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〈11話〉特訓に次ぐ特訓


ロアとの共同生活が三ヶ月ほど経過した頃、俺はようやく一つの魔術を扱えるようになった。


「いきます!」


目を閉じ、身体に巡る魔力の流れに意識を集中し、手の甲に魔力を持ってくる。


「閃光!」


手を頭上に掲げながらそう叫ぶと、小さな光の玉が手のひらから放たれ、少し上昇したところで浮遊した。


「威力は全然だけど、まあ成功でしょ」


「やった!」


全身に汗を滲ませながら喜んでいる俺を、ロアは冷めた目で見てきた。


「それにしても、まさか、アキがこんなにも魔術の扱いに向いていない体質だなんて思わなかった」


俺を名前で呼んでくれるようになったロアの言う通り、俺には魔術の才がまるでなかった。


魔術を扱うにはまず、魔力を視認できるようにならなければならない。


攻撃系や物質に影響を与える系の魔術は、魔力を感じ取れなくても視認できるが、普段から人や物に巡っている魔力を見るには練習が必要だった。


それは良かった。


一週間も練習すれば、何とかロアが身体に纏う魔力を視認できるようになり、ザリアが放っていた圧の正体もそれだとわかった。


ザリアは魔力量が尋常ではなく、それをわざと俺の前で放出していたから、魔力のことを知らなかった俺でも感じることができていたのだ。


しかし問題はその次の工程であり、視認できるようになった魔力を魔術として用いることが何度試しても上手くいかなかった。


最初は、特訓を積めば一般人程度までは魔術が扱えるようになると予想していたロアも、二年の修行でも一般人以下にしかならないと評価を改めた。


「でもこの三ヶ月毎日練習して、やっと全身です。先は明るいですよ!」


「なんでそんなにポジティブなんだか」


呆れ顔でため息をつくロアとは裏腹に、もちもちは俺の放った光の玉の下を両手を上げながらぐるぐると走り回っていた。


「もちもち、お前も喜んでくれてるのか?」


「んまっんまっ」


可愛い。


この三ヶ月でもちもちについて言えることは、ただひたすらに可愛いという事だった。


初めから可愛くはあったが、この三ヶ月で前よりも表情が豊かになり、喜怒哀楽を全身で表現するようになった。


「もちもち〜、お菓子あげるからこっちおいで!」


「んまー!」


ロアはすっかりもちもちの虜になってしまい、いつも自作の焼き菓子でもちもちを自分の元へ誘って引き寄せている。


「あんまり変なもの食べさせないでくださいよ?」


「うるさい、変なものじゃないし。アキは早くもう一回閃光を出して」


相変わらず俺には冷たいままだが、それでもこの三ヶ月でだいぶと柔らかくなった。名前で呼んでくれるようになったのも大きな進展だ。


水を飲み、もう一度意識を集中させ閃光を放つ。


今度は先程より少し大きい光の玉が出来たが、すぐに消滅してしまった。


光魔法に属する閃光魔術を最初に覚えるよう指示してきたのはロアだった。


旅に出るのであれば自分で夜道や洞窟を照らせた方が何かと便利なのだそうだ。閃光は威力を強めれば敵と相対した時に逃げるための目眩しにも使える。


炎や水系統の魔法も便利ではあるが、光系統よりも扱いが難しく、今の俺に扱えるビジョンが見えなかったため諦めた。


しかし、悲観する程でもないと俺は考えている。


なぜなら俺には、鍛えた肉体があるからだ。


ロアとのタイマンによって身体の動かし方を身につけ、ただ身につけていただけの筋肉に意味を持たせることができるようになってきた。


もちろん今もロアにボコボコにされるのは変わりないが、最初は拳しか使っていなかったロアも、今は足技を繰り出すようになっていた。


微々たる変化だと分かっているが、確実に成長を感じられて些細なことでも嬉しかった。


魔術は使えなくても武術戦闘に長けた人間になれば良い。


「魔術はこのくらいにして、そろそろ始めませんか、今日の半日タイマン」


もちもちで遊んでいたロアにそう話しかけると、ロアは惜しそうにもちもちを地面に降ろして俺の元へ近づいてきた。


「初めて、ぎりぎり魔術を扱えてたから、今日から私は『魔殻』を纏う」


「魔殻?」


「そう。この世界では、敵との戦闘時に魔殻を全身に纏うことが一般的なの」


「魔殻を纏うと何が良いんですか?」


「見た方が早い」


ロアは俺から少し離れ、直立したまま目を閉じた。


ロアの体の周りには、自身から出る魔力がふよふよと漂っている。


しかし、ロアが深く呼吸してから目を開けた時、周りに浮遊する魔力はロアの身体にぴったりと張り付いていた。


「これが魔殻。私の顔、殴って見てよ」


「え、いやそれはちょっと」


「いつもタイマンの時は本気で来てるじゃん」


「だってロアさんが俺を殺す勢いで来るから、俺も反抗しないわけにはいかないし」


「いいから早く」


無抵抗の女性を殴る趣味は無かったが、腕組みしているロアの人差し指がとんとんとリズミカルに腕を打つ仕草を見て、急かされていることに気づいたので思い切りぶん殴った。


そして吹き飛んだ。


俺が。


「な、なんですかこれ。なんで殴った俺が吹き飛ばされたんですか?」


「これが魔殻の効果。あらゆる攻撃から自分を守ってくれるの。相手も魔殻を纏っている状態で攻撃してきたり、魔術の威力が魔殻の硬度より強ければ普通に肉体にダメージが来るけど、魔殻も纏っていなくて魔術でもない攻撃は基本弾き飛ばされる」


「じゃあ、魔殻は戦闘において必須なんじゃ」


「そうだよ。アキが馬鹿みたいに筋トレして鍛えた肉体も、魔殻が無ければ紙と同義」


「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか、、、」


「面白かったから」


こいつ、今日の晩飯に腐った野菜いれてやるからな。


「そんな顔すんなよ、冗談じゃん」


「じゃあ何で」


「魔殻を覚えるには、まず魔術をなんでも良いから1つは使えるようにならないとダメなの」


ロア曰く、魔殻はあくまで魔術の一種である一方で、その特質が異なっているらしい。


一般的な魔術とは、自分の内外にある魔力を用いて外に放つ行為である。


しかし魔殻においては、外に発するのではなく自分の体内の魔力を固めるイメージだとロアは言った。


「魔殻と一般魔術は基本的に併用する必要がある。魔殻は盾で、一般魔術が剣みたいな感じ」


もちもちが円盤状に形状を変え、ロアは盾に擬態したもちもちと、地面に落ちていた木の枝をそれぞれの手で持ち剣士の構えをして見せた。


「最初に魔殻を覚えちゃうと、無意識に魔力を内に留めるようになって、結果的に外に放つ性質を持つ一般魔術が上手く使えなくなるの。だから最初はなんでも良いから一般魔術を習得して外に魔力を放つ感覚を掴んでからじゃないと魔殻は教えられなかった」


確かに、その説明であれば最初に一般魔術を覚えておいてよかった。


魔力を視認することはすぐにできても、閃光を放つことに三ヶ月もかかった俺なのだから、最初に魔殻を覚えていたらその後に一般魔術を覚えることなどまず無理だっただろう。


「分かりました、どうすれば魔殻を纏えるんですか?」


「んっとね」


一般魔術である閃光を覚えた俺は、それから四ヶ月に渡り特訓を積んだ末に魔殻の完全習得に成功した。


ご愛読ありがとうございました!

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