表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/145

第93話 女子二人でお泊まり会


(三人称視点)


「景色もいいし、ベッドもふかふか! これが最高クラスのスイートルーム!」

「凄くいいお部屋だけど、北海道旅行のはずが、なんでアメリカのホテルに泊まる事になってるんだろう……?」


 イヴに招待されたホテルの一室、最上階のスイートルームにて、ホムラとシラユキは興奮を隠しきれない様子で、自分たちの部屋を探索していた。

 三人には一部屋ずつ振り当てられたのだが、現在はホムラの部屋にシラユキがお邪魔している形である。一人用の部屋とはいえ、二人でも十分以上に過ごせるほどの広さと快適さであった。


「これだけ広いなら、トオルさんをお招きしても問題なさそうですかね?」

「さ、流石にそれは……男女が同じ部屋に寝泊まりするのは、ちょっと覚悟が足りてないというか」

「ふふ、冗談です♪ にしても、ちょっと意外でした。シラユキちゃんの方から私の部屋に遊びにくるなんて。後で私から尋ねるつもりだったのですが」


 ベッドに寝転がったまま、ホムラが意外そうな声色でシラユキに尋ねる。

 まだ知り合って間もない二人だが、それでもお互いの性格は大体は把握している。

 ホムラの知るシラユキは、友達の家に自分から遊びに行くという、アクティブな行動をするようには思えなかったのだ。


「自分でもこんな行動力があったなんて、ちょっと驚いてる。旅行で浮かれてるってのもあるかもしれない。……ホムラちゃんが心配だったから」

「え?」

「さっきイヴさんと話してた時、トオルさんの故郷の話があったでしょう」


 イヴが口を滑らせた、トオルが故郷に帰れなくなっているという話。

 ホムラは以前シラユキとお泊まり会を開いた際、シラユキが転移者である事は本人から聞いていた。それを機に仲良くなったのだが、トオルも同じ境遇である事は知らされていなかったのだ。


「その時のホムラちゃん、寂しそうな顔をしてたから……トオルさんの事で、悩んでるんじゃないかって思って、放っておけなくて」

「――――」


 ホムラは目を見開いた。

 あの時、トオルが僅かに見せた過去への執念と後悔。

 本人は過ぎた過去だと笑っていたが、ホムラにはそうは見えなかったのだ。

 ……しかしホムラは、トオルにかける言葉を見つけ出せなかった。

 ホムラはあまりにも、トオルの事を知らない。あの場では何を喋っても、トオルの心の奥底には届かなかっただろう。

 それはホムラ自身も実感していた。その無力感に(さいな)まれていた瞬間を、シラユキは見逃さなかったのだ。


「私のことを、心配してくれてたんですか?」

「ホムラちゃんが凄く頑張ってるのは、私も分かってるつもり。トオルさんに追いついて、力になりたくて、努力と研鑽を続けてる。

……私にはできない生き方だもの。正直とても尊敬してる。だから私も、ホムラちゃんの力になりたくて」


 シラユキも、トオルにはとても感謝しているし、尊敬もしている。

 できる事なら、彼の助けになりたいとも考えている。

 しかしホムラとシラユキでは、出来る事が全く違う。シラユキにはホムラのような、行動力や戦闘センスを持ち合わせていない。自分にないものを持っているホムラを、シラユキは尊敬しているのだ。

 そしてトオルの助けになりたいのと同じように、尊敬する友人であるホムラの手助けになりたいと、シラユキは心の底から願っている。


「その……なんて言ったらいいのかよくわからないけれど。

私もホムラちゃんも、トオルさんのことをあまりにも知らない。そして、支える為の力も足りていない。私も現状、トオルさんに甘えてばかりの立場だから」

「――――」

「けど私は、この恩を絶対に返すつもり。その為なら、何だってしてみせる。私の人生に自身の過去まで打ち明けて、真正面から向き合ってくれたあの人から……逃げたくないから。それは、きっとホムラちゃんも同じでしょう?」

「…………」

「今は届かなくても、私たちにはまだ時間が残されている。一人じゃ届かなくても、私たち二人ならあの人の側に並べるかもしれない。……私も頑張る。だから、ホムラちゃんも、その……元気になってほしいと、思って」


 最後の方はちょっと尻すぼみになっていたが、シラユキは自分の本心をホムラに打ち明けた。

 柄にもないことをしたせいか、少し気恥ずかしそうにしていたが。


「……シラユキちゃん」

「ご、ごめんなさい。こういうの私、あまり慣れてなくて。ちゃんとフォローになってるかしら……もし余計なお世話だったらごめ――」

「えいっ」


 いつの間にかベッドから起き上がったホムラが、しどろもどろのシラユキに飛びついた。


「きゃあっ!? ホムラちゃん!?」

「えへへ……ありがとうございます、シラユキちゃん。お陰様で元気が出ました! ――私は本当に、いい友達を持ちました」


 それは、ホムラの本心からの言葉だった。

 同じ想い人を持つ親友への、心からの感謝。

 そしてホムラは、改めて決意する。


(らしくもなく弱気になってましたね、私。……トオルさんへ追いつくのが簡単じゃないことは、最初からわかってたのに)


 夢を追いかけ、トオルに追いつく。そしてトオルを支える。

 容易には達成できない目標だ。しかし今は、同じ目標を掲げる親友がいる。

 彼女となら、シラユキとなら、きっとこの障壁も乗り越えられると、ホムラは確信していた。


(諦めませんよ、私は。――誓ったんですから、“世界一の探索者になる”って。

そしていつかトオルさんに並んで立てるようになって、私の思いを伝えるって。

一人じゃまだまだ届かないけど、シラユキちゃんとならきっと、そう遠くない未来に追いつけると思うんです。

……いつかきっと、トオルさんの事を理解してみせます。そして追いついて、側で支えたい。

二人で追いついてみせます。トオルさんが、手の届かない遠くへ行ってしまう前に)




「げ、元気になったならよかったけど……ハグは流石にちょっと恥ずかしい! それに高価な服にシワがついちゃう!」

「じゃあ、お洋服は脱いじゃいましょうか。夕食の前にお風呂タイムといきましょう! せっかくですし一緒にお風呂入りませんか?」

「えっお風呂!? 一緒に!?」

「女の子同士ですしいいじゃないですか〜、そうだ、この間みたいに今日もお泊まり会しちゃいますか? ホテルで友達とパジャマパーティー、一度やってみたかったんです!」

「う、うん。私は全然構わないけれど……あっちょっと!?」

「えへへ、お姫様抱っこです。一名様バスルームまでご案内〜♪」

「わかったから! 一緒にお風呂入るから、自分で歩かせて! 流石にお姫様抱っこは恥ずかしいからっ!?」


 そしていつにも増して上機嫌になったホムラは、シラユキを抱えたままバスルームへと消えていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ