〈2話〉魔王の城
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こちらは2話になります!10話をご覧になりたい方は飛ばしてくださいm(*_ _)m
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魔法陣の光とともに意識を失い、次に目を覚ました時、俺の前には冷たくて明らかに重量感のある鉄格子があった。
起き上がろうと手を動かして両手にも鎖で枷がつけられていることに気づく。
「おいこいつ起きたぞ、魔王様に連絡しろ」
「お前がしてこいよ」
「やだよ。俺もう交代の時間だし」
「昨日城を抜け出してラグルムに行ってたこと魔王様に言うぞ」
「お前最悪」
声が聞こえ、鉄格子の奥をよく見るとそこには人間ではない何かが二足歩行で立っていた。
そのうち1人はすぐに俺の前を離れどこかへ姿を消した。会話の内容的におそらく俺が起きたことを魔王に報告しに行ったのだろう。
魔王?
今、確かに男性であろう彼らの口から魔王と聞こえた。
魔王の意味が俺の前世界と同じであるとすればおそらく今俺は魔王軍に拘束されているということになる。
「あの、ここは一体どこなんでしょうか?」
「魔王城の最下層にある収容所だよ」
「なんで?」
「あ?お前それは無いだろ、自分から侵入して来ておいて、、、もしかして記憶がないのか?」
俺の問いに返してくれたそいつはワニのような顔をしていた。軽装ではあるが鎧を身に付け、手には槍を携えていた。
明らかに人間とは違う種族であるが言葉が理解出来ることは救いだった。意思疎通も問題ない。
「侵入と言われても、気づいたらここに閉じ込められてて俺にも状況が分からないんです」
前の世界が滅んで神に別世界に送られた。なんて事を信じてくれるはずもないと思い異世界転生の話は黙っておいた。
「すぐ魔王様が来るだろうから、話はその時にしてくれ」
「すみません」
「まあ、お前ももうすぐ処刑だろうし、どんな事情で同情はするよ」
「今なんて?」
「処刑だよ、処刑。そりゃそうだろ?方法は分からんが魔王様の部屋に勝手に侵入したんだから、捉えられて生きて帰れるわけないだろ」
「俺そんなこ、、、」
反論しようとした所で、奥の方から扉が開く音が聞こえた。
それと同時に今まで感じたことのない凄まじい圧の様なものを感じ全身の皮膚がざわめいた。
その圧の正体はすぐにわかった。
「こんばんは、不当で無謀な侵入者くん」
魔王だ。
2本の鋭利な角を額から生やし、真紅に染った目で俺を見るこの人物が魔王で間違いないだろう。
他の檻の魔獣やら魔族やらがけたたましく声を荒らげて震えている。それほどまでに鉄格子の前に現れた男は鋭く冷徹な圧をその身から発していた。
「名前は?」
「鈴木亜紀です」
「アキか。よろしくアキ。私はザリア、魔王だ」
名前を聞かれて、無意識に口が動いていた。この男に逆らってはいけないと本能が訴えている。
「ここはうるさくてたまらない。場所を変えよう。護衛はいらない。お前たちはここの騒ぎを静めろ」
ザリアと名乗る魔王はそういうと鉄格子の扉を鍵を使うことなく解錠した。
確かに今この場は他の魔獣の畏怖の悲鳴が轟いていて騒がしい。
「魔王様!どちらにその侵入者をお連れするおつもりですか?いくら魔王様と言えど危険です」
先程までやる気なく槍を体の支えにしていた牢番は背筋を限界まで伸ばしてそう言った。
「私が殺されるなら、どちらにせよお前がいた所で死ぬ命がひとつ増えるだけだ。ここを任せたぞ」
ザリアは牢番の申し出を断り、牢番は俺とザリアがこの場を去るまで姿勢を崩さなかった。
そして収容所を離れる直前、俺は気づいた。
固く閉ざされた収容所の出入口の扉を魔王が開けた時、おそらくザリアを呼びに行ってそのまま交代して来たであろう新しい牢番が現れザリアと数十秒会話をした。
その間に、小さな物体が暗い足元を走っていったのだ。その正体を俺は知っている。
白くてもちもちしたあれだ。
その姿を見るまで忘れていたが、確かにあれは俺が自称神のおじさんから託されたものであり、相棒になる予定らしい生命体だった。
託された時、あれは白い球体で足なんて無かったはずだ。
しかし今この目で見たあれは明らかに走っていた。
転がっているのでもなく跳ねているのでもなく、ふたつの小さな足のようなものを生やし、ちょもちょもと走って収容所を出ていった。
「では、くれぐれもご注意を」
「ああ、牢を頼んだ」
あれを呼び止めようとしたが、ちょうどザリアと牢番の話が終わりこちらに向き直ったため視線を地面からザリアの方に向けた。
「またせたな、では行くとしよう。そんなに怯えることはない。夜風を浴びるだけだ」
あれの存在がバレることに対する焦りで汗が吹き出したが、俺がザリアに対して恐怖していると思っていてくれてるようで助かった。
「あ、あの。俺本当に何も分かってなくて」
「まあ待て、話は上に行ってからにしよう」
手につけられた鎖の枷をガチャガチャと鳴らしながら弁明しようとしたがザリアに諭された。
ザリアの言う上とは、城の外壁のいちばん高い部分の事を指していた。
そこからは城の全体がほぼ目視でき、その大きさに息を飲む。
夜の闇の中にもかかわらず、その城全体にさらに深い闇が広がっているような重たげな存在感がそこにあった。
「ここは綺麗だろ」
「はい。とても」
「私のお気に入りの場所のひとつだ。さて、早速で悪いが時間もあまりない。君について聞きたいことをいくつか質問させてもらう。処遇はその内容によって決めよう」
ザリアは落ち着いた表情とは裏腹にその赤い瞳で俺を睨みながらそう言った。
その品定めするような瞳を見返して、ここが俺の命の重大局面だと覚悟を決めた。
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