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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第85話 探索者協会の偉い人とお話してみた


 探索者協会や政府も、いろいろと動いている事は理解できた。

 そして目の前のシドウさんは俺に敵対するつもりではなく、しかし組織の全てを制御できるわけでもなく。

 こうして俺にその事実を直接伝えることで、保険をかけつつ誠意を示すアピールをしていることも。




 でもぶっちゃけどうでもいいんだよねその辺。


「協会にも色んな勢力があって、中でも俺を都合よく扱おうとする勢力があるみたいだけど」

「はい」

別にそれ自体は(・・・・・・・)構わないよ(・・・・・)。人間がより多くの利益を求めるのはごく自然な事。俺も自分の抱える情報や財産を独り占めするつもりでもないし、必要に応じて提供してもいいと思ってる」


 どの世界線でも、生物がよりよい利益を求めるという法則は変わらない。

 それを俺に求める行為について、俺がとやかく言うつもりは無い。


「組織が一枚岩でないことも、シドウさんのせいではないでしょう。探索者協会程の巨大な組織が一丸になる事自体、滅多にないことですよ。他の世界線でも大体そんな感じでしたし。だから俺はシドウさんだけを責めるつもりは毛頭ないです」

「それは……」

「仮にその他勢力が俺に敵対的な行動をしたとしても、どうでもいい(・・・・・・)。正直、彼らが俺に対してできることなんてたかがしれてる。どれだけの武力を集めようが俺にとっては羽虫以下だし、経済的、政治的に俺を追い詰めることもほぼ不可能だ。俺に害を及ぼす事自体が、そもそも無理なんですよ」

「…………」


 俺は持ちうる財産と能力を、この世界線に依存していない。

 あるとしたらインフラと配信チャンネルくらいだが、これはどちらも日本国内で用意した(・・・・・・・・・)ものではない(・・・・・・)

 というか現地で必要な物は全てあいつ(・・・)に調達を任せたので、それを取り上げるならまず現地民はあいつを何とかする必要がある。

 そしてそんな事はほぼ不可能だ。なにせあいつは既に、この世界線で大きな影響力を持つ立場にいるのだから。


 ……そのせいで忙しいのか、俺の送った連絡に一向に返事を寄越さないが。

 祇園寺(ぎおんじ)ダンジョンコアについても話したいのに、どこで何やってるんだあいつ?

 と、それはさておき。


「今の俺の優先事項は、俺の店になるべく多くのお客さんに来てもらうこと。そして、俺とそのスタッフが快適な環境で、この世界で過ごせるようにする事。

……逆に言えば、それ以外は(・・・・・)どうでもいい(・・・・・・)


 そう、どうでもいいのだ。

 俺は料理と店、そしてスタッフの事だけを考えていたい。

 利権とか勢力とか政治とか、すごくどうでもいい。友好だろうが敵対だろうが好きにしてくれ。メリットがあるなら仲良くするし、邪魔するなら潰す。それだけだ。

 だが、俺に明確なメリットを提示できる存在や組織は限られる。地位とか名誉とか金とか、そんなものに興味はないし、それをメリットとして提示してくる各国政府や研究機関に対して俺が手を組むことはない。

 その点探索者協会はもしかすると、俺に対して明確なメリットを提示できるかもしれない。


「まあ簡単に言うと、過ごしやすい環境が欲しいんですよね。俺とシラユキちゃんが、この世界でお店を潤滑に経営できるような環境が」

「……! その口ぶりでは、もしや隣のシラユキさんも」

「ええ。シラユキちゃんも俺と同じ、別世界からの転移者です」


 どこか緊張を含んだ表情で、シラユキちゃんがゆっくりと頷く。

 彼女の保護をこの世界に求めるなら、この情報はいずれ開示する必要があった。

 どの道シラユキちゃんの正体にも、そろそろ誰かが勘付き始める頃だろうし。

 これだけ顔出ししておいて地上に一切痕跡が無いなんて、どう考えても不自然だからね。こっちの世界の(・・・・・・・)シラユキちゃんは居ないっぽいし。


「配信業を始めたのもお店の宣伝の一環ですし、他に有効な手立てがあるならそれも試したい。そのためにも色々、今はシラユキちゃんと一緒に試行錯誤している段階です。探索者協会が俺の店に対して何らかのメリットを生み出せるなら、こちらも歩み寄る準備はあります。無論、限度はありますが」

「……なるほど。よくわかりました」


 何かを考えるように、シドウさんは目を瞑って考え込む。しかしそれはわずかな間であった。


「つまりサカガワさんは、探索者協会と(・・・・・・)公に手を組む(・・・・・・)事を考えていらっしゃる。お店の存在を正式に認めてもらう事と、探索者をより多く呼び込む仕組み(システム)を作るために」

「なのでメロン食べません?」

「なぜメロンなのかはよく分かりませんが、仰りたいことは理解できました」


 流石に協会の偉い人だけあって、頭の回転が早い。

 ただ、ダンジョン産メロンについて反応に乏しいのは気になるなあ。


「配信コラボの話は、一旦保留とさせてください。流石に私の一存で決定できる範囲を超えていますので」

「わかりました」

「ただ、私もサカガワさんの提案には大変興味があります。サカガワさんの要求は、確かに我々探索者協会にしかできない事です。ぜひ前向きに検討していきたいと考えています」


 メロンでゴリ押し作戦は失敗であった。残念。


 さて、俺のスタンスは話したし、もう一つ気になる事もついでに確認しとくか。


「シドウさん。このメロンなんですけど、夕張にあるダンジョン内で栽培されたものなんですよ。甘くてめちゃくちゃ美味しいんですが、ご存知でしたか?」

「……? いえ(・・)初めて聞きましたね(・・・・・・・・・)




 いやそんな訳ないでしょ。

 ダンジョン内で食用果実を栽培するだなんてプロジェクト、絶対に探索者協会の許可が必要だ。それを偉い人であるシドウさんが知らない訳がない。

 という訳で。


「ちょっと失礼しますねー……《時間掌握(タイムルーラー)》」


 この部屋を空間ごと隔離し、丸ごと時間を停止させる。

 ふう。地上じゃダンジョンの地形操作補正もないし、時間操作も一苦労だ。

 俺は取り出した上級回復ポーションをシドウさんの体内に直接転移させ、時間停止を解除した。


「……!? トオルさん、今時間操作を――」

「シドウさん、今の体調はどうですか? 何か思い出しました(・・・・・・・・・)?」


 さて、次はこの世界に蔓延(はびこ)る、災厄の気配について。

 これも偉い人とお話しておきたかったんだよねー。



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