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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第98話 ダンジョンブレイク


(一人称視点)


 ダンジョンブレイク。

 それはダンジョンと地上を隔てる、世界の境界線が破壊され、ダンジョンの魔物が地上に溢れ出る事象のことだ。


 今更だが、ほとんどの魔物は人類に敵対的である。そんな生物が大量に現れれば、地上への損害は計り知れないものとなる。ダンジョンにまつわる災害はいくつかあるが、ダンジョンブレイクはその中でも屈指の危険度だろう。


 だが、ダンジョンブレイクというのはそうそう起こるものではない。

 先述の通り、ダンジョン内部と地上の間には、世界を別つ境界線が引かれている。

 これを破壊するのは簡単ではない。やろうと思ってできるものでもないし、放置して勝手に壊れるという事も無い。

 ダンジョンに人が来なくなれば、そもそもダンジョン自体が消滅する。魔物が溢れ出して境界線を壊す、なんてこともありえない。




 そもそもこの境界線は、ダンジョン側が設定したものである。

 ダンジョン外で生まれた生命体はこの境界線を自由に超えられるが、ダンジョンが生みだした魔物はこれを超えられない。


 ほぼ全てのダンジョンに共通するこの法則。理由は簡単。ダンジョン内の魔物、つまりはリソースをわざわざ外に放出する意味がないからだ。

 ダンジョンのリソース……情報だって、無限にあるわけじゃない。魔物やドロップアイテム、資源を生み出す度に減っていくし、人が訪れなければ情報を集めることも出来ない。その先に待つのは情報不足によるダンジョンの自然消滅だ。

 魔物や資源は、人を誘い出し情報を収集するための撒き餌(・・・)

 生物同士の戦いでより高密度な情報を効率的に引き出し、それを収集。報酬として、その一部をドロップアイテムとして人類に還元する。そういうシステムなのだ。


 ダンジョンが情報を収集できる対象は、あくまでダンジョン内にいる存在のみ。

 つまり地上で魔物と人間がドンパチ戦っても、情報は得られない。リソースを使って魔物を生み出したのに報酬ゼロ。完全に無駄な行為という訳だ。

 だからダンジョンは魔物が勝手に外に出ていかない様に、世界を別つ境界線を引いている。




 ……だが。

 もしもダンジョン側が、何か明確な目的、メリットがあって、地上への進出を意図したのであれば話は別だ。


 ダンジョンコアがある一定量まで情報を蓄積すると、自我に目覚める事がある。

 すると、たまに居るのだ。『ちょっと地上を支配してみよう♪』とかアホな事考える奴が。イヴとか。

 そんな壮大な野心を掲げたダンジョンコアは、この世界を別つ境界線を解除してしまう。

 自我を得、肉体を獲得したダンジョンコアは自由に地上を出入りできる。故に自らが地上に出て魔物を率いることで、情報の収集が可能になってしまうのだ。

 その結果、ダンジョンブレイクが起きてしまう。ダンジョン側が意図的に境界線に穴を開けることによって、地上に魔物が溢れ出してしまうのだ。


 ……但し、今のはあくまで原因の一例。

 実際にダンジョンブレイクが起こる原因には、様々な可能性が考えられる。例えばコンビニの発注ミスみたく、魔物の生成数を間違えて大量放出するためだとか、魔王種がダンジョンコアを乗っ取り、もしくは交渉して外に出るためだとか、敢えて注目を得て人をおびき寄せるために穴を開けるだとか。

 ダンジョンごとに方針というのもある様なので、それにより様々なパターンが考えられるのだ。主にダンジョン側の都合であるという点は変わらないが。

 そしてその原因を見極め、適切に対処することこそが、ダンジョンブレイクを解決する鍵となるのだ。




「今回の震源地は、イギリスか」


 テレビを映せば、そこにはダンジョンの出口から溢れ出す魔物共と、それを取り囲むように応戦する戦車やドローンなどの現代兵器たち。

 しかし兵器による攻撃はあまり効果が見られない。やはり魔力の兵器転用でもしない限り、現代兵器の火力には限界がある。

 このままでは包囲網を突破されるのも時間の問題だろう。戦車以上の攻撃力を持つ探索者でもいれば、話は別だが。


「さて、ダンジョンブレイクの理由が気になるところだけど。見た感じ、指揮官らしき姿……ダンジョンコアらしい奴も見当たらないし」


 そう呟いていると、慌ただしくドアをノックする音がした。

 やって来たのは寝間着姿のホムラちゃんとシラユキちゃんだ。

 シラユキちゃんは事前に持ってきていた自前のパジャマだが、ホムラちゃんはホテル備え付けのガウンを身に付けている。


「トオルさん! さっきの揺れは一体!?」

「不気味な揺れで飛び起きちゃったんだけど……」


「お休み中に災難だったね、二人とも。どうやらイギリスでダンジョンブレイクが起きたらしい」


 どうやらさっきの揺れを二人とも感知して、眠りから覚めてしまったようだ。

 ニュース映像を見て事の重大さを把握したのか、顔が蒼くなっている。

 ……ん? ホムラちゃんはともかく、シラユキちゃんも揺れに気付いたのか?

 時間操作ができるほどの実力者ならば、時空のゆがみを察知する事は出来るだろうが……なぜシラユキちゃんまで? たまたまだろうか。


「ダ、ダンジョンブレイクって……なんでこのタイミングで!? 大丈夫なんでしょうか!?」

「流石にここからイギリスまでは距離があるし、俺達に影響はないよ。イギリスは、まぁ……国家滅亡の瀬戸際って所かな」


 アヴァロン大迷宮って、この世界ではかなり高難度のダンジョンだったよな?

 ならそこから溢れ出す魔物も相当強いはず。残念ながらこのままでは、ヨーロッパ周辺は壊滅的な被害を受けるだろう。


 ……まあ、流石にそれを黙って見てるだけってのもな。

 イヴには悪いが、緊急事態だし多少は目を瞑ってくれるだろう。


「という訳でちょっとイギリスに行ってくる。二人はゆっくり睡眠を取って――」





 ダンジョンブレイクに二人を巻き込む必要はない。

 そう説得しようとした俺の視界の端、テレビ画面に映る一体の魔物が目に留まった。


「ぉん!???????!!!!?」


 あれはっ……あれはっ!??

 クリスタルユニコーンではないかっ!!!????


 あの、超希少食材と世界中で噂の!!!!

 俺ですら食したことが無い、数多の世界線でも極々わずかな個体数しかいないというあのレアモンスター!!????


「ホムラちゃん、シラユキちゃん……

何も心配することはない。ベッドに戻ってゆっくりお休み」

「ト、トオルさん……? なんだか顔が怖いです」

「ははは、何も怖いことは無いさ。二人が起きるころには、綺麗さっぱり解決してるよ。起きたら美味しい料理をご馳走してあげよう」

「……トオルさん? 何か変なこと企んでない?」

「ハハハそんなことはないよ」


 鋭いな、シラユキちゃん……流石はウチの店のスタッフだ。

 そうとも。クリスタルユニコーンという、数百年に一度会えるかどうかという希少獣を前に、この俺が黙って見ているわけにはいかない。


 俺は、イギリスに行く!!!

 そしてレア食材を片っ端から確保する!!!

 あんな無造作にドロップ品の食材が捨て置かれているのを、これ以上見ていられない!!!

 待ってろ食ざ……いやイギリスの人達! 今俺が向かうぞ!!



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