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七日の村  作者: たなか
8/11

疑う観測者

アンク村で、

最も危険な子は、一日目に疑問を持つ。


なぜならこの村では、

疑問そのものが“設計外”だからだ。


その日、生まれた子の名はラゼル。


彼は産声を上げなかった。

代わりに、目を閉じたまま、深く呼吸をした。


――情報が、多すぎる。


身体の完成度。

知性の水準。

寿命の制限。


すべてが、あまりにも整いすぎていた。


「……これは、祝福じゃない」


それが、一日目の結論だった。


一日目。


ラゼルは学ばなかった。

剣も、魔法も、祈りも選ばない。


代わりに、観察を選んだ。


村人の視線。

子供たちの扱われ方。

死に対する距離感。


墓地の配置すら、

合理的すぎた。


「実験場だ」


誰に聞かせるでもなく、呟く。


二日目。


ラゼルは、神殿に行った。


神官ノアが否定した場所。

神の“代理”が座る椅子。


そこに、微かな違和感を感じた。


「……視線?」


誰かに、

見られている感覚。


だが、

人ではない。


三日目。


ラゼルは、古文書を調べた。


生と死の周期。

出生間隔。

異常値。


――完璧な管理。


偶然が、存在しない。


「神は、全知じゃない」


ラゼルは気づく。


「全監視なだけだ」


四日目。


丘で、ソルを見た。


剣を持たず、

魔法も使わず、

ただ、立っている少年。


「……君」


ラゼルは声をかけた。


「どうして、何もしていない?」


ソルは首を傾げた。


「何か、する必要ある?」


その答えに、

ラゼルの思考が止まった。


――役割から、外れている。


五日目。


ラゼルは、神殿で“視線”の正体を掴んだ。


それは、

人格ではなかった。


意志でも、感情でもない。


観測装置。


「神は、

判断していない」


ラゼルの声が、震える。


「起きたことを、

そのまま記録しているだけだ」


だから、

呪いも止めない。

子供も救わない。


六日目。


ラゼルは、

“観測されない瞬間”を探した。


丘。

ソルの周囲。


奇妙なことに、

そこだけ記録が曖昧になる。


「……無力」


その言葉が、頭をよぎる。


力がないから、

観測価値がない。


――だから、自由だ。


七日目。


丘で、ソルに会う。


「君は、見られていない」


ラゼルは断言した。


「神は、君を測れない」


ソルは静かに聞いている。


身体が、光に変わり始める。


「お願いがある」


ラゼルは、最後に言った。


「疑え。

与えられた意味を、全部」


消える直前、

彼は初めて笑った。


――疑問は、武器になる。


丘に残ったのは、

観測されないという事実。


それは後に、

神の管理から外れ、

邪王の魂すら“捉えきれない”状態を作る。


空の向こうで、

神のシステムが、

初めて遅延した。


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