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〈12話〉オグルドの森とマリガー事件


「アキ!後ろ!」


「え?うわっ」


「前に出過ぎんなって言ったろ!」


「すみません!」


俺の背後から後頭部に爪を振り下ろす魔獣をロアが斧を投げ飛ばして危機一髪で命を繋ぐ。


「次来るよ!」


魔殻を覚えてから二ヶ月後、俺とロアともちもちの三人は、拠点にしているログハウスの周りの森に入って実践を積んでいた。


俺たちの拠点はバーナス大陸の西にある『オグルドの森』の中にあり、リーシェが拠点の周りに張った結界の外には多くの危険な魔獣がうじゃうじゃと活動していた。


最初はロアの後ろに隠れて森のツアー状態だった俺も、最近では微力ながら戦闘に加わっている。


魔獣の動きは種類によって多種多様で、本で対処法を考えていたとはいえ実物の前では机上の空論と化していた。



「アキ!それには触っちゃだめ!」


「はい!すみません!」




「アキ!そこ危ない!」


「すみません!」




「アキ!避けて!」


「はい゛い゛い゛い゛」




----------------


夕暮れ時、ログハウスに帰還した俺は今日もいつも通り死んだように倒れた。


「今日も生きてて良かったね」


「毎度毎度助けて頂きありがとうございます、、」


「まあ、この世界に7ヶ月前に来て、一から魔術と戦闘を習ってる身の割にはよくやってると思うよ」


珍しくロアが褒めてくれた。


「なんの冗談ですか?」


「は?別に事実を言ってるだけなんだけど」


「またまた、ロアさんが俺を褒めるなんて」


「今日は治癒魔術かけてあげないから」


「また冗談ですか?ははは」


床につっ伏しながら笑う俺の腹を踏みながらロアは二階に消えていった。


目が死んでいたからおそらく本当に治癒をかけてくれないのだろう。


「もちもち〜。治癒頼む」


「んま」


もちもちは帰還して早々、持ち帰った大小様々な石を並べて眺めていたが、俺の呼び掛けに応じて近寄り治癒魔術をかけてくれた。


もちもちは俺より魔術が使えた。


ロア曰く、厳密には魔術では無いらしい。


俺も魔力を視認できるようになってわかったことだが、もちもちには全く魔力が流れていなかった。


しかし、七か月前にザリアの攻撃を防ごうとした時に放った攻撃や、ロアより少し弱い治癒魔術といった、魔術と酷似する技を使うことができている。


おそらく、もちもちは実際に見た魔術を自分の体の何らかのエネルギーを使って複製しているのではないかとロアは言った。


言われてみれば、ザリアから逃げる時にもちもちが使った技は、威力こそ違ったが、その形はザリアが放った魔術に似ていた。


治癒魔術に関しても、毎日何度もロアが俺に施しているのを見て覚えたのではないだろうか。


「お前、俺より優秀でどうすんだよ。可愛い枠じゃないのかよ」


「んまんま」


治癒魔術によって動ける程度にまで回復した俺はもちもちの頭を撫でながら嫉妬心を燃やした。


「可愛い枠か有能枠かどっちかは俺に譲ってくれよ」


「んまー、、、」


「なんだよその顔、俺に可愛枠は無理だって顔しやがって」


目と口を八の字にして不満を訴えているもちもちの両手を掴んで遊んでいると、突如二階から叫び声が聞こえてきた。


「ちょっとなにこれ!何のつもりなの!?」


声の後、すぐにロアが階段に姿を現した。


「なんですか、大きな声だし、、ちょっとなんで下着なんですか!?」


ロアは純白の白い下着姿で、手になにかを抱えていた。


「こっち見るな!いやこれ見て!」


「どっちですか!」


「ここに置いとくから見て!」


そう言い残しロアはすぐに自室に戻った。


服の上からだと分からなかったが、ロアは結構あった。何がとは言わないが、結構あった。


「んま!」


邪な考えを巡らせている俺に、もちもちは体当たりしてきた。


全然痛くないけど、今度から顔に出すのはやめよう。


ロアに今の顔が見られなくて良かったと思いながら重い足を上げて階段を上ると、そこにはバレーボールぐらいの大きさをしたコウモリの石像が転がっていた。


「なんだこれ。お前が持ち込んだのか?」


肩に乗っていたもちもちに聞くが、首を横に振り犯行を否定した。


すぐに部屋着に着替えたロアが自室から出てきて俺ともちもちを睨んだ。


「私がマリガー苦手なの前に教えたよな?どっちの仕業?」


コウモリの魔獣のことを、この世界ではマリガーと呼ぶ。


「俺じゃないですし、もちもちも違うって言ってます」


「じゃあ誰がこんなの私の部屋に置くんだよ!」


「知らないですよ!」


こんなにもブチギレているロアを見るのは初めてで、率直にすごく怖かった。今にも斧を取り出して俺たちを両断しそうな勢いだ。


「絶対犯人見つけてぶち殺す」


「まじで違いますって!お前も違うよな?」


「んま!」


しかし、確かに変だ。


俺たち三人以外にこのログハウスには住んでないし、リーシェやグレンが俺たちの留守中に忍び込んでこんなイタズラをするとも考えにくい。


「ん、この石像、魔力が流れてませんか?」


「誰かが魔力で作ったんだろ!」


「いやでも、俺はそんな魔術使えないし、もちもちも見たことの無い魔術の複製はできないはずです」


「確かに、、、」


俺の必死の推測に多少納得したロアは怒りを少し収めた。


「まあとにかく、これは俺が外に埋めとくんで、ロアさんは早く風呂に入ってください」


「じゃあ早く風呂沸かせ!」


「あっ、そうでした。すみません」


八つ当たりにも程があるが、今は刺激しない方が良いだろう。


それに、俺に風呂を沸かすよう命令するのはいつもの事だ。


「行くぞもちもち。リビングに並べた石とか閉まっとけよ?変な石像の罪擦り付けられるぞ」


「んまんま」


その日、マリガーの石像事件は俺が石像を庭に埋めたことで一旦は収束した。


しかし、依然として誰の仕業なのか分からないまま数日放置したこの事件によって、俺たちの生活の修行生活は二年経たずして終わりを迎えた。


ご愛読ありがとうございました!

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