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2;ここはどこ?私は死人



「ねえ、君なんで死んだの?」


 気がついたら、真っ青な空間にいた。あたり一面、どこを見渡してもよく晴れた空の色のように澄んだ青色をしていて、それがどこまでも続いて何も無い――――いや、目の前に一つ、いや一人、在た。

 14,5才くらいの女の子で、少しカールのかかった綺麗な金髪を腰まで垂らしている。ぱっちりとした目もとには、比較的長いまつげがくるりと可愛らしく生えている。しっかりとした鼻筋に、ピンク色のふっくらとした唇。

 まあ、一言で言えば、可愛い。

 とても可愛らしい。


 そんな女の子が、僕の目の前に座っている。木彫りの椅子に深々と腰を掛けて。

 よく見れば僕も同じ椅子に座っていた。


 ふぅ〜、どういうジョーキョーだこれは?


 いやいや、まて、オチツケ、落ち着け、僕。

 そうだ、一つ一つ、順々に思い出してけ。

 まず、まず、なんだ、今日はいつも通りに学校に行って、それで、授業、は、何だったっけ?そういえばよく聞いていなかった気がする。じゃあ、そこは飛ばして、授業が終わったらどうした? そうだ、急いで帰ろうとして、って何で急いでたんだっけ? 何で一人で急いで帰ろうとしてたんだっけ? ああ、今は理由はいいや。で、それで帰り道で信号で止まって、ああ、


 ああ、そうか、僕は死んだのか。


 あれ? じゃあ、ここは? 


 ああ、天国か。そうかそうか。納得。じゃあ目の前にいる女の子は天使かな? 確かに、天使の可愛さだろう。


「おーーーい、話をちゃんと聞いてるかーーーい? 君はなんで死んだのか、って聞いてるんだけど?」


「は?」


「いや、だから、ワタシの話を聞いてって、言ってるんだけど? ワタシ、一応貴方達の神様だよ? それを無視ってどーゆーこと? あれだよ、神罰とか下しちゃうよ?」


 ま、待て待て、え? なんて言った? 神? 

「て、天使とかじゃなくて?」


 目の前の自称神様が、あからさまに顔を歪ませて、拗ねるように怒った。


「むぅ? 天使ぃ? 天使っていうのは、天の"使い"だよ? つまり、だからただの小間使いだよ? そんな下働きと、一緒にしてもらっちゃ困りますな? ワタシはその上司、天の"住人だよ? もっと敬いなさいよ? 奉りなさいよ?」


 ひ、必死に弁明してる。身を乗り出して説明してるよ。

 う、嘘くせー。


「ふうーん? いいんだ? そんな態度でいいんだ? 後悔するよ?」


 あ、顔に出てたか。反省反省。

 って、ぐわぁ。なんか、痛って。なんだろう。どこが傷ついたわけでもないのに、なんか痛って。なんだこれ、まさかこれが……


「そう、神罰よ?」


 うっわ、ドヤ顔してる。腰に手を当ててドヤ顔でこっち見下してるよ。

 でも、確かにこれは痛い。何回も喰らってるとそのうち死んでしまいそうだ。あ、もう死んでるか。

 いや、それはともかく、まあ、とりあえずはこいつを神様だっていうことにしといたほうが賢明だろうな。また、神罰?喰らうのはいやだし、それにこの状況。

 僕は死んでいて、辺り一面真っ青で、ここにいるのは僕の他には人間離れした彼女のみ。最初は天使かも、って、思ってたくらいだし、もし神様でも不思議じゃない、かも。

 うん、とりあえずその方向で話を進めていこう。さしあたっては、


「僕は本当に死んだのか?」

「死んだよ?」


 即答だった。間髪入れずに当然のように答えた。

 はあ、やっぱり僕は死んだのか。じゃあもう、好きなラノベの続きを読むこともできないのか。

 あ〜、ため息が止まらんよ。


「ん? じゃあここは天国か?」


 今度は、神様は少し考えていた。


「ん〜? ちょっと、違うかな? 貴方が何をもって天国と定義しているかによるんだけどね? もし、死んだ人が行き着く先ってことなら、君をここに呼んだ時点でそうだって言っても遜色ない感じだけどね? まあ、でも普通の人はここには来ないし、やっぱ天国じゃないかな? ここは一応天の一部なんだけどね? というかワタシの家だよ? で、天国も地獄も天の一部署なんだよ?」


「あ〜、ナルホド」


 ワカラン。え、ナニ? とりあえずここが神様の家だってことはわかったよ。え? 家なの? この何も無いただだだっ広い空間が? なんか、寂しいな。

 って、え?


「天国と地獄って同じ所にあるの?」


 掌を上にして、両手を頭の横に持ってきて、そのまま首を左右に振った。やれやれ、と言いながら。


「な〜に? まさか君、地獄が地中にあるとでも思ってた? そんなわけないじゃん? 地面の下にはマントルとか、マグマとか、えっと、つまり、だからそんなのが詰まってるだけ? よく知らないけど?」


 知らねぇのかよ。


「そんな顔しないでよ? 神様はそんな細かい事気にしないのよ?」


 あ、また顔に出てたか。反省反省。


「で、そもそもの認識が違ってね、天国と地獄って本質的にはどちらも同じなのよ? 次の器が決まるまでの、そう、待合室みたいなものかな? そのグレードが違うってだけで、ファーストクラスが天国で、エコノミークラスが地獄、みたいな?」


 えっと、つまり天国と地獄は一時的な仮住まい的な所で、そこに大きな違いはない、のか。


「次の器って、つまりは生まれ変わるってこと?」


 こくり、と頷いた。

 ふうーん、じゃあ、僕もこれから生まれ変わるのか。何に変わるんだろうな。流石に虫とかは嫌だな。また、人間になれたらいいな。

 そうだ。こいつは神様なんだから、頼めばそうしてくれるんじゃないか?


「なあ、……」

「って、そうじゃなくて、そんなことはどうでもよくて、聞きたいことがあるんだよね?」


 急にぷんすか、頬を膨らませて怒り出した。


「聞きたいこと?」


 そういえば、最初になにか言っていたような気も……


「君、なんで、死んだの?」

「いや、知らねぇよ」


 あ、しまった。つい反射的に勢い込んで突っ込んでしまった。

 まあ、聞き間違いだろう。

 神様が、よりによって神様がだよ?そんなこと聞くわけないじゃないか。ハッハッハ。


「も〜、ちゃんと聞いてる? これを聞くために君なんかをワタシの家に強制的に呼び寄せたんだよ? 君がなんで死んだのか聞くためにね?」


 聞き間違いじゃなかった。どーゆーことだ? 僕が死んだ原因?


「えっと、それは、誰かに押されて、トラックに轢かれて……」


 あれ? そういえば僕は、そしたら、"殺された"のか? 誰に? いったい何故?

 僕は、なんで死んだ?


「そう、そこだよ? 君は"誰に"殺されたの? 実は、君はまだ死ぬはずじゃなかったんだよ? それなのに、死んだ? なんで? イレギュラーもいいとこだよ? 地球じゃ、今までそんなことなかったのにね?」


 死ぬはずじゃ、なかった? じゃあ僕は、いや、僕を殺したあれは、何なんだ? 

 ん? 待て、今の神様の言い方、何か、引っかかる。

 そうか。


「"地球じゃ"、ってことは他の場所では前例があるってことか?」


 神様は、「察しがいいね?」と、指を嬉しそうにパチンと鳴らし、ニヤリ、と笑った。


「実はね、世界っていうのはいくつもあるんだよ? そりゃあもう、10や、20じゃきかないくらいに、ね? どう? 驚いた?」


 まあ、神様がいる時点で今更そんなこと言われてもって感じだけど。

 でもまあ、一応驚いてやるか。


「へー、スゴイナー」


 神様はむっと、口をひん曲げて不機嫌そうになった。

 しまった。わざとらしすぎたか。


「む〜、反応悪いね? まあそんな感じでね? 世界はたくさんあるんだけど、その内の一つがある時突然、急に、何の前触れもなく、滅んだことがあってね? その世界の神ごとだよ? 天はその事態に大顕わだったんだけど、結局原因はわからなかったんだよ?」


 世界が滅んだ? 僕が死んだ事とは規模がまるで違うな。


「何で原因はわからなかったんだ?」

「だってそこを管理してた神ごと無くなっちゃったからね? 世界の管理は各神に総てを任されてるからね? そりゃ、わからないよ?」

「わからないんだったら、じゃあ僕はどうすればいいんだ? 前例が原因不明って、手のうちようがないじゃないか」

「実はね、ワタシにはある程度目星はついてるんだよ?」

「!? すげえな。どうやったんだ?」


 すると、神様は何かを堪えるように、少し俯いた。


「ワタシはそこの神と仲が良かったからね? 後から気付いたよ、あのときのあれはそういうことだったんだってね?」


 触れてはいけない所に触れてしまったな。神様にも、色々あるんだな。


 神様は、パンと手を叩いて、顔を上げた。


「はい、湿っぽい話は終わりね? それでね? ワタシにわかっていることは、ある世界が、関わってるってことだよ?」

「……」

「……」

「それだけ?」

「それだけだよ?」


 ………………。


「僕は、どうすればいいんだ?」

「そう、だから調べてきてくれない?」


 立ち上がって、手を、こちらに差し出してきた。


「それ、僕に何のメリットがあるんだ?」

「君はイレギュラー、だからこのままだと生まれ変わりができずに魂が消滅してしまうことになるよ?」

「はあ、脅し、か」


 やったときのメリットではなく、むしろやらなかったときのデメリット。

 消滅した世界のことなんて知ったこっちゃないし、生まれ変わる方法を模索したほうが手っ取り早いかもしれない。それでも、僕がすべきことは、


「上等!やってやるよ!! その世界に行って、僕が死んだ原因と、ついでに世界が消えた原因も、見つけ出してやる!!!」


 為すべき為の意思は、固まっている。


 僕はガッチリと、神様の手を、握った。




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