俺だけを見ていればいい。
いつの間にかたくさんの方が読んでくださっていてビックリしました! 恐縮です。
でも、嬉しいです!!
彼女は"私"との出会いを覚えていないだろう。いや、彼女を責めているわけじゃない。覚えている俺の方が異常なんだ。
彼女と出会ったのは"私"が"橘隼人"になるずっと前。
俺が"私"だった頃。
"私"はこことは違う世界の、ある国に住んでいた。
その世界は皆が皆魔法を使える、いたくファンタジーな世界だった。
……言っとくけど、見ているこっちまですげえ恥ずかしくなる、あの痛々しい病気にかかっているわけじゃねぇから。
そこんとこ重要だからな! 赤線引いて付箋付けて目立たせとけよ!
閑話休題。話を戻そう。
……自分でも信じられねぇよ。しかも俺が国王をしていたんだぜ? 笑えねぇ。
なんでも、その世界で国王になるには3つの条件があるらしい。
1つ目は魔力が多いこと。
まあ、よくある(?)話だな。何て言っても魔法がある世界だし。
2つ目は教養。
妥当だな。教養がなければ直ぐに国は滅ぶ。
そして、一番重要視されるのが、この3番目だ。この3番目さえ満たしておけば国王候補に晴れて認められる。逆に言えば、この3番目を満たしていなければ国王候補になんてなれねぇんだ。
その、大事な大事な3つ目は……顔。
ここに来て意味がわからん。なんだ顔って。今までの条件は納得できるのに。急にボケるな。
と、思うものも多いんじゃねぇか? しかし、これにも理由があるんだと。
先程言った通り、その世界は皆魔法が使える。魔力が多く、純粋なものは顔が整って生まれるらしい。また、魔力が純粋なものは必ず賢く、理解力がある、……らしい。ホントかよ? いいもの尽くしだな。
つまり、3番目に当てはまるものは1番目と2番目、両方に当てはまる。
天は二物を与えず、と言うがその世界では反対に天は二物も三物も与えるようだ。なんと羨ましい。そして、そんななかで国王をしていたなんて。さすが俺。
国王になることは名誉のことだと言われている。また、国王になったものの親族は城で暮らすことができる。もし農民なら、農民から王族に一気にジョブチェンジだ。今までの暮らしは夢だったんじゃないかって程、裕福な暮らしになる。
それに国王になると我儘し放題だ。
それはあまりこの条件をクリアしているやつがいないから。てか、逆に多くいたら怖いだろ。美形盛りだくさんだな。下手すると美形恐怖症になりそう。もちろん俺はそんなにやわじゃねぇけど。
……だけど、……俺は国王なんかになりたくなかった。なりたくなんか、なかったんだ……ッ!!
国王は確かにいろんなことが優遇される。
それは、強制的に選ばれ、拒否権がねぇからだ。
どうして拒否権がないのか? そんなの簡単なことだろ。国から優れたものを出さないようにするため。
親族が城で暮らす理由? 親族を人質に取ってるからだ。逃げ出さないようにな。
つまり、"国"と言う檻から逃げないように縛り付けられるんだよ。"国王"という鎖に巻き付けてな。
国王になると本当の意味での自由がなくなる。
国王になって、"私"の心が病んでいくのもそう時間がかからなかった。誰も"私"の本質を見ない。誰も彼もが"私"の魔力にしか興味がなかった。こんな国、滅べばいいのに。でも、"私"が手を抜いて滅ぼそうとすると親族がどうなるか分かったもんじゃねぇ。はっきり言って親がどうなろうとどうでもいいが、妹に何かあるのは嫌だった。まさしく、この時はシスコンだったんだよ! わりぃか!?
そんなときに、彼女に逢った。
一目惚れだった。
……何てことは決してない。
実際の第一印象は、『なんだ、こいつ。馬鹿か?』だった。
目の前で"私"が王座に座り見下ろしているにも関わらず、彼女は"私"に『あの、国王様はどちらにおられるのですか?』と聞いてきたんだ。当たり前じゃねえ?
でも、彼女と接しているうちに徐々に彼女のことが好きになっていっていた。だが、愚かにも、"私"がそれに気づいたのは、彼女は"私"の部下のものとなった後だった。気づくのが遅すぎたんだな。
彼女はきっと今は幸せだろう、そう思うことで"私"のどす黒い感情を抑えていた。しかし、彼女は突然その世界から消えた。
もしかして、幸せじゃなかったのか?
なら、"私"にもチャンスがあるじゃないか。
それから、"私"は彼女を探すために全魔力を使って転生しても前世の記憶を保てるようにした。
こうして、転生を繰り返し彼女を探した。
時間の流れが場所によって違う。だから、正確に何年たったのかは分からない。
けど、俺が生きて約600年たった時、7回目の転生でやっと彼女を見つけた――
*
「お前が好きだ。お前も俺のことが好きだよな? だから、俺と一緒にいろ。他のやつらとは関わるな。もちろん"いいえ"なんて答えは受付ねぇから」
ああ、お前の顔が赤く染まっている。
恥ずかしいんだな。可愛い。
だったら、言いやすいように答えに促してやろう。
「"はい"は?」
「ふぁっ! あああああんっ!」
「"はい"、だ。簡単だろ? たった二文字だ」
「やあああああ! んんっ!」
お前は嬌声をあげるばかりでなかなか了承を示さない。
お前はドMなのか?
「さっさと言わねぇと、もっと酷いことするかもな ? ――それとも、そちらの方がお好みか?」
「ッ!! はっ、はいぃぃぃぃ! 喜んでお受け致し ます!!」
よかった。特殊な性癖を持っているようではないようだ。まあ、例え持っていても俺はお前を離したりはしないが。お前のために勉強して合わせてやるよ。
それしにても、やっと、言質を取れた。
今度は、逃がさない。
お前が誰にも取られないように。
お前は俺だけを見ていたらいい。
お前に触るのも、話すのも、関わるのも、俺だけだ。
それを破ろうとするやつは、俺が消す――
今回、何が言いたかったと言うと、兄が俺様になったのも仕方がなかったんだよ、束縛系ヤンデレなのにも理由があるんだよ、です。
兄にも色々あったんですね。次回は兄の人物紹介です。
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