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プロローグ『ただの魔王討伐じゃないんです!!』

世界樹の元に(ユグドラシル・)集いし者達(メンバーズ)』通称『世界樹』。


 全ての神々の王『神王』が、『全次元世界の統治と平和』を掲げて設立した組織。次元世界を股に掛けて活動する組織としては非常に小さいが、1000万人規模の会員を要し、その力は全次元最強とまで謳われる。


 これは、『世界樹』に所属する1人の男の物語――











「魔王討伐?」


「そ、魔王討伐」



 広々とした室内に広がるのは、男性と女性、2人の声。

 一目見れば分かるほど高価な調度品の数々が、最も美しく見えるよう計算され配置された部屋。世界樹の元に(ユグドラシル・)集いし者達(メンバーズ)、会長室。

 その中央、巨大な机を挟むように配置された2つのソファー。他の調度品と同じく、一目見れば価値が分かるほど豪奢なそれに、言葉を紡いだ2人は向かい合うように座っていた。


 『魔王討伐』という単語を聞き、微かに嫌そうな顔をして首を傾げたのは黒髪黒目の青年――世界樹の元に(ユグドラシル・)集いし者達(メンバーズ)会員にして、世界樹が誇る最強の騎士団『アルカディア聖騎士団』最高位≪聖騎士王(オーバー・ロード)≫の位を持つ"人間"『御神貴京』。


 嫌そうな顔をする貴京を見てクスクス笑いながら、駄目押しとばかりに『魔王討伐』という言葉を繰り返す銀髪紅眼の美女――世界樹の元に(ユグドラシル・)集いし者達(メンバーズ)創設者にして、その会長を務める"神王"『シルヴィア・クラッツベルン』。


 2人は今、世界樹で最も主となる活動『次元世界の平和を守るための任務』について話をしていた。


「この世界――ユースティアに生まれ出でた魔王を討伐してほしいの」


 そう言ってシルヴィアは、自分と貴京の間にある机の上、ホログラムにより投影された美しい惑星を指差す。


「それは……俺が出るほどの任務なのか?」


 対する貴京は、相変わらず嫌そうな顔を隠そうともせずに首を傾げた。彼自身面倒臭がり屋というのもあるが、何より彼の位階は『聖騎士王(オーバー・ロード)』。世界樹内でも有数の実力者である。単一惑星の魔王討伐なんてのは本来、中堅以下の会員が請け負うべき任務であり、彼が請け負う程の任務では無い。言わば、子供同士の喧嘩を最高裁判所に持ち込む様なものなのだ。新入りの育成という意味でも、彼が渋るのは別段おかしなことでは無かった。

 しかし、そんな貴京に対しシルヴィアはゆるゆると首を振る。


「それがね、貴方を出すほどの任務というよりも、むしろ貴方を出すべき任務なのよ」


「――どういうことだ?」


 シルヴィアの言葉に、貴京の表情が嫌そうなモノから訝しげなモノへと変化する。全次元世界の平和を心より願うシルヴィアが、任務に関する話で冗談を言う筈が無い事は貴京も良く理解していた。


「これを見てちょうだい」


 そう言って差し出された数枚の書類。そこに書かれていたのは、今回の討伐対象である魔王のステータスを数値化したものだ。


「どれどれ?…………これは、マジか」


 ザッと流し見る事数十秒、書類から顔を上げた貴京の表情にあるのは純粋な驚き。先程までの表情が嘘の様に、その顔は驚きの感情で占められている。


「総合的に言って――上の下ってところか」


 書類に書かれた数値からおおよその強さを予測し呟く貴京。


 世界樹内で上の下というのは即ち、全次元世界で見てもかなり上位の実力者、それこそ1万人いるかどうかというレベルに達していることを示す。


「少なく見積もっても中の上。どう見てもただの魔王クラスが持っていい力じゃないのよねぇ」


「あぁ、これは強過ぎる」


 通常の魔王だと、その力は世界樹内で言えば下の下、良くて下の中レベルである。これが単一惑星の魔王では無く、次元世界一つをを丸ごと支配するレベルの魔王帝や次元魔王になれば色々変わってくるのだが、それは別の話。


「魔王帝や次元魔王と比べても遜色無いこの強さ。次元世界の平和と均衡を乱す可能性は大いにある――だが」


「だが"この強さはあり得ない"そう言いたいんでしょう?」


「……あぁ、この強さは、【絶対なる根源の掟(アリストテレス)】がある限り絶対にあり得ないレベルの強さだ。」



 ――【絶対なる根源の掟(アリストテレス)



 それは、ありとあらゆる世界の根本に存在する"情報"の総称。

 創造神によって世界創造の最初期段階で設定されるそれには、今後世界が歴史を刻む上で重要になってくる情報が刻まれている。生まれ出でる種族の種類や、生命の有無、魔術や魔法、超能力などの力の有無。そして、魔王が存在する世界ならばその魔王の力量の上限など。


 【記録される世界の歴史(アカシック・レコード)】の根本ともなる【絶対なる根源の掟(アリストテレス)】は文字通り絶対。

 つまり、通常ならば【絶対なる根源の掟(アリストテレス)】に刻まれた強さの上限を上回る魔王が生まれることなど、決してあり得ない。


 だが、それが今回は生まれ出た。これは全次元世界の平和という観点だけではなく、まず世界としてあってはならないこと。


 つまり――


「貴京の言う通り、あり得ないことが起こっているのは確かよ。これは異常事態、下手すれば500年前の、大次元戦争の再来になるかもしれない」


 信仰の数だけ、言い換えれば無限に存在する神々の中でも、創造神といえば最高位クラスの存在。その創造神が創りだした【絶対なる根源の掟(アリストテレス)】が破られている。

 並の存在に成せることではないし、並の考えで成せることでも無い。裏には間違いなく強大な何かが存在し、何か人智を越えた思惑が存在する。


「ふむ、ただの魔王討伐かと思っていたが、こいつは大物が来たもんだ」


 自らが任されようとしている任務の重大さを思い知り、シルヴィアが自分に任務を任せようとした真意を知り。


 貴京は静かに、任務に臨む気持ちを新たにしたのだった。

2作同時連載なので、更新は1週間1回ペースを目指したいと思います。

更新日は毎週土日のどちらかを予定しています。

少しでも皆様に楽しんでいただければ嬉しいです。

これから宜しくお願いします!!

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