表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国から捨てられた伯爵令嬢は南国で売られる  作者: 青空一夏
ざまぁ番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

 スノアが商人に連れられて国境を越えた頃、アイスランドの王都は珍しい晴れに沸いていた。

  「ああ、なんて眩しい……!」

  人々は雪が降らないだけで顔をほころばせ、空を仰いだ。


 三日目。エレーナは庭園で王妃とお茶を飲んでいた。

  侍女たちは笑顔で口々に言う。

 「これが毎日続けばいいのに。エレーナ様のおかげですね」

 王宮でエレーナは大人気だった。

 「ふふっ。私がいる限り、この国は太陽を見られますわ。もっと感謝しても良くてよ?」

  得意げに笑うエレーナを、周囲は当然のように褒めそやした。

 「本当に宝のような子ね。王太子妃にしたいくらいだわ」

  王妃がそう微笑めば、エレーナは頬を染めてにこにこしていた。


 十日目。山岳地帯では雪崩が頻発し、獣道は歩きやすくなっていた。その代わり、溶けた雪が山道を泥の川に変 え、荷馬車は車輪を取られて動けなくなり、山麓に三台ほど置き去り にされた。しかし民は誰も気にしない。

 「どうせ雪が邪魔で動けないだけだろ」と、いつもの感覚で片づけた。


 二十日目。倉庫で商人が困った顔で呟いた。

  「干し肉が汗をかいてるなぁ。陽が当たるせいだな」

 脂が浮き、酸い匂いがする干し肉の前で項垂れている。

 保存用の雪はすっかり溶け、庫内は蒸していた。


 同じ頃、郊外の牧場では子牛たちが足を折って倒れていた。昼間に溶けた雪が夜に凍り、薄い氷膜になっていたのだ。牧場主は首を傾げながら呟いた。

  「快晴続きって、良いことばかりじゃねぇんだな……」

 被害は確実に出始めていた。それでも城下の大半の人々は空を仰ぎ、ただ眩しそうに目を細めていた。


 快晴が三ヶ月続いた頃。山は黒い岩肌を晒し、麓は泥に沈んだ。

 その泥水が川に流れ、海へ雪解け水を吐き続けた。海では魚が獲れなくなった。

 急激に冷たい淡水が流れ込み、餌となる藻や甲殻が死んだのだ。


 山道は昼に溶け、夜に凍り、泥と氷が交互に現れる罠と化した。商人は誰も入ってこない。荷を積んだ馬車が二度と帰らなかったからだ。市場では塩漬け肉が底をつき、乳製品は希少品扱いになった。 市井では治安が悪化し、飢えた野良犬が道をうろついた。

 

 城の中庭でも異臭が立ち込めていた。水場は腐り井戸は濁り、石畳には藻が繁殖した。 衛兵は腹を下すことが増え、座り込んだまま動かない者もいる。疫病が発生し始めていた。

 

 それでも毎日、空は晴れていた。

 雲ひとつなく、雪ひとつ降らなかった。


 そしてようやく人々は気づいた。

 雪は災いではなく、恵みでもあったのだと。

 快晴は祝福だけでなく、呪いにもなるのだと。


 王はエレーナとアルベリオン伯爵夫妻を呼びつけた。

「エレーナよ。早くこの晴れを止めさせろ。一体いつまで晴れさせ続けるつもりなのだ!」

「……自分ではどうにもできないんです」

「何だと? お前は自分の魔法すら制御できぬ愚か者なのか?」

 王は伯爵夫妻へと向き直り、ギロリと睨みつける。

「スノアをすぐに連れ戻せ。この国に帰ってこさせろ。今すぐにだ!」

「商人に押しつけたのですが、あれっきり姿を見せません。国外に追放しろと仰ったのは陛下です!」

「愚か者め。どんな手を使ってでも探し出せ。見つけられなければ……お前ら全員、処刑だ! 民は暴動寸前なのだぞ!」

 アルベリオン伯爵夫妻とエレーナの顔が、恐怖で歪んだのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こちらではざまぁパートがあるのですね! 国王は自分の発言に1㎎も責任を取る意思がないようで。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ