貴族と会うのは初めてです
3話目です。
“地の文”と“会話文”のバランスや入り方が中々難しいですねぇ。
魔物の群れとの戦闘に協力し冒険者になることを了承した達哉はラルゴとデイビスに連れられ指揮官である貴族の元へと向かう。
現代社会の日本では貴族という存在は過去のもので今では創作物のストーリーに出てくるキャラクターしかイメージが無い。
それも大方が権力を笠に着て傍若無人な振る舞いをしていたり、己が特別な存在だと思い込み他者を見下す性悪だったりとあまり良い印象が無い。
勿論、そんな悪い者ばかりでなく良い貴族も居るのだが、達哉が最近よく読むようになったライトノベルの印象が強く貴族と聞いて嫌そうな顔をしていると、それに気付いたラルゴが口を開く。
「お前の世界の貴族にも性格の悪い奴が居るみたいだな。でも安心しろ、これから会うブラウ子爵は俺の昔からの馴染みだ。領地の民からも慕われてるいい奴だ、お前のことも悪いようにはしねぇさ。」
「異世界から来た達哉がこの世界で1からやっていくのは大変だろう。だが、今回の殲滅戦に協力してくれるなら子爵にある程度の援助を約束してもらえるだろうし、お前程の実力あれば私設兵か騎士団に取り立ててもらえるかもな!」
と、私設兵や騎士団に取り立ててもらえるのは憧れなのかデイビスが興奮気味に説明するも
「まぁ、住むとこもなきゃどうにもならんし、援助してもらえるなら有難いけど……………騎士団とかは遠慮したいなぁ。」
と、目を逸らしながら答えると、そんな反応が返ってくると思っていなかったのか軽く驚きながら
「何故だ!?騎士団に取り立ててもらえるなんて誇り高いことだぞ!?功績によっては準男爵の地位だって得られるんだぞ!?」
「う~ん、地位とか興味無いし、冒険者の方が自由そうやし…………ま、全て自己責任になるから大変やろうけど。」
そう答える達哉にラルゴが肩を組んできた。
「お前も固っ苦しいのは苦手か! 冒険者はいいぞぉ、ある程度のルールはあるが基本的には自由だ!自分の好きなようにやれる!下手に爵位なんか貰っても貴族同士の腹の探り合いなんて面倒に巻き込まれるだけだ!冒険者としてやってくんなら俺が面倒見てやるぜ!」
地位より冒険者になることを選んだのが気に入ったのか機嫌良さそうに達哉の肩を叩くも
(年下に面倒見てもらうのってどうなんだろ~?)
と、苦笑いを返す。
そんな様子にデイビスは何故か呆れた顔をラルゴに向ける。
そうやって歩いていると天幕の張られた立派なテントの前に着いた。
「よう!ご苦労さん、ブラウ子爵に話があるんだ。取り次いでもらえるか?」
天幕の前に立つ2人の兵士に声をかけると何故か兵士達は緊張した面持ちになり
「し、少々お待ち下さい!急ぎ取り次ぎます!」
と、答えると兵士の1人が小走りにテントへ向かう。
どのくらい待たされるのかと思う間も無くテントから兵士が戻ってきた。
「ブラウ子爵がお会いになられます。どうぞお通り下さい、ラルゴ様。」
「おう、ありがとよ。」
あっさり通されるも、ラルゴが兵士に様付けで呼ばれたことを疑問に思いながらも
(やり手の冒険者になればそれなりに尊敬の念を抱かれるってやつか?)
と納得する。
テントの中に入ると見た目より広い空間になっており、天井にはリング状の照明のような物が室内を照らしていた。
ローテーブルを挟んで質の良さそうなソファが置いてあり、その奥には衝立で仕切られてベッドが設置してある。
その手前には執務机がありそこには短い銀髪の端整な顔立ちに笑顔を浮かべた男が座っていた。
「やあ、よく来てくれたね、ラルゴ殿。話というのは……………そこに連れている彼のことかい?」
そう言いながら立ち上がり3人をソファに座るように促す。
歳は30手前くらい、芝居の舞台で見るような軽く装飾が施された軍服を身に纏いながらも人の良さそうな笑顔を浮かべてはいるが、ラルゴの話が達哉の事に関すると見抜く洞察力は侮れない。
「話が早くて助かるぜ。こいつは達哉、戦場の真っ只中に現れた漂流者だ。」
全員がソファに座るとラルゴが面白いモノを見つけたと言わんばかりに達哉の肩を叩く。
まさかの来訪者にブラウは目を見開き
「戦場の真っ只中に現れるとはねぇ。時と場所を選ばないとはいえ、とんでもない所に現れたものだ。 私はヴェルテ・ブラウ、この殲滅戦の指揮を任されている子爵だ、宜しく。」
そう言いながら手を差し出してくる。
それに応え達哉も手を差し出し握手を交わしながら
「あ、どうも、達哉です。」
と、初めて見る貴族に少し緊張気味に答える。
握手を交わし終えるとブラウはテーブルの上に置いてあったベルを鳴らす。
すると執事然とした初老の男性が現れ持ってきたカップにポットからお茶を注ぎ4人の前に置くとブラウに一礼をし退出していく。
「とりあえず飲んで一息ついてくれ。 それにしても戦場の真っ只中に現れたのは災難だったが、ラルゴ殿達に助けられたのは幸運だったね。」
そんなブラウの言葉にデイビスは目を逸らしラルゴは頬を掻きながら
「いや~それがよ、助けられたのは俺達の方なんだよ。」
「………………どういう事だい?」
予想外の言葉に一瞬固まりながらもラルゴとデイビスを見て問い質す。
「武器が損耗したので補充するため下がろうとしたとこに達哉が居たのです。それで足を止めたとこに2匹のオークジェネラルに襲撃されました。」
「オークジェネラルが2匹も!?」
「ああ、不覚にも吹き飛ばされてよぉ。ミーシャなんか気絶しちまうし、もう駄目かと思ったら達哉が俺達の取り落とした武器を拾ってオークジェネラルを倒したんだ。しかもそれぞれ1撃で、だ! その上俺の持っていたグレートソードを軽々と振り回してたんだ!こいつはいい戦力になるぜ!」
ラルゴの言葉にブラウは信じられないものでも見るように達哉を凝視しながら
「1人でオークジェネラルを2匹も!?…………この体格でグレートソードを軽々と!?」
「にわかには信じがたいでしょうが、事実です。彼のおかげでミーシャも我々も助かりました。」
「で、だ、このまま今回の殲滅戦に協力してもらうことになったんでお前さんに面通ししにきたってワケだ。」
2人の言葉にブラウは暫し思案して再び達哉を見ながら口を開く。
「それだけの力があるのなら騎士団に…………いや、私の私設兵に欲しいとこだけど、どうかな?」
そんなブラウの期待を込めた視線に頬を掻きながら
「え~っと、申し訳ないんですが………冒険者になろうかなぁって思ってるんですよねぇ。」
苦笑いをうかべる達哉から視線を外しラルゴをジト目で見ながら
「またラルゴ殿が何か吹き込んだんでしょう? はぁ、本来ならラルゴ殿がこの殲滅戦の指揮官をやっていたはずなんですよ?貴方がグラディス家を出奔したりしなければ私がこんな大変な役割を押し付けられる事も無かったんですよ? 優秀な人材が居れば此方に回してくれてもよいでしょうに、まったく。」
溜息をつきながら不満をぶつけてくるブラウに今度はラルゴが苦笑いする。
「ん?ラルゴが指揮官?出奔?どういうこと?」
また会話に置いてかれそうになりながらも引っ掛かる言葉を疑問に思いデイビスに尋ねる。
「ラルゴは本来、グラディス伯爵家の嫡男だったんだ。でもこういう性格だから貴族同士の面倒事を嫌って12年前、突然姿をくらませたんだよ。それから7年後、辺境で冒険者をやっていたのが見つかったんだけど、その頃には三男のソラル殿がグラディス家の跡継ぎとして決まっていたからラルゴはそのまま冒険者を続けて今ではB級冒険者なのさ。」
「ブラウ子爵家はグラディス伯爵家と懇意にさせてもらっていてね、一人っ子だった私はラルゴ殿を兄のように慕っていたよ。よく剣や体術の稽古をつけてくれたものさ。」
「んな昔の話なんかどうでもいいだろ!次男が侯爵家に婿入り、優秀な三男が跡継ぎになって何も問題ねぇだろ」
家の事を話題に出されるのは面白くないらしくラルゴは腕を組み不満を漏らす。
「どうでもいいと言うことはないのですが……………そうですね、今は達哉殿の事ですね。冒険者になるというのは私にとって残念ですが、オークジェネラルを2匹も屠る実力を持つ君が殲滅戦に協力してもらえるのは助かります。先ずは装備を整えてもらいましょう。得意な武器は何ですか?」
「得意な武器?………………何だろ?」
アクション俳優を目指していただけに素手による格闘術以外に色んな武器を使った事はある。だが、それはあくまでも戯闘であり武器を相手に当てる、殺すという経験はこの世界に来て初めてのことなので返答に困る。
「達哉は戦いの無い平和な世界から来たらしいんだ。あの戦闘センスなら何使ってもいけると思うが、とりあえず一通りの武器を振ってみて一番合うやつを使ってみればいいんじゃねぇか?」
悩む様子の達哉を見てそうラルゴが提案するもラルゴの言葉にまた驚きの表情で達哉を見ながら
「戦ったことが無いのにオークジェネラルを2匹も倒したとういうのか? なんという出鱈目な…………逃すのは惜しい逸材だ。」
と、独り言を漏らすヴェルテにヤレヤレという顔をしながら
「おいヴェルテ、聞いているのか? 達哉を武器庫に連れていくぞ。」
「え? ああ、そうですね。大方の武装が揃っているので手に取って選ぶといいでしょう。 デイビス、彼を案内してあげてください。 ラルゴ殿には少々話があるので残っていただきます。」
「え? いやいやいや! どの武器が合うのか第三者の意見があった方がいいし俺が案内するって!」
「その役目はC級冒険者のデイビスで充分務まるでしょう。遠慮しなくてもいいんですよ?昔のように語りましょう?」
と、満面の笑みをうかべるが目が笑ってないヴェルテを見て察したのか
「わかりました、お任せ下さい。」
と言うやデイビスは達哉を連れそそくさとテントを出る。
「な! おい!俺を置いてくのか!?裏切り者ぉぉぉ!」
という声が背後から聞こえるが聞こえないふりをし武器庫へと向かう。
武器庫とは言うが種類ごとに積まれた荷馬車である。
様々な武器が用意されているが達哉が選んだのは1本の反りのある片刃の長剣と2本のショートソード。
色んな武器を使っていたとはいえ、剣を使った立ち回りをする回数が多くやはり一番馴染んでいた。
防具はレザーアーマーに手甲と足甲を組み合わせた動き易さ重視のものを選んだ。
一通り装備して動くのに不備が無いか確認していると不意に陣営の入り口が騒がしくなる。
ドォォン!と何かが落ちてきたような地響きと共に溢れてくる異様な圧迫感、そして聞こえてきた切羽詰まったような誰かの声。
「ま、魔人が現れた! 誰か!上位冒険者と騎士を呼んできてくれぇ!」
時代物やらラノベやら、今まで結構色んな小説を読んできたけど、読むのと書くのとじゃ大違いですねぇ。
小説家だった先輩に書き方の教えを請うておけばと後悔してます。
今書いてるモノ以外にも書きたいネタはあるんでこの作品で書き方覚えていこうと思います。
もし宜しければアドバイスなり指摘なり頂ければと思います。
読んでくれてる人が居れば、ですけどね(汗