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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第83話 探索者協会からの使者(追っかけ)


「ホムラちゃん……? どうしてここに」

「ふふ、トオルさんSNSは見ていないんですか? もうトオルさんの目撃情報があちこちで出回ってますよ? そうでなくても、探索者協会に聞いたらすぐに教えてくれましたけれど」


 慌ててSNSを確認すると、確かに俺の目撃情報があっという間に出回っているようだった。

 既にトレンド入りまでしている。『店長出没注意』、『逆川透 目撃情報』、『夜逃げ』、といったキーワードなどなど。


 いつの間にかこんなに騒ぎになってたのか……? ちょっと外に出ただけなのに。

 SNSは変なコメントとかDMが大量に来るので、普段からあまり見ていなかったのだ。

 特にアルベルト。俺の発言に必ず数千文字単位のクソ長英文で反応してくる。実はこっそりミュートしてる。


「……もしかして、今日も渋谷ダンジョンに来た?」

「はい、今日も渋谷ダンジョンに潜っちゃいました。私が探索中でインターネットを見ていない間に、臨時休業の告知があったんですね。……不幸な入れ違いでした、ええ本当に」

「ホ、ホムラちゃん……ちょっと怒ってる?」

「いえいえシラユキちゃん、私怒ってませんよー? 二人きりでお出かけなんてずるいとか、ちょっとそういった事は考えましたけれども。まあ、社員旅行か何かかなって思うことにしました。……私はどーせ、ただのお客さんですからねっ!」


 いやこれは怒ってるんじゃないか?

 頬っぺた膨らませてるし。体からちょっと火が噴き出してるし。


「な、なんかゴメン……後でホムラちゃんの分のお土産も買ってくるから」

「お気になさらず。私はしょせん部外者ですので! ……それに、私は私でこなさなきゃいけないお仕事(・・・)もありますからね」


 その発言の後、ホムラちゃんの雰囲気が変わる。

 キリッとした真面目な表情。俺の前ではあまり見せたことのない、お仕事スタイルのホムラちゃんだ。


「今日の私はお客さんではなく、いち探索者としてトオルさんの前に来ています。――トオルさん。さっきもお伝えしたように、探索者協会がトオルさんとの面会を望んでいます。私はその使者としてここに来ました。決して、追っかけとかではないので。決して!」



 要約すると。

 『止まり木亭』が臨時休業と知ったホムラちゃんは、探索者協会にまず連絡をしたらしい。

 その頃には俺が夕張第二ダンジョンに入ったという報告が、探索者協会に通達されていた。

 なのでホムラちゃんは協会の使者にあえて立候補して、渋谷からここまで飛んで(・・・)やってきたという訳だ。


「で、探索者協会はなんで俺と会いたがってるんだ?」

「前々から面会希望の連絡はありましたよ?? トオルさんからの返事はありませんでしたが」

「……協会からの連絡をガン無視とか、何やってるのトオルさん」


 いや、知ってたよ。

 俺が配信業を始めたあたりで探索者協会からのアプローチはあった。

 でも絶対めんどくさい奴じゃんこれ!! と思ってガン無視してました。

 どうしても対応の必要があるやつだけは、あいつ(・・・)に丸投げしてたが。


「スパムか何かかと思ってました(大嘘)」

「……。今になって白状しますが、私も前々からトオルさんを説得するように、協会ずっと言われてたんですよ。トオルさんに直接接触できるの、現状私だけですからね」

「ホムラちゃんも苦労してたのね……」

「お気になさらずシラユキちゃん。今まではお断りしてましたけど、今回は私から立候補しましたので。あ、決して他意はありませんので」

「ぬ、抜け駆けみたいになっちゃってごめんなさい……」


 二人のやりとりの意味はよく分からなかったが、とりあえず探索者協会が俺の外出を機に、本格的に接触を図ってきたことは分かった。

 まあ普段ダンジョンに篭りっぱなしだし、今を逃せばチャンスはないと考えたのかもしれないな。

 まあスパイ紛いの事をさせるよりかはストレートな手法だし、個人的にはマシな方だが。


「けどさー、考えてみれば、俺が探索者協会の言うこと聞く必要はないんだよなぁ。ホムラちゃんやクライさんと違って、俺は探索者協会に所属してる訳じゃないから、赤の他人なんだよね。だから応じる理由が特に無いんだよなぁ」

「まあ、そうなんですよね……だからお願いという形なんです。一応ダンジョンは本来、探索者か特殊な許可証がないと立ち入り禁止ですので、その辺りを話し合いたいのかもしれません」


 まーやっぱりそうなるよな。

 協会やら政府やらが出張ってくる理由は、いつも利権や法律絡みの問題だ。

 正直すごくめんどくさい。

 経験上、俺が別世界の人間である事を盾に、めちゃくちゃな要求をしてきたり俺の行動を制限しようとしてくるのだ。まあこっちの世界の法律(ルール)を遵守しないほうが悪いといえば、それまでだが。


 でもこっちの法律は別世界人の俺を守ってくれる訳でもないし、世界毎に微妙に違うルールをいちいち覚えるのもしんどい。そもそも戸籍もない。

 俺がダンジョンの人気がない場所に篭りっぱなしなのも、こうした面倒毎を避けるというのも理由の一つだ。


「薄々そうじゃないかと思ってたけれど。やっぱり私たち、この世界線にとっては異物なのね。私の探索者証もこっちじゃ無効だろうし、ダンジョンに違法侵入してるって扱いになるのかしら」

「――――」


 ……ただ。今は俺だけじゃない。シラユキちゃんもいる。

 俺は法律とかガン無視しても生きていけるが、シラユキちゃんはそうもいかないだろう。

 もし、今後俺の身に何かあった時、受け皿になってくれる存在が必要だ。


「わ、私もお二人を糾弾したい訳じゃなくて……納得のいく落とし所を探るために、話し合いの機会が必要だと思うんです! 私もお二人が極端に不利な立場にならないよう、説得はするつもりです!」

「…………ん」


 というわけで、適当に煙にまくのもいよいよ限界らしい。

 まあ、そろそろ俺からも探索者協会とは話をしたいと思っていたし、いい機会と考えるべきか。これ以上無視するのも、ホムラちゃんに悪いしね。


「わかった。面会に応じるよ。ただし、シラユキちゃんも一緒でいいよね?」

「! も、もちろんです!!」

「うん、わかった。やっぱりこっちの世界でお世話になる以上、私も話し合いは必要だと思うし」


「では、面会はいつにしますか? 協会からは、トオルさんのお好きな日にちで問題ないと言われてますが……」

「じゃあ今から。協会の本部でいいよね?」

「「えっ」」


 と言う訳で旅行先変更。

 北海道の次は東京旅行だ。ちょっとお話ししてから、ショッピングにでも洒落込もうか?




「あでもメロン食べるのが優先ね。ホムラちゃんもどう?」

「あ、はい。頂きます」


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