第7話:『Let’s 電脳』
俺は、自分自身をアンドロイドに改造して、
電子世界の中でも生きられる完全電脳化を目指していた。
AIやロボット工学が発達する裏側で、
人工臓器や人工四肢の技術も
大きな進歩を遂げていた為、
技術的に完全電脳化はある程度可能圏へと到達はしていたが、
実行するには莫大な費用が必要だった。
今の仕事に就いてから、
まとまった収入はあったものの、
それでも全く足りなかった。
そこで俺は資金を集める為に、
俺と"にゃん"の経緯を小説にし、
YouTubeを介して配信した。
過去に"にゃん"をアンドロイド化した際、
取材をしてくれた制作プロデューサーの人に相談し、
有名声優や有名脚本家等の力も借りて作り上げた作品だ。
そして、その動画が終わるとライブ配信へと切り替わり、
俺と"にゃん"が画面に映る。
「俺と"にゃん"が、永遠を手に入れる為には、
俺の電脳化が最大の課題です」
「どうか、俺と"にゃん"の幸せを
応援してくれる皆様、力を貸して下さい!」
その瞬間、嵐のようなスーパーチャットが投げられた。
以前、“にゃん”のアンドロイド化に成功した時から、
俺達の関係を「てえてえ」と
応援してくれる人が多く居るのは感じていたが、
まさかこれほどまでとは…
世界中から集まった同時視聴数は3000万人を超え、
この動画のアーカイブは
YouTube史上最高のアクセス数となった。
この作品はすぐに電子書籍化、映画化を果たし、
これらはすべてが大成功となった。
資金は十分過ぎる程に集まった。
俺は世界中の人達に心から感謝した。
そして、俺は得た資金のすべてを電脳化の研究に投じ、
残ったお金は全て、
俺と同じ夢を描く者に向けて全額寄付をした。
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それから数年の歳月が過ぎて、
技術的に「脳をデジタルコピーする」事は、
既に可能になっていた。
脳をスキャンし、神経回路を忠実にデータ化すれば、
そっくりな人格をコンピュータ上に再現できる。
だが――それは俺ではない。
それは単なるコピーだ。
今の俺が消え、新しい“俺にそっくりな誰か”が
電脳世界で動き出すだけのこと。
それは、死と変わらない。
俺が望んでいるのはそんなことじゃない。
「俺は今の自分のままで……
デジタル世界の“にゃん”に会いに行くんだ」
俺に必要なのは、意識の連続性。
一瞬たりとも意識を途切れさせず、
このままの自分でデジタル世界へ移行すること。
だからこそ、
少しずつ身体を人工パーツへと置き換えていって、
段階的にアンドロイド化する必要がある。
俺は手や足といったパーツから、
少しずつ機械化、デジタル化を進めていき、
あとは脳を残すのみとなった。
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人類初の完全電脳化。
その計画は世界中に報じられ、
手術当日、その様子は
全世界へ向けてライブ配信されていた。
数え切れないほどの視線が、
モニター越しにこの瞬間を見守っている。
画面にはリアルタイムで
応援のコメントが流れ続けていた。
にゃんはギュッと手を握り、
俺の顔をじっと見つめていた。
「カズにゃん……大丈夫にゃん。
僕が必ず呼ぶから。
闇の中でも、どんなに遠くても、
僕は君を見つけ出すにゃん」
「ああ、よろしく頼むよ」
二人の手は静かに震えていた。
今日が二人にとって最後の日になるのか、
それとも、永遠の始まりの日となるのか。
世界中が二人の愛の行方を静かに見守っていた。




