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面倒な人たちに囲まれて。  作者: 枯木榑葉
最終章 ~面倒な人たちに囲まれて。~
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望まぬ終わりの鐘が鳴る

「姉さん。起きてください。何時だと思っているんですか」

「んっ……」

「姉さん」

「んー、天羽。あと少し、寝かせてー。あと、5……」

「5……、5時間? それとも5日? 姉さんの口から5分などとかわいらしい回答が出ないことはもう学習済みだよ」

「5、……年」

「年単位!? 分になおして525,600分だと!? 5分の105,120倍じゃないか!! そんなこと人間は普通の睡眠では出来ないよ! さすが姉さん!! 人間の常識さえも超えようとするなんて!」

「耳元で騒ぐな! 煩いわぁぁああ!! 何でわざわざ分になおしたの!? そして計算速いな!」

「あ、姉さん。おはよう」

「何そのスルースキル!? 私にも分けて欲しいわ」

「おはよう、姉さん」

「ここでもスルーなのね。いや、スルーというよりも無視?」

「お は よ う」

「っ!? お、おはよ――んぐっ!」



 弟の笑顔の黒さに危機感を感じ、挨拶を返そうとしました。しかし、一歩遅く、挨拶の途中で私の唇は、弟のそれに押し付けられてしまい、最後まで言葉を発することが出来ませんでした。

 私はちゃんと挨拶をしようとしていたのに、何故に言うことを阻ませるようなことをしてきたのか、はなはだ疑問です。でも、きっと理由はなく、ただしたくてしてきただけなのでしょうが。



「んぅ、ん、あ、まは……んふっ」

「真っ赤になって……かわいっ」

「……離れて」



 私は恥ずかしくなって、天羽を睨みつけました。私はまだベッドの上で横になっている状態なので、必然的に上目使いで天羽を見ることになります。

 天羽はこの態度をとると、大体のお願いは通してくれます。

 普通の人には効かない攻撃でしょうが、天羽にはまだまだ有効な手なのです。さすがシスコン。ダメな部分だけでもないんですね。



「姉さん。明日はとうとう誕生日だね。17歳だ」

「そうね。そっか、誕生日なんだ」



 なんだか、最近知ったことが多すぎて実感がわきません。もうこの誕生日の前日を何回経験したのでしょうか。

 て、ん? あれ?



「天羽ッ!?」

「ん? 何、姉さん?」

「おはよう!? さっき、おはようって言ったよね!?」

「うん。そりゃあ、朝の挨拶は"おはよう"でしょう? 今更だね」

「いや、そうじゃなくて! ――そっか、……覚めたんだ」

「は? 何の話?」

「いや、何でもないよ。……ねえ、天羽。私の名前を呼んで?」

「っ!」



 先輩は、天羽も私の名前を知っているって言っていました。しかし、私が名前についていった途端、目を大きく開いて固まってしまいました。

 え? 先輩? あぁ、B先輩のことですね。

 それにしても天羽も他の人と同様に、私の名前を覚えていないのでしょうか。

 彼の口から"分からない"なんて聞きたくありません。この話をなかったことにしようと、口を開きます。



「いや、やっぱりいいよ。気にしないで」

「あっ、いや、違うっ! 分からないわけじゃない! 神奈!!」



 分からないわけじゃなかったんですね。ホッとしました。

 先輩に呼ばれた時と同様に、心がじんと暖まります。しかし、その一方で心の奥底で叫ぶのです。


 ――違う。それじゃない。呼んでっ、私の名前を呼んで!


 一体なんなのでしょうか。違うって何? 私の名前は神奈でしょう? 先輩が嘘の名前を教えたわけでもないようですし。

 んん? 先輩? 先輩って誰? あれ?

 


「……姉さん?」



 私が困惑していると、天羽が不思議そうに顔をのぞいてきました。それによって、私の思考は一時中断します。



「え、あ、なんでもない。朝ご飯食べよっか。早くしないと遅刻しちゃう」

「……うん」



 その後、私は疑問を思い出すことなく学校に行きました。そして、その日もいよいよ終了し、次の日を迎えようとしている夜の11時。AさんとC君が家に来ました。



「なぁ、お前。何でコンタクトにしないの?」



 彼らが来て少しして、Aさんが唐突に聞いてきました。

 ああ、ここは夢と同じなんですね。正夢って言うんですかね、こういうの。

 それにしても、彼らはなにをするでもなく帰っていくんですよね。本当に、何をしにきたのでしょう。



「急になに? て、いうか今さらだね。頭打った? 大丈夫? 病院行かなくていい?」

「さすがの俺でも怒るぞ?」

「えーと、コンタクトだっけ? 私はする気ないよ?」

「えー、なんで??」



 C君が夢と全く同じタイミング、そして同じ言葉を発し、話に参加してきます。

 こんな細部まで一緒なんて! 凄いわ、私の夢!!

 その後も、夢と全く違わず会話は進んでいきました。



「確かに、メガネがあってもかわいいけど、メガネがないほうがもっとかわいいと思うんだけどなぁ」



 現実でも、C君は天然たらしぶりを余すとこなく発揮しています。

 私はC君が将来沢山の女性を泣かせないかとても心配です。今でも泣いてしまう女子がいるのに。将来が不安です。



「姉さんは身体が敏感に反応してしまうもんね」

「ぐへっ!」



 そう言って、天羽が私に後ろから抱きついてきました。勢いもあり、若干前に倒れかけます。しかし、そこは腐っても天羽です。私がバランスを崩しかけているのを見ると、今度は自分の方に私を引き寄せます。そのため、今は天羽に抱きとめられている状態です。



「ああ、姉さん大丈夫? 倒れそうになって。やっぱり姉さんを一人にしているのは危険だよ。オレに抱えられて生活しよう?」

「誰がするかっ!! ありえないでしょう!? どこに弟に抱えられて生活する姉がいるっているのよ!?」

「オレの目の前にいるよ」

「私のことを言ってるの!? 断ってるわよね! 私ちゃんと断ったわよね!?」

「あぁ、姉さん。ダメでしょう? そんなに大きな声を出したら。痛めて吐血して、声が出せなくなるよ」

「だあああああああ!! な ら な い ! どれだけ私は虚弱体質だと思ってるのよ!?」



 ああ、もう! 何なの、これ! あり得ない! シスコンにしても度が過ぎてる!

 朝はいつもキスしてくるし、常時抱きついてくるし、好きな時にキスしようとしてくるしっ! 時と場所も考えないでしようとしてくるなんて、あんたは鬼畜か!? 天羽が弟じゃなかったら変態と騒ぎ立てて、訴えてるところよ!


 ――っ!? ……変態、鬼畜? おかしい。これ、何か変です。何か違和感があるんです。最後の一つのピースがかけているような……。なに? 何がおかしいの?

 そういえば、AさんとC君と呼んでいるのに、どうしてBがいないんでしょうか。普通AときたらBですよね? B……、B、先輩……?

 このときやっと、かけていたピースがはまったような感覚がしました。

 そうです! B先輩がいらっしゃらないんです! どうして、B先輩のことを忘れてしまっていたのでしょう。

 

 辺りを見回してもB先輩は見当たりません。取り敢えず、目の前にいたC君に質問します。



「ねえ、B先輩は今日は来てないの?」

「B、先輩?」


 C君は頭に?マークを沢山付けて聞き返してきました。C君は何も聞いていないのでしょうか。仕方がないので、同じクラスであるAさんは何か知っているだろうと、今度は相手を変えて再度質問します。



「Aさん。今日はB先輩はどうしたんですか?」

「B先輩?」


 これまた、AさんもC君と同じ反応を返してきます。

 あれ? Aさんも聞いてないのかな? と、思っていたらAさんが何やら怪訝そうに言葉を発しました。




「B先輩って、誰だ?」






 ――――――え?



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