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第3話-それぞれの理由編-

「じゃあ明日の朝は8時に生徒会室に集合だよ。」

会長が次の活動時間を指定する。授業が9時からなのに1時間も早く学校に来て朝から活動とはまったくメンドくさい。

「じゃあ今日の活動は終わりだ。皆お疲れ。」

会長がそう言い、今日の生徒会活動は終わりを告げる。

「葵。一緒に帰らない?」

(?誰ダッケ、あっ藤原だっけか。ってかイキナリ呼び捨てかよッ)

「何よ、キョトンとして。まさかいきなり呼び捨てされて馴れ馴れしいとか思ってんじゃないでしょうね。」

「えっいや。」

図星をつかれてうろたえてしまう。

「あぁイヤ!なんてみみっちぃ男なの。アンタねぇ、少しは仲良くしようって気はないわけぇ!?」

(いやいやいやいや、なんでイキナリみみっちぃとかヒドくね?)

「なんとか言いなさいよ〜。」

「あ、あぁ。じゃ帰るか。」

「それでヨシ。宵子ちゃん!アナタもどう、一緒に帰らない?」

「えっ!?わたっ私ですか。はっハイ、是非!!」

まさか誘われるとは思ってなかったのか、宵子ちゃんはビックリしていた。

「じゃあ行くわよ。」

何故かリーダー気取りの藤原に引き連れられ、俺達は帰路に着く。帰り道、不意に藤原が口を開いた。

「ねぇ、アンタさぁ。何で生徒会に入ろうと思ったわけぇ?どう見てもボクやります!ってタイプには見えないんだけど。」

「じゃどういうタイプに見えるんだよ。」

俺は少しはムッとしながら答えた。

「大抵の事はめんどくさがって人に押し付けるタイプ〜☆」

ケラケラと笑いながらトンでもない事を言う藤原。よくもしゃーしゃーと失礼な事が言えたもんだ。

「あのな、何も俺だって好きでこんな事やってんじゃねェんだぞ。皆にムリヤリやらされてんだ。何が悲しくて、お堅い生徒会活動なんかせにゃならんのだ。勘弁してくれよ、まったく。」

そう言って俺はハァと溜め息をついた。「あらら・・・、そりゃ災難だったわねぇ。まぁアンタらしい理由だけど。」

「どういう意味だよ!」

聞き捨てならない俺はすかさず鋭いツッコミを入れる。

「あ、あのぅ。」

不意に宵子ちゃんがおずおずと口を開く。

「ん、なぁに宵子ちゃん。」

「藤原さんは、どうして生徒会に入ろうと思ったんですか。」

「アタシ?アタシはねぇ、目立ちたいからよ。アタシ、人より目立つ事が好きなの。いつかは生徒会長になって人の上に立って目立ちたいわね。」

何とも壮大な夢である。もしもコイツが生徒会長になったら、きっと俺は学校に行きたくなくなるだろう。そんな事を考えていた。

「私、初めてなんです。」

「「えっ。」」


俺と藤原が同時に聞き返す。

「は、初めてなんです。自分の意志で決めたの。い、いつも人に言われるままでした。人に決められて、自分で動き出した事なんてなかった。進路も、勉強も親の言いなり、幼稚園に入る前に受験もしました。でも、もう人に言われるまま、決められるままは嫌なんです。わっ私も、自分で動きたいんです!」

俺と藤原はただ黙って彼女の話を聞いていた。

初めて他人に自分の本音を漏らした。彼女の心の声にずっと耳を傾けていた。




「ただいまー。」

家に着くと、中2の姉貴がいた。

「おかえり。遅かったじゃない。」

「涼子姉ちゃん、実は今日さ生徒会の集まりがあって。」

「アンタが生徒会!?ちょ、お兄ちゃんー!!大変よ!葵が生徒会やってるんだって!今夜は赤飯よ!」

(オイオイ・・・)

何とも失礼な話だが、涼子姉ちゃんは俺が生徒会活動をやる事にヒドく驚いたらしい。

奥から高2の兄貴、太一が出て来た。「ほー、お前が生徒会か。コリャあの学校も、ついに学校としての役割を放棄したかな。」

「どういう意味だよッ!」

「でも本当に凄いじゃない。おめでとう、葵。」

兄貴の横で高三の長女・美智瑠が言う。

「葵。これから貴方がする事は、皆の為にも自分の為にもなる素晴らしい事なのよ。大丈夫、貴方なら出来るわ。」

「美智琉姉ちゃん。」

美智琉姉ちゃんはさすが長女だ。言う事が違う。

「あの葵が生徒会とはねぇ、まっ頑張んなさいよ。」

「サンキュ!涼子姉ちゃん。」

「さて、涼子。赤飯炊くぞ。ウチのバカ大将が事欠くに生徒会なんぞに入っちまったんだ。ヘマしない内に、盛大に祝おうぜ。」

(いやいや、兄貴。いいから、赤飯炊かなくていいから!)




「あら、太一。今日の晩御飯の当番って貴方じゃなかった?」

「やっべ!忘れてたー!」

「もうッ、お兄ちゃんー!!」

「バカ兄貴!」




こうして普段通り夜は更けていく。

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