多分変態だと思う(名推理)
こんにちは、初めまして。
3年間連続で、今日も家にコウモリが侵入してきました。和茶味餅です。
「ねぇねぇ!次!おんぶしてー!」
「えぇ、やだよ」
おんぶって……唐突になんだ。
「ぷぅ、なんでぇ?」
「だっておんぶする年でもないだろ?」
もう9歳だろ。
流石にその年でおんぶは恥ずかしいと思うけど。
「いいじゃんいいじゃん!ちょっとくらい甘えても!」
「そもそもなんで急にトランプからおんぶなんだよ」
「だって2人でババ抜きなんてつまんないもーん。それに、私が勝ったからそのご褒美ということで……」
まぁ、負けたな。
しかも今日は10戦10敗だ。
それに2人しか居ないのに、毎日やってる。
「確かに飽きたし、俺が負けたけど……。だが断る!」
「えぇー!!ケチ!██のいじわるぅ!」
そう言って、██はぽかぽかと叩いてくる。
「おい、こら、やめ痛っ?!」
「やめませーんよーだ!」
「このやろっ!仕返しだ!」
脇腹に手を回し、くすぐってやる。
「それは卑怯だよ!ちょ、やめて、くすぐったい!」
叩いてくるのを中断して、くすぐる手を剥がそうと掴んでくる。
「ぷはははは!も、もう!やめてってばぁ!」
あぁ、楽しいな。
こんな幸せな日々は、他にあるだろうか。██と毎日毎日、遊んで笑って過ごす。
もういっその事、
ずっとこんな時間が続けば良いのに──
•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•・•
「…………ん……」
目が、覚めた。
「……なんだか、久しぶりに見たな。あの夢は」
中学生になった辺りからだろうか。
たまに夢に見ることがある。
何処かの広い部屋で遊ぶ、小学生の俺と、その俺より背が小さく、恐らく年も下のような気がする、一人の女の子。
その女の子と俺は、とても楽しそうで、そして幸せそうな雰囲気だった。
だけど、そんな出来事はまるで記憶に無くて、いつも思い出そうとすると、名前や顔に霧がかったかのように、霞んで思い出せなくなる。
「一体、なんでこんな夢を見るんだかね」
小さい頃のことはほとんど記憶に無いせいか、その心当たり全く無いと言っていい。
にしても、夢のことを考えたから遅れたけど。
「一番最初に『知らない天井だ』って、言うべきだったかな?」
知らない天井だ。
確か、差出人不明の手紙が届いて、その手紙に描いてあった魔法陣らしきものが急に光り出して……
なんですか?流行りの異世界転生ですか?約束された美少女ハーレムですか?と、妄想に耽っていると
「おぉ、やっと目を覚ましおったか」
不意に、隣から声をかけられる。
てか何?今の喋り方。
体を起こし、声の主の方を見ると、そこには一人の女性が立っていた。
身長は俺より低いくらい……って別に俺が身長高いかって言われるとそうでも無いんだが。
まぁそんな事はどうでも良くて……えー、髪型は金髪のハーフアップに……胸はそこそこ、と。
顔立ちも少しあどけなさの残った感じだけど女性らしさがあって、それも相まってかかなりの美女と言える。
だがしかし、一つ問題がある。
「……………」
「なんじゃ?」
じーーーーーーーっと、彼女のことを見つめる。
この人……
「???」
なんでメイド服着てんの?
「すみません。なんでメイド服姿なんですか?」
「気になるか?これは趣味じゃな」
「えぇ....(困惑)」
コスプレ趣味なのか……?いや、それはそれとして、
「一体ここはどk」
「ふふ~ん。ちなみに、昨日はセーラー服じゃったな」
「聞いてねぇよそんな事!」
「どうした?酷く動揺しているように見えるが」
「いやなんで頭に『?』浮かべちゃってるの?気が付いたらベッドに横になってて、話しかけて来た人はとてつもない美女で、メイド服を着ているコスプレ趣味で、とかもう意味わかんないんですけど?!」
情報量が大きすぎるっ!(主に彼女のコスプレ趣味)
「……あぁ。そうであったか」
そう言うと彼女は近づいて来て、
「ようこそ龍虎学園へ。お主は今日からこの学園の一生徒となったのじゃ」
と、言ってきた。
…………へ?
「……いや何言ってるんですかあんた」
「まぁそう急かすでない。順を追って説明するわ」
「……じゃあ取りあえず、ここはどこなんですか?」
「日本じゃな」
「そういう事じゃなくて」
「正式には日本によって作られた軍事教育施設『龍虎学園』じゃ」
なるほどなるほど。
日本によって作られた軍事教育施設ね………
……んん?
「軍事教育?」
「そうじゃな。お主はここの生徒に選ばれたのじゃ。」
「いやいきなり過ぎて言ってることまったく分かんないんですけど……」
「ちなみにここは保健室じゃ」
「それはどうでもいいですが……」
俺が軍事教育を受ける?
選ばれたってどういう事だ?
湧き出る疑問を聞かずにはいられなかったが、
「まぁ黙って聞いておれ」
と、諭されてしまった。
「おっほん!まず、ここはさっきも言った通り、軍事教育施設であり、その教育を受ける学園でもある。一応中等部からあるが、お主のように途中で編入したりしてくる者も少なくはない」
わざとらしく咳をしてから、説明し始めた。
「それと、名乗るのが遅れておったが、わしはこの学園で教師を務める者じゃ。名は観音寺 魅才じゃ。魅力の魅に才能の才と書いて魅才と読む」
へぇ、魅才ね……
漢字も読みも珍しい名前なんだな。
「わしはさっき『選ばれた』と言ったが、まぁ理由はわしも分からん。選んだのはこの学園の学園長じゃからな。新入生が来るとしか聞かされておらんかったし」
軍事教育施設の学園長か。
きっとマッチョのヤベー奴なんだろうな。
「招待状を送ったのも学園長本人じゃ」
「招待状?ってあれか?魔法陣しか描いてなかった如何にも怪しいやつ」
「それじゃな」
ふむ。魔法陣が描いてある招待状で学園に……ってちょっと待て!おかしいぞ!
「なんで俺ここにいるんですか?!」
「じゃからそれは招待状を」
「だからあの招待状なんなんですか?!捨てようと思ったら急に光り出して!!」
「……あぁそれはじゃな」
すると魅才さんはスッと目を細めて、
「魔術じゃよ」
と、言った。
「は?魔術?」
「そうじゃ、魔術じゃ」
え、何言ってんのこの人。アニメの見すぎなんじゃない?
「冗談ですよね?そもそも魔術なんて──」
「ある」
俺の言葉を遮って、そう言い切った。
「そもそも、お主が家からここまで来たことをそれ無しでは説明出来まい」
「それは……気を失ったところを運んできたとか……」
「では何故に気を失ったのじゃ?」
気を失ったのは……手紙が光り出して……
「手紙が光ったのじゃろ?それを科学的に説明出来るのか?」
そう言われて黙ってしまう。
確かに現実的では無いけど、あの手紙が光ったのはこの目で見てしまっている。
「ま、実際見て体験した方が早いじゃろ。百聞は一見に如かず、じゃ」
すると、魅才さんは目を閉じて、
「……うーむ……ま、こんなものじゃろ」
と言い、彼女の手の平にあるのは野球ボールくらいの大きさの水の球だった。
おいおい嘘だろ?信じられない……
「信じられないって顔をしておるな?むふふぅ、まぁ無理もないであろうなぁ?最初にコレを見た者は皆揃ってその顔をする」
うわうぜぇ。ドヤ顔うぜぇ。超うぜぇ。
「これは空気中から水分を取り出して作ったものじゃ。これを……」
「うわっぷ?!」
さっきの水の球が顔に飛んできた。
「ほれ、タオルじゃ。これで信じてもらえたかの?」
「…………えぇ……でも顔にぶつける必要は」
「ない」
真顔で言いやがったぞ。なんて奴だ。
「はぁ、分かりましたよ。なんでこんなマンガみたいなことになってるかは知りませんが」
「なんじゃ、意外とあっさりしておるな」
にわかには信じ難いが……
魔術なんて存在したのか……いや、実際にこの目で見て、体験もしたんだから信じるしかないか。
うーん世界は広いなぁ……などと黄昏ていると、
「入学の理由に関しては直接学園長に聞けば良いじゃろうな」
「……あぁ、理由、聞かされてなかったんでしたっけ」
魅才さんはコクリと頷き、
「体がなんとも無いようなら今から会いにいくか?」
「是非とも」
「うむ、ではついてくるがいい。」
「あ、そうだ」
「ん?」
「もしかしていつもコスプレして授業やってるんですか?」
「そうじゃが、なにか?」
そう言って、彼女は扉に向かって歩き出した。
なんだ、ただの変態か。
あんな風に答えるくらいだ。恥ずかしいとも思ってないんだろうなぁ。
セーラー服やメイド服があるってことは……日本の世俗にまみれたコスプレ衣装が沢山あるんだろうか。
うーん……あ、スク水とか?いや流石にそれは……
あれ?でも想像してみると結構やばいな。多分授業どころじゃなくなるぞ。
今着ているメイド服でも……まぁやっぱりルックス良いからな、俺なら集中して勉強出来ないな、うん。
「なにをモタモタしておる。置いて行くぞ?」
「あ、すみません」
いかんいかん。
急いですぐそこにあったスリッパを履き、後をついて行く。
にしても軍事教育かぁ……魔術なんて物もあるみたいだし、一体どうなることやら。