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面倒な人たちに囲まれて。  作者: 枯木榑葉
最終章 ~面倒な人たちに囲まれて。~
29/36

私が消えた、その先で……

残酷描写が入ります。苦手な方はご注意ください。

「リチャード! 先ほどの白い光は何なんだ!? オフィーは何処に行ったんだ!! あなたは何か知っているのだろう!?」


 アイザックさんが敬語を忘れ荒れた口調でリックに詰め寄ります。私はこの時にはここにはいませんでしたし、今までも彼がこれほどまでに取り乱しているところを見たことがありません。初めて見ましたが、普段の態度からは想像も出来ませんね。


 て、あれ? 私はこの時にはすでに飛ばされていたからこの状況を見れなかったんですよね? 何で私は今この状況を見ることが出来ているのでしょうか。

 『記憶を覗いている状態』なのではないのですか?

 私が思っていた『記憶を覗いている状態』なら、今の状況は見られないはずです。でも、今も現在進行形で見れている……。

 見れてるってことは私は記憶を覗いているわけではない? 私に"あの方"が授けてくださった能力では、未来は見れても過去のことを知ることは出来ません。過去を知る役目は"あの子"が担当していますが、"あの子"もきっと今は……。

 まさか誰かの力が作用してる? それとも、やっぱりこれもアレのせい……?


 うぅ、さっぱり分かりません! ふぅ。深呼吸、深呼吸。落ち着け、自分!

 ……んー、そうですね。考えても全く分かりません。それにどうせ私には何も出来ませんし、自分が消えた後のことも気になるのでこのまま勝手に終了するまで見続けることにしましょう!! はい、決定っ! 異存は認めないんだからっ!!

 って、誰に私は言っているのでしょう? まあ、いいや。続き続き。



 私があれこれ考えている間も、リックとアイザックさんの会話は続いています。



「フィアの存在が完全にこの世界から消えてる……。それに世界が修復を始めてしまった」

「存在が消えてる……? それに世界が修復を始めた? それはどういうことですか?」



 リックが放心状態のままポツリとこぼした台詞を、アイザックさんは落ち付いた様子で聞き返します。口調も戻っていますし、一応は冷静になられたようです。内心のほうは分かりませんが。

 アイザックさんが冷静になったことで、リックも少しは落ち着いたようです。リックがアイザックさんに説明を始めました。



「この世界にフィアはもういない。さっき、亀裂が見えたから違う世界に飛ばされたみたいだね。この世界に属していたものが急に消えたんだ。そのままにしていたら、"世界の理"が壊れてしまう。だから、世界はそれを無かったことにしようとする」

「無かったこと?」

「……真っ白な紙に落ちた一滴ひとしずくの墨汁は、そのままにしていたらどんどん侵攻し、白を黒く塗り替えてしてしまう。もう一度真っ白な紙に戻す方法としては一般的に二つある。一つ目は黒くなった部分に新しい紙を上に貼り付ける方法。でも、それだとその部分だけ歪で不安定だ。その不安定さでもっと大きな染みを作るかもしれないし、黒くなった部分は分かりにくくなっただけで消えたわけじゃないから根本的な問題の解決にならない」



 これは……昔私がリックにした世界の説明ですね。真っ白な紙が世界。一滴ひとしずくの墨汁が私といったところでしょうか。まあ、実際には墨汁は私だけに限ったわけではありませんが。私が墨汁に例えられる日がこようとは。心外です。



「もう一つの方法。それは、……墨汁で黒く染まった部分を切り落とす方法。黒くなったところを切り落とし、そこには最初から何も存在していなかったことにする。この方法が確実に侵攻を止められる。この世界はこの方法を選んだみたいだよ」

「切り落とす……? なら、オフィーのことは……」

「もとから居なかったとして処理される。3日もすれば記憶から完全になくなるだろうね。もしかしたら、あまり関わりがなかった侍女なんかは既に記憶が消されているかもしれない」

「なっ!? つまり、私はオフィーのことを忘れて今まで通り過ごしていくと言うことですか!?」

「そういうこと。あんた以外の人もそう。城の門番もだし、この国の王様も。みな例外なく記憶から消される。少しでも残ってしまったら、そこから世界が歪んでしまうかもしれないからね。不穏分子は残さないためにも綺麗に排除される」

「……オフィーのことを覚えたままでいることはどうやっても出来ないということですか」

「この世界にいる限りはね。何か行動を起こすなら早めにしたほうがいいと思うよ。時間が経つほど記憶が薄れていくから。あぁ、ほら、すでに王は行動に移している」

「王が……?」



 リックの言葉で、私も王の気配を探ってみると王は自分の魔力で何やら既に行動していました。もっと詳しく探ってみると、魔法で転生をしても記憶を引き継ぐようにしているようです。

 王は私を転生し続けて探すつもりみたいですね。魔力の多い王だからこそ出来ることです。


 この方法で実際に私とめぐり合うことが出来るのか、とお思いの方もいるのではないでしょうか。

 それが、できるんです! この転生というのは決められたグループの魂たちがある周期で同じような場所に同じような時間に生まれるようになっています。一個一個転生されると面倒ですが、幾つかのグループで一気に転生させると簡単だからです。あ、人間臭いと思いましたね? ……世界にも感情はあるんですよ。

 しかし、グループでと言っても数個ではなく何千何万個の魂が一つのグループになるので、前世で同じ年の幼馴染だった魂たちが現世では別々の国に生まれることもありますし、祖父母と孫という関係になることもあるわけです。探し続けて運がよければ会える、そのような感じですね。

 私は本当は転生なんてしないのですが、飛ばされる前に王や宰相など、ある一緒のグループの魂と関わりを今回持ったので、そのグループに加わります。また、飛ばされたわけですが、その周期を変えることは出来ないので、時間と場所が飛ばされるだけなんです。なので、根気強く探し続けると、ポンッ! と、その周期の中の何処かに落ちた私と会えるかもしれないというわけです。

 お分かりいただけたでしょうか?

 て、だから私は誰に説明をしているのでしょう?



「あんたも王がフィアのことを好いているのを知っているだろ。王はあんたとフィアが婚約していたからフィアの幸せを願って身を引いていたんだ。あのわがまま暴君王も成長したんだ。でも、フィアは突然この世界から消えた。あんたはフィアを守れなかった。だから今度は自分がフィアを幸せにすると考えているんじゃないかな」

「……」

「あ、何もいえない? だったら、もうフィアに近づこう何て考えないで。さっさと記憶を消されて今までどおり過ごせばいい。記憶が消されればあんたは記憶が消されたという事実も覚えていないから。何も考えずに消えて」



 アイザックさんはリックの言葉を聞いて苦虫を噛んでしまったような表情で、唇を噛み締めていました。その唇からは血が滲んでいるように見えます。

 アイザックさんが責任を感じることはありません。これはどうしようもなかったことなんです。

 そして、とても辛辣な言葉でアイザックさんを責めているリックですが、リックがギュッと握り締めている右手からは、爪が手の皮膚を破り、こちらも血がポタポタと落ちてきています。リックはとても優しい子です。きっと本当は一番自分を責めてしまっているのでしょう。リックと永年一緒にいた私には分かります。

 なんで自分はフィアと一緒にいなかったのか。アイザックさんには不可能でも、自分は彼とは存在が違う。もしかしたら、フィアが消えることを防ぐことができたかもしれない。

 きっとこんな感じで自分を責めていることでしょう。


 でもアレは知っていても回避することは出来ないし、何よりアレだけは未来が分かる私でも起こる前に知ることは出来ないんです。だから、ただの人間のアイザックさんはもちろん、アイザックさんとは存在が違うリックでも、例えどんな存在であったとしても、今回のアレのことを知り、私が飛ばされるのを回避させることはできなかったんです。だから、あなたたちが責任を感じる必要はありません。自分を責めないで。


 そう伝えたいのに、私の声は彼らには届きません。



「じゃあ、オレも行動に移すから」



 そう言って、リックはこの部屋から出て行きました。

 私はどうしようかと考えていると、リックの気配がフッとこの世界から消えます。どうやら、リックは私の後を追ったようです。

 リックと私は対になっていて二人で一人です。だから、リックには私の居場所がわかります。リックが私の場所に移動したと言うことは、昔の私は王曰く600年後らしい"今"にいることでしょう。


 これで、王とリックが"今"にいた経緯が分かりました。では、魔力を持たないアイザックさんはどうするのでしょうか。Aさん、B君、C君も魔力を持たなかったので、きっと私のことは忘れてしまったのでしょう。実際に"今"では前世のことを覚えていないようでしたし。そう思って私はアイザックさんが起こすであろう行動をそのまま見続けることにしました。



 アイザックさんが起こした行動は、




 ――殺戮でした……。



 たくさんの人たちを殺して、殺して、殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して――

 たまに狂ったように笑いながら……。


 アイザックさんは城にいた人たち全員を殺したと分かると、次は城の外に出て民を殺し始めました。とても活気のある華やかだった王都が真っ赤な血に染まっていきます。


 私はアイザックさんが起こした行動を見て、その衝撃で一瞬息が詰まります。私は手で口を覆い涙を流し続けました。

 彼をこのようにしてしまったのは私のせいです。そう思うと、涙は止まることを知らず、どんどん溢れてきます。


 やめて、やめてよ! 私の大切な人たちを、大切な場所を、壊さないでっ……!


 アイザックさんを止めようとしても、実態のない私では止めることはできません。


 そして、王都が血の海とかした頃、空間に白い亀裂が走り、アイザックさんを飲み込んでいきました。





 アイザックさんの行動を全て見終えると、私が今まで見ていた光景は、がらがらと音を立てて崩れていき、気が付くと目の前に天羽の姿から本来の姿に戻ったリックと、元アイザックさんで彼方(かなた)と名乗ったB先輩が立っていました。




遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!

昨年は、拍手やコメントなどしてくださりありがとうございました! とても嬉しかったです。(*^∀^*)

昨年のうちに完結させること言いながら、結局完結させることが出来ませんでした……。orz

しかし、今年度中には完結させるのでそれまでお付き合いよろしくお願いします!

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