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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第4章 未知の世界からのお客様

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第71話 世話焼き


「私が、人類と魔王種の共存を実現させる……?」


 そう呟くホムラは、困惑を隠せない様子であった。

 突然の展開、提案。これで理解が追い付く人間など、この世界線に居ないだろう。


「ああごめん、いきなりこんなコト言われても混乱するよね。順を追って説明するよ」


 そう言って別世界のトオルは、自分の胸を指差して話を続ける。


「人類と魔王種の共存が大厄災の発生を阻止し、この世界を救う――俺がそう思った根拠としては、俺の住む世界線の話が関わってくるんだ」

「……?」

「俺の嫁さん、さっき紹介したと思うんだけど。実はみんな魔王種なんだ」


 配信にも流れた、別世界のトオルを取り囲む獣耳の生えた女性たち。

 それらはみな、魔王種であるとトオルは暴露した。


「俺は色んな世界線を放浪する内、とある世界に辿り着いた。――数多の世界を滅ぼす大厄災。それが通り過ぎた跡の、跡地とも呼べる場所だった」


 あらゆる文明が、文化が、生命が滅びつつある世界。

 ホムラはトオルの表情に、偽りではない悲しみの感情を確かに見た。


「人類の築いた文明なんてとっくに崩壊してた。日本もアメリカも、国という国は全部滅んだ。地形だって滅茶苦茶に荒らされて、魔素汚染で人類が住める場所は殆ど残っていなかった」

「----」

「それに、現地の人にとって災厄はまだ終わっていなかった。世界中のダンジョンが崩壊して、下層、深層クラスの魔物が地上を跋扈(ばっこ)するようになっていたんだ」


 下層クラスの魔物の強さは、ホムラも身をもって知っている。

 ダンジョンごとに強さの格差はあれど、それが地上をうろついているとなれば、地獄絵図と化すことは容易に想像できた。


「俺も流石にこの状況を放っておけなくてね。見かねて魔物の討伐に乗り出したんだ。……そこで出会ったのは、彼女たち魔王種だった」

「地上に、魔王種が」

「ああ。彼女たちも被害者だったんだ。ダンジョン内で安寧な生活を送っていたところを、大災厄のせいで地上に引きずり出されて、帰れなくなった」


 当時の出来事を思い返すように、トオルは写真を取り出して懐かしそうに眺めていた。


「魔王種にも様々な性格の個体がある。人類に協力的な個体もいれば、変わらず敵対的な個体もいる。最初は敵対してたけど、後に人類と和解した固体もいるよ」

「じゃあトオルさんは、その魔王種の方たちと一緒に?」

「ああ、世界の復興作業に勤しんだ。どうにか力を合わせて、こうして他の世界線に召喚されるようになるまで復興できたよ」


 世界の滅亡とは即ち、他の誰からも世界線が観測されなくなることを指す。

 そうなれば当然、他の世界から召喚されることもなくなってしまう。

 今回のように別世界から召喚されるということは、ある程度繁栄し、情報量を保った世界線であるという証拠になるのだ。


「そうする内に情が芽生えちゃってね。俺もこの世界線に骨を埋める事にしたんだよ。そこからは色々あったなー、人類と魔王種の共存を目指したり、災厄の残滓と戦ったり……で、それを支えてくれた嫁さん達と結婚したってわけ」

「それは……すごい人生ですね」

「でしょー? ……で、俺がその人生から学んだ経験則なんだけど。世界線規模で何か大きな事を成し遂げるためには、やっぱり人手が必要なんだよ」


 少し脱線したが、トオルはようやく本来伝えたかったことを語り始める。


「人手といっても、誰でもいい訳じゃない。ある程度世界線に(・・・・・・・・)影響力を持った人材(・・・・・・・・・)だ。

俺のようにただの個人が、どれだけ力を持っていたとしても、出来る事には限界がある。それはこの世界の俺にとっても変わらない。

……そして今のこの世界線には、人材が圧倒的に不足している」

「そ、そうなんですか?」

「俺が見る限り、ホムラちゃんはきっとこの世界線において、屈指の実力者なんだろう。配信のコメント欄やこっちの俺の様子からも、そんな雰囲気がうかがえた」

「自分で言うのもあれですが……多分私より強い人間は、現地の人には居ないと思います」

「だろうね。それがまずい。人類側の実力が圧倒的に不足してるんだよ」


 現在のホムラでは、深層の存在に太刀打ちできない。

 それは自他ともに認める事実だ。ともなれば、他の人類が対抗できるはずも無い。

 ならば、深層クラスの魔物が地上に跋扈するという、大厄災が訪れたならば?


「このままじゃ間違いなく破滅だ。何の抵抗も出来ずに世界は滅ぶ。俺の言いたい事、分かるかな?」

「……人手が足りないから、魔物に……魔王種に協力してもらうんですか?」

「その通り。実際俺の世界線は、それに成功したからここまで復興できた」


 将来訪れるであろう破滅に備えて、人類と魔物が手を結ぶ。

 この世界線では、鼻で笑われるような思想だろう。しかし別世界のトオルは、大真面目にその思想をホムラに語った。


「魔王種が生息するのは、基本的に深層以降。つまりそこまで潜れるほどの探索者でなければ、魔王種と接触する事すら出来ない」

「……だから私に、共存の立役者をしろと?」

「それしか方法が無い。君は俺から見ても、十分な素質を持つ探索者だ。この世界線において、代わりになる人材はきっといないだろう。--君にしかできない役割なんだ」

「…………」

「この世界の俺はそこを理解してないのかもしれないな。全部自分で抱え込んで、一人で解決するつもりだ。俺も嫁さん達と出会う前まではそうだったから、なんとなくわかるんだよ」

「----」

「いいかいホムラちゃん。()は決して、完璧超人なんかじゃない。普通に悩むし、失敗もする。それになまじ力を持ってるせいで、余計にこじらせちゃったりするんだ」


 そう語るトオルの姿は、まるで出来の悪い弟の世話を焼く兄を見ているような――

 ホムラにはその姿が、大人びている(・・・・・・)ように見えた。


「俺はこの世界には居られない。それに俺から言っても素直に受け取らないだろうし、代わりにホムラちゃんに頼む。どうか、この世界の俺を支えてやって欲しい」

「私が、トオルさんを……」

「君はこの世界の俺にとって最も身近で、実力の近い人間だ。君なら俺の意識を変えることができるかもしれない。……何があったか知らんが、どうもこっちの俺は、魔王種を嫌ってるように見えたからな」


 ホムラは知る由もないが、この世界のトオルと別世界のトオルとでは、魔王種に対するスタンスがまるで違う。

 この世界のトオルが魔王種を()と呼んで割とぞんざいに扱うのに対し、別世界のトオルは()と呼び、あくまで一人の生命として尊重しているように。


「俺一人で抱えるんじゃなくて、身近な存在の助けを……魔王種の力を借りるんだよ。そうでもしないときっと、この世界線は滅亡から逃れられない。それを気づかせてやって欲しいから、俺はホムラちゃんに声を掛けたんだ」

「そ、そう言われましても……私は具体的には、何をすれば!?」

「ん、そうだな……とりあえず、魔王種と仲良くなるところからかな? ほら、アルとレヴィっていう二人組の魔王種居たでしょ。あの子たちとかうってつけなんじゃないかな。比較的人類には友好的な態度に見えたし」

(え、そうだったかなぁ……)


 気弱なレヴィはともかく、人類を見下す言動が垣間見えるアルの方は、果たして友好的だろうか……?

 そんな事を内心考えたホムラだったが、よく考えれば目の前に居るのはトオルだったので、「自分とは感覚がだいぶ違うのかもな」という結論に達し、考えるのを止めた。


「……私にそれが出来るのか、あなたが語った内容が真実なのか。それは今は考えても仕方がないので、置いておきます。けれどこの会話の内容は、ちゃんと覚えておきます」

「ああ、慎重な判断だ。今はそれでいい。けれど恐らく、決断の時はそう遠くない日にやってくるぜ。それまでには、ちゃんと答えを用意しておいた方がいい」





「ところでこの話、遠回しにトオルさんと魔王種の結婚を勧めてたりしません?」

「してないしてないしてない! 俺も自分の趣味が世間一般からズレてるのは自覚してるから! それを俺に強制はしないし、ましてや俺の身近な女の子に頼み込んだりはしない!」


 一瞬ジト目で疑いの眼差しを向けるホムラだったが、必死の弁明を受けてひとまずは納得した様だった。


「……まあ、ついでにそっちの方面(・・・・・・)でもアドバイスしておくと、多分あいつは自分を支えてくれるタイプの女とか好みだぞ」

「えっ」

「ああいう力を持ち過ぎたタイプの俺は、一人で何でもかんでもこなそうとするからな。当然失敗して、何かの壁にぶち当たったりする。そんな時に女が支えてくれたら、コロッと好きになると思うぞ。俺もそうだったからよく分かる」

「お、覚えておきます……」


 若干顔を赤らめてうつむくホムラ。

 やけに実感のあるアドバイスであった。


「……んじゃ、言いたいことは言い終えたし、そろそろ本当に帰るとするかな。あ、今回の話はこっちの俺には内緒な? バレたら俺ぶっ殺されちゃう」


 そう軽口を叩くトオルの背後には、いつの間にか穴が出現していた。

 こちらのトオルが何度か見せた、物体を転移させる穴。

 ホムラの眼前にある穴の先は、トオルの下の世界が広がっているのだろう。


「召喚っていうのは、魚を釣り上げるようなもんなんだ。釣った魚を海に戻すのは簡単だけど、全世界線という巨大な海から、同じ個体を釣り上げられる可能性は殆どゼロだ。時間の流れも違うだろうし、目印の糸(・・・・)をこの世界に維持する力もない。俺が今後のこの世界の行方を知る機会は、きっと永遠に来ないだろう」

「永遠に……!? なら、どうしてここまで――」

「世話焼きなんだよ、俺っていうのは。ただの居候で、明らかに厄ネタ抱えた世界線にわざわざ料理店なんか開いて、世話を焼くくらいにはね。……それは俺も同じ。世界が変わったって、人っていうのはそう簡単には変わらないのさ」


 トオルの姿が穴に吸い込まれる。

 時空が歪み、その衝撃にホムラは思わず目をつむる。


「もう二度と会う事はないだろうけど、遠くからこの世界の命運を祈ってるよ。ホムラちゃんも、こっちの俺を、どうか支えてやってくれ――それじゃ、アディオス!」


 最後にそんなことを言い残して、別世界からやってきたトオルは、今度こそ本当にこの世界から去っていった。


「…………はい。必ず」


 一人残されたホムラは、今の会話の内容を。

 そして、自身を二度も助けてくれたトオルと同じ、世話焼きの最後のおせっかいと、その意思を。

 己が魂に、しかと刻み込んだ。



(一人称視点)



 魔王種食うべし慈悲はない。


 そんな感じで美味しそうな鳥人型魔王種こと、マモンとお話(・・)してたらシラユキちゃんに見つかっちゃった件について。




 いや、マジでなんでここに入れたの?

 俺、確かに出入口は閉めたはずだよ??

 ここ、時間停止してる亜空間なんだけど???


 どうしようかなーこれ?



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― 新着の感想 ―
ホムラは実感がない状態だからという言い訳はあるにせよ 自分が死ぬかもどころではなく高確率で世界が崩壊するかも、 さらに猶予もないかもなんて重大で深刻な話をしている場面で 性的興奮を伴う感情の主張を差し…
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