第88話 美少女二人と服選びデート?
(一人称視点)
「――なるほど。ではお二人は衣服を買い揃えるために地上にやってきたんですね!」
探索者協会でのお話が終わった後、俺たちが地上に出てきた理由を、ホムラちゃんが尋ねてきた。
特に隠す事でもないので教えると、ホムラちゃんはこんな提案をしてきた。
「では、良ければ私がいいお店を紹介しましょうか? こう見えても私、この辺りのお店には詳しいので、シラユキちゃんに似合う衣装を探せると思いますよ!」
という事だった。
正直、俺もこの世界の店とか、流行りのファッションとかはよくわからんし、シラユキちゃんも多分わからない。
なので適当に色々な店を見て回るつもりだったのだが……案内役がいれば、時間を短縮できるだろう。女の子の服選びには、同じ女の子の意見を参考にした方がいいだろうし、何よりシラユキちゃん本人も乗り気だった。
という訳でありがたくホムラちゃんに、シラユキちゃんの服選びを手伝ってもらうことになったのだ。
そしてホムラちゃん行きつけの店だという、なんかすっごいでっかいビルの中にある、なんかブランドっぽいアパレルショップにやってきた。
のだが。
「トオルさん、その……どうかしら、この衣装」
「あぁ……よく似合ってると思うよ」
「トオルさん、私のこの格好どうですか? トオルさん的にはもっと落ち着いた色合いの方が好みでしょうか」
「十分似合ってるよ……」
そこで待ち受けていたのは、なぜかホムラちゃんも交えて始まったファッションショー。
二人の美少女が代わる代わるにお着替えをして、似合うかどうか俺に感想を求めてくるのだ。
正直まったくわからん。元の素材が優れているので、究極どんな服を着ても似合うと思う。
俺にファッションセンスを求めないでくれ。そして周囲の客や店員から明らかに視線を感じる。
「ねえあれ、最近バズってる店長さんじゃない?」
「ほんとだ、じゃああの可愛い子はホムラちゃんとシラユキちゃん?」
「元の素材がいいから何着ても似合ってるなぁ」
「あんな美少女二人と服選びデート? 羨ましい……」
聞こえてる聞こえてる。こっちを見ながらヒソヒソ噂してる。
しかし二人は衣装選びに夢中なのか、そんな様子を気にすることもなく次々と衣装を持ってくる。
「シラユキちゃんは全体的に色素が薄い感じだし、落ち着いた色合いの服が似合うかなー。クールな雰囲気にもマッチしてるし、あでも髪色と同じ白で統一するのもおしゃれかも!」
「ね、ねえホムラちゃん。よく見たらこの店の商品、値札が付いてないんだけど……もしかしてこのお店、凄く高い服屋じゃないの……?」
「大丈夫です! トオルさんから『予算は気にしなくていいよ』って言われてますので! シラユキちゃんに一番似合う、とびっきりいい衣装を探しましょう!」
「怖い怖い怖い! ちょっとお洒落な普段着を買うつもりで来たのに! そんな値段も分からない高級服着れないから!!」
「大丈夫ですよ、トオルさんの食材とか私の装備品よりは安いので! これくらいすぐ慣れますよ♪」
……女の子の服選びってこんなに時間がかかるものなのか?
経験がないから知らなかった、というか俺必要だったか?
周囲の視線、特に男性からの視線が刺々しい。正直帰りたい。
「シラユキちゃんも私の服を見繕ってくれますか? どんな服が似合うと思います?」
「うーん、ホムラちゃんはスタイルがいいから、体のラインが出るような服がいいかも……? 白いワンピースとか、赤い髪色も引き立てられて似合うと思う」
「おお……清楚っぽさを感じるチョイスですね! あまり経験のない属性ですから、新鮮な気分です! やっぱりトオルさんも清楚っぽい女性が好みなんでしょうか……?」
それから、二時間近く掛けて。
ようやく二人は、満足いく量の衣服を買い揃えたようだった。
「せっかくのお出かけですし、そのまま着替えていっちゃいましょう!」
「ト、トオルさん、もう少し待っててね……?」
目の前の更衣室から、するすると布擦れの音がする。
やがて二人は、いつもとは違う装いで現れた。
ホムラちゃんは、白いワンピースを身に付けていた。
大人の女性に近づきつつある、丸みを帯びたの体のラインがくっきり見える。
普段はベレー帽を被っていたりで、いかにも都会の女の子って雰囲気だったが。
確かにこういった服装は、新鮮に見えるな。
「ど、どうでしょう? あんまりこういった服は着慣れていないので、トオルさんのお眼鏡にかなっていればいいのですが」
「ああ、十分似合ってるよ」
「……! えへへ、ありがとうございます♪」
……真っ白なワンピースで思い出したけど、北海道に行った時に牛乳とか買っておけばよかったな。
そして隣の更衣室が開き、今度はシラユキちゃんが姿を現した。
「ど、どう……?」
あまりお洒落に慣れていないのか、シラユキちゃんは少し恥ずかしそうに身をくねらせた。
水色を基調とした、落ち着いた雰囲気の服装だった。
所々にフリルやレースの意匠があり、いつもより可愛らしさが増している気がする。
「うん、可愛いと思うよ」
「っ……あ、ありがとう」
……白い髪と水色って、ソーダっぽい色合いだなー
ちょっとソーダ飲みたくなってきた。
「トオルさん何か別の事考えてない??」
「気のせいだ」
俺には服装の事はわかんないよ……
◆
「トオルさん、この後どうする? 私の用事は終わったし、そろそろ日が暮れる頃だけど」
「そうだな、せっかく地上に来たんだし晩御飯でもーー」
俺がそう言いかけた時、ポケットの携帯がブルブルと震えた。
連絡が入っている。画面上には、久しく見ていなかった送り主の名前。
「ようやくか」
一向に連絡を寄越さなかったあいつからの返事が、ようやく来た。




