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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第4章 未知の世界からのお客様

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第61話 料理配信の裏側で


 謎の襲撃事件の翌日。

 予定通り、ホムラちゃんとのコラボ配信が行われる予定だ。

 俺達三人は、その準備に勤しんでいた。具体的には、カイザーコカトリスのチキン南蛮に使うタルタルソースを作っていた。

 シラユキちゃんの調理の様子を見ていると、配信の準備をしていたホムラちゃんが声を掛けてきた。


「こっちは配信の準備終わりました! シラユキちゃん(・・・)、体調の方はどう?」

「うん、大丈夫。今日は体調もいいし、氷漬けにしちゃうこともなさそう」

「俺が居る限りは大丈夫だよ、万が一スキルが暴走しても止められるからね」


 ……シラユキちゃん、か。

 結局昨日はホムラちゃんも泊まっていったのだが、どうやら女子二人でガールズトークに花を咲かせていたらしい。

 どんな話をしたのかは知らないが、ずいぶんと仲良くなれたようだ。同世代の友達が作れたようで何よりである。

 ……なんか二人とも、俺のことをチラチラ見てくるのが気になるけど。

 本当に昨日、何の話をしてたんだろう?


「よし。ソースの方も大丈夫そうだし……そろそろ配信始めちゃいますか」


 そんな感じで多少気になることはありつつも、ドローンを起動する。。

 止まり木亭は営業妨害なんぞには屈しない。いつも通りの通常営業で、お客さんに安心感を与えるのだ。




「――皆さんこんにちは。料理店『止まり木亭』店主の逆川透です」


 ――そして、裏で同時進行(・・・・・・)している、襲撃犯への対処もバッチリだ。

 せっかく俺が切り札を使ったのだ。中途半端な成果は許されない。



 料理配信の方は俺が進行させる。

 だから、そっちは任せたぞ?





(三人称視点)


 ――マモンがそれを見つけたのは、ただの偶然であった。

 まるで黒真珠のような、怪しく光を反射している漆黒の球体。

 それがダンジョンコア(・・・・・・・)であると気づいたのは、しばらく後のことだった。


「なぜ、こんな場所にダンジョンコアが……? いや、そんな事はどうでもいい。この力があれば、私がこの深層の支配者となるのも不可能ではない……!!」


 ダンジョンコア。

 全てのダンジョンに存在すると言われる。ダンジョンの頭脳にして心臓部。

 通常は破壊されないよう、人目のつかない場所に隠されている。そのため探索者や魔物がそれを目にする機会は殆どない。


 ――そのダンジョンコアは、ある別の世界線から流れ着いた物であった。

 ダンジョンの崩落。それに伴う中身(・・)の転移。

 シラユキという探索者がこの世界に流れ着いたのと同時に、その崩壊したダンジョンのコアもこの世界に流れ着いていたのだ。


 それを手にしたマモンは、ダンジョンコアの持つ力を存分に振るい、深層を瞬く間に制圧していった。

 全体の半分ほどを占領した時、既にマモンはダンジョンコアに取り込まれ、一体化していた。

 ダンジョンコアは強大な力を所有者に与えるが、反面本人の人格すら変容させてしまう劇物だ。

 当の本人に、その自覚はあまりなかったが。


「どう言う訳かこの渋谷ダンジョンには今、ダンジョンコアが存在しない。ならばこのもう一つのコアを使えば、ダンジョンの管理権限を横から掠め取ることすら可能――!」


 深層だけに限らず、下層にまでその権限を拡張させ、時間の流れ、地形、モンスターの再出現(リポップ)間隔制御、出現するモンスターの種類からドロップ品まで。

 マモンは少しずつ、だが確実に渋谷ダンジョンを手中に収めつつあった。

 渋谷ダンジョンの全てを掌握すれば、この世界線において莫大な力をマモンは得る。そうなれば、ダンジョンの外にまでその手を伸ばすこともできるだろう。


 だがここで、一つの障害が立ち塞がる。


「サカガワ、トオル……あいつの存在は、邪魔だ。この世界線を支配する過程において、あいつの排除は必須事項だな」


 深層の侵略を行う最中、マモンはトオルの存在を知った。

 深層の中には、ある程度下層の事情を把握している者もいた。そいつらから情報を吸い上げたのだ。


「奴は相当に強いらしいからな。入念に対策を行うとしよう。……まずはそうだな、奴に深層に来てもらう(・・・・・・・・)とするか」


 そして下層の一部にまで伸びた管理権限を使い、マモンはカイザーコカトリスをけしかけた。

 中ボスを百匹近く出現させたにも関わらず、トオルはそれを歯牙にもかけずに全滅させた。

 圧倒的な戦闘力。だが、それもマモンの想定の範囲内だった。


「こうしてちょっかいを掛ければ、奴は必ず深層に降りてくる。いつ何処から狙われるか分からない状況など、奴も望むところではあるまい。きっと私を直接潰しにくるはずだ」


 そうして、マモンはトオルを待ち構える。

 既に深層の大半を支配下に置いた彼の力は、深層クラスに収まりきらない力を得ていた。

 地球の一つや二つ、もはや簡単に壊せるだろう。

 そしてトオルが居なくなったその時、マモンはそれを実行する気であった。


「とっておきの対策も用意した。後は奴が罠に掛かるのを待つのみ……!」


 勝利を確信した余裕の笑みを浮かべ、マモンは深層でトオルを待ち構える。




 ……しかし。予想に反して、トオルは来なかった。


「なぜだ……!? なぜあんな襲撃を受けて、奴はこっちに来ない!?」


 歯噛みするマモン。

 トオルの結界が邪魔で、マモン単独では下層に向かうことは出来ない。

 このままトオルがこちらにやって来るのを待つしかないのだ。


「まさか、私の待ち伏せ作戦がバレた……? ならば、襲撃を繰り返すのみ。しつこく魔物を送り出し続ければ、奴もいずれ根を上げるはず……!」


 まるで地上げ屋の悪質な嫌がらせであった。

 トオルが渋谷ダンジョンを出るか、深層に来ればマモンの勝ちだ。そのどちらかの条件を満たすために、マモンは再び魔物を送り出そうとしたが――




「――【隕石招来(メテオコール)】」



 ――飛来する巨大隕石の前に、その処理を中断された。


「ッ!?」


 地球に壊滅的な被害を与えられる程の、巨大隕石。

 それを受けてマモンは一瞬驚くが、その強大な力を振るい容易く凌いで見せた。


「ク、クク。ようやく来たか……サカガワトオル」


 眼前には黒髪の日本人。紛れもないトオル本人だ。

 横に変な魔王種が二人くっついているのが、少し気になったが。


「ハロー、君がマモンかな? 初対面で早速なんだけど、叩き潰させてもらうよ」



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