彼女との出会い。あれから、ずっと見てたんだよ、ずーと、ね?
C君の独白です。
主人公との出会いをかいています。
今回は、前回より大分長いです。
俺、梔子 大樹が彼女に会ったのは彼女が10歳になった日のことだった。
その日は、俺が、小学生になって四年、今まであったテストですべて全教科満点で学年1位をとった、お祝いで、ケーキを買いに行ったときだったんだ。
学年1位を取ってるからってくだらないよね。
そんなもの簡単にとることができるのに。
俺は既に高校レベルの問題も解ける。
今さら、小学生の問題なんて簡単すぎてが反吐出るね。
そもそも何で、四年生のこの時期にこんなことを祝うんだろうね?
意味がわからないな。
それにしても、今日は母さんの機嫌がいいな。何かあったのかな?
でも、今はこの意味不明な行動に感謝しているんだ。だって、彼女に会うことが出来たんだから。
「学年1位取ったんだから好きなもの選んでいいわよ」
母さんが無機質な声で俺に告げた。"言う"ではない、"告げた"、だよ。ここ重要。俺はそんなこと望んでないのに、一方的にね。
この人は俺がこれくらい簡単に出来ることを知っている。だから、誉めたりはしないんだよ。「凄い」なんて言われたことがないな。本当は凄いなんて思っていないからね。
周りのヤツは、俺が努力しているなんて思ってもいないんだ。 できて当たり前、天才だから。俺の周りは皆そう思っているからね。
だから、この人は餌でつるだけ。ちゃんと、"当たり前"をしてくれるようにね。
それなのに、本当に欲しいものは与えてくれないんだ。俺が欲しいのは時間なのに。
友達と遊んだことなんてない。遊ぶ時間を貰えないから。俺も、他の小学生みたいに遊びたいのに。誉めてほしいのに。
世界なんて、つまらなくて、くだらない。
そう、思っていたんだ。彼女に会うまでは。
「あの子も学年1位取ったんだって!! すっごぉーい!!」
「!?」
「あー、もう。ダメですよ、姉さん。人の会話を盗み聞きなんて」
「うー。盗み聞きしようと思ってしたわけじゃないもん。聞こえてきただけだもん!」
「それでも、そこは無視をするところです。姉さんも、勝手に知らない人に会話が聞かれていたら嫌でしょう?」
「うぅーー。確かに……。ごめんなさい…」
「はい。じゃあ、今度からは、聞こえてても、無視をするんですよ」
「はぁーい。でも、本当に凄いよね! 学年1位でしょう!? 天羽は毎回取ってるけど、私、そんなの取ったことないよ! 私にも取れるかな!?」
「姉さんが学年1位なんて取れるわけがないでしょう。世界が滅びてもあり得ません。てか、寝言は寝て言ってください」
「ヒドッ!? 分かんないじゃん! この子もきっと努力して学年1位を取ったんだよ! 偉いよね! でも、だったら私も努力したら取れるかもしれないでしょ!?」
そう言われたとき、俺のつまらなくて、くだらない、灰色の世界が虹色に光輝いたような気がしたんだ。今まで、そんなこと言われたことがなかった。でも、俺が一番欲しかったもの。それを、彼女は簡単に俺にくれたんだよ。
彼女だけは俺のことを理解してくれている。そう、彼女だけが――
「そうですか。まあ、頑張ってください。それより、ケーキは決めました? もう会計しますよ」
「うわぁー! 待って、待ってぇー! まだ決めてない!!」
「はぁ。早くしてください。今日で10歳になったっていうのに。もう、二桁に突入したんですから、もう少し落ち着いて下さい」
「はぁーい。ごめんなさぁーい。それにしても、そう言ってる、天羽は随分落ち着いてるよね。天羽が騒いでるの見たことない気がする」
「当たり前です。こんな、手のかかる姉を持つと皆、嫌でもそうなりますよ」
「ひっどぉーい!」
後の会話はもう覚えていないなー。いや、聞こえていなかった、が、正しいかな?
彼女のことが俺の心を占めていたからねっ!
ああ、やっぱり、彼女は他のヤツらとは違う。
俺は彼女が――
――欲しい……。
俺が思考の海から上がってきたときには、もう彼女は居なくなっていた。
名前を知らない、分かるのは彼女の顔と彼女が俺と同じ10歳だということ。そして、今日が誕生日だということだった。
それから、俺は血眼になって彼女のことを調べたんだよ?
彼女の名前、住所はもちろん。
家族構成から、好きな食べ物まで……。
彼女はたくさんの人に守られていることを知った。特に、彼女のお兄さんは彼女に近づくヤツ全員を退治しているようだった。
おかげで、当分彼女に変なムシが着くことはないみたい。だけど、俺もその中に入れられたら堪らないな。お兄さんには俺は彼女にとって無害だって思わせないとね。
ああ、それにしても、彼女のことを、もっとたくさん知りたい。
今日は何をしているんだろう。
何を食べたのかな。
笑顔を誰かに見せているのだろう。
誰に、笑いかけているの……?
だから、ね? ずっと、ずっと見てたんだよ。
そう、今までずっと――
彼女が行く高校を調べて同じ高校に進学した。母さんたちは、もったいないって言って最後まで説得しようとしていたけど、俺は替えなかった。彼女と折角の居られるかもしれないのに、そう易々逃すわけがないじゃないか。
二学年で彼女が俺と同じクラスになったとき俺はもう運命だと思ったよ。
俺は彼女からもう離れられない。
そして、今日。
彼女が17歳になった。
そして、俺は既に17歳になっている。
俺、彼女より誕生日早いから。
あぁ、それにしても、後1年だね。後1年で、俺たちは結婚することができるよ。
だけど、どうすればいいのかな。彼女は俺のことを意識してくれてない。どうやったら、手にはいるの? 今まで、彼女に好かれるように接してきたのにッ!!
アイツばかり、意識されててムカつく。
クソッ! 彼女のあんな声をアイツは簡単に出させることができる! 俺には出来ないのに!! アイツから出させられる彼女の声を聞くことしか出来ないッ!!
だけど、俺にチャンスが来たんだ。
彼女を部屋に連れていくことが可能になった。そして、彼女を家まで連れてくることは出来た。
彼女は俺を意識していない。
だったら、無理矢理にでも意識させてあげるね?
でも、彼女にチャンスをあげないと。俺はチャンスを貰ったんだから。彼女にもチャンスがないと、不公平でしょう?
だから、彼女が俺の部屋に行きたくないって、言ったら辞めようって思ってた。
そう決めて、家に連れてきたんだ。
家に連れてきているとき、彼女は抵抗していた。
これは、ダメかも……。彼女の勝ちかな。そう思った。
だけど、ほら。彼女はくれたんだ。
また、俺の欲しい言葉を――
「ああ、もう! さっさと、部屋に行こうっ!!」
C君編終了です。
このようなノリで書いていきます。
一先ず、ここまでお付き合いありがとうございました!
これからも、お付き合いよろしくお願いします!!
次は、C君の詳しい人物紹介です。
読まなくても、何も支障はありません。
設定などがあります。
気になる人はチェックです!
気にならない人は、……何か、すみません…。