02 -少女たちの昼餉-
02 少女たちの昼餉
入学してから4週間
葉瑠はそれなりに充実した日々を送っていた。
ランナーコースに入学した時は強くなるためにひたすら訓練させられるのかと思っていたが、実際はきちんとしたカリキュラムが組まれている。
平日の午前中は各教科担当の教官が交代で座学を行う。
授業の難易度は低く、基本的な内容……と言うより最低限の内容を教えてもらっている。学園としての体裁を保つために授業をしているだけらしいので、仕方がないといえば仕方がない。
授業に関しては全く問題ない。小テストでは満点を取っているし、定期考査試験も難なくクリアできるだろう。
午後になると教官によるVF操作指導が始まる。
本来は世界最強のランナーと謳われるシンギ教官の指導を受けられるはずだったのだが、別件で忙しいため今は3名の教官代理が指導を行っている状況だ。
3名はそれぞれ7名の訓練生を担当していて、私の担当はアルフレッド教官だ。
彼は金属製のマスクを常に付けている変態だが、間違いなく優秀な指導者だ。
そうでなければ、たったの2週間で素人同然だった私が基礎教練プログラムをクリア出来るはずがないのだ。
操縦マニュアルを暗記していたこともクリアの要因なのだろう。しかし、アルフレッド教官の的確なアドバイスがなければもっと時間が掛かっていたに違いない。
……アルフレッド教官の指導には満足している。
しかし、この2週間の訓練内容には不満があった。
「――どうしてシミュレーター使わせてくれないんだろ……」
葉瑠はため息混じりに愚痴を漏らす。
食堂内で発せられたその声は周囲の喧騒にすぐに掻き消されてしまった。
「そういや、葉瑠がぼっちトレーニング始めてからもう2週間経つな……」
葉瑠の愚痴に応じたのは結賀だった。
結賀は円テーブル上に置かれたトレイからフライドポテトを摘み、口の中に放り込む。
「いいんじゃねーの? クリアに2ヶ月掛ける予定だった基礎教練プログラムを2週間で済ませちまったんだし」
「全然良くない……!!」
葉瑠は同じトレイからフライドポテトを鷲掴みにし、口の中に捩じ込む。
豪快な食べっぷりに若干引きつつ、結賀は苦笑いする。
「……まあ、あれ以上の高速戦闘を行うとなると体力も体幹も鍛えておいた方がいいだろうし、無駄ではないと思うぞ」
「ほりゃあ、むららとはおもわらいへど……」
「飲み込んでから話せ」
「ん……」
葉瑠はポテトを水で強引に流し込み、カップをテーブルに叩きつける。
「そりゃあ、無駄だとは思わないけれど……シミュレーターそのものを使用禁止にしなくてもいいと思う!!」
「……」
この意見には同意だったのか、結賀は何も言わず困り顔を浮かべていた。
――葉瑠はこの2週間、一度もVFを操作していなかった。
他の訓練生が操作訓練を行っている間、一人だけでランニングしたりストレッチしたり筋トレをさせられている。
仲間はずれにされるのは慣れているが、つらいものはつらい。
アルフレッドさんなりに考えがあるみたいなので黙って従っているが、これがまだまだ続くようなら不安になってくる。
訓練時間外もシミュレーターを使わないという約束を守っている自分も自分だが、せめてどんな目的でどのくらいの期間このトレーニングが続くのか知りたい。
一人で体づくりしている間にもみんなはどんどん操作技術を上げていく。
素人の私がみんなに追い付くためには倍以上かそれ以上訓練しなくてはならないのに、こんな仕打ちは酷すぎる。
イライラしながらフライドポテトを貪っていると、結賀は参った様子で呟いた。
「葉瑠、そんな顔すんなよ。気楽に行こうぜ、な?」
「……」
珍しく優しい結賀の言葉を聞き、葉瑠はすぐに自分を諌める。
せっかくのランチタイムを険悪なムードで過ごすのは愚かだ。午後からはまたトレーニングが始まるのだし、心も体も休ませておこう。
葉瑠は深呼吸し、小さな声で「ごめん」と謝る。
結賀は「気にすんな」と軽く応じ、この話題は終わりと言わんばかりにチーズベーグルに齧り付いた。
それでも葉瑠はぼっちトレーニングについて結賀に意見を求める。
「でも……実際どう思う? 結賀」
結賀は二個目のベーグルの穴に指を突っ込み、くるくると回す。
「何だかんだ言って体を鍛えるのは大事だからなあ。……格闘の心得があったほうが格闘戦では有利だし、体力あったほうが集中力も持続するし」
「じゃあ、暇な時に格闘技教えてよ」
葉瑠の強引なお願いに結賀の動きがピタリと止まり、ベーグルも止まる。
「図々しくなったな葉瑠……」
我儘な事を言ってるのは百も承知だ。
簡単には聞き入れてくれないと早々に判断した葉瑠は早速交換条件を持ちかける。
「お願い。代わりに宿題手伝ってあげるから……」
「……!!」
宿題の話を出すと、結賀の耳がぴくりと動いた。
……結賀が座学で困っているのはリサーチ済みだ。
ただ、困っていると言っても、結賀の学力はそこまで壊滅的ではない。勉強法やちょっとしたコツを教える程度でなんとかなるレベルだ。
数十年前の教育制度改革で日本自体の教育レベルが底上げされたお陰だろう。
世が世ならまともに英語すら話せなかったに違いない。
結賀はベーグルを手に持ったまま迷っていたが、暫くすると心を決めたようで小さく頷いた。
しかし、結賀の回答は葉瑠の期待した答えではなかった。
「教えてやりたいのは山々なんだが……オレのはまともな格闘技じゃねーし、参考にならないと思うぞ」
「そうなんだ……」
魅力的な条件を蹴ってまで断ったとなると、結賀の言っていることは本当のようだ。
変な癖が付くのも私としても避けたいし、格闘技に関しては自分で資料を見て調べることにしよう。
「……あっ」
何かいいことを思いついたのか、結賀はニヤリと笑みを浮かべる。
そして、身近なランナーの名を上げた。
「どうせならリヴィオにボクシング教えてもらえよ」
「!!」
唐突に告げられた名に、葉瑠は狼狽えてしまう。
「日本にいた時に聞いたんだが、基本的な構えを覚えるだけでもぜんぜん違うらしいぞ……って、どうした葉瑠?」
「……」
葉瑠は約一月前にリヴィオと交わした会話を思い返していた。
(どうして私の正体知ってたんだろう……)
リヴィオくんは私が更木の娘であることを知っていた。
日本人の結賀になら知られていても不思議ではないが、どうして外人のリヴィオくんが知っていたのか不思議でたまらない。
確かに私は虐められていたが、それは周辺地域内だけのことで、全国民から大々的に避難されることはなかった。私の父は間違いなく犯罪者だが、私自身はそうではない。
顔写真をばら撒けばプライバシー損害で訴えられ、メディアやネット上で非難しようものなら名誉棄損罪に問われることになる。
犯罪者を養護する胡散臭い人権団体も、味方になれば心強いというものだ。
実際、写真については幼少時代の解像度の悪い集合写真が出回っている程度で、現在の写真などは全く無いし、前者についても削除依頼が出されてどんどん少なくなっている。
それはそれとして、一体リヴィオくんは何がしたいのだろうか……
色々と考えていると結賀が話しかけてきた。
「やっぱ、リヴィオとなんかあったんだろ」
鈍感な結賀が察するくらい、私の態度はあからさまだったようだ。
気まずいのは本当だったので、葉瑠は素直に認めることにした。
「うん……」
こちらが認めると、結賀は真面目な口調で問いかけてきた。
「あいつに何されたんだ?」
まだ何もされていないし、その原因を伝えることもできない。
葉瑠は数秒間考えた後、結局首を横に振る。
「ごめん、言えない……」
「なるほど、人には言えないくらい酷いことをされたんだな?」
「え、違……」
結賀は勢い良く席を立ち、手のひらに拳を打ち付ける。
「よしわかった。ぶん殴ってきてやる」
「だから違うって……」
気持ちは嬉しいが、変に騒ぎを起こすと余計に私の秘密が漏れかねない。
どうやって結賀を納得させようか困っていると、不意に近くから女性の声がした。
「……楽しそうですね、おふたりとも」
声に反応し、葉瑠と結賀はほぼ同時に声の発生源に視線を向ける。
そこにはツナギを着た少女が立っていた。
葉瑠は結賀の注意を逸らすべく、大げさに挨拶を返す。
「あ、モモエさんだ。こんにちわ久しぶり会えて嬉しいなー」
「こんにちは。本当に久し振りですね葉瑠さん」
彼女の名前は百枝樹里、エンジニアコースの2年生だ。
くるりと結い上げられたピンクの髪が特徴的で、私や結賀と同じく日本出身だ。
ランキング戦の時は色々とお世話になった。いつかお礼をしなくては……と思っていたのに、いつの間にか1ヶ月も過ぎてしまった。
「お隣いいですか?」
「あ、うん。構わないですけど」
モモエさんはうどんの載ったトレイをテーブルに置き、右隣に座る。
その瞬間、懐かしい匂いが漂ってきた。
(オイルの香り……)
オイルと言ってもアロマだとかローズヒップなどの甘美な匂いではない。
工業用のオイルの刺々しい匂いだった。
私はこの匂いは嫌いじゃない。
しかし、結賀は嫌いなようで、顰め面を浮かべていた。
「勝手に座んなよ……あっち行けよ」
「失礼でしょ結賀……仮にも先輩だよ?」
「いえいいんです。油臭さはエンジニアの勲章みたいなものですから」
モモエさんは顔の前で手を軽く振り、ニコリと笑う。
この大らかな対応に毒気を抜かれたのか、結賀は頬杖をついて黙ってしまった。
モモエさんは音もなくうどんを啜り、話しかけてくる。
「それにしてもランナーコースは毎日忙しそうですね」
「そう見えます?」
葉瑠は自分の綺麗な制服を見た後、モモエの汚れたツナギを見る。
こちらの意図を察したのか、モモエさんは「ああこれですか」と前置きし、汚れについて説明し始めた。
「この汚れはメンテナンス用の機材のせいです。VFには殆ど触れませんし、触れるとしても肉体労働は全部機械任せです。汚れてるだけで全く疲労はしてないんですよ」
(そうですよね……)
全くもってモモエの言う通りである。
数十年前までならともかく、今の技術者に必要なのは手先の器用さでもなければ体力の多さでもない。
如何にメンテナンス用の機材を上手く扱えるか……つまり、どれだけ多くの知識を蓄えているかが重要なのだ。
ランナーとは違い、体力など二の次だ。
(体力かあ……)
また今日もランニングさせられるかと思うと気が滅入ってきた。
「はあ……」
自然とため息が漏れる。
「大丈夫ですか? たまには息抜きも必要ですよ……あ」
モモエさんは突然箸を置き、懐から携帯端末を取り出す。
「そう言えば、寮の掲示板見ました?」
「いや、見てないですけど……」
「やっぱりそうですか……ちょっと待ってくださいね」
モモエさんはしばらく携帯端末を操作した後、画面をこちらに向けた。
画面には“リゾート”や“ビーチ”そして“旅行”などの派手な文字が踊っていた。
「次の日曜日、懇親会も兼ねて女子だけでリゾートに行こうっていう企画があるんですけど、もしよければ参加しません?」
「お、いーじゃん」
結賀は半ば強引にモモエさんの手から端末を奪い、まじまじと見つめる。
最初は期待感たっぷりだった表情も、時間が経つに連れて険しくなっていく。
何か不満でもあるのだろうか。
結賀は画面のある部分をピンチアウトし、モモエに見せつける。
「おい、参加費取るのかよ」
結賀はタダで行くつもりだったらしい。図々しいにも程がある。
葉瑠は画面を覗き込みながら結賀をたしなめる。
「色々経費がかかるだろうし仕方ないよ、少しの出費くらいは……え?」
葉瑠は画面上に拡大された金額を見て言葉を失ってしまった。……が、何とか気を取り直し、モモエに訴える。
「モモエさん、この金額って……」
「まあちょっと高いかもしれませんね」
「ちょっとどころじゃないですよ!! これ、海上都市群と日本2往復できるくらいの金額じゃないですか!!」
たった1泊の懇親会にしては高すぎる金額だ。
驚く葉瑠に対し、モモエは飽くまで冷静に応じる。
「そう言われても……一応ここは海上都市屈指の老舗リゾートですし、このくらいは仕方ないと言いますか……」
「う……」
リゾート施設の相場が分からないので何とも言えない。でも、こんなにお金が掛かるくらいならそのへんで適当に泳いだほうがマシだ。周り全部海なわけだし、泳ぐだけなら差は全く無い。
早々に不参加を決め込んだ葉瑠だったが、モモエの次の言葉がその決定を揺らがせる。
「でも、お金に関してはそんなに問題無いですよ。明日は初任給の支給日ですし」
「……!!」
給与の事をすっかり忘れていた。
ここスラセラート学園では学生に給料が支給されるのだ。
……どうしてお金がもらえるのか不思議に思っていたが、授業初日のアルフレッド教官の見学行脚で詳しく説明され、今では十分理解している。
(この学園、学園っていう皮を被った民間軍事会社ですからね……)
在学中でもランナーは各国からスカウトを受け、2年生以上のランナーの殆どが契約ランナーとして代替戦争に参加している。
一回きりのサブポジションの契約が多数を占めるが、それでも結構な稼ぎになる。
その稼ぎの殆どがスラセラート学園の収益となり、学園の運営に使われているというわけだ。
日頃契約ランナーとして働いてくれている先輩たちに感謝だ。
アルフレッド教官の話では、年間収益の約7割近くが学園ランキング上位10名によるもので、その内の3割はランキング1位のルーメさんが稼いでいるらしい。
全収益の約2割……まさに驚異的な数字である。ルーメさんがいるおかげでこの学園が運営できていると言っても過言ではない。
無論、私達の給料の2割もルーメさんが稼いだお金だ。
モモエさんは続けて言う。
「ランナーコースの支給額はエンジニアコースよりも断然高いですし、この程度の出費ならあまり問題無いと思いますよ」
「なるほど……」
毎日トレーニングしているだけでお金が貰えるなんて、罪悪感を感じずにはいられない。
この罪悪感を薄めるためにも、旅行とやらに参加しようか……。
「ほう、場所は『トゥエス・エキゾチカ』か……」
携帯端末画面を見ながら逡巡していると、深みのあるテノールボイスが背後から聞こえてきた。
「あそこは文句なしにいいリゾートだ。……が葉瑠君、残念ながらその日は予定が入っている」
傾きかけていた気持ちを引き戻したのはアルフレッド教官だった。
アルフレッド教官はごく自然な動作で私の左隣の席に座る。
葉瑠は体を右に傾けつつ、アルフレッドに問う。
「予定って……日曜日は完全にオフだったんじゃ……?」
「人生予定通りに行くとは限らないのだよ葉瑠君」
アルフレッド教官は指を左右に振っていた。
単に指を振っているだけなのに苛立ってくるから不思議だ。
結賀は私よりも苛立っているようで、ぶっきらぼうに問いかける。
「予定って、何するつもりだ?」
アルフレッド教官は待っていましたと言わんばかりにマスクに手をかざす
「……訓練生7名、全員私と一緒にハワイへ合宿だ」
「ハワイ……!?」
突拍子もない話に葉瑠は思考停止状態に陥ってしまう。
まだ合宿するのは納得できるが、ハワイにまで行く意味がわからない。
「ハワイには米国のVF演習場がある。楽しみにしていたまえ」
「じゃあ私もようやく……」
「もちろん葉瑠君は向こうでもフィジカルトレーニングだ」
「……」
アルフレッド教官は意味深な笑みを浮かべていた。
色々と我慢ならなかった葉瑠は、とうとうアルフレッドに文句を言ってしまう。
「……アルフレッド教官、いつまでこんなことを続けるんですか? VFの訓練はしなくていいんですか?」
「訓練なら毎日やっているだろう」
「あの、私が言いたいのはシミュレーターでの訓練のことです。もっと上手くなりたいんです……」
こちらが切実に訴えると、アルフレッド教官は話に乗ってきた。
「上手くなりたいというのは、操作技術を向上させたいということか?」
「はい」
「向上させて何がしたい?」
予想していなかった質問に、葉瑠は一瞬考えてしまう。
何のために私は強くなりたいのだろうか。
1ヶ月前までの目標は“宏人さんと一緒の学校に通う”ことだった。
色々と困難はあったが、今のところこの目標は達成できている。
アビゲイルさんに勝ってからは“宏人さんに認められるようなランナーになる”ことが目標になった。卑怯な手は使わずに、ランナーとして純粋に強くなることを誓った。
この目標を達成するにはもっと訓練が必要だ。
更に言うと、強くなった事を証明するにはランキング戦で勝利する必要がある。
(最低でも半分以上……60位以上にならないと、強いとは言えませんよね……)
目標は60位。今すぐにでも下位集団から抜け出したいのに、あれからランキング戦には全く参加していない。アルフレッド教官によって対戦を禁止されているからだ。
葉瑠はこの禁止命令を撤回させる意味も込めて、先ほどのアルフレッドの問いに答える。
「私は、操作技術を向上させて……ランキング戦で勝ちたいんです!!」
「……馬鹿者ォ!!」
「ひぃ!?」
いきなり隣で怒鳴られ、葉瑠は思わず体を竦める。
アルフレッド教官は咳払いし、こちらを諭すように優しい口調で喋り始めた。
「よろしいか葉瑠君、今重要なのは基礎を固めることだ。実力が付けばランキングなど嫌でも上がってくる」
「そう……なんでしょうか?」
アルフレッド教官は「そうなんだ」と返し、マスク面をぐいっと寄せる。
「……そういう意味では葉瑠君、君は実に素晴らしい素材だ。変な癖も付いていないし、驚くほど飲み込みも早い。私の指示に対する理解力もずば抜けている」
どうやら褒められているみたいだ。
しかし、何故か素直に喜べなかった。
アルフレッド教官は続ける。
「他のランナーに遅れを取ってストレスを感じるのは分かる……が、今は我慢してくれたまえよ」
ここまで真剣に言われて反対するわけにはいかない。
教官には教官なりに考えがあるのだろうし、もうしばらくは言う通りにしてあげよう。
「……わかりました」
こちらが了承すると、アルフレッド教官はまたしても不気味な笑みを浮かべる。
「分かってくれたようで嬉しい。……というわけで、これからも暫くの間フィジカルトレーニングに勤しんでもらうぞ。自分の身体をいじめていじめていじめ抜くことだ」
「はい……」
今しがたトレーニングを受け入れた葉瑠だったが、今の言葉を聞いて早速後悔していた。
だが、もう一度文句を言うことなどできなかった。
他にも色々と聞きたいことがあったが、質問を遮るように昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
アルフレッド教官は席を立ち、椅子に手を添える。
「合宿については後で詳細を通達する。実りのある合宿になることを約束しよう。……さあ昼休みも終了だ。遅れずにトレーニングルームに来たまえよ」
アルフレッド教官はくるりとターンし、悠々とした仕草で食堂から去っていった。
疲れきった様子の葉瑠に対し、モモエは無邪気に声をかける。
「良かったじゃないですか。ハワイ楽しんできてくださいね」
「……」
モモエさんは私達のハワイ行きを純粋に喜んでくれているみたいだ。
(ハワイで合宿って……アルフレッド教官、何を企んでいるんでしょうか……)
「はあ……」
溜息しか出ない葉瑠だった。




