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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第4章 未知の世界からのお客様

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第66話 『魔神豚の煮込み』


「まずは一緒に入れる具材の下ごしらえを」


 いくらなんでも魔神豚単品というのは寂しいからな。

 長ネギと大根、それに生姜(しょうが)で味付けをする。


「長ネギは千切りに。大根は皮もむいて食べやすいサイズに切ります」


:おかしいな、包丁の音がしないんですが?

:事前にカットしてたんでしょ(震え声)

:店長さんそれ普通のネギと大根


「ネギと大根は地上産のやつだよ。今回は豚肉の情報量……味が凄いから、ダンジョン産の素材を使うと喧嘩しちゃうんだよね。あと時間操作はまだしてない」


 これくらいのカットでいちいち時間操作してられるか。


「これ、調理の配信なのよね? いつもこんな芸当を見せられてるの?」


:シラユキちゃんもその内慣れるよ

:この人いっつもこんな感じだから

:店長の考える料理と俺らの考える料理は違うよ

:シラユキちゃんはそのままでいい。貴重な一般人枠でいて


「あとは、生姜と大根、カットした魔神豚の切り身を鍋に入れて、煮る」


 さあ、ここからが本番だ。

 豚肉でいう豚足の部位にあたるので、そのまま食べると固すぎる。

 故に煮込んで柔らかくする必要があるのだが、これが一番難しい調理過程なのだ。


「特製の圧力鍋で四十分程度煮込むんだが……さすがに配信中にそんな時間は掛けてられない。時間加速を掛けるんだが、この塩梅がなかなか難しい」


 魔力を流すと発熱する魔石。これに俺の魔力を流し込み、俺自身を動力源とする。

 魔力を流す速度と鍋の時間をシンクロさせ、少しずつ外の時間からずらしていく。


 煮込む時間は短すぎても、長すぎてもダメ。

 最初は強火で、後半は弱火で。火加減や時間調整を間違えれば、鍋は爆発する。


 その上今回扱うのは最上級の食材、魔神豚。そこに詰まった魔力や旨味は桁違いだ。

 ちょっとの刺激でそれらが溢れ出し、鍋の中で暴れ出そうとする。

 俺の魔力でそこに干渉し、味を損なわせず、鍋を破壊させないように抑え込む。


 魔神豚は生命力が高いのも特徴だ。干渉の際、俺の魔力を吸って蘇ろうとするので、その都度鍋の中で再びバラバラの切り身にしてやる。

 火を掛けながらそれらの工程を繰り返すことで、ようやく完全に中まで煮えて、蘇生不可能なレベルまで美味しく調理できる。

 さっきのカットよりよっぽど難しい工程だ。配信中に失敗は許されない。


「…………」


「……豚足の煮込みって、結構時間が掛かるものよね? じっと鍋を見つめて何してるのかしら」

「あれは、私にも分かります……トオルさんは今、鍋の中の時間を操作しているんです。……脳と魔力、肉体の部位毎に、別々の時間の流れができてる……?」

「すげー時間操作と集中力……いやこれ調理で発揮する技術じゃないでしょ。どうなってんだこの店」


「ほいできた」


 三十回くらい魔神豚を殺しなおす羽目になった。手こずらせやがって。

 しかしどうにか、納得いく出来栄えの豚煮込みができあがった。

 鍋から取り出して、長ネギを盛り付けて完成。


「お待たせしました――『魔神豚の煮込み』になります」


 今の俺が作れる、渾身の料理の一つだ。

 さあもう一人の俺。これを食ってみろ。

 俺が選んだ料理人としての人生。この俺(・・・)の歩んできた世界線と生き様がここに詰まっている。


 他の人生を歩んだ俺が、今の俺を見て、料理を食べて、どう思うか、どう感じるか。

 俺はそれを知りたい。



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