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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
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商国での会談4

時間は少しだけ遡る。


ジェーンがキリやフェウィンたちと対峙している頃、ククリもバカ王子を護衛しながら、目的の人物たちを前にしていた。


ククリの前には、ティリア、ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、ノワール、エリスが対峙している。


少し離れて、戦えないエステル、クロエ、カーラ、エナンの4人を、サラ、ガーネット、セーラ、ランが護衛している。


残るメイドの9人は、その更に後ろへ控えている。


人数的にはククリが圧倒的に不利な状況なのだが、その表情は余裕の笑みを浮かべていた。


すぐにその理由は判明する。


「出てきなさい。」


そう言ったと同時に、30体の最上級と思われる魔物が、ククリの左右へと壁のように立ち並んだ。


更に5つの黒い影、黒装束に身を包んだ人型の何かが、バカ王子とメイドを護るように囲む。


自陣の態勢が整ったところで、ククリが降伏勧告をしてきた。


「人数的な戦力差は見ての通り、こちらの方が上です。

当然それだけではなく、私を含めたここにいる護衛の全員、貴女たちがこれまで戦ってきた相手とは実力の次元が違います。

ですからこのまま戦うというのでしたら、少々痛い目を見ていただくことになりますよ。

ただ私たちとしましても、貴女たちをいたぶって弱い者いじめをする趣味はありません。

できれば状況を理解して受け入れ、おとなしくしていただきたいのです。

それらを踏まえまして、降伏しますか?それとも抵抗しますか?

あまり気が短い方ではありませんので、お早い回答をお願いしますよ。」


自分たちの圧倒的優位な状況に、ククリは余裕の表情で回答を迫ってきた。


これに真っ先に答えたのが、ナタリィとミザリィだ。


「拒否する。」


「何で私たちが降伏しなくちゃいけないのさ。」


すると、口調は丁寧なままなのだが、途端にククリが不機嫌になった。


「それはつまり、白黒の双姫として名高いお2人にとっては、この程度の戦力差は何も問題無い、ということでしょうか?

それとも、この不利な状況を理解できるだけの頭が無い、ということでしょうか?」


あきらかに馬鹿にしているのだが、2人は気にせず答えた。


「当然前者。」


「いくら頭数を用意しても、そんな魔物程度なんか、私たちの相手にならないんだからね。」


この答えに、ククリの口調が変わった。


「なるほど、貴女たちは後者の馬鹿の方でしたか。

・・・やはりエルフ族はどれだけ長い時が流れても何も変わらない。

相変わらず傲慢で自惚れた、高すぎる自尊心の塊のようだ。

素直に負けを認められず、いつでも自分たちこそが正しく最も優秀な種族であると言って聞く耳を持たない。

ある意味哀れな種族だ。」


さすがにこのククリの言葉には2人も怒った。


「訂正して。」


「そうだよ。

私たちは事実を言っただけなのに、何でエルフ族全体が貶されなくちゃいけないのさ。」


しかしククリは最早隠す気も無いようで、その表情には怒りを通り越して憎悪がにじみ出ていた。


「私は事実を言ったまでだ。

それを、たかだか十数年程度生きた小娘たちが、生意気にも私に意見するな!

やはりエルフ族は私が管理して、徹底的に教育する必要があるようだ。」


「管理?教育?必要ない。」


「そもそもお前にそんなことができる権利なんて無いじゃん!」


「権利か・・・当然ある。

これは私にだからでき、私にだけ許された、当然の権利だ!」


「意味不明。」


「そこまで言うなら理由を教えてよ。

ただ文句を言うだけじゃ何もわかんないよ。」


「そんなに知りたければ、私を倒してお前たちが正しいということを証明してみせろ!

まぁお前たち程度にできるとは思えないがな。」


「それなら話が早い。」


「だね。

こいつら全員ぶっ飛ばせばいいんだから簡単じゃん。」


余裕を崩さない2人の姿に、ククリは更に苛立ちを増していた。


「それが自惚れだと言うのだ!

とりあえず今はお前たちで我慢しておいてやる。

ただ今回は釣れなかったが、ダークエルフ族と、欲を言えばハイエルフ族も、私としてはエルフ族と同様に管理と教育を施したいところだがな。

まぁ無いものねだりをしてもしょうがない。」


それを聞いて、2人の女性が前に進み出てきた。


「それは聞き捨てなりませんね。」


「同じく。」


それは王国の護衛としてやってきた人物と、それまでいなかった人物だった。


ククリは警戒しながら、2人の正体を探った。


「・・・何者だ?

これは私個人とエルフ族全体の問題だ!

関係無い者は引っ込んでいてもらおう!」


「そうはいきません。」


(わたくし)たちは関係者なのですから。」


「なに?それはどういう・・・」


ククリが問いただそうとすると、突然2人が左腕を上げた。


すると腕輪が光り、偽装が解除されて元の姿に戻った。


現れたのは、シェイラとイーリスだ。


「これで文句はないはずです。」


「言いたいことがあるなら、直接聞かせてもらいましょうか。」


すぐに2人がダークエルフとハイエルフだということに気付いたククリは、表情を歪めて不気味な笑みを浮かべていた。


「・・・くっ・・・くっくっくっ・・・まさか・・・全員揃っていたとはな。

戦闘馬鹿のダークエルフ族と、逃げ隠れすることだけは上手いハイエルフ族・・・僥倖だ!

今日という日に、私はこれまで祈ったことのない神に感謝したい気分だ!

これで私の目的は、ほぼ達成された!」


「ずいぶんと気が早いですね。」


「逆にこの場で阻止されることを全く考えていないとは、貴女の方こそ傲慢で自惚れているのでありませんか?」


「お前が・・・お前たちエルフが・・・この私にそれを言うのか!

・・・気が変わった。

この場では少々痛めつける程度で止めてやろうと思っていたが、お前たちには死すら生温い!

自ら殺してくれと懇願するほどの、恐怖、苦痛、屈辱、ありとあらゆる絶望をその身に刻んでやる!」


それまで抑え込んでいた殺気をさらけ出したククリは、自分の左右に並ぶ魔物たちに、突撃の合図を送ろうとした。


相対する皆も構えて、すぐ攻撃に備えた。


だがそこへ、1人の女性が間に割って入ってきた。


「待ってください、ククリ!」


突然自分の名前を呼ぶ見知らぬ女性が目の前に立ち塞がり、ククリの表情は更に不機嫌になっていた。


それでもエルフ族ではない人物の乱入だったためか、返事を返すだけの理性は残っていたようだ。


「・・・邪魔です、今すぐ退きなさい。

退かないというのであれば、まずは貴女から・・・」


しかし女性はククリの警告を無視して、先程のシェイラ、イーリスと同様に左腕を上げると、腕輪が光って偽装が解除され、元の姿を現したのだ。


そして再びククリへと声をかけた。


「私の話を聞いてください、ククリ!」


その姿を見て、ククリは動きを止めた。


姿を現したのはランだ。


必死に訴えるランの姿に、先程までの不気味で不機嫌な表情が消え、旧友の名前を口にしていた。


「まさか・・・ラン・・・なの?」


「そうです!

風雷族の3姉妹、次女のランです!」


「生きて・・・いたのね。

ではライと、ラミは!」


「もちろん2人も無事です。

この場には来ていませんが、2人も貴女のことを心配していましたよ、ククリ。」


「そう・・・やはり無事だったのね・・・よかった。

組織からは行方不明で生死不明だと聞いていたけど、きっと生きているって信じていたわ。」


「この通り生きています。

ククリ、それにジェーンも、以前と変わりないようで安心しました。」


「そうね・・・私の方は変わりないわ。

ジェーンの方は、以前とは比べものにならないほど強くなったわよ。

それこそ、先代の巨神と同等か、それ以上にね。」


「そうですか。

ですが今は世間話をしている暇はありません。」


「そうね。

それで、ラン、いったい貴女たちに何があったの?」


「話せば長くなりますが、本当にいろいろありました。

簡単に説明しますと、私たちは裏切られたため組織から離反しました。

その際ある方に助けていただき、それまで信じていたことが全て嘘で、何が真実なのかを知ったのです。」


「ある方?」


「はい、とても素晴らしい方です。

そしてここにいる彼女たちは仲間で、今は行動を共にしています。」


このランの話を聞いて、ククリの表情から感情が消えた。


「・・・ラン、貴女には私がエルフ族を嫌って、いいえ、憎んでいることを伝えていたはずよね?」


「はい、覚えています。

理由までは教えてもらっていませんが、この話をするとき、貴女が内に秘めた怒りをあらわにすることも。」


「それなのに一緒に行動している?

ふざけないで!」


再び怒りの形相へと戻ったククリだったが、ランは一歩も引かずに話を続ける。


「ふざけてなどいません。

私は、私たちは至って真面目です。

ククリ、確かに貴女は過去に迫害を受けたのかもしれません。

しかしそれは、本当にエルフ族だったのですか?」


「何を言っている!

私がアイツ等の、エルフ族の顔を間違えるわけが無い!

あんな特徴的な耳が長く尖っている種族など、エルフ族以外にいるはずがない!」


「それは違います!

エルフ族以外にも、耳が長く尖っている種族は他にもいます!」


「そんなことは絶対にありえない!

私は長く生きてきたこれまでの間、組織の任務で様々な国に赴き、多種多様な種族を見てきた!

しかしその中には、耳が長くて尖っている種族など、エルフ族以外どこにもいなかった!

だからあれは間違いなくエルフ族だ!」


「それがいるのです!

私もまだ直接見たことはありませんが、エルフ族と同じ特徴を持った別の種族が存在するのは間違いありません!

しかもその種族は組織とつながっています!

ククリは騙されているのです!

おそらくククリが見たエルフ族と同じ耳の特徴持っていた者たちは・・・」


ランが事前にマコトから聞いていた、相手の追加特徴を確認しようとすると、ククリが冷たい声で話を遮って質問してきた。


「ねぇ、ラン・・・いったい誰が貴女にそんなことを教えたの?」


ククリの異変に気付かず、ランは正直に答えた。


「それは、私たちを助けてくださった方です。

その方は他にもいろいろな真実を教えてくださいました。

ですからククリ、どうか相手を間違えないで・・・」


そして中断された説明よりも先に説得を試みようとしたのだが、その言葉は最早ククリの耳には届かなかった。


「そう・・・可哀想なラン・・・貴女そいつに洗脳されて、嘘を教えられているのね。」


「違います!私は洗脳などされていませんし、そもそもその方は洗脳などしません!」


「そうよね、洗脳されているのだもの、自分が洗脳されていることに気付いていないのも当然だわ。」


「だから違うと言って・・・」


「安心して、今私が目を覚まさせてあげるから。

少し手荒になるけど我慢してね。」


ククリは先程中断した魔物たちへの合図を、躊躇なく行った。


「ククリ!」


必死に叫ぶランだったが、魔物たちはククリの指示に従って襲い掛かってくる。


一瞬反応が遅れてしまったランに魔物が迫ってきたが、それをティリアがカバーし、逆に魔物は来た方向へと吹っ飛んでいき、そのまま壁にめり込んで動かなくなってしまった。


同様にミザリィ、ナタリィ、シェイラ、ノワール、エリスも、それぞれ1体ずつ魔物たちを強制的に退席させていた。


それを見て、残りの魔物たちは警戒を強め、無策で襲い掛かるのを止め、慎重に隙を窺いはじめたようだ。


その間にティリアがランへと声をかける。


「ラン、今の彼女には何も言っても無駄です。

ここは話し合いではなく、強硬手段に切り替えます、いいですね?」


少しだけ迷いを見せたランだったが、今の状況ではそれ以外に方法が無いことも理解しているため、ティリアの提案を受け入れた。


「・・・わかりました。

まずは魔物を排除し、ククリを拘束しましょう。

すみませんが、ククリの相手は・・・」


私情を挟んでしまうことを懸念したランが、ククリの相手を他の誰かに頼もうとしたのだが、ティリアに先手を取られてしまった。


「それはランに任せますよ。

まさかできない、なんて言いませんよね?」


笑顔で挑発するティリアに、ランも笑顔で乗ってきた。


「ティリア・・・当然です。

ククリは私が確保しますから、他は任せますよ。」


「わかりました。

周りは気にしないでください。」


「おねがいします。

では、ご武運を。」


「そちらも。」


こうしてククリと魔物を相手に、戦いがはじまったのだった。




一方、ククリが話をしている最中、バカ王子は何をしていたのかというと、黒装束たちに周囲を護られながら、後ろに控えているメイドへ、ある指示を伝えていた。


「そこのメイド、ちょっとこっちに来るんだなん。」


突然呼ばれたメイドは、ビクビクしながらもバカ王子の傍へ近づいてきた。


このメイドは、少し前からバカ王子の身の回りの世話をするようになったのだが、いまだに手を出していない。


その一番の理由として、容姿や性格の全てがバカ王子の好みではなかったからだ。


瓶底のような分厚い眼鏡に、顔にはそばかすがあり、髪もボサボサで、いつも怯えたような態度のため、全く欲情しない。


そのため名前を覚える気にもならず、ただメイドといつも呼んでいる。


しかしこのメイド、メイドとしての技術だけは相当なものなのである。


快適な生活環境を整えることに関しては、これまで仕えてきたメイドの中で断トツでトップなのだ。


しかもバカ王子の命令に文句も言わなければ拒否もせず、とても従順なのである。


欲望を発散するための女性はいくらでもいるため、快適な生活を送ることを優先して、興味本位でこれまで手を出すこともなかった。


そんなメイドが、恐る恐る用件を訊ねてきた。


「はっ、はい。

なっ、何か御用でしょうか、王子殿下?」


するとメイドの言葉に、バカ王子が不機嫌そうに訂正した。


「違うんだなん。

今の僕ちんは商王なんだなん。

間違えるんじゃないんだなん。」


「しっ、失礼いたしました、商王様。」


慌てて謝罪しながら訂正するするメイドの姿に、バカ王子は興味なさそうに話をつづけることを優先した。


「まぁいいんだなん。

お前はこれから僕ちんの言う通りにするんだなん。」


「かっ、かしこまりました。

そっ、それで、私は何をすればよろしいのでしょうか?」


「今からこれを持って、伝令に走るんだなん。」


そう言ってバカ王子はメイドに、1枚のコインを渡した。


「あっ、あの、これは何でしょうか?」


「それは結界を抜けて外に出るために必要なものなんだなん。

お前にあげるんだなん。」


「あっ、ありがとうございます。

そっ、それで、伝令とは、どなたに何を伝えればよろしいのでしょうか?」


「長距離魔導砲の砲手へ、発射の指示を出してくるんだなん。」


「わっ、私がですか!」


「そうなんだなん。

場所はどこでもいいから、好きな場所にすぐ発射させるんだなん。

僕ちんの言うことを聞かないとどうなるか、全世界に思い知らせてやるんだなん。」


「うっ、承りました。

そっ、それでは、早速指示を伝えてまいりますので、お傍を離れることをお許しください。」


「許すんだなん。

それと移動には玉座の後ろの隠し通路を使うんだなん。

そこを通れば長距離魔導砲まですぐなんだなん。」


「かっ、かしこまりました。

でっ、では、行ってまいります。」


「任せたんだなん。」


メイドは教えられた通り、玉座の裏の隠し通路から謁見の間を出て行った。


隠し通路はメイドが通ってすぐに閉じてしまい、誰にも後を追えないようになっていた。


そんなことをしている間に、ククリの方の状況は一変し、戦いがはじまろうとしていたのだった。




バカ王子が裏でコソコソとしている頃、ランと対峙しているククリは、内心ブチ切れていながらも、頭の中では状況を冷静に分析していた。


最初に攻撃させた魔物たちが簡単に倒されことに更なる苛立ちを感じてはいるものの、ただ闇雲に攻撃させても同じ結果になることを理解していた。


通常であれば魔物たちを連携させ、そこへ自分の力を使って相手を翻弄するのが、ククリがよく使う戦い方なのだが、今回は違っていた。


ラン以外に対して残る魔物を全て向かわせ、倒すでも捕らえるでもなく、足止めだけを命じたのだ。


そして黒装束たちには、そのままバカ王子の護衛を継続して命じた。


何故そのような命令をしたのかというと、今のククリにとっては、ランをおとなしくさせることが何よりも最優先だからである。


そんなククリの意図を理解し、ランは迷いなくその誘いに応じた。


ティリア、ミザリィ、ナタリィ、シェイラ、ノワール、エリスの6人も、最初から2人の邪魔をするつもりはないようだ。


そのまま魔物の対応をはじめていた。


これによってククリが望んだ通り、ランと1対1の状況になったのだ。


「それではラン、あれからどれくらい強くなったのか測ってあげるわ。

まずは1本から行くわよ。」


実際の心情とは違い、穏やかな口調でククリがそう言うと、3本ある尻尾の内の1本に自身の力を集中した。


するとその尻尾が、ものすごい速さと勢いでランに襲い掛かってきたのだ。


しかしランはそれをものともせず、正面から向かってきた尻尾を、左手で軽く弾いてみせた。


尻尾は追撃することなく、一度ククリの許へと戻っていった。


「まずは最後に手合わせしたときの貴女の実力に合わせてみたけど、ちゃんと成長しているみたいで安心したわ。」


「当然です。」


「ふふふっ、懐かしいわね。

昔はこうやって貴女やライ、キリやジェーンの相手をしてあげていたのよね。

そして手加減する私に、決まって本気を出すようにと文句を言う。

だけど私が本気になる前に、貴女たちが先に降参してしまうの。

まるで昨日のことのように思い出せるわ。」


目を閉じて過去の光景を楽しそうに思い出しているククリは、余裕からなのか一見無防備に見える。


だがランは手を出さず、ククリの思い出話に付き合った。


「確かに、当時はそうでしたね。

ですが、今もそうだと言いたいのですか?」


「さあどうかしら。

少なくともジェーンは、私の本気と互角に渡り合えるようになったわよ。

毎日私の訓練を受けて、必死に強くなったの。」


「そうですか・・・ですがそれは私も同じです。

今の私は、ククリの本気ですら生温いほどに強くなったのですから。」


ククリは目を開くと、探るようにランを見つめた。


「口では何とでも言えるわね。

私に認めてほしいのなら、直接力を示しなさい。」


「もちろんです。」


「いい心掛けね。

では次は2本で行くわよ。」


再びククリが尻尾に力を集中させると、今度は2本の尻尾が絡み合い、1本にまとまった。


そして先程とは比べ物にならない速度と威力で、ランに襲い掛かってきたのだ。


ランは余裕の表情で、正面から向かってくる尻尾を、先程と同じく左手で軽く弾こうとした。


しかし今度は尻尾が違う動きに変化した。


ランの少し手前で、絡み合っていた尻尾が解け、正面ではなく左右から同時に、しかも足と頭に向かって襲い掛かってきたのだ。


だがランはそれすらものともせず、右手で頭に向かってきた尻尾を掴んで受け止め、左足で足に向かってきた尻尾を踏みつけていた。


それをククリは楽しそうに見ているのだが、突然ランが怒った口調で文句を言ってきた。


「ククリ!私を試すのはもう十分でしょう!

次は本気で来なさい!

私はその本気の貴女さえ、軽くあしらってみせます!」


ランが2本の尻尾を解放すると、ククリは何も攻撃せずに、再び自分の許に引っ込めた。


「ふふふっ、大きく出たわね。」


表情と声は楽しそうだが、身に纏うククリの雰囲気は全くの逆だ。


それに全く臆することなく、ランは強気の発言を続ける。


「もし次に本気で来なければ、こんな茶番はとっとと終わらせてもらいますよ!」


「別にふざけているつもりはないのだけど、まぁいいでしょう。

次はお望みの本気です。」


言葉通り、ククリは全ての尻尾に全力で力を集中させると、3本の尻尾がそれぞれ別方向からランに襲い掛かろうとした。


だがそうはならなかった。


いつの間にかランがククリの背後へと音も無く回り込んでおり、左手だけで3本全ての尻尾を掴んでいたのだ。


これにはさすがのククリも驚きを隠せなかった。


「なっ!?いつの間に!」


しかしこのククリの疑問には答えず、ランは怒りの形相で最終勧告を告げた。


「ククリ、私は本気で来いといったはずです。」


そのあまりの迫力に飲まれそうになりながらも、ククリは何とか反論を口にした。


「でっ、ですから見ての通り私は本気で・・・」


この答えが更にランの怒りを煽ることになる。


「いくら力だけは本気になっても、こんな小手先の技で誤魔化していては、本気からはほど遠いのですよ。

私はククリの全てを出し切った本気で来なさいと言っているのです!

ククリ、本当の貴女の力は、別にあるはずです!」


ランの指摘に、ククリから笑顔が消えた。


「・・・それはどういうことかしら?」


探りを入れてくるククリに、ランは自分が知る情報を包み隠さず明かした。


「私は知っているのですよ。

今のその姿が、本当の貴女の姿ではないということを。

そして貴女が真の本気を出すには、その姿を保つことができず、本来の姿に戻らなければいけないということもね。」


今まで誰にも明かしたことが無い自身の秘密がランの口から語られ、ククリはあきらかに動揺していた。


「っ!?・・・一番付き合いの長いジェーンですら知らないことを、どうして貴女が知っているのかしら?

まさかとは思いますが、ラン・・・貴女は私の正体についても知っているというのですか?」


どこから、そしてどこまで自分の情報が洩れているのか慎重に探ろうとするククリであったが、話は予想とは違う方向へと進む。


「いいえ、残念ながらそこまでは教えてもらえませんでした。

それについては自分の目で直接確かめるようにと言われていますので。」


ランの話から第三者の存在が浮かび上がり、ククリはその人物に注目した。


「教えてもらえなかった?

それはつまり、貴女に私のことを教えた人物がいる、ということですね。

その人物はいったい何者ですか!」


情報漏洩の元を突きとめるために、ククリは少しでもランから情報を引き出そうと必死だ。


しかしランは、その人物の詳細な情報についてだけは、頑なに口を閉ざした。


「申し訳ありませんが、今この場では答えられません。

ただ、私たちを助けてくださった方、とだけ言っておきましょう。」


「先程から何度か話に出てきている人物のことですね?」


「そうです。

・・・話はここまでです。

ククリ、次が最後です。

10秒だけ考える時間をあげます。

どうするかよく考えて決めてください。」


ランに話を打ち切られ、ククリは時間切れになる前に、覚悟を決めて決心したのだった。

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