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勇者育成プロジェクト  作者: コーモリさとう
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二十八話 活動方針

 料理が出来たら、女の子達と楽しいお食事会の始まりである。

 食堂には細長いテーブルが並んでおり、適当に空いたスペースに腰を降ろす。エリヤの隣にザックが座り、向かい側に女性陣が座った。

 クールビューティーなリリィを真ん中に、ふんわりお嬢さんミラ、元気娘ジェン。

 バリエーション豊か且つ心潤う麗しい眺めありがとうございます。

 今まで男所帯にいた分、より心癒される。リシア? 薄ら寒い笑顔張り付けてて癒し要素は皆無です。

 和やかに食事は進み、ジェンのデザート、これはムース? ババロア? ホイップクリームになんかの葉をペーストにして混ぜ、ゼラチン的なもので固めたものが出された。

 ちなみに冷やし固めたのはエリヤ。魔法使用。

「うわ、おいしい」

 エリヤはそう、心から言った。

「ああ、うまいな」

 ザックも同意し、ジェンが得意気に胸を張る。

「でしよ? ジェンはお菓子作り得意なの」

 と自分の事のように自慢するミラ。機嫌が直った様で屈託無く笑っている。

 尚、ミラの機嫌が直ったのはリリィの功績であり、エリヤは役立たずだった事をお知らせしておきます。

 ・・・いやさ、魔法関係だと、自分じゃ劣等感刺激するだけなんだよ、どうしても。最初にそこに気付ければ良かったんだけどね。なんで慌てて行っちゃったかな自分。

「エリヤくんもやっぱり甘いモノは好きなんだね」

 にこにことデザートを味わうエリヤに、ジェンがそう言った。

「やっぱり?」

「うん。魔法使いだな、って」

「「???」」

 ジェンの言葉に、エリヤとザックは首を傾げた。

「知らないか? 魔法使いに甘味を好む傾向があるんだ」

「そそ。魔法使い探すならお菓子屋さんに行け、なんて言われるくらいだよ」

「うんうん。私も魔法使うと甘いモノ欲しくなるよ。エリヤくんもそうじゃないの?」

「へぇ。甘いモノは好きだけど、それって普通じゃないの? 魔法使わない人はそうでもない?」

「魔法関係無く好きな人は好きだと思うよ。私を含めてね。ただ、私の知る限り、魔法使いで甘味が苦手な人はいないかな」

 ほうほう。甘味と魔法ね。何か関係あるのかな?

「ところで、二人共パーティーには入って無いんだよね? 良かったらうちに来ないか?」

 とリリィからお誘いがあった。

 二人が入っても女の子の方が多いパーティー。ものすごく心引かれるが、当面パーティーを組む気はない。

 お断りしようと口を開きかけたところで、

「ちょーっと待った」

 と、なぜか待ったが掛かった。

「抜け駆けは良くないぜ」

「こっちは魔法使いいないんだからさぁ」

「そっちはもう魔法使い居るでしょ?」

「独り占めは良くないなぁ」

 あっという間に他の冒険者達が集まって来た。

 聞き耳立ててたのか?

「なぁエリヤ、ウチ来いよ。オレらと冒険に出ようぜ」

「エリヤくぅん、お姉さんのところに来ない?」

「あ、あの、僕達も駆け出しで、年も近いので集まってて、良かったら・・・」

 エリヤ、モテモテ。

 まぁ、それだけ魔法使い不足が深刻なんだろうけど。

「すみません、自分達は」

「おいおい、そっちだって魔法使えるヤツ居るじゃねぇか」

「ほんのちょっとだって。専門のヤツはやっぱり欲しい」

「ちょっとでも使えるならいいじゃない。譲りなさいよ」

 聞けコラ。


「 あ の 」


 魔法で音をでかくして注目を集めた。音量を戻して、と。

「自分達はしばらくパーティーを組む気はありません。冒険者登録をしてすぐにパーティーに入ってしまった為、自分だけだと何が出来て何が出来ないか、よくわからないからです。なので、自分の能力を把握する為に個人活動するつもりです。ご理解ください」

 突然の大音量に彼らが驚いている間にまくし立てる。

 これはザックとも話して決めた事だ。

 《剛狼の牙》に居る間、エリヤは経済面で苦労した覚えが無い。なんだかんだと中抜きされたが、それでも大きな依頼ばかり扱っていたので稼ぎは多かったのだ。

 協力する事で独り以上の成果を出す。パーティーを組む利点は大きい。けれどそれに依存はしたくない。

 例えば、エリヤはこれまで生活費や冒険者活動の必要経費を引いても、毎日ちょっとしたおやつを買う余裕があった。

 それは個人になっても得られるのか? 全く余裕が無くなるか頻度が減るだけか。

 その辺りの身の丈を知った上で、自分が個人で稼げる分で満足するのか、より多い稼ぎを望むのか、それを選びたいのだ。

 ぽかんとしたままエリヤを見詰める一同。

「・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 えーと、何か言って?

 それともまだ自分が何か言うべきターンなの? もう立ち去っちゃう?

 エリヤの心の声が届いたのか、リリィが口を開いた。

「そうか・・・。わかった。残念だが、それなら仕方ないな」

 リリィの言葉に、他の冒険者達も何か納得した様子で、不可解そうな一部の冒険者を連れて渋々と離れて行った。

 ・・・なんだろう。言った以上の受け取られ方をされたような。

「ところで、エリヤくん。ああいうやり方は控えてくれないか? 聴力に優れた獣人族には、あの攻撃は厳しい」

 リリィに言われて周りを見れば、ジェンをはじめ、何人かの獣人族が耳を押さえてぴくぴく痙攣していた。

「あ・・・。ごめんなさい」

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