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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第4章 未知の世界からのお客様

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第70話 大厄災(カタストロフ)


「ホムラちゃんは、普通の魔物と魔王種の違いって知ってるかな?」


 止まり木亭から少し離れた場所にて、別世界のトオルは先ほどとは質問を変えて尋ねた。


「いえ、トオルさんから特別な魔物だとは、教えてもらいましたが……」

「うーん、さっきの反応でまさかとは思ったけど、やっぱその辺の知識も出回ってないのか。こっちの俺はもっと情報を発信するべきだな」


呆れたように腰に手を当て、もう一人のトオルは説明を始める。


「魔王種ってのは、“ダンジョンコアに干渉する権限を持った魔物”の事を指すんだ。ダンジョンそのものを操り、強大な力を振るう魔物の王。だから魔王種」

 ……トオルが大量のカイザーコカトリスに襲撃された事件。

 あれは魔王種であるマモンが、たまたま別世界から流れ着いたダンジョンコアを拾ったのがきっかけだった。

 これがもし普通の魔物であったならダンジョンコアを操ることもできず、今回の襲撃事件も起きていなかっただろう。


「……ダンジョンコアはわかります。ごく稀に発見される、ダンジョンの頭脳にして心臓部の事ですよね。破壊してしまえば、ダンジョンそのものが消失してしまう」

「その通り、ダンジョン関連の仕組みは全世界線で共通だからね。で、ダンジョンコアに干渉できる以上、それを操るだけの知能を備えた個体が多い。そうすると、同じ魔王種でも個体差というものが現れてくる」


 ホムラは昨日遭遇した、アルとレヴィという二体の魔王種の事を思い出していた。

 言語を解す程の高い知能、そして全く違う性格の二体。


「そして数ある魔王種の中には、人類に友好的な奴(・・・・・・・・)もいるんだ。高い知能を持つが故の特徴だな。俺はそういう魔王種と人類が共存できる可能性っていうのを模索してる。そしてホムラちゃんにも是非意見を聞きたい」

「そこで、最初の質問に繋がるんですね……」


 しばし、顎に手を当てホムラは考え込む。


「……正直言って、よく分かりません。私は魔王種という存在を昨日知ったばかりですし、あまりにも知識が不足しています。……今まで魔物というのは、全部敵だと思ってました。なので共存の可能性と言われても、すぐには答えを出せないです」

「ははっ、正直で良い答えだ。そりゃあそうだ、こんな質問にすぐ答えを出せる奴なんてそうはいない」


 元から大した期待はしていなかったのだろう。

 ホムラの回答にトオルは気にした様子もなく、話を続ける。


「俺もかつては、色んな世界線を旅していた時期があった。その中で魔王種との共存に成功していた世界線は、数える程しかなかった」

「前例があるんですか」

「ああ。つまり共存は不可能じゃない。そして、この世界線でも共存を実現させる(・・・・・・・・)必要がある(・・・・・)と、俺は考えている」




「さもないと滅ぶよ。この世界線」



「ほ、滅ぶ……? それって、どういう事ですか……!?」


 トオルの態度から、それが冗談の類ではないと悟ったホムラは、額に汗をかきながら慌てて尋ねる。

 対してトオルは、ホムラから視線を外し、ここではないどこか――遠くに視線をやっていた。


「…………。ここまで話をしても来ないって事は、こっちの俺はマジで俺の存在に気づいてないな。探し物は苦手(・・・・・・)ってか。あながち完璧超人って訳でもないらしい」

「トオルさん……?」

「ああごめん、こっちの俺に気づかれてないか様子をうかがってた。ここから先の内容は、こっちの俺があえて話してない内容もあるかもしれないから」


 そう言ったトオルは体内の魔力を巡らせると、周囲に気配を遮断する結界を作り上げる。

 ホムラはおろか、魔王種、トオルの目すら欺く、隠蔽特化の空間操作。

 深層での探索もこれを使い、最低限の時間でマモンの元に辿り着いたのだ。

 ホムラのよく知るトオルとはまた違う発展を遂げた、別世界の技術であった。


「さて、世界が滅ぶって話だけどね。ホムラちゃんは世界の滅亡って、具体的にはどんな意味だと思う?」

「意味ですか……? えと、例えば核戦争で人類が住めない死の星になる、みたいな?」

「ああ、よくある展開だね。他にもダンジョンから未知のウイルスが漏れたり、ダンジョンから魔物が出てきて暴れまくったり……色んな理由で、世界っていうのは割とあっさり滅びる」


 まるで映画で見るような終末世界。

 それをトオルは、あたかも見てきたかのように実感をもって話す……

 いや、実際に見てきた(・・・・)のだと、ホムラはすぐに勘付いた。


「けど世界滅亡っていうのは、実はそんなに大袈裟に考える必要はない。精々全人類が根絶やしにされるくらいだ」

「えっ、なんで」

別の世界線に(・・・・・・)逃げればいいから(・・・・・・・・)だよ。それだけの力があれば、別の世界でまた一からやり直せる」


 事実、トオルのように世界線を自在に移動できる存在にとって、一つの世界線の滅亡など些細な出来事(・・・・・・)でしかないのだ。

 トオルが危惧しているのは、つまりその先。世界滅亡よりも更に酷い出来事。

 その認識の違いを、ホムラはここに来てようやく悟った。

 既に彼女から熱は失われ、底冷えするような寒気が襲いかかっていた。


「問題なのは、世界滅亡のその先。他の世界線まで影響を及ぼす破滅(カタストロフィ)が起きてしまうこと。そうなるともう、一つの世界だけの問題じゃ済まない。複数の世界線が力を合わせて対処しなきゃならない大厄災だ」

「――――」

「信じられない話かもしれないが、本当だよ。――複数の世界線を跨ぐ厄災ともなると、必ず兆候がある。

――俺はこの世界線に、その兆候を見た。近い将来、この世界線は大厄災の爆心地(・・・)になるんじゃないかと、俺は危惧しているんだ」


 二人のトオルが感知した、この世界線の異常性。

 その逼迫した状況を鑑みて、別世界のトオルはこうして独断行動に出たのだ。

 例え、それがこの世界のトオルの意にそぐわないものであったとしても。




「今ならまだ、大厄災の発生を防げる。その鍵は、人類と魔王種の共存にある――そして、それを実現させる立役者こそが君だ、ホムラちゃん」



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