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「どうしたらいいだろうか? スノアを見つけ出すことは無理だ。あの商人はさまざまな国に行っていると言った。そしてあれ以来、この国には来ていない 」
アルベリオン伯爵は頭を抱えた。エレーナは絶望のため息をつき、何かいい方法はないかと思案した。
「元はといえば王様のせいでしょう! スノアを災いの子と言ったのは王様だし、この国に不要だと決めつけたのもあいつじゃない! 最初は私のことをちやほやしていたくせに、今になって処刑するとか言い出すなんて、勝手すぎるわ!」
「本当にその通りだわ。自分が言い出したことなのに、私たちだけを悪者にして切り捨てようなんて……」
「あぁ、だったら洗いざらいぶちまけてしまえばいいんじゃないか? 雪を降らせることができるスノアを、国から追い出したのが王だと広めようじゃないか」
三人は顔を見合わせ、頷いた。
翌日。エレーナは城下の市場に現れ、わざとらしくため息をついた。貴族が王都の街を気軽に歩くこと自体は珍しくない。通行人たちも慣れたもので、見かければ会釈して道を開ける。エレーナは露店の前で立ち止まり、周囲の視線を集めた。
「はぁ……かわいそうなスノア。アイスランドには必要な子だったのに……王様が災いの子だなんて言うから……追放されて……雪を降らすことができたのに」
わざと声を大きくし、芝居がかった仕草をした。その場にいた者は、皆耳をそばだてた。
「え? 王様がどうしたって?」
「スノアって誰だ? 雪を降らせるだと?」
「アルベリオン伯爵家の娘ですわ。私たちは双子でした……」
エレーナはスノアの魔法が雪を降らせることだったことを告げ、自分の晴れの魔法と組み合わせれば、天候を自在に操れたことを話す。
「なんてことだ! つまりは王様が、この晴れ続きの弊害を引き起こした元凶じゃないか!」
一方でアルベリオン伯爵夫人は教会に向かい、膝をついて祈りながらシスターに打ち明けた。
「罪深い話ですの……スノアを追放するように命じたのは王なのです。でもスノアは災いどころか……雪を降らせる、神に祝福された子でしたのに……」
シスターは口を押さえて目を丸くする。その表情を見て、アルベリオン伯爵夫人はニヤリと笑った。
さらにアルベリオン伯爵は少し上等な酒場に出向いた。酒を飲む男たちに混じり、大声で話し始める。
「私は……王の命令で大事な娘を手放してしまった。雪を降らすことができる貴重な魔法を持っていたのに。王が害悪だと私たち夫婦を責めたから……泣く泣く手放した可愛い娘。だが、今になって探せと言うんだ。見つからなかったら処刑するとまで……」
男たちは一瞬静まり返り、次の瞬間、爆発した。
「なんだそれ!」
「全部、愚かな王のせいだったのか!」
「許せねーな、クソ王めっ!」
こうして、王が全ての元凶であったという噂は、あっという間に拡散した。
最初は囁きだった。しかし、やがてそれは告発になり、最後には怒号になった。
城門の前では、民が集まり王をひたすら責める。
最終的に、王は民たちに捕まり処刑された。王が処刑されてから、アイスランド王国は音を立てて崩れた。多くの民たちは他国へと散っていった。賑やかだった王都も、今では人影がまばらな生気のない街になった。
アルベリオン伯爵一家は処刑こそ免れたが、爵位も屋敷も失った。命からがら隣国まで逃れ、貧民街の外れの雨漏りする小屋で暮らした。施しにすがりながら、辛うじて命をつないだのだった。




