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黄昏のヴァイキャリアス  作者: イツロウ
 2 鋼の拳
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 12 -新手-


 12 -新手-


 ダイヤモンドヘッド中央部の広場にて

 戦闘区域から戻ってきたリヴィオ機の前で、結賀は非難の声を上げていた。

「……それでお前は逃げてきたってわけか。情けねー野郎だな」

「違う、俺はシンギさんの指示に従って……」

「逃げてきたことに変わりはねーだろ!!」

「もうやめなよ結賀、こればっかりはどうしようもないよ……」

 葉瑠と結賀はリヴィオからあらかたの事情を聞き、驚きを隠せないでいた。

 この代替戦争がURを誘き出すための大掛かりな作戦だったなんて信じられない。

 急に5対5の対戦に変更になったのも、より確実にURを倒すためだろう。

 ……因みに、URはシンギ教官が教官を休業してまで追いかけている相手で、代替戦争に乱入している厄介者だ。大規模な対戦には必ず姿を現し、アウトレンジからの狙撃で破壊の限りを尽くすと、跡形もなく姿を消す幽霊のような存在である。

 あのシンギ教官が手こずっているのだから、かなりの強敵に違いない。

 リヴィオくんのレベルでは相手にならないし、下手をすれば殺されてしまう可能性もある。

 シンギ教官の指示に従って帰ってきたのは正しい判断なのだ。

 リヴィオくんもそのことを十分分かっているはずなのだが、結賀に好き勝手言われてやるせない表情を浮かべていた。

「俺が行ったって邪魔になるだけだ。だから、戻ってきたんだ」

「だからそれは……」

「これは事実なんだ結賀」

 リヴィオは結賀の言葉を静かに封じ、更に続ける。

「俺は弱い。だから外された。それだけなんだ……」

「……」

 葉瑠はリヴィオから発せられる無念さを痛いほど感じ取っていた。

 結賀も参ったリヴィオの表情を見て、それ以上は何も言わなかった。

「……誰か止めてくれー!!」

 急に男性の叫び語が聞こえ、葉瑠達は声がした方に顔を向ける。

 数メートル先、覚束ない駆け足でこちらに向かってきていたのはセルカ理事長だった。その背後にはロジオンが走っている。どうやらセルカ理事長を追いかけているらしい。

 走る度にセルカ理事長は上下に揺れ、銀の長い髪は綺麗に波打っていた。

 咄嗟のこともあり、また理事長が相手とあって、葉瑠達はセルカを止めることができず、素通りさせてしまった。

 セルカ理事長はそのままリヴィオ機に飛びつくと、コックピットに向けて登り始めた。

「何やってんだお前たち、早く理事長を止めてくれ!!」

「あ、はい!!」

 理事長がVFに乗り込もうとしている事を悟り、葉瑠達は慌ててセルカの後を追う。

 セルカは直立状態のVFを登ることに慣れていないようで、四苦八苦していた。

「俺が行く」

 リヴィオは葉瑠と結賀を制止し、一人でVFを掛け登っていく。

 セルカ理事長に到達するまでさほど時間は掛からなかった。

 リヴィオはセルカ理事長の腰辺りに背後から手を回して、装甲から引っぺがすようにして抱きかかえた。

 地面に着地する頃にはロジオンもVFの足元まで到達していた。

「離してリヴィオくん!! 今すぐに行かないとシンギさんが……」

「ちょっ、うわっ、暴れないで……落ち着いてくださいよセルカさん」

 リヴィオは暴れるセルカ理事長を必死で押さえ込む。

 その様子はまるで駄々をこねる妹を宥める兄のようにも見えた。

 普段の理事長からは想像できない暴れっぷりに、葉瑠も結賀も言葉を失っていた。

 リヴィオはセルカ理事長の軽い乱暴に耐えつつ、ロジオンに問いかける。

「一体どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたも、いきなり“シンギさんを助けに行きます”って言ってVFに乗り込もうとしたから止めただけだ」

 ロジオンはリヴィオに続き、その腕の中で暴れているセルカ理事長に告げる。

「セルカ理事長、万が一にもあのシンギが負けるなんてことはありえません。我々は早く退避しましょう」

 ロジオンさんの言う通り、私達にできることは何もない。

 できることといえば、戦いの邪魔にならないよう安全な場所に避難することくらいだ。

 セルカ理事長は暴れるのを止め、震え声で告げる。

「先ほどセブンから連絡があったんです。……シンギさんが敗走中だと」

「そんな!!」

「まさか!!」

 セルカ理事長の言葉が信じられなかったのか、リヴィオとロジオンは大袈裟に反応する。

「シンギさんが負けた……?」

「マジかよ……」

 葉瑠と結賀も驚いたものの、セルカの言葉をすぐに信用した。

 ここで理事長が嘘を付いても無意味だし、何より先ほどの慌てっぷりがシンギさんの敗北という事実を如実に表しているように思えた。

 リヴィオはセルカ理事長の肩を掴み、激しく揺らす。

「負けたって……シンギさんは無事なんですか!?」

「ちょ……リヴィオくん、揺らさないで……」

 リヴィオに揺さぶられ、セルカ理事長は目を回していた。

「落ち着けよリヴィオ」

 そんなセルカ理事長を見ていられなかったのか、結賀はリヴィオから理事長を奪い取り、葉瑠にパスした。

 リヴィオは一瞬追いかけようとしたが、結賀に阻まれて動きを止めた。

「……悪い」

 リヴィオはバツが悪そうに顔を背け、VFの脚部に背中を預けた。

 セルカはまだ目が回っているようで、葉瑠に介抱されつつもリヴィオの問いに応じる。

「シンギさんは無事だから安心して、でもURに負けたのは事実で……」

「――負けてなどいません。押されているだけです。話は最後まで聞きましょう、セルカ」

 言葉の途中で女性の合成音声がどこからともなく聞こえてきた。

 セルカ理事長は反射的にその声に応じた。

「ごめんなさいセブン。つい取り乱してしまって……」

 女性の合成音声……セブンの声は近くに転がっていた情報端末から発せられていた。

 葉瑠は誰の物ともわからないそれを拾い上げ、スピーカー部分を全員に向ける。

 待っていましたと言わんばかりにセブンは話を再開する。

「それと伝え忘れていましたが、じきシンギがこちらに到着します。リヴィオ機に乗り替えて戦う予定ですので、準備をお願いします」

「なるほど、そういうことだったか。下手に飛び出さなくて正解でしたね理事長」

「……」

 ロジオンに言われ、セルカ理事長は自分の突発的な行動を後悔しているようだった。

 セブンにプランを告げられ、ロジオンは早速準備にとりかかる。

「今からアウターユニットをセッティングし直す時間はない。操作系だけでもシンギ向けに最適化する。悪いが手伝ってくれ」

 ロジオンに要請され、結賀とリヴィオは「オッケー」や「了解」などと返事をする。

 葉瑠も頷き、協力の意思を示した。

 もちろんセルカ理事長も乗り気だった。

「私も手伝います」

「助かります理事長」

 ロジオンは袖まくりをし、セルカ理事長は長い銀髪を結い上げて制御用のコンソールに向かっていく。

 結賀とリヴィオは真っ先にアウターユニットの点検パネルを起動させていた。

 葉瑠も結賀を手伝うつもりだった……が、不意にロジオンに呼び止められてしまう。

「川上、お前はこっちを手伝ってくれないか」

「え、私ですか……?」

 苗字で呼ばれて一瞬反応が遅れてしまった。

 一体何を手伝えばいいのだろうか。すぐにロジオンは指示を出す。

「こっから先はルール無用の本当の戦闘だ。何でもいいから機能拡張してくれないか」

「そんなこと急に言われましても……」

 確かに私はこれまで射撃アルゴリズムを改良したり自動迎撃システムを組み上げたりした前科があるが、急に言われて出来るようなことではない。

 ロジオンさんもそのくらい分かっているはずだ。

「例えば、何を拡張すればいいんです?」

「本当に何でもいい。強いてあげるなら重力盾の効果を高めるとか……できそうか?」

「……」

 ロジオンに具体例を持ちだされ、葉瑠は無意識の内に改良案を考え始める。

 単純に出力を上げれば重力盾の効果も上がるが、総出力とのバランスを考えないとすぐにオーバーヒートを起こしてしまう。

 葉瑠が悩む姿を見て、ロジオンは安心したように言う。

「駄目で元々。間に合わなくても別にいい。……とにかく考えるだけ考えてくれ」

 エンジニアコースの教官にここまで頼りにされて断ることもできない。

「わかりました……」

 葉瑠は眼鏡を弄りつつ、リヴィオ機を見上げる。

 こんな緊急事態で頼りにされているということは、ロジオンさんは本気で私のエンジニアとしての才能を認めてくれているらしい。

 その期待には応えたかったが、やはり数分間で機能拡張できる気がしない。

 どうしようかと途方に暮れていると、空にVFの姿を見つけた。

 葉瑠は遠くの空を指さし、全員に聞こえるように声を上げる。

「し、シンギ教官が戻ってきました!!」

 考える暇なんて全くなかった。

 全く役に立てず無念だったが、せめて早く送り出せるように準備を手伝おう。

 葉瑠の声に反応し、他のメンバーも顔を上げる。

「予想よりだいぶ早いですね……ロジオンさん、作業を短縮します?」

「いえ理事長、中途半端な状態で送り出すのは駄目です」

 ロジオンは目を細めて嶺染を観察し、顎鬚を擦る。

「鋼八雲は持ってるみたいだ。両手で剣を扱うとなると左腕の盾が邪魔になるな。……リヴィオ、取り外せるか?」

「わかりました。取り敢えずケージに固定します」

 リヴィオはVFのコックピットにするりと入り込み、取り付けケージへと移動する。

「急げよリヴィオ」

「急かすなよ」

 結賀に急かされつつも、飽くまでリヴィオは慎重にVFをケージ内に収めていく。

 その間もシンギの乗る嶺染はダイヤモンドヘッドに近づいており、山の峰を越えると通信回線から声が聞こえてきた。

「迷惑かけて悪いな、ロジオン」

 そんな謝罪の声に合わせ、空を飛ぶ嶺染は片手だけで合掌のポーズをとっていた。

 いい加減な謝罪のジェスチャーだったが、片腕と両足を失っているのだから仕方がない。

 ロジオンは苦笑いしつつ、謝罪に応じるべく通信機のスイッチを押してマイク部分に顔を近付ける。

 ……と、唐突に叫んだ。

「右だ!!」

「ッ!?」

 いきなりの叫び声に葉瑠は体をビクリとさせる。

 しかし、この叫び声がましに思えるほど、続いて発せられた衝突音は凄まじい物だった。

 ロジオンの警告どおり、嶺染の右側には高速で飛翔する巨大な塊が出現しており、その塊はスピードを落とすことなく嶺染に衝突した。

 轟音が響き渡り、空気が震え、地面に生えている草が激しく揺れる。

 その音と風圧たるや、思わず顔を背けてしまうほどだった。

 嶺染はろくに防御態勢も取れないまま、衝突してきた塊と共にダイヤモンドヘッドの内側の斜面に激突した。

 斜面の岩は豪快に抉れ、砕けた岩が砂塵とともに空中へ拡散する。

 砂煙で状況がいまいち掴めないが、敵襲を受けたということだけは理解できた。

「シンギさん!!」

 轟音が鳴り止まぬ中、セルカ理事長の声が響き渡る。

 少し遅れてシンギさんの返事が聞こえてきた。

「いてて……流石にさっきのは無理だ」

 砂煙をかき分けてこちらに歩いてきたのはシンギ教官だった。

 少し後ろには球体のコックピットユニットが転がっていた。どうやら間一髪で脱出したようだ。

 シンギ教官は特に怪我は無いようで、HMDを指先でくるくると回していた。

「シンギさん……」

 セルカ理事長は安堵したのか、溜息を吐いて顔を手で覆い、その場にへたり込む。

 シンギ教官は悠々とした歩みでセルカ理事長の元に辿り着き、その頭に手を置いた。

「こんくらいで泣くなよ。仕方ねーなあ……」

 華麗どころか超人的な脱出劇に全員が驚く中、ロジオンはシンギに乗り換えを指示する。

「シンギ、VFの準備はできてるぞ。敵が復帰しない内にさっさと乗り込め」

 ロジオンのセリフを受け、リヴィオは慌ててVFのコックピットから降りる。

 左右非対称のリヴィオ機を眺めつつ、シンギは力なく首を左右に振った。

「すまん。あれには乗れねえ」

「どういうことだ?」

 シンギ教官は俯くと目元を覆うようにしてこめかみ辺りを押さえる。

 すると、2つの球体が眼窩から零れ落ち、下で待ち構えていた掌の上にぼとっと着地した。

「ひっ……」

 グロテスク過ぎる光景に葉瑠は思わず息を呑む。

 しかし、眼球にしてはあまりにも綺麗だし、そもそも眼球には帯状の筋肉が付いている事を思い出し、すぐにそれが人工物であると判断できた。

 シンギ教官は掌の上で2つの弾を転がしていた。

「着地の衝撃で人口眼球がイカれちまった。こうなると分かってりゃガムラ社製の軍用義眼を付けてきたんだが……」

 シンギは事情を説明し終えると、人口眼球を眼窩にはめ直した。

(人口眼球だったんですか……)

 意外な事実に葉瑠は少なからず驚いていた。

 シンギ教官は傭兵ランナーだったのだし、敵に眼をやられたに違いない。

「そんな……じゃあどうすれば……!!」

 ロジオンの情けない声は、いきなり吹いてきた突風によって遮られた。

 その風は周辺に漂っていた砂埃を取り払い、葉瑠たちは数秒ぶりにクリアな視界を取り戻す。

 そのおかげで数秒前までは存在しなかった巨大なVFの姿を確認することができた。

「わ……」

 嶺染を襲ったであろうVFは、いつの間にか葉瑠たちの目の前、約30mの位置まで近寄ってきていた。

 唐突に現れたVFに、全員が無言で圧倒されていた。

 そんな中、葉瑠は冷静に機体を観察していた。

(これはまた……大きなVFですね……)

 いきなりタックルをかました新手のVFは、一言で言うと“巨漢”だった。

 背中にはエレベストアタックでも使用しないような巨大なバックパックが装備されていて、胸部も異常なまでにふくれあがっている。また、腕部から脚部にいたるまで肉厚の装甲で覆い尽くされており、可動域は極めて低そうだった。……というか、脚部は完全に足として機能しておらず、背部ユニットと同じく背後に大きく膨らんでいた。

 体の背面には大量のエンジンがひしめき合っており、突進の為に開発されたと言っても過言ではないほど推力は高そうだった。

 また、手には傘かドリルかと見紛うほど巨大なランスが握られていた。

 あの強烈な推力で加速された重量級の突貫を受けたらただ事では済みそうにない。

 事実、敵機の背後に見える山の斜面には無残にプレスされた嶺染の亡骸が張り付いていて、靴裏で踏み潰された虫のように原型をとどめていなかった。

 あれを修繕するのは不可能だろう。

 今から何をした所でこのVFに対抗できるわけがなかった。

 シンギ教官もそれを悟ってか、諦めたふうにため息を吐く。

「取り敢えず白旗上げとくか。奴も生身の人間を踏み潰すほど非道なランナーじゃねーみたいだし」

 そう言って、シンギ教官は手を頭の後ろで組んでみせた。

 世界最強のランナーが降伏を宣言したせいで、葉瑠を含めたスラセラートのメンバーに諦めムードが漂う。

 着膨れしたVFはこちらの降参を悟ったのか、背を向けてふわりと舞い上がる。

 どうやらシンギさんの言った通り、命を取るつもりは無いみたいだ。

 全員が胸を撫で下ろす中、急に駆け出したのはリヴィオだった。

「シンギさんが乗れないなら俺がやる」

「な、な、何言ってるのリヴィオくん!?」

 セルカは咄嗟に止めようとするも、リヴィオは制止を振り払い駆けて行く。

 急いで行けば敵機が飛び去る前にVFを起動できるかもしれない。が、起動させたら最後、着膨れのVFにボコボコにされるに違いない。

 葉瑠もリヴィオを止めるべく叫ぶ。

「リヴィオくん!!」

「……」

 リヴィオは一瞬足を止め、振り返った。

 その碧の瞳には有無を言わせない闘志が宿っているように感じられた。

 彼にも彼なりのプライドが、そして譲れないものがあるのだろう。

 ランナーとして彼が決めた決断を、私が止められるわけがなかった。

「……頑張って」

 葉瑠は応援の言葉を呟く。

 リヴィオは強気の笑みを浮かべ、はっきりと頷く。そして、再びVF目掛けて走り去っていった。

 リヴィオを見送った葉瑠に対し、結賀は呆れ口調でコメントする。

「“頑張って”って……マジでアイツ殺されるかもしれないぞ?」

「そんなことないよ。いや、そんなことさせない」

 リヴィオくんは無謀だと分かっていても勇気ある行動をとった。

 私達はリヴィオくんを全力でサポートすべきなのだ。

「私、リヴィオくんをサポートする。何としてでも敵を倒す」

 葉瑠はそう宣言し、ケージ横のメンテナンス用のコンソールに向かう。

 これならアウターユニット経由でAGFのシステムに介入できるはずだ。

 当然プロテクトが掛かっているだろうが、緊急事態だしセブンに頼めばすぐにでも解除してくれるだろう。

 早速コンソールを操作し始めると、背後からシンギ教官が話しかけてきた。

「お前ら本当にバカだな」

 内容はともかく、口調は軽かった。シンギ教官もリヴィオくんの出撃に概ね賛成してるみたいだ。

 そんな真意を知りもしないで、セルカ理事長は膨れっ面で腕を組む。

「そうです。あれに攻撃を仕掛けるなんて言語道断です。……葉瑠さん、すぐにリヴィオ機をロックしてください」

「でも……」

「でもじゃありません。リヴィオくんを殺すつもりですか?」

 まるで保護者のような物言いだ。本気でリヴィオくんが心配なのだろう。

「行かせてやれよ」

「シンギさん!?」

「さっきので俺たちを殺すつもりは無いってのが分かった。反撃こそすれ、ランナーを殺すようなことはねーだろ」

「そんな……適当な憶測で決めないでください」

 シンギの説得も虚しく、とうとうセルカはコンソールに手を伸ばす。

「葉瑠さんどいてください。私が止めます」

 コンソールに手が触れようとしたその時、シンギは「結賀」と呟き目で指示を出した。

 指示を受け取った結賀はセルカの背後に忍び寄り、何も言わずに羽交い締めにした。

 急に抱きつかれて驚いたようで、セルカは手足をばたつかせる。

「きゃ!? ちょっと、離してください結賀さん!!」

「うわ軽……じゃなくて、わりーな理事長。しばらく抱かせてもらうぞ」

「ぐ……うぅ……」

 結賀の腕力には敵わないと早々に判断したのか、セルカはガクリとうなだれた。

 一段落すると、不意にコンソールからセブンの合成音声が発せられた。

「こうなった以上仕方がありません。例のプランを実行します」

「なるべく早く頼むぞ、セブン」

「分かっています」

 一体どんなプランなのだろうか。

 気になる葉瑠だったが、すぐに雑念を追い払い、リヴィオのサポート……機能拡張に専念することにした。

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