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黄昏のヴァイキャリアス  作者: イツロウ
 1 大罪人の娘
17/133

 15 -小さな理事長-

 15 -小さな理事長-


 食堂を出て3分後

 結賀に抱きかかえられた葉瑠は医務室の前にいた。

(は、恥ずかしかった……)

 この3分は地獄だった。

 食堂で抱っこされた時は脚の痛みのせいであまり気にならなかったが、昼休みで人通りが多い食堂付近の廊下をお姫様抱っこ状態で移動するのは、冷静に考えるとかなり恥ずかしい。

 すれ違う学生のほとんどが興味ありげにこちらの顔を覗いてきて、何故か必ずニヤニヤ笑っていた。

 こんなことになるなら多少の痛みは我慢して、食堂で安静にしていたほうが良かったかもしれない。

 そんな私とは違って、結賀は周囲の視線を全く気にしていない様子だった。

「……」

 改めて見ると、やっぱり結賀は男子よりも男前だ。それでいてスタイルはいいのだから羨ましい。

 抱かれた状態で結賀の顔を見上げていると、結賀がこちらを向いた。

「ちょっと揺れるぞ」

 注意をしたかと思うと結賀は私を抱え直し、右足を前に出す。

 そして、医務室のスライドドアを片足だけで器用に開けた。

「失礼しまーす。友達が足攣っちゃったみたいで診て欲しいんですけど」

 ……実はもう殆ど足の痛みはない。たまに痙攣するだけだ。

 しかし、せっかくここまで運んでくれた結賀にその事実を告げる勇気はなかった。

 結賀は上げていた脚を前に踏み込み、医務室内に入っていく。

 葉瑠は顔を進行方向に向け、室内を見渡す。

 ……薬品臭漂う室内には先客がいた。

「あ、アルフレッド教官……」

 金属製の重そうなマスクに全く乱れのないオールバック。

 アルフレッド教官は床に跪き、椅子に座っている女性に話し掛けていた。

「……それでは明日は?」

「明日も無理。仕事忙しいから」

「では、今後の予定をお教えいただけないだろうか。空いている日に改めて食事に誘うことにしよう」

「それも無理……もう、いい加減諦めてよ……」

「先程から返事が芳しくないが、もしかして体調が悪いのか?」

「良好だったよ。あなたが来るまではね」

「……」

 どうやらアルフレッド教官の誘いは失敗に終わったようだ。跪いたまま俯き、微動だにしない。

 入口付近から二人のやりとりを見ていると、椅子に座っている女性の視線がこちらに向けられた。

 女性はハッとした表情を浮かべ、アルフレッド教官に冷たく言い放つ。

「早くどいてくれないかな。急患が来てるみたいだから」

「すまない……」

 アルフレッド教官はのっそり立ち上がり、トボトボと歩いて女性から離れていく。

 教官が退いたことで、葉瑠は女性の姿をよく観察することができた。

 ふわふわとしたイエローの髪に鳶色の瞳。そしてなんとも言えない艶めかしい雰囲気。

 上には白衣を羽織っており、裾は膝辺りまで伸びている。下はその白衣とはアンバランスなほど短いタイトスカートを履いていた。

 この人はエンジニアコースの受験日に体調を崩した時、私を手当してくれた人だ。

 葉瑠はその人の名前を覚えていた。

「リリメリアさん……」

 声を発したことでアルフレッド教官は私達の存在に気付いたらしい。

 俯きがちだった顔を上げ、背筋を伸ばし、こちらを見る。

「誰かと思えば葉瑠君に結賀君じゃないか。何があった?」

「足攣ったんだとよ。お前が無理やり歩かせたからだぞ」

「そうだったか。歩くのが辛いなら辛いと言えばいい。そうすれば私の背中を貸してやったのだが」

「言わなくて正解だったな」

 結賀はアルフレッド教官の横を通り抜け、私をベッドの上に寝かせる。

 リリメリアさんもベッドの方に移動してきた。

「脚を攣ったの?」

 顔を覗きこまれ、葉瑠は若干緊張しつつ質問に答える。

「はい、多分そうだと思います。痛みは結構和らいできたんですけど……」

「そう、触るね」

 短く告げた後、すぐに脚に細い指が這い始めた。

 ……少しくすぐったい

 このままマッサージでもしてくれるのかと思っていると、リリメリアさんはおもむろにこちらの足の先端を握り、脛に向かって押し倒した。

 結果、脹脛の筋肉が強制的に伸ばされる。

「どう?」

「あ、はい。だいぶ楽になってきました」

 本で読んだことはあるが、やはり足を攣った時は筋肉を強引に伸ばすのが正しい対処法みたいだ。

「すみません。足を攣ったくらいで医務室に来てしまって……」

「いいのよ。これが仕事だから」

 すぐ近くでリリメリアさんの笑顔が咲く。

 天使の微笑みだ。

 この笑顔を見てるだけで痛みなんて吹っ飛んでしまいそうだ。

「……ああ、急に私も腕のあたりが痛くなってきました」

 いきなり呻き出したのはアルフレッド教官だった。

 腕を押さえ、結構な勢いで床に倒れる。

 わざとらしく体を震わせつつ、アルフレッド教官はリリメリアさんを見上げる。

「私も……彼女と同じように処置をしてもらいたいのだが……」

 下心が見え見えだった。この人にプライドは存在しないのだろうか……

「はあ……」

 リリメリアさんは手を止め、ポケットから何かを取り出したかと思うとそれをアルフレッド教官に放り投げる。

 床に着地し滑りながらアルフレッド教官の目前で停止したのは……長方形の湿布薬だった。

「……」

 アルフレッド教官は湿布薬を見つめた状態でしばらく固まる。

 数秒後、今度は仰向けになって胸元を押さえ、喘ぎ始めた。

「うう、今度は急に動悸が……」

 わざとらしく苦しむアルフレッド教官にリリメリアさんは律儀に応じる。

「……本当?」

「本当だ。どうやら持病が悪化したらしい……」

「持病なんてあったかなあ……」

 会話はしているが、リリメリアさんは決してアルフレッド教官を見ようとしなかった。

 アルフレッド教官もそれを悟ってか、必死に訴え続ける。

「ありますとも!! ……今すぐその聴診器で私の鼓動を聞いていただきたい。そうすればすぐに分かるでしょう。私が恋の病を患っていることを!!」

「……診なきゃならないのは頭のほうみたいね」

 そう言い捨て、リリメリアさんはこちらの脚から手を離す。

「そろそろいいかな。……筋肉痛が酷いようならまたここにいらっしゃい。その時はマッサージしてあげる」

「そんな、マッサージなんて……」

「遠慮しないで。訓練生の体調管理は私の仕事なんだから」

 この人なら安心して体を任せられそうだ。

 マッサージはともかく、体の調子が悪くなったら遠慮なく彼女に診てもらうことにしよう。

 マッサージど言う単語を聞いて、再びアルフレッド教官はリリメリアさんに話しかける。

「では、葉瑠君の代わりに私が……」

「アルフレッド……今なんて言ったのかもう一度聞かせてくれる?」

 リリメリアさんの声は酷く冷めていた。

「……いや、何でもない」

 アルフレッド教官はマスクを押さえ、諦めた様子で立ち上がる。

 リリメリアさんにここまで言われたことだし、もう冗談じみたセリフをいうことはないだろう。

 葉瑠はベッドから降り、足の調子を確かめるように床を踏む。

 まだ疲労感はあるが、痛みはほとんどない。

 結賀はそんな私を見て安心した風に頷いていた。

「もう大丈夫だな」

「うん、ありがと結賀」

「礼を言うなら校医さんに言えよ」

 結賀の言うとおりだ。お礼を言うのを忘れていた。

「あのリリメリアさん、ありがとうございました」

 深々と頭を下げると、リリメリアさんに頭を撫でられた。

「……」

 リリメリアさんは何を言うでもなく、ひたすらこちらの頭を撫でる。

 どのタイミングで頭を上げていいのかわからない……

 どうしたものか戸惑っていると、室内に澄んだ声が響き渡った。

「葉瑠さんは!?」

「どうしたのですかセルカ理事長」

(セルカ……?)

 名前を呼ばれたこともあり、葉瑠は頭を下げたまま視線を医務室の入り口に向ける。

 入り口には銀の長髪に碧の瞳が美しい女性……セルカさんが立っていた。

 ゲームセンターで会った時はぶかぶかのパーカーに短いフリルスカートを履いていたが、今はレディーススーツに身を包んでいる。あの時よりもしっかりとした印象を受ける。

 背後には同じく銀色の短髪のリヴィオくんがいた。

 セルカさんはシンギ教官の婚約者だと聞いている。年齢も20代の後半だろう。

 それなのに、リヴィオくんと並んだセルカさんは同年代かそれ以下に見える。身長差も要因の一つだろうが、それにしたって若すぎる。

(あれ……今アルフレッドさん“理事長”って……?)

 なぜセルカさんが理事長と呼ばれているのか……理解にそれほど時間は掛からなかった。

 胸元にはスラセラート学園の校章バッジが輝いている。彼女こそ、この学校の運営を取り仕切っている正真正銘のトップに違いない。

「セルカさん、葉瑠ちゃんならここにいますよ」

 リリメリアさんはこちらの肩を掴み、理事長に向けて差し出す。

 私の無事を確認してか、セルカ理事長の不安げだった表情が和らぐ。そのままゆっくりと近づいてきた。

「大丈夫なようですね。安心しました……」

「だから、足攣っただけだって言ったじゃないですか……」

 リヴィオくんは呆れながらも丁寧な言葉で突っ込みを入れていた。

 近づいてくるセルカ理事長に、葉瑠は疑問を投げかける。

「どうして理事長さんが医務室に……?」

 知り合いとはいえ、一介の訓練生が体調不良を起こしたくらいで理事長が出てくるのはおかしい。

 セルカ理事長はすぐにその理由を教えてくれた。

「試験当日に体調不良で医務室に担ぎ込まれたと聞いてます。またそのような事があれば連絡するようにリヴィオくんに頼んでいたのです」

 どうして、とこちらが聞く前に、セルカ理事長は言葉を続ける。

「……シンギさん、あなたのことを随分と気にしているようだったから」

「ありがとうございます……」

 シンギ教官も半ば強制的に私をランナーコースに入学させたわけだし、一応責任感的なものは感じているのだろう。

 それはともかくとして、最強のランナーに心配してもらえるなんて私は幸せものだ。

「……なあ、校長さん聞いていいか?」

 不躾に言葉を発したのは結賀だった。

「目上の者には敬語で話したまえ結賀君」

 その言葉に答えたのはアルフレッド教官だった。

「それに、校長じゃなくて理事長だ。間違えるな」

 結賀は不服そうにアルフレッド教官を睨む。

「……何が違うんだよ」

「理事長は言わばオーナーだ。一般企業で言う社長や取締役とは違い、絶対的な決定権を持つ絶対的な人だ。わかったか?」

「そんなに大層なものでもないですよ」

 セルカ理事長は恥ずかしげに顔の前で手を振る。

「それで、私に何か聞きたいことが?」

 セルカ理事長は私の隣、結賀に体を向ける。

 結賀はある一点を指さす。

「あの、その手に持ってるの……VFだよな」

「!!」

 セルカ理事長の手……改めてよく見ると何か人型の模型が握られていた。

 その人型の模型は装甲らしきパーツで構成され、デザインはまさしくロボットそのものだった。……と言うか、明らかにVFフィギュアだった。

 セルカ理事長は指摘されてフィギュアの存在を思い出したようで、慌てて背中に隠す。

「これは……その……」

 背中側に隠したのだが、体の側面が見えるこの位置からはそのフィギュアをよく見ることができた。

 そのVFは旧世代の物のようで、全身は真っ黒に塗装されていた。装甲はところどころ尖っていて、フォルムは細身で高機動型だと分かる。

 そして腕の部分にはシンプルな形状の日本刀が握られていた。

 どこのメーカーのVFだろうか……いや、もしかしたら現実には存在しない、オリジナルのVFフィギュアかもしれない。

 そもそも、どうしてセルカ理事長はこんな玩具を持っているのだろうか。

 色々と考えていると、リリメリアさんが答えを教えてくれた。

「またごっこ遊びしてたんですか……セルカさん」

「ちょっとリリちゃん、黙ってて」

「ごめんなさい」

(ごっこ遊び……?)

 ごっこ遊びというと……複数の人形を配置して自分の思うがまま物語を進めたりするアレのことだろうか。

 いくらなんでもいい年した女性がそんなことをするわけがない。

 何かの冗談だろう……と思っていたのだが、リリメリアさんに指摘されてからセルカ理事長の白い肌はどんどん真っ赤に染まっていく。

 どうやら事実らしい。

 本人が一番恥ずかしいのは理解できるが、事実を知ってしまたこちらも何だか気まずい。

 セルカ理事長は近くにあったテーブルにVFフィギュアを置き、咳払いする。

「……遅くなりましたが、入学おめでとうございます」

 強引に話題を変えるつもりらしい。

 私も妙な空気に耐えられそうになかったし、ここはセルカ理事長の策に素直に乗ろう。

「ありがとうございます」

 結賀やリヴィオくんも空気を読んでか「おう」だの「いえいえ」などと返事を返す。

 セルカ理事長は丸椅子に腰を下ろし、視線を左下に向ける。

「……と言いますか、お礼を言わなければならないのはこちらの方かもしれませんね。数あるVFランナー育成機関からこのスラセラートを選んでくれて、感謝しています」

 本当に謙虚な人だ。

 私がこのスラセラートを選んだのは宏人さんがいたからで、それ以外の理由は特にない。

 リヴィオくんはシンギ教官に指導を受けたいからスラセラートに入学し、結賀は……まだ分からないが、適当な理由でここを選んだわけではないだろう。

 結賀はセルカ理事長の言葉に何か感じたのか、独り言のように疑問をつぶやく。

「そういえば、ランナー育成校って全部でどのくらいあるんだろうな……」

「他にもこのような施設は色々とあるが、スラセラートと並ぶ勢力を持っているのは5校くらいだな」

「そ、そうなのか」

 アルフレッド教官の素早い回答に結賀は狼狽えていた。

 アルフレッド教官の言葉は止まらない。

「その5校は全て連合体や共同体によって運営されている、言わば公的な訓練校だ。VFBを有利に進めるために各国同士が協力し、ランナー育成機関を立ち上げ、ランナーの育成に励んでいるというわけだ」

 一応知識としては私も知っている。だが、触りの部分を習ったくらいで詳しいことは分からない。

 エンジニアの知識だけでなく、こういった背景も一通り勉強しておいたほうが良かったのかもしれない……

「連合についてだが……大体は高度なVF技術を有する大国がまとめ役となって共同体が出来上がっている。米国や中国がいい例だな」

 喋っている間、アルフレッド教官はマスクをコツコツと叩いていた。癖なのだろう。

「大体の訓練校はその共同体の中からランナーを募る。……スラセラートのように各国からランナーを集めている例は異質だ。それが世界の中でも有名な訓練校となっているのだから、これは奇跡と言っても過言ではない!!」

 アルフレッド教官は右拳を握り、左手をマスクの額部分にあてがい、やり切った感じのポーズを取っていた。

 セルカ理事長はこの雰囲気に圧倒されたようで「おー」と言いながら小さく拍手していた。

 アルフレッド教官は拳を解き、結賀を指さす。

「異質といえば結賀君、君の国は異質中の異質と言えるな」

「日本が……?」

「日本はどの国とも手を組まず、独力で代替戦争を乗り切っている。そもそも代替戦争への参加数が圧倒的に低い。……安易に代替戦争を行うのも問題ではあるが、全く行わないというのも不気味ではある。いつか棚上げにしてきた問題が雪崩を起こさないか心配するところではあるな」

 セルカ理事長は肯定するように頷き、アルフレッド教官の意見を補足する。

「問題を先送りにしているのは確かですけれど、ソウマさんがいる間は安泰でしょうね。あの人は強いですから」

「よく分かってんじゃん、理事長」

 ソウマというキーワードをきっかけに結賀も会話に参加していく。

 ……ソウマと言うのは日本代表のランナー『柏木綜真』のことだ。

 無敗のランナーと呼ばれていて、その名の通り無敗を貫いている。私もテレビで何度か見たことがあるが、見た感じは優しそうなお兄さんという感じで、強いというイメージとはかけ離れていたように思う。あとすごくイケメンだった。

 ……まあ、宏人さんには遠く及ばないけれど

 結賀の食いつきっぷりを見て、セルカ理事長は言葉を返す。

「もしかして結賀さんはソウマさんと知り合いですか?」

「あの人はオレの目標だからな。いつか追いついて、追い越すつもりだ」

「頼もしい限りです」

 セルカ理事長はそのままアルフレッド教官に視線を向ける。

「アルフレッドくんは名ランナーであると同時に、優秀な指導者の素質を持っています。ソウマさんと肩を並べたいのなら、彼の言うことをきちんと聞いておいたほうがいいですよ、結賀さん」

「……」

 結賀は無言で応じ、アルフレッド教官をジロジロ見る。

 アルフレッド教官は褒められて嬉しかったようで、深々と頭を下げていた。

「お褒めに預かり光栄です。理事長閣下」

「変に堅苦しいよね、アルフレッドくん」

 会話を続けていると、不意に電子音が鳴り響いた。

 セルカ理事長は懐を押さえて苦笑いする。

「すみません。約束があるのを忘れていました。……私は最上階の理事長室にいます。機会があれば気軽に遊びに来てくださいね。その時はお茶菓子でも用意しておきますから」

 セルカ理事長は早々と別れを告げ、手を振りながら医務室から出て行った。

 理事長だし、仕事が忙しいのだろう。

(……でもVFフィギュアで遊んでたんですよね)

 よく分からないが、これ以上の詮索は止めておこう。

「なんか、優しい人だったな」

 結賀は後頭部で手を組み、出口を眺めていた。

 室内にいる全員が同じ気持だったようで、みんな共感するように頷いていた。

「もうこんな時間か……あと5分で休憩時間は終わりだ。くれぐれも集合時間に遅れないよう、気を付けたまえ」

 このセリフを最後に、アルフレッド教官も医務室を後にする。

 アルフレッド教官の姿が見えなくなると、結賀のお腹の虫が鳴いた。

「うわ、晩飯食ってねーぞ……5分で食えるかな……」

 結賀は慌てた様子で部屋から飛び出ていった。これから食堂で何か食べるつもりらしい。食い意地だけは立派だ。

 リヴィオくんは頭を掻きながらこちらに手を差し伸べる。

「……俺たちも戻るか」

「そうだね」

 葉瑠はリヴィオの手を取ろうとした……が、その前にリリメリアに改めて向き直り、お辞儀する。

 リリメリアさんは微笑み返し、おまけに手も振ってくれた。

 ……怪我をしてなくてもまた来たい気分だ。

 無言で別れを告げると、葉瑠はようやくリヴィオの手を握る。

 午後からどこを見学するのかを想像しつつ、葉瑠はリヴィオと共に部屋を後にした。

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