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〈17話〉拳


もちもちのおかげで完全復活した俺だが、相手は違う。


ルアンリクスとオルダゴンの様子を見て確信する。


呪縛剣は、相手に大きなデバフを与える分、その効果は使用者にも適用されるのだ。


現にルアンリクスは腕に治癒魔術を施す素振りもないし、痛がり方が尋常じゃない。


おそらくその効果は使用者のみに留まらず、使用者のみ使役している使い魔にも影響するのだろう。


オルダゴンはすっかり小さく丸まって悶えている。


「もちもち、あの呪縛剣、遠くの方に捨ててこれるか?」


「んま!」


地面に落ちている呪縛剣をもちもちに託す。


もちもちより呪縛剣の方が大きかったが、もちもちは頑張って剣を引きずりながら後方に下がった。


「良くもやったな貴様ら!絶対に殺す!ぐちゃぐちゃにしてやる!」


前髪の事など既にどうでも良くなったルアンリクスは、頭を激しく振り回して激昂しながら魔法陣を展開した。


基本的に後方で魔獣を召喚する術師は痛みに慣れていないし、まして、呪縛によって痛みが増している状態でなど、さぞ辛いだろう。


「痛いよな、でも、お前はその痛みをロアさんに与えてるんだ。きっと他の人間もそうやって殺してきたんだろ?」


「黙れェ!お前のようなっ、、!」


喋るのを待ちはしない。


俺は弱いから、油断はしない。


再び走り出して、口汚く叫ぶルアンリクスに殴りかかった。


一発目がルアンリクスのガードした腕に当たり、相手の魔殻と俺の攻撃がぶつかり赤い魔力が散る。


直ぐに足蹴りを腹に食らわせ、魔殻が砕けたルアンリクスは後方へ吹っ飛んだ。


魔法陣が消滅する。


今回は相性が良かった。


完全肉弾戦タイプの俺と、完全に油断している召喚師では、別に俺が強くなくてもやり合える。


ルアンリクスが立ち上がる前に距離を詰め、馬乗りになり顔を中心にひたすら殴った。


自慢の金髪と白のタキシードを血と泥で汚したルアンリクスは、数え切れないぐらいボコボコに殴っていると抵抗する力さえなくなりぐったりと地面に伸びた。


「この、、僕が、人間、ごときに、、」


足に着いた土を払いながら立ち上がると、呪縛剣を遠くに運んだもちもちが帰ってきて俺の肩に乗った。


魔力を上乗せした魔殻を纏っていても、殴った両拳の皮がめくれて痛かった。


肉体的ダメージもあるが、何より心が痛い。


「おいオカマ野郎。お前、こんな事の何が楽しいんだよ」


生物をいたぶって、楽しいわけがない。


「うる、さいぞ、劣等種!僕を、こんな目に、合わせ、ておいて、神が、決して、貴様、を、許しは、しない!」


「神?」


あの爺さんがなぜ俺を許さないんだ?


「そう、だ。ヴォエ゛神が、目覚めた時、人間は、全員、その罪で、裁かれる、、」


「さっきもそんなこと言ってたけど、意味わかんねえよ」


「ハッ!ハハッ!ヴォエ゛エ゛、、もう良い。早く殺せ!劣等種と、会話して、いると、僕まで、汚れる、」


さっきはあんなにべらべらと語っていたくせに。


でも、そうだ、こいつは危険だ。


まだなにかしてくる可能性もある。


«殺さないと»


ロアから貰っていたナイフをポケットから取り出してルアンリクスに向ける。


・・・・手が、動かなかった。


さっきまで散々殴っていた相手だ。


殺す気で殴った。


でも、実際に命を奪おうと構えると、手が震えて上手くナイフを向けられない。


「どうし、た!早く、殺れ!ま、さか、怖いのか?殺す、のが!ハハッ!傑作だな、ヴォエ゛」


この世界は、元いた世界とは違い、死が身近に存在する。


これから俺は、


俺と同じ言語で話し、


俺と同じように生活するこいつを、


──────殺すのか。


ルアンリクスは明らかに外道だ。


こいつを殺せば、これから多くの命が屈辱を受けずに済むだろう。


でも、それは殺しを正当化する理由になるのか?


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