第4話-コンビ結成!編-
「スヤスヤ・・・」
(はぁ〜、やっぱ寝てる時が一番幸せだよな〜。ムニャムニャ・・・)
チュンチュン
(う〜ん、スズメが鳴いてるのか。もう朝か。)
「葵!起きないと!遅刻しても知らないわよ。」
次女涼子が起こしてくる。
「早く起きなさいって。ホントに遅刻するよ!」
(仕方ない。そろそろ起きるか。)
「分かったよ。ふあぁーあ。」
気の抜けたアクビを一つして、のそりと布団から下りる。ふと枕元にある時計を見ると時刻は8時15分を指していた。
「あ"ァァァァーー!!」
「キャッ!ちょっと何よイキナリ、ウルサいわねぇ。」
俺の声に驚いたのか、涼子姉ちゃんは怪訝な顔をして聞いてきた。
「明日は朝8時に集まってくれ。皆よろしく。」
頭の中で昨日会長が言った言葉をハッキリと正確に思い出す。
「ヤベェ!遅刻だ!姉ちゃん、俺もう行くよ!」
「ちょっと葵!?ご飯ぐらい・・・」
「いらないっ!」
姉ちゃんの言葉を遮り、急いで着替えて部屋を飛び出した。
8:00生徒会執行部室――
一方、生徒会室では早朝の活動を始めようと執行部員達が集まっていた。一人を除いて。
(あのバカ・・・)
いつまで経っても来ない葵に心配を隠せないのは、同じ5年生部員の藤原奈美。
「あっあのぉ、橘君。遅いですね。今日の事、忘れてるんじゃないでしょうか。」
心配そうにして話したのはもう一人の5年生部員飯野宵子
「かもね。とにかく、執行部に入って早々の遅刻はマズいわ。激マズよ。」
焦る奈美。
「さて、皆朝早くに集まってもらってすまない。今後は今日みたいに朝活動する事があるかもしれないから、5年生はそこの所よろしく頼むよ。」
生徒会長の菅野裕也が一同に告げる。その時誰かが声を発した。
「会長。」
「何だい、里沙」
副会長の坂本里沙だ。
「橘葵君がまだ来ていないみたいだけれど。」
「そのようだね。」
苦笑いしながら裕也は言う。
「フフっ寝坊、かしらね。」
3人目の6年生部員の青嶋史恵が正に的確な答えを言った時だった。
「冗談じゃないわ。私達は生徒会執行部なのよ!?就任早々遅刻するなんてどうかしてる。全く、やる気を疑うわ。」
ついにイライラを爆発させたのは里沙だった。
「まぁまぁ落ち着けよ、里沙。橘は今日は来れない理由があったのかもしれない。誰か彼から聞いてるかい?」
その場にいた全員が言葉や態度で否定の意思表示をした。
「やれやれ、まいったな。正当な理由のない遅刻は困るんだけどな。仕方ない、時間が勿体ないから早速活動を始めよう。」
こうして、葵を欠いたまま生徒会執行部の活動は始まった。
その頃葵は――
「だぁー、やばいやばいヤバいヤバい!完っ全に遅刻だよ―。」
元々足の速い葵だが、さすがに瞬間移動は出来ないらしく、少しでも早く学校に着くべく必死に走っていた。
「ハァハァ、だーちくしょう!ポンポいてーよー。」
「遅れてスンマセーーン!って、アレ?」
必死の形相で生徒会室に駆け込んだ葵だったが、既に中で活動が行われている気配は無かった。
「??っかしいな。」
「おかしいのは君の方よ。」物陰から声がする。「えっと坂本、先輩。」
そこにいたのは副委員長の坂本理沙だった。
「やってくれたわね。一体どういうつもり?やる気がないのなら今スグ辞めてもらえるかしら。」
「いやその、スミマセン。」
「言い訳する気もなし?それとも、言い訳する理由がないのかしら?」
言い訳など出来るハズもなかった。ただの寝坊なのだから。
「スミマセン。寝坊しました。」
「寝坊ですって!?・・・。分かってないみたいだから言っておくけれど、私達は生徒会役員なのよ。君からはやる気が感じられない。そんな事ならいっそ辞めるべきだわ。」
「スミマセン。でもやる気がないわけじゃないんですよ。」
「私にはそうは見えないわね。」(オイオイ、オッカねぇ先輩だな。)
「ん?何か言った?」
「いやいやいや!何も言ってないス!」「とにかく、君にはがっかりよ。」
「スミマセン。」
「もうそれ位にしてやったらどうなんだい?理沙。」
葵に助け船を出した声の主は、いつからそこに居たのだろう、会長菅野だった。
「会長、でも。」
「初日からクビにしてどうする。ただでさえウチは人数が少ないんだ。それこそ生徒会が潰れてしまうよ。」「しかし、彼の態度は見過ごせないわ。今年は私達にとって大切な年のハズよ。彼のような人と一緒にやっていくなんて、ナンセンスだわ。」
(ナンセンスって何ダロ?)
俺はふとそんな事を考えていた。その時だった。
「じゃあこうしよう。理沙、橘は君が直属の上司となって指導するんだ。そして納得の行くまで彼をシゴキ上げればいい。それなら文句はないだろう?」
「・・・・・・」
「えっ?あの、会長?」
「いいわ。彼を真っ当な生徒会役員に育ててみせるわ。」
「ちょっあの、えっ?」
全く何が何だか分からない。俺がナンセンスについて考えている間に、話がとんでもない方向に飛んでいるみたいだった。
「よし!決まりだね。」
「あの〜、もしも〜し。」
「橘葵君!」
坂本先輩が俺を見つめる。
「はっはい。」
「君のその腑抜けた根性、叩き直してあげるわ。覚悟なさい。」
「・・・・はい。」
(やっぱり、生徒会なんてやるんじゃなかったーー!!)