少年達よ
君達は今大海を泳いでるのだ
産声を上げる。それは、太古の昔から彼らを待っていたかのように、そうこの日より[私]ははじまったのだ。
シンヤとマモルはレイの御願い事を聞きにとある雪国にきていた。吹雪がここ数日続き雪原が広がる山を歩きながらため息をつく。
「………なあマモル、時々店長人使い悪いよな」
「………レイさんの場合は鍛錬も兼ねてると思うけどね、結構実用的だよ」
シンヤは確かになあと言いながら自分の周りに空気を暖める障壁を張りながらすいすいと山の中を歩く、魔力のコントロール及び魔力の増大、そして店が終わった後の組み手などきちんとした実践的な稽古をつけてくれる。店長としても師匠としても頭があがらない人だ。
「それにレイさんは異世界人にしては異質だと思うよ、僕等を転送してくれたシンさんもいってたじゃない」
「そうだな、同じ神におくられたのも驚きだけどな」
シンヤはそういって目的の品物を見ながら呟く。氷の大地にしか生えないとする氷桃の樹になる桃が今回の目当てだ。糖度が非常に高く瞬時に溶けない氷魔法で包んでいなければ運搬できない代物で、基本的には凄腕のハンターが手に入れるような物である。普通の学生ならばまず立ち入る事の出来ない危険地域でもある場所である。二人はすでにクロノス王国に置ける最大の守護者帝の位に居り、それぞれ新規の帝………全帝と総帝という位についているのだ。全帝はシンヤで総帝はマモル、加えて世界最強と名高い料理人であるレイに師事している事から二人の潜在能力は鰻登りであり、すでにクロノスの歴代の帝を越えたとまで言われるほどだ。
「………あーあ、見つかっちゃったね」
「マモル頼むわ」
そんな二人であるからこそあらゆる依頼はたえずどんな場所からも生還できるという信頼がある。そしてこの桃は人間にも魅力的な桃であるのだから当然この極寒の地にいる魔物にも狙われるのである。
「………いくら弱肉強食でも、余り間引いたりはしたくないんだよね」
マモルの手から鎌が出現すると同時に目の前の魔物達が消え去った。
その後桃をきちんと納品すると同時に年相応の顔になり、そろそろ中間テストの季節だなと学生本来の話をしながら友人達と店先で勉強する二人の姿が見受けられた。
「………興味あるかな? あの二人に」
[私]に気づいた男は笑う。
「………君は産まれたばかりのようだね、そうだな[ミスト]と名付けようか」
男がそう呟いた瞬間、私は体を得る。
「………意識を持つ思念の集合体………の女の子か」
ミストと呼ばれた私は男を見る。
「………君は店という概念がわかる?」
男の言葉に私は頷く、給仕や販売を目的とする人間の相互利益を行う建物の事だ、近年様々な高度な文明が発達し、様々な文化が産まれている。
「………それであっているよ、君は美しい少女だな」
私の容姿は端的に言えば美少女といっても差し支えはないかもしれない。その認識を了承。
「………発生して何年経過している?」
発生して3000年………自我を持って15年と報告。
「………ならばシンヤ君達と大差はないね、それに人界に来たならば保護者も必要だ」
保護者………人間の子供達を保護する大人の総称。
「養女になりなさい」
了承。
こうして私はレイ=シルベリア及びゼファー=シルベリア夫妻の養女になることになり、人間名としてミスト=シルベリアとなったのだった。あの二人の気配よりもまた強大な何かを宿すこの男は私がこの世界を知るための道標としてのよい指針となるだろう。




