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銭湯  作者: 聖魔光闇
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其の一

 前作【規則正しい生活】の繰り返し技法を主流に【こんな薬屋ありません(^-^ゞ】のアイデア商品紹介を真似て書いています。

 基本ほのぼのコメディをメインに進めていく予定にしています。

 家の風呂が壊れてしまった。壊れたと聞けば、修理すればいいのでは? と思いがちだが、平日・休日共に多忙な毎日を送っている僕には修理工に連絡している余裕がない。だから、今日から家から歩いて五分程の場所にある銭湯に通うことにした。


 利用料大人(中学生以上)四百二十円。小人(未修園児を除く)百七十円。バスタオル・洗面器・入浴用玩具・石鹸・ボディソープ・シャンプー・リンス・コンディショナー・洗顔石鹸・フェイスソープ・脱色剤・脱毛剤・育毛剤・洗体タオル・頭髪用ブラシ・ドライヤー・くし・飲食物・星の入った玉等の持ち込み禁止。


 身体に入れ墨のある方・頭髪を過剰に染めている方・浴槽内で排泄される方・テンションが上がると髪の毛の逆立つ方・お湯と水で性別が変わる方・スーツ姿でご来店のお客様には、当店のご利用を御控えさせていただく場合がございます。


『ここまでで一応、整理しておこう。一見マトモだが、書いてある注意書きに不備がある。大体、【星の入った玉】って何だ? 龍でも出るのか? テンションアップで髪の毛が逆立つ? お湯と水で性別が変わる? 変にアニメに影響受けすぎじゃないのか? スーツ姿はどうして駄目なんだ? と、とにかく、一見普通のこの銭湯、ここまで見ただけでも普通じゃないってことか……』


 入口の自動ドアを開くと、目の前にもう一枚の自動ドアがある。


《ドアを開く前に、右横にあるボタンを押してください》


 書かれた文章通りにボタンを押す。『ガ、ガス!?』そこで、天井から降ってきたのは白色の霧だった。とっさに必死になって鼻と口を押さえながら、次のドアを開く。


《只今のは、ただの水蒸気でございます》


『何のだ!! 何の為のだ!!』


 心の中で怒鳴り散らしてから、前を見ると、また自動ドアがあり、《そうして、お風呂が楽しくなるのです》と書かれてあった。


『そうしてって、どうして楽しくなるんだよ! というよりも、このドアはいったい何の為にあるんだよ!!』


 怒りを通り越し、呆れ果てた僕は目の前の真っ白な自動ドアを開けた。


『…………』


 絶句。それ以上も以下もない。しばらく、開いたドアの前で声を失った。


 それもそのはず、目の前にはカウンターや脱衣所ではなく、入浴中のオッサン達がいたからなのだ。ドアをくぐり、一歩前に進み出る。


「いらっしゃいませ」


 突然の掛け声に不意を付かれた僕は、とっさに声の方へと目を向ける。するとそこには、レインコート(しかもフード付き)に身を包み、顔から大量の汗を流しながら、満面の笑みを浮かべる番頭がいる。


「当施設のご利用は、初めてでございましょうか?」


 困惑した僕の表情に気付いたのか、番頭は、ゆっくりとした口調で話し掛けてきた。


「当施設は、御覧の通り混浴でゴザイマス。ただし、男性の皆様方におきましては、破廉恥な気や行為をなされますと、即退室願います。また、私にお湯をかける行為もご遠慮いただきたいと思っている次第でゴザイマス。他に何か質問はおありでゴザイマショウカ?」


 お湯を子供にバシャバシャとかけられている番頭を見ながら、『どうして「ゴザイマス」だけ片言なのだろう……』と思ったが、口に出すのは止めにしておいた。


 よく見ると、湯気に混じってよくわからなかったが、女性の姿もあるようだ。


『どうせ、大衆浴場で混浴なんて言えば、ババアばっかりだろ?』と思ってしまったのだが、意外と若い女性も入浴している。


 その時だった。


「離せ馬鹿野郎!! 俺ぁ何もしてねぇだろうが!!」


 大声が聞こえたと思うと、目の前を下半身のある一部分を大きくした男性が、黒いこれまたフード付きのレインコートに身を包んだ体格の良い男三人に羽交い締めにされ、番頭の裏の部屋へと消えて行った。


 即座に番頭が、「破廉恥な気や行為をなされますと、即退室願うのでゴザイマス」と再度念を押すように言っている。


「ちなみに、私の後方にあるのが脱衣室、左側が男性、右側が女性となっているのでゴザイマス。尚、当施設は洗身及び洗髪に関する用具は、当施設指定の物を使用していただくシステムになっているのでゴザイマス。それでは、楽しい入浴をお楽しみください」


 そう言って、脱衣室の方へ右手を差し出した。その間も、子供達にバシャバシャとお湯をぶっかけられ続けていたのだが……。


『そりゃあ、ああなるわな……。今日のところは一度引き下がるか……』


 そう判断し、「今日は帰ります」と一言言って、銭湯を跡にした。帰り際に、もう一度水蒸気を全身に浴びせ掛けられた後で……。


『この銭湯、繁盛してるのか? と言うよりも、カマかニューハーフ、女に興味が無いか、機能不全の奴しか利用出来ないんじゃねぇのか?』


 とは思ったものの、家の風呂は壊れたままなので、また明日出直す事にした。


「にしても、何故あの番頭、「ゴザイマス」だけ片言なんだ?」


 思わず声に出してしまったが、その疑問は今、どうこう考えても答えが見つかるものではなかった。




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