いつもと変わらない日々。
新元号発表されましたね。
午前11時未明。日本では新元号が発表された。官房長官の発言一つ一つにカメラのフラッシュが返事をするかのようだ。俺はそれをスマートフォンのLIVE映像で見ながら、昼食を取っていた。
「ふーん。」
新元号が発表されたからと俺の中で何かが変化する訳ではない。昼食が終われば、塾に行く。高校三年生。センター試験の最終学年であり、運が良かったと俺は思っている。
だからと言って、試験の内容が簡単にはならない。世間一般の新高校三年生と同じように塾に通って勉強をするのだ。最後の一口を食べ終わると、俺は席を立った。
「ありがとうございました~」
店員の声に見送られながら店を出た。春とは思えない強い日差しが照りつける。駅の時計を見た。ああ、もう12時だ。電車もすぐに来る。急がなくては。
俺はゆっくりとした足取りで駅へと向かう。定期券を取り出し、改札に通す。人々はいつもより騒がしい。それもそうだろう。だが、それは俺には関係ないことである。ホームで待つ。
「次の電車は――――」
平成から令和。その境目に何が変わったか。改めて考えてみた。元号は変わった。西暦は変わらない。皇紀も変わらない。月日も変わらない。年齢は……変わる人もいるだろう。やはり変わらない事の方が多いのだ。
「はぁ。」
ため息を吐く。その吐息はもう白くない。春がすぐそこまで……いや、もう来ていた。視界には桜が風に揺られていた。コートを着る必要もない。マフラーも手袋も。
「俺は現実逃避をしてるだけもかもしれないな。」
電車が来た。昼時であるため、人は少ない。空いた席に座る。下車駅は次。席に座る必要も無いが、なんとなく座っていたかった。心がモヤモヤする。俺は何を思っているのか。
次の駅に着くと、俺は降りる。駅を出ると、そこは海沿いの道。潮風が爽やかに吹きつける。仄かな虚しさが風に乗ってやってきた。俺が感じていた気持ちは虚しさだった。
「平成で17年間。俺は何をしたかな。」
自分が生まれて17年間。その日々を振り返る。長いようで短かった。それよりもこれからの日々の方が長い。とても長い。
なんて……振り返る必要なんてないのか。感傷に浸って、そんな気になっていた。意外と俺も周りに流されていたのかもしれない。だから虚しさなんてものが込み上げてくる。この虚しさも平成という元号と共に過ぎ去ってしまうから――――
「俺には今がある」
こんな野暮ったいことを言って、いつかは過ぎ去ってしまう今を人々は満喫するのだろう。