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無双するご主人様のハーレム事情  作者: 不利位打夢
第17章 商い革命
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商国での会談1

日が変わり、いつも通り日課の早朝訓練を行い、朝食を食べ終えた頃には、昨日までのお祝いムードはすっかり消えていた。


商国での会談に向けて皆の意識が切り替わっており、陰の一族の拠点は緊張感に包まれている。


今この場には、皇国と軍国以外の会談参加者が集まっていた。


「では皆さん、そろそろ行きますよ。

準備はよろしいですか?」


「はいっ!(×皆)」


皆の返事を確認してから、シルフィナはゲートを開く。


ゲートを抜けた先は、商国の国境近くの、目立たない場所だ。


ここで皇国と軍国の参加者たちと合流し、商国へと入国する段取りになっている。


既に合流場所には、皇国の参加者3人と軍国の参加者1人、そして迎えに行っていたマコトが待っていた。


すぐにシルフィナがマコトに声をかける。


「お待たせいたしました、マコト様。」


「いや、俺たちも少し前に着いたところだ。

これで全員揃ったな。」


「はい。」


「では予定通り、会談への参加者は、このまま商国へ入国してくれ。

イーリスとミレーヌは、リンの能力を使って影から皆のサポートを頼む。」


「はいっ!(×皆)」


「エステルとクロエは、護衛のランとガーネットから離れるなよ。

1人になると絶対に狙われるからな。」


「わかっている。」


素っ気なく答えるエステルとは対照的に、クロエは笑顔で答えながら、ついでに気になっていたことを質問してきた。


「もちろんや。

それで、マコトはんとシルフィナはんは、これからどうするんですか?」


これに対してマコトは、大まかな行動予定を答えた。


「俺は軍国への侵入者を警戒しながら、まずは長距離魔導砲を無力化する。

その後バカ王子の周辺を探り、不正の証拠集めなどをするつもりだ。

シルフィナにはタイミングを見計らって、会談の途中でエナンとカーラと共に乱入してもらう。

そうなれば確実に戦闘がはじまるはずだから、事前に決めておいた役割通りに動く手はずだ。」


戦闘という物騒な言葉が出てきたものの、クロエに気にした様子はない。


「わかりました、そこはお任せします。」


ここで時間となったため、マコトは話を切り上げた。


「さて、そろそろいい時間だな。

皆、行動開始だ。」


「はいっ!(×皆)」


こうしてマコトとシルフィナ以外の皆は、事前に用意してあった馬車へと乗り込み、商国の国境へと向かった。


馬車が国境にある検問所へと着くと、会談への参加者である証として開催通知を提示した。


一行はすぐには通ることができ、そのまま商国の王城へと案内された。


ただ開催通知を提示した際に、担当した入国管理官がひどく驚いていたのだが、誰もそのことには触れずにいた。


実はバカ王子の手は検問所にも伸びており、当初の予定では南部の国が全て参加することは無理だったはずなのだ。


何故なら同じ日の同じ時間に開催通知が各国に届くように手配していたため、いくつかの国は確実に会談へ間に合わないからである。


それも当然だ。


商国までの移動距離は、国ごとに違うのだから。


今回会談への開催通知は2日前に届いていた。


会談を計画した者の考えでは、各国が通知内容を精査して参加者の人選を終えるまで、少なくとも1日。


そこから商国へ向かった場合、どんなに急いでも移動には2日以上時間がかかってしまう国が多い。


ほとんどの国が会談の開催日時に間に合わないようにし、商国を優位な立場にすることが狙いだったのだ。


この、ほとんどの国、というのがポイントで、逆に考えれば、間に合う国も一部ある、ということだ。


そして商国は、間に合った国をある程度優遇し、間に合わなかった国を冷遇することで、各国に対して商国主体の格付けをする。


こうすることで各国の間に軋轢を生み、互いに協力できない体制を作るのが狙いだった。


しかし今回一部の国が他国へ会談参加の委託をし、更に同時に検問所へと一斉にやってきた。


これは南部の国全てが結束している証であり、当初聞いていた話とは違っていたため、入国管理官が驚くのも無理は無い。


入国管理官は、ここで無理矢理何かしらの理由をでっち上げて足止めし、会談に間に合わなくするることも考えた。


だがそんなことをしては自分の首も危ない上に、逆に商国の立場をも危うくする可能性がある。


そこで入国管理官が取った手段が、簡単な審査で少しだけ時間を稼ぎ、その間に先触れを王城へと送って状況報告をすることだった。


これは元々不測の事態が起こった場合に指示されていたことでもあった。


検問所から王城へは、馬を走らせれば、そう時間はかからない。


しかし間には他にも検問所が4つ、王城までは5つの検問所を通る必要がある。


簡単な審査を行ったとしても、それなりの時間は稼げる。


そのおかげもあって、先触れは会談の参加者たちよりも早く、状況報告を届けることができた。


そして最終的に状況報告を受け取ったのが、バカ王子の護衛の1人、獣人の女性だ。


獣人の女性は受けた報告を全て確認したものの、特に驚いた様子はなく、冷静なままだった。


「・・・なるほど、当初の予定通りにはなりませんでしたが、想定の範囲内です。

ご苦労様でした、貴方は各検問所へ可能な限り次の伝令をお願いします。

会談の参加者たちの対応は、こちらで行いますので、余計なことはしないように、と。」


新たな伝令を受け、先触れはすぐに来た道を戻って行った。


残った獣人の女性は、その場で少し考えをまとめると、そのままある場所へとゆっくり向かった。


向かった先は護衛対象のバカ王子の許、ではなく、王城で一番高い位置にある場所、監視塔だ。


そこには先客がいた。


いたのは女性で、背が高く、筋肉質でガッチリとした体系だ。


その体格のいい女性の視線の先には、王城へと続く最後の検問所があった。


獣人の女性は、その体格のいい女性に声をかけた。


「どうやら貴女の予想通り、というよりは、願望通りになりそうよ。」


獣人の女性の言葉に振り返らず、体格のいい女性は答えた。


「そうかい・・・あれだね。

ちょうど見えてきたところだよ。」


体格のいい女性の視線の先に獣人の女性も視線を向けると、そこには最後の検問所を抜けて王城へ向かう馬車の集団がいた。


「どうやら私の指示通り、余計なことはしなかったようね。」


「だけど数が足りないみたいだよ。

本当にアタシの目的の奴はいるのかい?」


「ええ、報告では貴女の目的の国は参加しているわ。

数が少ないのは、軍国が、機械国、魔導国、科学国を代表して、術国が、剣国、槍国、弓国、拳国を代表して会談に参加するからよ。」


この獣人の女性の話を興味なさそうに聞きながら、体格のいい女性は別の部分に興味を示した。


「へぇー、そうなのかい。

でもアンタが求めていた結果にならなかったのは、ずいぶんと久しぶりだねぇ。

この後大丈夫なのかい?」


心配する言葉とは逆に、体格のいい女性の表情は楽しそうだ。


これに対して獣人の女性は特に気にした様子も無く、素っ気なく答えた。


「想定の範囲内だから問題無いわ。」


これは予想通りの反応だったらしく、体格のいい女性もそれ以上は深く聞かなかった。


代わりに懸念していることについて話を変えてきた。


「そうかい。

だけど今回の作戦、よく上の連中が許可したねぇ。

今回呼びつけた国の中には、組織が裏で支配してる国もあるんだろ?

アタシは後で上の連中に文句を言われるのは嫌だよ。」


「それも問題無いわ。

それだけ組織にとって、軍国と軍王が重要だということよ。

噂ではいまだに組織は、軍国内にすら潜入できていないらしいわ。

今回の作戦に便乗して、手薄になった軍国への潜入作戦案を持ちかけたら、すぐに許可が下りたの。」


獣人の女性の思惑通りに計画が通ったことを知り、体格のいい女性は別の話を振った。


「それなら大丈夫そうだねぇ。

しかし軍王ねぇ・・・いったい組織は軍国で軍王とやらを使って何をしてたんだろうねぇ。」


だがこれは獣人の女性にとっては、どうでもいいことだったようだ。


「さぁ、それは私も知らないわ。

軍王には興味も無いし。」


この答えが返ってくることは事前にわかっていたらしく、体格のいい女性は本題に入った。


どうやら体格のいい女性は、最初からこの話題を振りたかったらしい。


「そりゃそうだろな。

アンタの興味は、アイツらだろ?

正確には姉貴の方か。

昔馴染みでアンタと智謀で対等に渡り合えたのは、アイツの姉貴くらいだからな。

いや、もう1人、この間行方不明になった3姉妹の一番下、ちびっ子もいたな。

アンタら3人でよくつるんでたもんな。」


すると獣人の女性の表情が柔らかくなり、懐かしむように話し出した。


「私なんて彼女たちの足元にも及ばないわ。

あの2人は本当の天才よ。

そして私にとっては師であり、大切な友人でもある。

だからこそ信じられないのよ。

これまで長い間無事だったあの2人が、こうも立て続けに失敗するなんて。

絶対に何か裏があるはずよ。」


獣人の女性の本心からの言葉に、体格のいい女性も真の狙いに気付いたようだ。


「だから軍国で捕らわれの身になってる姉貴の方を助けて、事情を聞き出そうってことか。」


「・・・ええ、そうよ。

私はそれこそが、様々な疑問の答えにつながると思っているの。」


納得できる答えが聞けて満足する体格のいい女性だったが、すぐに新たな疑問が浮上してきた。


「確かにそれが一番手っ取り早いだろうな。

でもよぉ、姉貴がそんなことになってるっていうのに、アイツは何で黙ってるんだい?

アイツの性格なら、すぐにでも助けに行きそうなもんだけどねぇ。」


この疑問の答えを、獣人の女性はあらかじめ知っていたようだ。


「聞いた話では、例の海底神殿攻略に手間取っているらしいわ。

いまだに戻っていないらしいから、軍国の状況も知らないのでしょうね。」


「アイツがそんなに手こずってんのかい?

いったい何がいるんだい、あの海底神殿には。」


「あそこには、かつて善神と共にあった最強の武人族がいるのよ。

だてにあの戦争を生き残っていないということね。」


「へぇー・・・じゃぁここが終わったら加勢に行ってやろうかねぇ。

久しぶりにアイツが悔しがる顔を見てみたいしねぇ。」


冗談交じりに楽しそうにしている体格のいい女性だったが、何故か獣人の女性は真剣な表情で考え込んでいた。


「・・・」


「んっ?どうしたんだい?」


「・・・えっ?ああ、御免なさい。

少し考え事を、ね。」


「それはこの後の会談のことかい?」


「そっちは既にやることが決まっているから、今更考える必要は何も無いわ。」


「じゃぁ何を考えてたんだい?」


獣人の女性は少し迷ったものの、意を決して自分の考えを口にした。


「・・・おかしい、と思ったのよ。」


「おかしい?何がだい?」


「例の海底神殿攻略作戦よ。

聞いた話によると、組織は今も継続して追加戦力を送っているらしいわ。

ただ送っている戦力というのが、低位の魔物だけらしいの。」


「それって、ゴブリンやオークのことかい?」


「ええ。

しかも相当な数をね。」


「つまり圧倒的な物量で畳み掛けようってことだろ。

それのどこがおかしいんだい?」


「数日程度の戦力投入なら私もおかしいと思わないわ。

でも作戦がはじまってから、既に3ヶ月近く経っているのよ。

それだけの期間同じことを続けているのは、あきらかに異常だわ。」


「それだけ相手が強いってことじゃないのかい。

まぁでも今も戦力を送り続けてるってことは、互いの戦力が拮抗してるってことなんだろうねぇ。

アタシだったら、いまだに変わらない戦力を送ってくれる組織に感謝するよ。」


「普通はそう思うでしょうね。

でもこう考えたらどうかしら。

大量に低位の魔物を投入することで互角なら、そこに貴女や私のような戦力を1人投入すれば、すぐに決着がつくのではないか、とね。」


この獣人の女性の指摘に、体格のいい女性も違和感を感じたようだ。


「あっ!・・・確かに、アタシやアンタなら、有象無象のゴブリンやオークなんかと比較にならないくらいの戦力になる。

それにアイツとの連携だってできるから、どんなにかかっても数日で制圧できるはずだよ!」


「貴女の言う通りよ。

私たちが他の仕事で忙しかったというのであれば、作戦に招集されなかったのも納得できるわ。

でも実際にここ3ヶ月の私たちの仕事はどうだったかしら?」


「・・・基本的に影から護衛してただけだから、ハッキリ言って暇だったし、しかも2人もいるか?って正直思ったよ。

まぁアンタが話し相手になってくれたから、アタシは何とか退屈はしなかったんだけどねぇ。」


「つまり、私たちの内どちらかは、海底神殿の攻略に参加しても問題無い状態だった、ということよね?」


「確かにねぇ。

でも組織がアタシたちの予定を把握してなかったってことは無いかい?」


「それは無いわね。

週1回は定期報告していたし、そのときに、たいした仕事ではないから代わりの者を寄こしてもらって休暇が取れないか、と申請もしたわ。」


「アンタそんな報告してたんだねぇ・・・それで、組織の返事はどうだったんだい?」


「代わりの者は送れないから、2人で今の仕事を継続するように、だそうよ。

低位の魔物とはいえ、海底神殿攻略の方には大量の戦力投入ができても、私たちの方には一切追加戦力を送れない、これはあきらかにおかしい話よ。」


「なるほどねぇ。

それで、アンタはこの事態をどう考えているんだい?」


「いい方の考えと悪い方の考え、どちらから聞きたいかしら?」


なんとなくどちらを聞いてほしいのかわかったが、体格のいい女性はあえて違う方から聞くことにした。


「とりあえずいい方からにしておこうかねぇ。」


そう言われることがわかっていたのか、獣人の女性は気にせず答えた。


「そっちは、責任ある仕事を彼女1人に任せることによって上に立つ者としての自覚を持たせて成長を促すため、といったところね。」


この答えに、体格のいい女性は苦笑いを浮かべていた。


「まぁありがちな考えだねぇ。

アタシにはただの奇麗ごとにも聞こえるけど。」


「そうね。

でも表向きの答えとしては問題無いわ。」


「確かにねぇ。

それで、悪い方の考えってのは何なんだい?」


獣人の女性は少し躊躇したものの、自分の考えを伝えた。


「・・・組織は海底神殿攻略に余計な邪魔を入れたくないのではないか、という考えよ。」


「余計な邪魔?アタシたちがかい?」


「そうよ。」


「意味がわからないねぇ。

いったいどういうことだい?」


「つまり組織としては、彼女1人が海底神殿攻略に参加している今の状態が都合がいい、ということよ。」


「何だいそれは。

それじゃぁまるで、組織がアイツを使って何か実験でもしようとしてるとしか・・・まさか!・・・そういうことなのかい?」


自分の考えを更に裏付けるために、獣人の女性は最近感じていた周囲の様子を話題にあげた。


「私は悪い方の可能性が高いと考えているわ。

それはここ最近の私たちの状況からもわかることよ。」


「お前も気付いてたってことは、やっぱりアタシの気の所為じゃなかったんだな。」


どうやら体格のいい女性も、同様に感じていたようだ。


そのため獣人の女性は心強い同志を得たと感じたのか、更に詳しい意見を口にした。


「ええ、ときどき感じる不快な視線、あれはおそらく私たちを監視しているわね。

最初は私たちが失敗しないか監視しているのかと思ったのだけど、あの視線はそういった類のものではないわ。

きっと私たちが組織を裏切って逃げ出さないか、そちらを監視しているのよ。」


それを聞いて体格のいい女性は、慌てて周囲を警戒しはじめた。


「おいおいおい、だったらここでこんな話をしてるのはまずいんじゃないかい?」


しかし獣人の女性は周囲を警戒をしていたものの、そこまで慌ててはいなかった。


「おそらく大丈夫、だと思いたいわね。

今のところ私は監視されている気配を感じないから。

貴女はどうかしら?」


「・・・アタシもここに来てからは気配を感じてないよ。」


ここで2人の緊張が少しだけ解けた。


「私たち2人が気付かないのであれば大丈夫だとは思うけど・・・今後は今まで以上に慎重になりましょう。」


「そうだね。

で、アンタはこれからどうするつもりだい?

やっぱり組織を抜けるつもりかい?」


「・・・わからないわ。

正直なところ、私1人では、すぐ組織に捕まってしまうでしょうね。

せめてどこか匿ってくれる国でもないと、逃げるのは現実的ではないわ。」


すると体格のいい女性が、自然な流れで提案してきた。


「だったら、アタシが一緒ならどうだい?」


まさか自分が聞く前に、自分が最も求めていた答えを聞けるとは思っていなかったようで、獣人の女性は思わず聞き返してしまった。


「えっ?・・・本気、なの?」


「もちろん本気だよ。」


「組織と敵対することになるのよ?」


「水臭いこと言うねぇ。

アタシとしてはアンタとの付き合いの方が長いし、それにこれまで一緒にやってきたんだ。

アタシは今更アンタと別々の道を歩く気はないよ。」


「それは私もそうだけど・・・でも間違いなく、辛く厳しい道のりになるわよ。

それでもいいの?」


これに体格のいい女性は迷わず答えた。


「望むところだよ。」


「そう・・・ありがとう。」


獣人の女性の心からの感謝であったが、体格のいい女性は当然だといった表情だ。


「礼なんかいらないよ。

そうだ、ついでにアイツ等もアタシたちの方に巻き込むってのはどうだい?

仲間は多い方がいいし、それに旅は道連れって言うじゃないか。」


自分では考えつかなかった提案に、獣人の女性は本気で考えはじめた。


「・・・なるほど・・・それはいい考えね。

確かに彼女たちが仲間に加わってくれるのなら、とても心強いわ。」


「だろ。

それで、いつ行動に移すんだい?」


「そうね・・・ここでの仕事が成功した後、そこが狙い目ね。

私たちが従順な所を見せておけば、組織も油断して監視を緩めるはず。

逃げるならそこが一番確率が高いと思う。

ただ問題があるわ。」


「問題?何だいそれは?」


「転生システム内の私たちの本来の身体よ。

まずあれをどうにかしないと、この複製体の身体で逃げても、いずれは強制的に戻ってしまうわ。」


「確かにねぇ。

でもアタシたちには、どうすることもできないことだよ。

何か考えはあるのかい?」


「1つだけ。

幸いにも私たちの身体が入っている転生システムは、設置場所から動力供給を受けるタイプではないわ。

移動できるように動力を携帯していて、更に私たち自身が動力を供給できるタイプよ。

しかも今は、ここの隠し地下室に置いてあるわ。

だから元の身体に戻ることができないのであれば、転生システムごと持って逃げればいいのよ。」


「それはまた、無茶な作戦だねぇ。」


「私1人ならそうだけど、貴女がいれば話は変わるわ。」


「何だい、最初からアタシは頭数に入ってたってことかい。

さっきのやり取りは何だったのかねぇ。」


そうは言うものの、体格のいい女性は嬉しそうだ。


「貴女のことは昔も今も信じているけど、私の提案を無茶な受け入れてくれるかは五分五分だったもの。

だから受け入れてもらえて、より安全な方法が使えることになってよかったわ。」


「まぁいいけどねぇ。

一応聞いておくけど、もしアタシが協力しないって言ったら、アンタ1人でどうやって逃げるつもりだったんだい?」


「そのときは私の転生システムを破壊して、元の身体が無事なら自害してみるのもいいかと思っていたわ。

運が良ければ元の身体に戻れるかもしれないしね。」


「アンタねぇ・・・どう考えてもそれは無茶ってもんだよ。

それで死んじまったらどうするつもりだったんだい。」


「組織にとって私の力は必要なものの1つのはずだから、それを失わせることで一矢報いたとでも思っておくわ。」


「そうくるかい。

だけどそっちはやらなくてすんだんだから、とりあえず一安心だよ。」


「そうね。

私も賭けに出る必要が無くて安心したわ。」


「まったくだよ。

おっと、話し込んでる内に、どうやらお客さんたちが来たみたいだよ。」


体格のいい女性の言葉通り、馬車から会談の参加者たちが降りているのが見えた。


それを獣人の女性も確認した。


「ええ、そうね。

ここからは意識を切り替えましょう。

まずは今回の会談を成功させないことには、私たちの計画は先に進めないのだから。」


「ああ、わかってるよ。

おーおー、皆で仲良く一緒に来て、さすが同盟国は結束が固いねぇ。

で、アタシの目的の奴はどこにいるんだい?

見たところ、それらしい奴が見当たらないんだけどねぇ。」


「さすがにわからないわ。

私が知っているのは、事前報告で貴女の目的の国が参加しているということだけよ。

あの中の誰がその国の参加者なのかまでは、把握していないわ。

ただ、代表者として来たほとんどが、予想通りの顔ぶれね。」


「まぁいいさね。

すぐにわかることさ。」


「そうね。

では私たちもそろそろ行きましょう。

遅れると面倒だわ。」


「だねぇ。

じゃぁ行くとするかねぇ」


そう言って獣人の女性と体格のいい女性は、監視塔を降りて会談場所へと向かった。


しかしこのとき2人は気付いていなかった。


隠れて監視しながら、2人の内緒話を聞いてた者たちがいたことを。


そして2人が立ち去ったのを確認してから、監視していた者たちも監視塔から消えたのだった。

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