答えがまだだったわね。

答えるまでもなく決まっているでしょ。

ここはお前の墓場よ。

まぁ墓を建てるつもりも、埋葬する遺体を残すつもりもないけどね。

お前はここで跡形も無く消滅するのよ。」


これが決定的となり、とうとう大天使がブチ切れた。


「・・・馬鹿にしていると言ってるのですのん!」


大天使は顔だけでなく全身を真っ赤にして、一番手前にいるランへと襲い掛かったのだった。




一方その頃、別の場所に移動させられたガーネット、セーラ、エステル、クロエ、カーラ、エナンの6人は、陰の一族の拠点にいた。


すぐに待機していた各国の代表たちが出迎えてくれた。


「お疲れさん。

それで、状況はどうなったんだい?」


ホーネットが声をかけると、代表してクロエが答える。


「状況は、ほぼ全てマコトはんの予想通りや。

今は皆さんが天使とゴーレムを相手にしてるとこやな。」


「ほぼ、ってことは、何か聞いてなかった事態が起こったのかい?」


「1つは、バカ王子が死んだことやな。

バカ王子の口を引き裂いて、中から天使の親玉が出てきよって、一面血の海になったんや。

アレはえらいグロかったで。」


エナンが口を押えて青い顔をしている原因を知ったホーネットだったが、特に何も言わず、クロエに話の続きを促した。


「なるほどね・・・でもこれで次期商王はエナンに決定だ。

となれば、後は皆が敵を排除すれば全て解決、といったところかねぇ。

それで、1つは、ってことは、他にも何かあったってことかい?」


すると突然、クロエが唸りだした。


「うーん・・・」


「どうしたんだい?」


「・・・実はバカ王子の傍にメイドが1人おったんや。

そのメイドは、途中でバカ王子に何かの指示を受けて、どこかに行ってもうたんや。」


「つまりそのメイドが、何の指示を受けて、どこに行ったのか、それが気になるってことかい?」


その場にいる誰もがそう思ったのだが、どうやらクロエの考えは違うようだ。


「いいや、そうやない。

そっちの方は、たぶんマコトはんが事前に潰してくれとるはずやから気にしてへん。

これはウチの感なんやけど、あのメイド、ただもんやないかもしれへんで。」


「どうしてそう思うんだい?」


「そのメイドが部屋を出た後、シルフィナはんたちメイドの皆はんの姿を見なくなったんや。

別に残った他の皆はんだけで問題はなかったんやけど、ウチにはどうしてもそれが気になってしもうたんや。」


このクロエの話を聞いて、ホーネットは今回の作戦の内容を思い返すと、あることに気付いた。


「・・・そういえば、シルフィナたちについては、侍女や護衛としてついて行く、ってだけで、この後の予定は何も聞いていないねぇ。

誰か聞いているかい?」


ホーネットが周りに確認すると、全員が首を横に振っている。


「・・・そうなると、アンタのその感、案外当たってるかもしれないよ。

シルフィナを筆頭に、他のメイドの皆も動いているとなると、かなり厄介なことが起こっているのかもしれないねぇ。

もしかしたら余程の大物が紛れ込んでいるのかもしれないよ。」


「いったい何もんやろか、あのメイドは?」


「さて、そいつはアタシにもわからないねぇ。

もしくはそのメイドが向かった先に、何か潜んでいるのかもしれないしねぇ。」


「確かに、その可能性もあるか・・・」


ここでホーネットは一度話を切り上げた。


「まぁ今は考えても無駄ってことだ。

とりあえずアンタたちの仕事は終わったんだから、今はゆっくり休んどきな。

話はマコトたちが帰ってきてから聞けばいいさ。」


「・・・それもそうやな。

なら遠慮なくそうさせてもらうわ。

ほらっ、エナンも早う休んどき。」


さすがに調子の悪そうなエナンを見かねたのか、クロエも話を切り上げることに同意した。


「・・・そうさせて、もらうわ・・・」


エナンも同意し、すぐにその場から移動しようとした。


しかしそんなエナンに、ホーネットが遠慮なく質問してきた。


「エナン、人が死ぬのを目の前で見るのは初めてかい?」


図星を突かれたエナンは、不機嫌そうにしながら、嫌悪感を隠すことなく答える。


「・・・当然や・・・人の死なんか、商売とは・・・何の関係もあらへん・・・あんなん二度と御免や・・・」


それだけ言って立ち去ろうとするエナンだったが、ホーネットの話は終わらなかった。


「そいつは違うよ。

それは普段アンタが、表の奇麗な部分しか見ていないからさ。

どんなことにだって裏は存在する。

そして裏では、大概人の生き死にが関わってくることが多い。

アンタも子供じゃないんだから、そういう世界があるってことから目を背けずに受け入れな。」


これにエナンがも反発してきた。


「ウチはそんな商売の仕方をしてへん!

まっとうな商売で、全ての人を笑顔にするためにやってるんや!

それがオトンから受け継いだ、ウチの商売に対する信念や!」


しかしホーネットも一歩も引かない。


「そいつは理想の話だ。

現実はそんなに甘くないよ。」


「そんなことない!

ウチの商会の従業員、それと関連する他の商会や顧客たちは、全員が儲けてるんや!」


「だったら競合する商会はどうなんだい?

それにアンタんとこの商会と取引したくてもできない、顧客になれなかった人たちは?」


「そんなんウチの商売とは直接関係ないやろ!

それに何でウチがそこまで面倒見る必要があるんや!」


「ふーん、アンタの言う、全員、ってのは、自分が把握できる直接つながってる連中だけ、ってことなんだね。」


「当然や!

それのどこかおかしいところがあるって言うんか!」


「じゃぁ言い方を変えてあげるよ。

他の商会の顧客がアンタんとこの商会に流れちまうと、場合によっては商売が成り立たなくなっちまうこともある。

そうなるとその商会は潰れちまって、従業員たちは路頭に迷っちまうねぇ。

失業しても次の仕事がすぐに見つかりゃいいが、見つからないと食っていけなくなる。

その場合は餓死しないために誰かに助けてもらう必要がある。

友人知人に助けてもらえりゃいいが、無理な場合は借金するしかないだろうねぇ。

でも返済できなきゃ、最悪首を吊るしかなくなっちまうだろう。

この場合元凶となった商会の代表者が原因、って相手は考えると思うんだけど、これってアンタとは関係無いって言えるのかねぇ。」


「だったらそうなる前に全員まとめてウチが雇ったる!」


「それならほとんどの従業員たちは受け入れるだろうねぇ。

でも必ずしも全員が受け入れるとは限らない。

条件によっては、他の商会に行っちまうこともあるだろう。

それに商会の代表やその家族はどう思うだろうかねぇ。

誰かに雇われるのを受け入れるかもしれないし、反発して拒否されるかもしれない。

そうなるとアンタの言う、全ての人を笑顔にする、って話は無理になっちまうけど、その場合はどうするんだい?」


「ならウチが金を出して生活を保障すればええやろ!」


「そいつは悪手だ。

それだと素直に雇われた従業員たちが働かなくなっちまって、自分たちも保証しろとか言いだしちまう。

そうなると今度は既存の従業員たちから反発されちまって、下手をすると今度はアンタの商会が潰れちまうよ。

他の方法を考えるんだねぇ。」


自分の意見に全て反論してくるホーネットに、とうとうエナンが文句を言ってきた。


「・・・あー言えばこう言う・・・ホーネットはんは、そんなにウチの考えにケチ付けたいんか!」


「別にそんなつもりで言ってんじゃないよ。

人ってのはねぇ、成功を一緒に喜んでくれる者もいれば、反対に妬んだり恨んだりする者だっている。

全ての人が同じ方向を向いて笑顔になれるなんて言うのは理想の話さ。

そして国の王ってのは、大勢の国民が笑顔になれるように尽くすもんなんだ。

だけど笑顔になれない国民は、何をやっても必ずいるもんだ。

だからその声も聞いて、次はその国民も笑顔にする方法を考えるのさ。

でも勘違いしちゃいけないよ。

あくまでも聞くだけで、最終的にどうするか決断するのは王の責任だ。

もし何でもかんでも国民の言う通りに振り回されて政治を行っちまったら、王なんてただの飾りになっちまう。」


「そんなんウチかてわかってるわ!」


「いいや、アンタは本当の意味で王という存在を理解していない。

でもこれでハッキリしたねぇ。

どうやら先代商王は、アンタに商売で儲ける方法は教えたけど、王になるための心構えは全く教えてないみたいだ。

親としては気持ちもわかるけど、一国の王としては失格だよ。」


「アンタにオトンの何がわかるんや!

オトンは人格者で、商売人としても商王としても、ウチが知る中で最高の男や!

そんなオトンの何が失格なんや!」


「最高の男ねぇ・・・アタシの知る最高の男とは雲泥の差だよ。

まぁ今はそれは置いておいて・・・先代商王の失敗は、国を優先するか、アンタを優先するか、最後まで決断できなかったことさ。」


「・・・えっ?」


失敗の内容について、国と自分の名前を出されて、エナンは意味がわからず混乱するのであった。

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