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201×年1月24日〜201×年2月27日

201×年1月24日

『他の図書館でも、同様の被害があったと聞いた。許せない。』



 私が図書館に出勤してすぐ、開館前、控え室に全員が集合して、上司からの話を聞いた。同様の被害が他の図書館でもあったと聞きました。確認を急いでいます。いつも以上に、不審者の動向に注意しましょう。そういうミーティングの内容だった。

 いつもなら、次はどのような図書館展示をしようかなど、前向きで建設的な意見の交換の場となるはずのミーティングで、誰もが下を向いていた。私も、発言する気にもなれなかった。

 勤務時間の間、設置されている監視カメラを見ている時間が多かった気がする。


201×年2月3日

『久しぶりの日記と、久しぶりの淳也との、日中デート。2ヶ月久しぶりに休日を合わせることができた。図書館事務員は、土日や祝日に休めないのが、玉に瑕。土日、祝日に図書館を利用する人が多いから、仕方が無いけど。

 最近の図書館は、無臭の気化性のガスが充満したみたいで、息が詰まるようだったから、リフレッシュすることができたと思う。

 水族館のイルカは、可愛かった。ショーで、水しぶきを浴びる場所に座らなくて、本当によかった。もし、あの水しぶきを浴びたら、冬の寒さで凍えてしまってただろう。 

 

 水族館の入場チケットを、記念に張っておく。  

    「     

        の り し ろ

                    」


 それにしても、展示コーナで見た、オニヒトデのあの異形が頭から離れない。あんな物を、見なきゃよかったと後悔。数百年という長い時間をかけて成長したサンゴを、短期間の内に食い尽くし、サンゴを白骨のようなものに変えてしまうオニヒトデ。おぞましい。』


 デートの場所は、品川だった。夕食にプリンスホテルに入っている店で中華料理を食べた。あまりお酒の飲めない淳也が、紹興酒飲んでみようかと言って注文した、小壺に入った小越龍山という銘柄のお酒を、頑張って飲みきろうとしているのを見ていて楽しかった。久しぶりのデートを、盛り上げようとしてくれている淳也の気持ちが嬉しかった。

 私も、飲んだけど、美味しい醤油? の味だと思った。


201×年2月24日

『ご無沙汰の日記。それだけ書いて、今日はおしまい。』


 お昼休みの時間だった。

「警察に捜査本部が設置されたんだって。早く捕まるといいよね」

 一緒に食事をしていた同僚が教えてくれた。

 報道でも、犯行範囲が特定されてきている。指紋鑑定もあるし、防犯カメラの映像もある。 

 指紋が残っていれば、前科のある人だったら、すぐに特定できるだろうと、事情聴取に来た警官から聞いた。

 駅を利用したのであれば、きっと防犯カメラに犯人の映像が映っている。一日、数十万人が利用する駅だとしても、警察は、その中からホシを探し出すと言っていた。余談だけれど、本当に、犯人のことをホシと言っていることに驚いた。推理小説や刑事ドラマの中だけだと思っていたけど……。

 防犯カメラは、何処にでもある。この図書館の付近のコンビニだってある。すぐに、犯人の映像が特定されるだろう。

 図書館は、公共の施設だ。言い換えれば、匿名の施設だ。隣にどんな人が座っていたか、それをはっきりと言える人は少ない。私も、沢山の利用者が貸出と返却を行う中で、どんな人が、どんな本を借りていったか、そんなことを、はっきりとは憶えられていない。

 だけど、モンタージュを見せて貰えたりとか、何かのきっかけがあれば、きっと思い出せると思う。他の人だってそうだと思う。目撃証言も、徐々に集まるだろう。

 もしかしたら、ゴミ収集の人が、本の切れ端を見つけてくれるかも知れない。天網恢恢疎にして漏らさず。




201×年2月27日

 『犯人は、いま、何をしているのだろうか。そんな事を考えた。ちゃんと犯人に、警察の足音が聞こえているだろうか。今は遠い所から聞こえているかも知れないが、確実にその足音はあなたの方に向かって、進んでいるのだ。着実に。

 狭く、暗い部屋でひっそりと、犯人は、息を潜めて、その近づく足音に脅えているかも知れない。あなたが破った本の著者が、親衛隊の足音を恐れたように…… 。だけど、はっきりと言いたい。あの本を書いた少女は、本人に全く罪なく、言われ無き迫害を受けて、身を隠したのだ。

 あなたは、追われるべき事をして、追われ、隠れている。そこに、人の心を動かす思想も、感情も、何ものも、そこには、無い。』


 私は、そっと自分の日記を閉じた。

読んでくださり、ありがとうございます。勢いで書いてしまい、拙い部分、多々あります。ご容赦ください。


追記:この物語に登場する、『私』、『少年』など、すべて作者が想像した架空の人物です。

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