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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第4章 未知の世界からのお客様

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第53話 止まり木亭面接試験!


(一人称視点)


「なかなかに濃い一日だったな……」


 アルベルトの来日、ホムラちゃんとの再会、シラユキちゃんとの邂逅と、新しいスタッフが増えた事。


 この世界線に来てから、一二を争うくらいに濃密な一日だった。


「正直、このタイミングでスタッフが雇えたのはだいぶありがたいよな……経営についても正直行き詰まってた所だ

 現状、『止まり木亭』が抱える問題、立地がクソという問題は何も解決していない。

 世界最強の探索者、アルベルトですら辿り着けなかったのだ。こうなるともう、自力で来店できる人物などほぼ居ないといっても良いだろう。


 もちろん、俺が店を別の場所に移転すれば解決する問題ではあるが……

 それができない理由は、元々店があったこの場所から動かしたくないという気持ちがあるのと、もう一つ。


「下の奴らが騒がしいな」


 微かにだが、時空間の乱れを感じる。

 下の奴ら……下層最深部、そのさらに奥に蠢く気配。

 ちょうど、シラユキちゃんが転移してきた直後辺りか。何かを企んでいるような気配がする。


 まあ、俺が此処に陣取っている限り、地上には出てこれないだろうが……。

 しかしシラユキちゃんの転移と、奴らに何らかの因果関係があるのであれば……


「確かめる必要があるな。スタッフの身の安全を保証するのも、店長の役割だ」




 久しぶりに潜ることになるかもしれないな……渋谷ダンジョンの深層。







「と言う訳で、只今より『止まり木亭』の面接試験を始めます」

「ううん……」


 お店の開店前、客席を使って用意した即席の面談スペースで、向かい合って座る俺とシラユキちゃん。

 しかし、シラユキちゃんはどうも戸惑いを隠せないご様子。


「面接をするのは良いのだけれど、具体的には何をするの……? 内容はさっぱり聞いていないけれど。敬語に切り替えた方が良いかしら?」

「いや、口調とかはそのままで良いよ? この面接の目的は、シラユキちゃんが現時点でどんな事ができるのか、能力の把握が主目的です」


 俺もシラユキちゃんが何ができて、何ができないのかあんまり把握してないからね。

 そこで面接という形で彼女には自己アピールをしてもらおうという訳である。


「では、まずは自己紹介から」

「……白雪氷華(シラユキヒョウカ)。十九歳。学歴は……大学中退。探索者ランクは、向こうの基準でE。特技は……大学で経営学を少し学んだのと、料理が少し」

「料理ができるの?」

「す、少しだけ……私の実家も、料理屋を営んでいたの。和食専門だけれど」


 それは初耳だ。


「じゃあ、実家で調理技術を学んだ感じ?」

「ええ。ただ、早々に料理人になる道は諦めたの……体質の問題で」

「……シラユキちゃんの、スキルの事かな」


 シラユキちゃんの表情が曇る。

 ちょっと追究しすぎたかな、と思ったが、シラユキちゃんは答えてくれた。


「私のスキル……【冬術師(とうじゅつし)】は、力が強すぎて制御が効かないの。だから調理をしていても、たまに冷気が漏れ出て食材をダメにしちゃう」

「……なるほど」


 薄々勘付いてはいた。

 俺やホムラちゃん、アルベルトらと違って、シラユキちゃんは自分のスキルを制御できていない(・・・・・・・・)

 たまに居るのだ。スキルの力が強すぎて制御できない人は。

 本人の能力不足ではない。スキルの種類や力は、才能に依る所が大きい。

 無論、訓練次第で制御可能になる事もあるが……ああ、それで探索者に?


「だから、簡単な補助くらいならできるけど……本格的な調理については、基本的に戦力外と考えて欲しい」

「ん、気にする必要はないよ。元々すぐに包丁を握らせるつもりはなかったしね」


 ダンジョン食材は取り扱いが難しい。

 決まった手順で調理しなければダメなものもあるし、下手をすれば爆発したり憑依されたり猛毒を撒き散らす食材もある。

 一部の例外除き、ダンジョン食材の調理はちゃんと訓練を積んでからだ。

 ……俺も店長(・・)にシゴかれた時は、何十年も掛かったっけ。


「……代わりといってはアレだけど、お金の管理なら経験があるわ。探索者パーティーを組んでいた時も、私がよくパーティーのお金を管理してた」

「なるほど〜」


 お金か。ぶっちゃけ全然管理してないな。

 ポーション売ればいくらでも金が手に入るし、正直金勘定についてはだいぶ適当である。

 ……ひとまず彼女には、お金の管理について任せる方向でいくか。

 あとは今後の経営方針とかも一緒に考えたいな。ゆくゆくはこの店の舵取り役を担ってもらいたい所だ。

 うん、大体方向性は見えてきたかな。


「よし。じゃあ次、実技試験やろうか」

「……実技?」

「うん、実技。ただし戦闘面においての」


 シラユキちゃんも探索者だ。魔物と戦った経験は幾らかあるだろう。

 しかし実際に戦っているシーンを目にした事はない。いや、俺くらいになると見ただけで大体の実力は分かるんだが、一応どこまでやれるのかは確認しておきたい。

 俺が近くにいる以上、万が一の展開も無いだろうが……スキルを制御できない問題については、糸口が見えてくるかもしれないし。


「……それが試験だっていうなら、従うけれど……実際にモンスターと戦うの?」

「そうだね。ちょっと魔物を的にして色々と――」


 あ。

 良い事思いついた。


「ちょっと待ってて? 相手のモンスター用意してくるから」

「よ、用意……? 一体何を……というか、私あんまり強さとかに自信ないわよ?」

「だいじょーぶだいじょーぶ。俺も側にいるから危険はないよ。よいしょっと」


 右腕だけを空間転移で飛ばし、目的の物を遠隔で持ってくる。

 探していたものはすぐ見つかった。なんせあいつはいつも同じ場所にいるので、簡単だ。


「み、右腕……なんかぼやけてる。もしかして空間転移?」

「シラユキちゃんには、一応紹介しておこうと思ってね……うちの店の、便利なパートナーの事を」

「……私の他にも、店のスタッフがいるの?」

「いや、彼はスタッフじゃない。でも色々協力してくれるんだよ。新料理の味見とか、番犬代わりとか、戦闘訓練の相手とか」


 役職もお給料も与えてないけど、今じゃ彼もこの店の立派なパートナーだ。

 今回もシラユキちゃんに紹介がてら、練習台として協力してもらおうと思う。




「――――ぐおおぉぉぉっ!!?? 何をする貴様ァァ!?」

「紹介します。うちの奴隷(パートナー)こと、シャドウマスター君です」




 すぐそこのボス部屋からシャドウマスター君を引っ張り出して、空間固定で身動きが取れないようガチガチに固定した。

 彼は日本語で会話してくれるから、感想を聞く相手としてはピッタリである。


「よし、じゃあ遠慮なくやっちゃっていいよ! とりあえずは全力攻撃で、どれくらい通用するか確かめたいかな!」


 シラユキちゃんは氷像みたいに固まっていた。

 そんなに怖がることないと思うけどな……? もう身動き取れないように拘束してるし。


「…………。就職先決めるの、早まったかな……」


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