ある日の午後。
短いお話です。
学校を出ると、僕は寒さに身を震わせた。
まだ春には遠く、吹く風は冷たかった。だが、正午であるからか、日差しは強い。少し暖かったが、それでも寒かった。
「帰ろ。」
止まっていた足を駅の方向へと向けた。ゆっくりと帰路につくのであった。
帰路は至って静かであった。今日は土曜日。人もあまり出歩かないのだろう。鳥は巣で身を温めているのだろうか。
電車が来るまでは時間がある。いつもよりゆったりとした歩みの帰路は、普段は気付かないことを感じさせる。
「帰ったら何をしようか。」
僕の歩みは早くも遅くもならなかった。一定のスピードで何かのルールを守るかのように、乱れる事はなかった。同じ学校の生徒が追い抜く。
電車に乗る為に急いでいるのだろう。予定があるのかもしれない。
「ゲームだな。」
特に他の予定など見つからなかった。課題はあるが、まあ、日曜日でも充分だ。急ぐ必要は無い。塾までは自由時間だ。
僕が駅に着くと、丁度電車が着いた。それに乗り、僕は家に帰った。
家に帰って、昼食を食べると、スマートフォンを手に取る。家でのみ、スマートフォンの使用を許されているため、持ち出しは不可。学校でクラスメイトが使っているのを見ると、少し嫉妬心が芽生えることもあるのだった。
いつもしているゲームアプリを開いて、ログイン報酬を貰う。日課のようなものでもある。
突然だが、僕はゲームが好きだ。それが理由なのか「ゲーム辞められる?」という質問をよく受ける。いわゆるゲーム中毒かどうか、と言う事だ。
専門家ではないため、はっきりとは言えないが、僕は自分では違うと考えている。スマートフォンの持ち出しは禁止のため、修学旅行などの長期イベントでもスマートフォンは持って行かない。だが、そのイベント中でも僕は大してゲームがしたいと考える事は無い。
例えば、そのイベントがとても退屈であったり、ゲームの話をすれば、ゲームをしたいと考えるであろうが、そうでもしない限りはそこまでゲームをしたい訳でもないのだ。
話がズレてしまった。しばし僕はゲームに興じた。
数時間後。外は日が沈みかけていた。もう夕方だ。
「ふぅー。」
体を伸ばす。背中がポキポキとなる。首を解し、目を解す。
「さて、塾に行くか。」
支度をすると、家を出た。外は暗い。いつの間にか一日が終わろうとしている。
そうして、月日は動いていく。