ちょっと冒険者になってみました
「生成、剣型、硬化!」
ーポニョン!
「やった。しっかりと硬い剣が出来たぞ!」
朝起きてから、マッドパペットは自分の能力をいろいろと調べていた。
「あ、あそこに仲間達がいるぞ」
マッドパペットは、他のマッドパペットがいるところに行った。
「ねえねえ、その泥を作る能力、どういうふうに使ってる?」
「ボクハ、カクレがを作ったヨ」
「そういう使い方もあったね。ありがとう」
「ドウイタシましテ。きミ、名前何て言ウ?」
「え? 名前? そういえば俺、名前無いや」
「ナイの? ミンナ、うマレタトキカラ、ワカる」
「生まれたときから? 俺、名前無いんだけど...」
「ボク達、マッドパペット、ミンナ名前ツク」
「俺、マッドパペットだよ?」
「ナンデダロね」
「あ、泥を作れるのが、マッドパペットだよね?」
「ソウダよ」
「あ、ありがとう。参考になったよ」
「バイバーイ」
「俺、泥作れないや。本当にマッドパペットなのかな?」
「生成、泥!」
ープニョ
「ただのスライムが出来ちゃった」
「名前考えようかな」
「ゴロウ? ダメだ。マードン、微妙だ。シュラムア...よし、これで行こう」
「俺は、ただのマッドパペットじゃない! シュラムアだぁ!」
ーガサガサガサ!
「コップさん! マッドパペットですよぉ!」
「こんなとこにいたのかぁ!」
「僕の相手には調度良い相手です!」
「俺の貸した装備、壊すなよ」
「マッドパペット位なら大丈夫ですよぉ」
「気を抜くなよ?」
「分かってますって」
いや、アカン、アカン。
ここは逃げるべし!
ーソソクサソソクサ
「あぁっ! 逃げたぁ!」
「デルタぁ、追うんだ!」
「はい!」
ちょ、追って来てますよ。
どーしよどーしよ。
あ、あれで行こう!
「泥真似!」
ーペチャペチャ
「デルタぁ! この木の後ろだ!」
「分かりました、コップさん!」
「ここかぁ!」
デルタはマッドパペットがいると思われる木の後ろを見た。
「わぁ! びっくりした。お、おはようございます」
「...おはようございます」
なんと、そこには、白髪の超絶美女がいた。
「うわぁ、デルタぁ、俺、今、綺麗な女性の幻を見てるようだ」
「ぼ、僕もです」
「いやぁ、そんなこと無いですよ?」
「お、俺はコップと言います! 二十六歳、独身です!」
実は、コップは意外に若いのだ。
「ぼ、僕はデルタです! 十九歳です。安心してください! 彼女はいません!」
デルタも調子が狂っていた。
「あ、あはは。わ、私は、シュラムアと言います」
「シュラムアさん、と言うのですね。ぼ、僕達、冒険者やっているんです。あなたは何を?」
「え、えーと、あー、農家してました。私はこの近くの町を探していたんですよ」
「よ、よかったら、俺達が町まで送りましょう」
「ありがとうございます」
そう、超絶美女とは、俺の事である。
何も考えず泥真似をしてみたら、こうなってしまったのだ。
マッドパペットには、性別が無いので、正直言って、男でも女でも変わらない。
俺は、何となく言いやすいので、『俺』と言ってるだけである。
こうして、俺の『町乗っ取り大作戦』は、始まったのだった。
嘘です。
〇〇〇
「この町の名前、分かりますか?」
「あ、いえ」
「ここは、ホリデーの町と言います」
「ホリデー?」
「変な名前でしょう?」
「そうですね」
「そ、そういえば、シュラムアさんは、どんな用事があって来たんですか?」
「あ、敬語じゃなくてもいいですよ」
「あ、ありがとうございます、いや、ありがとう」
「はい。あ、私は、冒険者やろうかな~なんて」
「冒険者? 女の子なのに怖くないのか?」
「女がやるのは、おかしいですか?」
「いやぁ、とても素敵だと思うよ! ねぇ、コップさん?」
「あ、ああ」
「ありがとう。でも、どこで冒険者になれば良いのか分からないんです」
「ギルドに行けば大丈夫だよ。良かったらぁ僕が案内する?」
「あ、ありがとうございます」
〇〇〇
「ここがギルドだよぉ」
「大きいですね。案内、ありがとうございました」
「分からないことがあったら、また聞いてねぇ? またね」
「はい」
俺は、ギルドの受付まで行った。受付は、可愛らしい女の子だった。
「おはようございます」
「おはようございます。どうされました?」
「あ、ちょっと冒険者登録に...」
「女性一人では、危険ですよ?」
「大丈夫ですよ。登録してもらいたいんですが...」
「わ、分かりました。で、では、記入用紙に名前と能力を、記入出来る範囲でお願いします」
「分かりました」
能力、どうしようかな。
よし、これでいこう。
「書き書きー」
「(こいつ声に出してやがる)」
「はい、出来ました」
「土魔法、ですか。(ありきたりだぁ。良くそれで冒険者なろうと思ったな)」
「どうしました?」
「あ、いえ」
「?」
「登録出来ました。これが冒険者カードです。無くさないで下さいね」
「ありがとうございます」
「頑張ってくださいね(精々頑張れよ! その綺麗なお顔が、ズタズタになるのを楽しみにしてるぜ)」
「はい!」
〇〇〇
「シュラムアさん、冒険者になれたみたいだねぇ」
「あ、デルタさん。はい。おかげさまで」
「...あ、あの、僕と、パーティ組まない?」
「え?」
一度言っておくが、デルタはイケメンである。
もし、デルタにパーティへ誘われたら、断る女性はいないだろう。
シュラムアも、デルタとパーティを組むことまちがいなしである!
「で、返事はぁ?」
「ごめんなさい。入れません」
「うん、じゃあこれから宜し、...えぇぇぇぇえ!!??」
「私はこれで...」
「な、な、何故なんだぁ? 僕はこんなに容姿も良い。性格もこんなに良いのにぃ。自信無くしたよぉ~。うえ~ん、うえ~ん」
「顔が好みじゃないし、弱そうだし...」
「う″え″~ん、う″え″~ん」
「(さらば、デルタさん。ごめんね。良くして貰ったんだけどね)」
(生成、極小サイズ、ヒールスライム!)
「何かあったら、デルタさんを守ってあげて」
他の町に行こう。なんか気まずいしね...。
コップさんとデルタさん、出番終わり。